大津市民病院の新理事長に滋賀医科大の河内明宏教授、過去の有印公文書偽造事件は不問に、前近代的な人事制度の弊害 

赤色に錆び付いた人事制度。人脈社会の腐敗。それを彷彿させる事件が、琵琶湖湖畔の滋賀県大津市で進行している。

大津市の佐藤健司市長は、9月9日、大津市民病院の次期理事長の名前をウェブサイトで公表した。新理事長に任命されるのは、滋賀医科大付属病院の泌尿器科長・河内明宏教授(写真、出典=九州医療新報)である。河内教授の理事長就任は、今年の6月に既に内定していたが、今回、任命予定者として公開されたことで、近々、公式に理事長に就任することが確実になった。任期は、2022年10月1日から25年3月31日である。

デジタル鹿砦社通信でも報じてきたように、河内教授は滋賀医科大病院の小線源治療をめぐる事件に関与した当事者である。はたして公立病院の理事長に座る資質があるのか、事件を知る人々から疑問の声が上がっている。

佐藤市長に対して、新理事長選任のプロセスを公開するように求める情報公開請求も提出されている。

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2022年09月26日 (月曜日)

「押し紙」問題を放置してきた公権力機関、巧みなメディアコントロールのからくり、モデルは戦前・戦中の新聞用紙の配給制度

「押し紙」が温床となっているメディアコントロールの例を、具体的な新聞記事を引き合いに出して立証することは不可能だが、公正取引委員会や裁判所などの公権力機関が新聞社の「押し紙」政策を黙認してきた軌跡を記述することはやさしい。それはちょうと公害の原因を医学的な根拠を示して立証することが困難であっても、疫学調査によって健康被害の全体像を立証できるのと同じ原理である。

「押し紙」問題を半世紀前までさかのぼってみると、公取委や裁判所がメスを入れる機会は何度かあった。しかし、実際は抜本的な対策を取ったことはほとんどない。それどころか、新聞業界の自主規制に委ねることで、故意に「押し紙」政策を奨励したのではないかと思われる節もある。

【参考記事】公取委と消費者庁が黒塗りで情報開示、「押し紙」問題に関する交渉文書、新聞社を「保護」する背景に何が?

余談になるが、2022年7月に起きた安倍首相狙撃事件を機にして暴露された旧統一教会と自民党の関係も、約半世紀に渡って放置されてきた。警察などの公権力機関はメスを入れなかった。マスコミもほとんど報道しなかった。この問題についてもメスを入れる機会はあったはずだが、実際には延々と放置してきたのである。

統一教会による霊感商法の被害額は、35年間で1237億円(日テレNEWS、7月29日)に上った。これに対して「押し紙」による新聞販売店の被害は、中央市の場合、年間で100億円単位になる推定される。
金額という観点から言えば、「押し紙」による被害の大きさは、霊感商法の比ではない。

【参考記事】「押し紙」を排除した場合、毎日新聞の販売収入は年間で259億円減、内部資料「朝刊 発証数の推移」を使った試算

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2022年09月23日 (金曜日)

【取材メモ】新聞用紙の統制から「押し紙」放置の政策へ、メディアコントロールの手口

かつてメディアコントロールのアキレス腱となっていたのは、新聞用紙の配給制度だった。現在は、これと類似した構図が、「押し紙」を介して成立している。

公正取引委員会や裁判所などの公権力機関は、「押し紙」を放置することで、新聞社に莫大な利益をもたらす。一方、新聞社は、公権力の「広報紙」になることで、「押し紙」という経営上の大汚点にメスを入れられる事態を回避してきた。

次の記述は、新聞用紙の統制とメディアコントロールの関係を記述したものである。

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2022年09月20日 (火曜日)

左傾化するラテンアメリカ、1973年の9.11チリ軍事クーデターから49年、新しい国際関係の登場

チリの軍事クーデターから、49年の歳月が過ぎた。1973年の9月11日、米国CIAにけしかけられたピノチェット将軍は、空と陸から大統領官邸に弾丸をあびせ、抗戦するサルバドール・アジェンデ大統領を殺害して軍事政権を打ち立てた。全土にテロが広がり、一夜にしてアジェンデ政権の痕跡は一掃された。

チリのガブリエル・ボリッチ大統領は、11日に行われた記念式典で、半世紀前のこの大事件の意味を語った。

「拘束され、今だに行方が分からない人が1192名いる。それは受け入れがたく、耐えがたく、なかったことにはできない。」

「49年前、サルバドール・アジェンデ大統領とその協力者たちは、忠誠心、実績、さらに尊厳について、歴史的教訓をわれわれに示した」(ベネズエラのTeleSur)

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2022年09月17日 (土曜日)

公取委と消費者庁が黒塗りで情報開示、「押し紙」問題に関する交渉文書、新聞社を「保護」する背景に何が?

筆者は、今年の6月、公正取引委員会と消費者庁に対して、新聞の「押し紙」に関するある資料の情報公開を申し立てた。

9月になって消費者庁が資料を開示したが、肝心な記述部分を黒塗りにしていた。はからずもこうした情報公開の方法は、新聞社を延々と「保護」してきた公権力の姿勢を浮き彫りにした。背景に権力構造がすけて見える。

この資料は、公正取引委員会と日本新聞協会の間で行われた広義の「押し紙」問題に関する話し合いの記録である。

発端は1997年にさかのぼる。この年、公正取引委員会は、北國新聞社に対して「押し紙」の排除勧告を発令した。北國新聞が、販売店に対してノルマ部数を割り当てた事実を指摘して、改善を勧告したのである。

同時に公取委は、北國新聞以外にも、これと類似した手口の「押し紙」政策を実施している新聞社があるとして、日本新聞協会に対し、「本件勧告の趣旨の周知徹底を図ることを要請」した。

これに対抗して日本新聞協会は奇策にでる。結論を先に言えば、残紙の「2%ルール」を撤廃したのだ。これはどういう意味を持つのか?

