最高裁長官を退任後に宮内庁参与へ、竹崎博允・元長官ら、「勤務実態」は闇の中、最高裁に関する2つの情報公開調査のレポート
石棺のような窓のない建築物。出入口に配備された警備員。
外界とは厚い壁で隔てられ、通信手段は郵便だけに限定され、メールもファックスも通じない。
最高裁判所には不可解なグレーゾーンがある。その中で何が進行しているのか──。
今年に入って、わたしは最高裁の実態を調べるための一歩を踏み出した。情報公開制度を利用して、複数の「役所」から最高裁に関連する情報を入手した。
最高裁事務総局、情報開示の通知期限を大幅に延長、司法の暗部「報告事件」の調査
昨年の秋ごろから、最高裁事務総局による報告事件の調査をしている。報告事件とは、最高裁事務総局が、裁判官人事をコントロールすることで、判決の方向性を決める事件のことである。国策にかかわる事件が、報告事件に指定されてることが多いと聞く。
たとえば次のような実態は、今年の1月に報告した。。
【参考記事】 産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日
もちろんどの裁判が報告事件に指定されているかのは、誰も知りようがない。従って取材も困難を極める。しかし、調査を開始しなければ、永遠に真相は解明できない。裁判の訴状と判決を垂れ流すだけが司法ジャーナリズムではない
野村武範判事の東京高裁での謎の40日、最高裁事務総局が情報公開請求を拒否、透明性に疑惑がある事務局運営の実態
今年の1月19日付けで筆者が、最高裁事務総局に対して申し立てた2件の情報公開請求を拒否する通知が到着した。通知の交付日は、3月24日である。情報公開請求の内容と通知内容は、次の通りである。
《請求A》
1、開示しないこととした司法行政文書の名称等
野村武範判事が東京高裁に在任中(令和2年4月1日から令和2年5月10日)に、担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書
2、開示しないこととした理由
1の文章は、作成又は取得していない。
《請求B》
1、開示しないこととした司法行政文書の名称等
野村武範判事が令和2年5月11日に東京地裁に着任した後に担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書
2、開示しないこととした理由
1の文章は、作成又は取得していない。
【参考記事】最高裁事務総局に対して3件の情報公開請求、産経新聞「押し紙」事件の野村武範裁判長の職務に関する疑問、東京高裁在任が40日の謎
産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日
昨年12月に判決が下された産経「押し紙」裁判(東京地裁)で、原告の販売店を敗訴させた野村武範裁判長の履歴が不自然だ。次のようになっている。
R 2. 5.11 東京地裁判事・東京簡裁判事
R 2. 4. 1 東京高裁判事・東京簡裁判事
H29. 4. 1 名古屋地裁判事・名古屋簡裁判事
名古屋地裁から東京高裁へ異動したのは、2020年4月1日。そのわずか40日後に、野村判事は東京地裁は異動して、産経「押し紙」裁判の裁判長に就任した。
野村判事は、東京高裁での40日の間に具体的にどのような仕事をして、何を理由に最高事務総局により異動させられたのか、今後の解明が必要だ。不自然な人事異動の事実を前に、「報告事件」の疑惑が浮上している。
少なくとも司法ジャーナリズムの観点からすれば、検証が必要だ。判決の結果を垂れ流すだけが、司法ジャーナリズムではないだろう。
ちなみに新聞社が被告となった事件では、過去にも不自然な事例がある。携帯電話の基地局撤去をめぐる事件でも、類似したケースがある。前者は国家によるメディアコントロールの問題と、後者も国家による電波政策の問題とかかわりを持っている。
日立キャピタルが最高裁へ4年間で1億8000万円を請求、月間のサーバー料が370万円にも、日付のない請求書の山
最高裁の元長官・竹﨑博允(写真)氏の現役時代の経理には、さまざまな疑問点がある。たとえば既報したように、裁判員制度に関する出費が高額になっている事実である。日付が付されていない請求書が多量にある事実である。
