経済同友会が4月5日に発表した「『実行可能』な安全保障の再構築」と題する提言は興味深い。はからずも、改憲によって財界が獲得を目指しているものが何かを露呈している。
(「『実行可能』な安全保障の再構築」の全文)
提言しているのは、経済同友会の「安全保障委員会」である。委員長は双日(旧日商岩井、旧ニチメン)の加藤豊会長である。海外を舞台とする総合商社のビジネスと海外派兵はどう関連するのだろうか。
改憲といえば、日本を戦前の軍国主義へ回帰させることを狙っているような印象がある。事実、声だかに改憲を主張している人々の心中は、そのような野心に満ちているようだ。たとえば石原慎太郎氏は、朝日新聞のインタビューの中で、日本は「軍事国家になるべきだ」と語っている。
また、改憲に固執してきた安部内閣の閣僚たちが、靖国神社に参拝(安倍首相は参拝の代わりに、供物を内閣総理大臣名で奉納)したことも、改憲=戦前の軍国主義のイメージを拡散する。
さらに改憲を肯定的にとらえている人々は、9条の改正=国際貢献と考えている。世界情勢の変化の中で、古くなった憲法を改正するという極めて単純な発想である。
しかし、改憲の本当の目的は、若干別のところにあるようだ。メディアで報道されている表向きの部分とは異なるようだ。経済同友会の文書を読むと、それがよくわかる。
が、この点に立ち入る前に、安部内閣の閣僚による靖国参拝をめぐる海外の反応に言及しておこう。
韓国や中国が、靖国参拝に反発したことは想定の範囲だったが、意外なことに日本の同盟国である米国でも批判の声が上がった。なぜか?答えは簡単で、ビジネスの国境が消え始めている状況下で、多国籍企業が展開している国際ビジネスに支障が生じかねないからだ。
これはわたしの推測になるが、アジアに進出している日本の多国籍企業も、米国と同じ受け止め方をしているのではないかと思う。企業人は極めてシビアーだ。自社にとって利益になるか否かで物事を判断する。
安部内閣の閣僚たちは、おそらく財界のご機嫌を取ろうとして、靖国神社に参拝したり、尖閣諸島を国有化したり、右翼的な発言を繰り返しているのではないかと思うが、財界の思惑は若干異なるようだ。
結論を先に言えば、多国籍企業の権益を守るために、憲法を改正して、海外派兵の体制を整えてほしいというのが、財界の要望である。それ以外の何物でもない。右翼が主張するように、憲法は米国が作ったものだから、改憲が必要といった論理は表面上の理由に過ぎない。
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