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2022年09月14日 (水曜日)

横浜副流煙裁判を映画化、西村まさ彦主演『窓』、12月から劇場公開

煙草の副流煙をめぐる隣人トラブル。はからずもこの社会問題をクローズアップした横浜副流煙裁判を、若手の映画監督がドラマ化した。タイトルは、『窓』。主演は西村まさ彦。映画は12月から劇場公開される。

この映画は、本ウェブサイトでも報じてきた横浜副流煙裁判に材を取ったフィクションである。しかし、近年、深刻になっている新世代公害-化学物質過敏症が誘発する隣人トラブルを、ノンフィクション以上にリアルに描いている。それは、住民のだれもが巻き込まれかねない隣人トラブルの地獄絵にほかならない。

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2022年09月13日 (火曜日)

2022年7月度のABC部数、朝日新聞、年内に400万部の大台を割り込む可能性、 「押し紙」を黙認する公権力と新聞人の関係

2022年7月度のABC部数が明らかになった。それによると朝日新聞は、前年同月比で約54万部の減部数となった。これは月間に換算すると約4万5000部。今年の12月まで5カ月あり、予想される減部数は22万5000部になる。従って400万部の大台を割り込む公算がかなり高くなっている。

読売も、年間で約36万部減らしている。産経新聞は、約18万部。産経はもともと部数が少ない新聞なので、18万部の減部数による経済的な影響は大きい。

朝日新聞:4,121,240(-541,662)
毎日新聞:1,885,163(-122,338)
読売新聞:6,760,411(-326,266)
日経新聞:1,703,815(-150,542)
産経新聞:1,013,683(-177,289)

 

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2022年09月08日 (木曜日)

CIAから統一教会へ、国策としての反共

日本のマスコミによる旧統一教会の報道には、欠落部分があるように感じる。それは「反共戦略」の歴史的背景の解釈である。結論を先に言えば、「反共思想」を文鮮明の個人的な思想として解釈している点である。「反共」が日本の国策であったことを隠している点だ。

反共思想の普及は、文鮮明が来日する前から、戦略的に推し進められてきた。その典型例が、読売のポダム(正力)と朝日のポカポン(緒方)の存在である。彼らが、CIAの反共戦略に組み込まれ、協力してきた事は、すでに史実として定着している。米国は、日本に親米世論と反共感情を浸透させるために、新聞社を権力構造に組み込み、世論誘導に利用してきたのである。

※それゆえに「押し紙」などに対する司法のメスは、めったに入らない。

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稲盛和夫の「名言」と基地局問題、露呈したKDDIの企業エゴイズム 

優れた経営者として名を馳せてきた稲盛和夫氏が、8月24日に亡くなった。ウィキペディアによると、同氏の経歴は次の通りである。

稲盛 和夫(いなもり かずお、1932年〈昭和7年〉1月21日 - 2022年〈令和4年〉8月24日)は、日本の実業家。京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者。公益財団法人稲盛財団理事長。「盛和塾」塾長]。日本航空名誉会長。

京セラやKDDIの創業者で、経営に関する著書も多い。ビジネスマンの間で評価が高く、松下幸之助と並んで、経営の神様としてもてはやされていきた。金策に富んだ経済人だった。日本航空のリストラに大鉈を振るったという批判も浴びた。

この人物について書くとき、わたしには許せないことがある。

◇電磁波という新世代の公害

2020年の夏、わたしが住む埼玉県朝霞市の城山公園(市の所有地)に、KDDIが携帯電話の基地局を設置した。土地の賃料は、月額で約360円。無料同然の賃料を納金し、朝霞市でも電話ビジネスを拡大している。だが、基地局が放射するマイクロ波を1日24時間、365日にわたって被曝させられる近隣住民はたまったものではない。モルモット同然だ。立派な迷惑行為である。

わたしは基地局設置の工事に気づき、KDDIの子会社・KDDIエンジニアリングに工事の中止を求めた。欧米では、電磁波による人体影響を考慮して、基地局の設置には一定の制限を設けている。設置された基地局を撤去するように裁判所が判決を下した例もある。

KDDIエンジニアリングは、わたしの要請に応じて、一旦工事を中止した。そして現場から機材を搬出した。さらに現場を木の柵で囲って、立ち入り禁止にした。

その後、わたしは何度かKDDIエンジニアリングの担当者や朝霞市の職員と話し合った。しかし、KDDIエンジニアリングは、結論に達していないのに、一方的に工事を再開して基地局を完成させたのである。朝霞市もそれを黙認した。住民よりも企業に便宜を図ったのである。後日、富岡勝則市長に電磁波に関する公開質問状を送ったが、電磁波問題そのものを分かっていない様子だった。

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2022年09月01日 (木曜日)

50年遅い報道のタイミング、統一教会をめぐるマスコミ報道、「安全」を確認してからみんなでスタート

最近のマスコミによる旧統一教会関連の報道に接して、多くの人々が、「日本でもジャーナリズムは機能している」と感じているのではないだろうか。しかし、わたしはそんなふうには見ていない。大きな問題を孕んでいると思う。それは報道のタイミングの遅れである。

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