次に示すのは、日立キャピタル(株)が、「平成21年」から「平成24年」の約4年間に最高裁事務総局に請求した項目の明細である。総額は1億8037万円。
日立製作所から最高裁事務総局宛の請求書で請求月日がすべて空白に、裁判員制度に関する経理の検証
竹﨑博允・元最高裁長官の時代の経理が尋常ではない。5日付けメディア黒書で既報したように、裁判員制度に関連した民間企業からの請求書に、請求月日が欠落しているものが多量にあるのだ。
パナソニックからの請求書に関しては既報したが、日立製作所からの請求書も同類である。筆者の検証に誤りがなければ、請求月日が記されているものは一枚もない。
次に示すのが、日立製作所から最高裁事務総局へ送られた請求書の詳細である。
パナソニックから最高裁事務総局へ裁判員制度をめぐり8億円超の日付のない請求書、NTTデータからは1億円超、日立は今後調査
裁判員制度の構築と運営に関連して、竹﨑博允(写真)・最高裁長官の時代、パナソニックから最高裁事務総局に対し、2009年から2012年までの間に、約8億8600万円の請求が行われていたことが分かった。しかも、請求書の多くに日付がない。当然、竹﨑長官への疑惑が浮上する。
請求書の備考欄に「19年度分」と記されていながら、用度課の受領印が「22・3・15」となっているものもある。だれが見ても不自然だ。
この資料を公表した理由は次の通りである。
最高裁に対して情報公開請求、最高裁判事らが読売裁判を検証したことを示す証拠を開示せよ
最高裁判所に対してわたしは、9日、次の内容の情報公開を請求する。
平成25年(受)第1261号事件を担当した裁判官・小貫芳信、裁判官・千葉勝美、裁判官・鬼丸かおる、裁判官・山本庸幸、さらに担当調査官(氏名は不明)が、本件の内容について検討したことを示す全文書。
平成25年(受)第1261号事件とは、わたしが2009年に読売新聞社に対して5500万円の損害賠償を求めた裁判である。そもそもの発端は、読売が2007年の暮れから、わたしに対して次々と裁判による攻撃を仕掛けてきたことである。読売がわたしを被告として起した裁判は次の通りである。
1、仮処分申立(著作権) 2007年12月
2、著作権裁判 2008年2月
3、名誉毀損裁判1 2008年3月
4、名誉毀損裁判2 2009年7月(被告・黒薮、新潮社)
読売が支払いを求めた金額は、約8000万円。これらの裁判を担当したのは、自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士や同協会事務局長の藤原家康弁護士、それに元最高裁判事が再就職(広義の天下り)しているTMI総合法律事務所の升本喜郎弁護士らだった。
最高裁、野村総合研究所へ「裁判員等選任手続の検証等業務」の名目で約6400万円
裁判員制度で使われた出費を検証したところ、野村総合研究所が最高裁に対して、「裁判員等選任手続の検証等業務」の名目で、約6400万円の支払を求めていたことが分かった。請求書の日付は、2009年3月31日。裁判員制度がはじまるひと月まえである。
請求書には、最高裁の受領印があり、実際に請求金額が支払われた可能性が高い。請求書のPDFは次の通りである。
◇NTTデータに2億4300万円
MEDIA KOKUSYOで既報したように、(株)NTTデータに対しては、裁判員候補者名簿管理システムの開発と保守名目で2億4300万円を支出していた事実もある。(厳密には、NTTデータが請求)。
■請求書(裁判員候補者名簿管理システム開発のアプリケーション保守)?
不自然に高い金額である。相場は700万円ぐらいである。
最高裁が(株)NTTデータに、裁判員候補者名簿管理システムの開発と保守名目で2億4300万円を支出 相場は700万円?
筆者が裁判員制度に関する支出について調べたところ、2009年1月、最高裁が裁判員候補者名簿管理システムの開発・保守費として、(株)NTTデータに対し、総計で約2億4300万円の大金を支払った疑惑があることが分かった。支出の詳細は次の通りである。
■裁判員候補者名簿管理システムの開発:190,995,000円
■裁判員候補者名簿管理システム開発のアプリケーション保守:51,975,000円?
