魚の大量死、日本のメディア、バッシングを恐れて自らを口封じ
メディアによる報道自粛が指摘され始めて久しい。少なくとも30年ぐらい前からこの問題が浮上している。沈黙を美徳とする価値観。これにより国民がジャーナリズムによる恩恵を受けられなくなっている。
このところ大量の死魚が海岸に打ち上げられる珍現象が相次いている。2023年の12月だけでも、三重県と北海道で大量の魚が海岸に打ち上げられた。海外メディアの中にはロシアのRTのように、その原因のひとつの「可能性」として福島の汚染水を指摘した報道もあった。イギリスの大衆紙もやはり同じ方向性でこれを報じた。
これに対して日本の外務省は、関係メディアに抗議した。
【引用】北海道函館市の海岸にイワシなどが大量に打ち上げられた映像を、イギリスのメディアが福島第一原発の処理水放出と関連があるかのように報じているとして、外務省は「誤解を生じさせる発信は遺憾だ」として、訂正するよう申し入れました。(NHK)
「閾値」を隠した日本のマスコミ報道、中国を敵視、福島の汚染水問題
8月24日に福島原発の汚染水を海に放出し始めたのち、中国から激しい批判の声が上がっている。これに対して、外務省は9月1日に反論を発表した。中国の主張を「科学的根拠に基づかないものだ」と決めつけ、国際原子力委員会(IAEA)のお墨付きがあるので、安全性に問題はないという趣旨である。
マスコミはALPSを通過する水を「処理水」と表現するなど国策に寄り添った方向で報道を続けている。テレビは連日のように福島沖で捕獲させる魚介類をPRしている。「汚染水」という言葉は絶対に使わない。売れない魚を学校給食で使う案も出始めているらしい。
政府や東電、それにマスコミの主張は、「規制値を遵守しているから絶対に安全」だというものである。しかし、この考え方は、放射線や化学物質の安全性には「閾値」がないことを隠している。
「閾値とは、ある値が所定の水準を超えると特定の変化が生じたり判定・区別が変わったりする、という場合の『所定の水準』『数値的な境目』『境界線となる値』を意味する語である」(Weblio)
放射線の人体影響に閾値がないことについて、岡山大学の津田敏秀教授は次のように指摘している。
(日本では)「100ミリシーベルト以下ではがんが増加しない」ことになってしまっている。2013年5月27日付けで出された「国連特別報告者の報告の誤りに対する日本政府の修正」と題された日本国政府代表部の文書にも、「広島と長崎のデータに基づき、放射線被ばくによる健康への影響は、100ミリシーベルト以下の水準であれば、他の原因による影響よりも顕著ではない、もしくは存在しないと信じられている」と記されている。これは100ミリシーベルトの放射線被ばくが、発がんの「閾値(しきい値)」のように考えられていることを意味する。
よく知られていることだが、国際X線およびラジウム防護委員会IXRPは1949年に、放射線被ばくによる癌の発生に閾値はないことを結論づけ、この結論は現在に至るまで変えられていない。(『医学的根拠とは何か』津田敏秀著、岩波書店)【続きはデジタル鹿砦社通信】
小児甲状腺癌の発生率が二本松市で50倍に、東京も被曝の圏外ではない
『月刊日本』が、福島の惨状を報じている。タイトルは、「福島で急増する子供の甲状腺癌」。岡山大学の津田敏秀教授の論文を紹介しながら、水面下で進行している被曝の実態を伝えている。
まず、子供に甲状腺癌が多発してる実態を次のように伝える。
津田教授らは2014年12月31日までに集計された調査結果(黒薮注:福島県が実施したもの)を分析した。この時点までで、受診者29万8577人の内110人が悪性ないし悪性の疑いと判断され、そのうち87人が手術を行っている。津田教授らがこれら検査結果を地域別に分析したところ、甲状腺癌の発生率が全国平均と比べ、二本松市などでは50倍、郡山市などでは約40倍にも達していることがわかったという。
順天堂大学病院の血液内科受診者が急増、東京都も原発の汚染地帯か?特定秘密保護法の施行で隠蔽される情報
『アトピー解決篇』(鳥影社)の著者・吉岡英介氏のウエブサイトに、関東全域が福島第一原発を発生源とする環境汚染にさらされている高い可能性を示唆するデータが紹介されている。
同ウエブサイトによると、東京都文京区本郷にある順天堂大学病院の血液内科を受診する患者数が、3・11の後に急増しているという。
新外来患者は次の通りである。
2011年: 230人
2012年: 822人
2013年: 875人
吉岡氏によると「血液内科とは、悪性リンパ腫とか血球数の異常とか骨髄の異常などを診断治療する診療科」である。詳細情報へは、次のリンクでアクセスできる。
『チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店)に記録された原発事故と鼻血の関係、「美味しんぼ」問題にみる村社会の体質
『週刊ビッグコミックスピリッツ』の「美味しんぼ」で、主人公が鼻血を出す場面が批判の対象になっている。風評被害を引き起こすというのだ。風評被害というからには、放射能によるガンマ線と鼻血は関係がないという見解が前提になっているはずだが、果たして両者に因果関係はないのだろうか?
この点を曖昧にすると、言論弾圧が日常化しかねない。
『チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店)という旧ソ連の研究者たちによる報告書がある。とかく原発事故による人的被害といえば、甲状腺癌や白血病と関連づけて考える傾向があるが、同書は、放射線による癌以外の被害についても詳しく報告している。
次のPDFファイルの図は、「子どもの健康に関する自覚症状の一覧」である。
「重度汚染地域」と「低汚染地域」を症状別に比較したものである。報告されている症状は次の通りである。
健康状態に関する不調の訴え、虚弱、眩暈(めまい)、頭痛、失神、鼻血、疲労、心臓不整脈、腹痛、嘔吐、胸やけ、食欲不振、アレルギー。
特に着目すべき点は、1回目の調査では、すべての症状の発症率において、「重度汚染地域」が「低汚染地域」よりも高い数値を示していることである。3年後の調査では、例外的に「アレルギー」の発症率が、重度汚染地域よりも、低汚染地域の方が高くなっているのを除くと、やはり同じ傾向を示している。
注目すべきことに、「鼻血」が放射線による症状として、記録されている事実である。つまり「美味しんぼ」における鼻血の場面は、誇張ではなくて、十分な根拠があるといえる。
この程度の表現がバッシングの対象にされた事実は、言論統制が水面下でかなり進行している証といえるだろう。今やメールや電話の傍受は、あたりまえ。安倍内閣になってから、「先進国」とは思えない言論に対する嫌がらせが進行している。