「疑惑」と書いたのは、上記の数字を裏付ける資料が(株)NTTデータが最高裁に送った請求書であるからだ。請求書であるから、額面どおりに支出した絶対的な確証はないが、通常、公的機関に対する請求書は、事前合意の上で送付されるので、実際に最高裁が約2億4300万円を支出した可能性は極めて高い。
この約2億4300万円という数字をどう評価すべきだろうか。
比較対象として、森ゆうこ元参議院が作成した「検察審査会調査報告書」と題する資料を紹介しよう。作成日は、2011年6月30日。この資料に検察審査会のクジ引きソフトを開発・保守するための費用として、最高裁(注:検察審査会は最高裁が管轄している)が支払った次の額が表示されている。
最高裁の上告審における朝日、読売、日経の勝敗は「88勝4敗」、逆転勝訴は黒薮裁判の1件、情報開示まで8ヶ月の延滞
1997年から2013年までの間に、最高裁に上告された裁判のうち、朝日新聞社、読売新聞社、それに日経新聞社が上告人か被上告人になったケースの勝敗を調べた。裏付け資料として採用したのは、情報公開請求によって最高裁から入手した次の資料である。
結論を先に言えば、法廷闘争では、大新聞社が圧倒的に強いことが分かった。
裁判官、検察官、法務省のトライアングル 公正な裁判を妨げる温床に 財団法人・法曹会の実態
次にリンクしたPDFは、「法曹会役員・各委員会会員」と題する資料である。
一見するだけで、裁判官、検察官、法務省の職員が名を連ねていることが判然とする。法曹会はほとんど知られていない組織であるが、法律が国のありかたや人々の生活のかたちを決めるとすれば、その役割を担っている人々のサークルである。
法曹会のホームページによると、同会の概要は次の通りである。
1 名称 一般財団法人 法曹会
2 事務所 東京都千代田区霞が関1?1?1 法曹会館
3 設立 明治24年9月
4 沿革 明治24年9月 法律研究の任意団体として発足。
明治41年12月 財団法人に改組。
平成25年1月 一般財団法人へ移行。
5 目的 法律の調査研究及び法律実務の進歩発展を図ることを目的とする。
6 主な事業
(1)月刊法曹専門誌「法曹時報」及び各種判例集・研究論 文・執務資料等司法関係の印刷物の刊行。
(2)法曹会館の運営。
MEDIA KOKUSYOに上記PDF資料を提供したAさんは、次のように話す。
「法曹会が一般財団法人になったことで、主務官庁(法務省)のチェックが入らなくてすむようになりました。例えばこれまで義務付けられていた役員名簿や収支決算報告書などの提出は不要になります」
一般財団法人へ移行した「平成25年」には、役員を変更した。その後、同会はホームページで役員名簿を公表したが、次に示すように役員の肩書きが完全に消えていた。
志岐武彦さんを支援する会の公式名称は、「最高裁の問題を考える会」、14日に東京地裁で第2回口頭弁論
元国会議員の森ゆうこ氏がブロガーで『最高裁の罠』(K&Kプレス)の著者・志岐武彦氏に対して、ウエブサイトからの記事の削除などを求めた裁判の第2回口頭弁論が14日の10:30分から東京地裁の526号法廷で開かれる。詳細は、次の通りである。
(法廷が終了した後、地裁の5階の508号・会議室で、志岐さんの代理人・山下幸夫弁護士から、事件についての説明があります。資料も配布します。メディアの関係者を含め、誰でも参加できます)
口頭弁論の告知が掲載されたウエブサイトは、志岐氏を支援する会が立ち上げたもの。支援する会の公式名称は、「最高裁の問題を考える会」。補足的に(志岐武彦さんに対する言論封じ裁判に反対する会)という名称も使われる。
ウエブサイトの管理は、わたしが担当している関係で連絡先もわたしの電話・メールになっているが、掲載内容はわたしの見解とは関係ありません。あくまでも「最高裁の問題を考える会」の会としての見解となる。
と、いうのも同会には、さまざまな考え方の人々が参加しており、「最高裁の問題を考える」という点と、「裁判による言論封殺に反対する」という2点の共通認識で集まっているからだ。当然、他人の言論を尊重し、会の目的に賛同するひとは、だれでも会員になれる。