1. 司法制度

司法制度に関連する記事

2026年05月20日 (水曜日)

「公開されない裁判」への違和感――外国人記者が見た日本司法の閉鎖性

本稿は19日付メディア黒書の続編である。浅野氏の講演に先立って行われた西村カリン氏の話のうち、特にわたしの印象に残った箇所を紹介する。19日付記事については、次のURLからアクセスできる。

浅野健一氏の「『石ころを石礫に』講演会で見えた元大学教授の本音」

西村カリン氏は、山上徹也裁判の公判を初回から判決まで傍聴した唯一の外国人記者である。外国人の視点から、日本の裁判制度がどのように見えるかを語った。(なお、以下の内容は『世界』〈2026年4月号〉に西村氏が執筆した記事と重なるため、より正確な記述にするため同誌も参考にした。)

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2026年04月28日 (火曜日)

ゴーストライター原稿をめぐる著作権問題、浅野VS辻井、過去には「現代のベートーベン」佐村河内守の事件でクローズアップ

『石ころの慟哭 山上徹也・奈良地裁裁判の私記』(辻井彩子著、あけび書房)の出版差し止めをめぐる事件の続報である。この事件の争点は、同志社大学の元教授でジャーナリストの浅野健一氏が、2人のアシスタント(編集者とゴーストライター)の協力を得て制作した原稿の著作権が誰に帰属するかという点にある。浅野氏は出版を取りやめた後、ゴーストライターは、原稿を改編して、あけび書房から自らの名義で出版した。これに対して浅野氏は、出版差し止めの仮処分を裁判所に求めた。

一方で浅野氏は、同じテーマの本を三一書房から出版する予定である。タイトルは『石ころを石礫に 安倍氏暗殺・山上徹也さん裁判記録』。4月末には書店に並ぶ見込みだ。この本に、ゴーストライターの辻井彩子氏が執筆した原稿(以下、「元原稿」)の一部が使用されている可能性は、次の記述からも読み取れる。

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2026年04月27日 (月曜日)

ゴーストライターと共同著作権―『石ころの慟哭』事件の論点整理

ジャーナリストで元同志社大学教授の浅野健一氏が、『石ころの慟哭 山上徹也・奈良地裁裁判の私記』(辻井彩子著、あけび書房)の出版差し止めを求めて裁判所に仮処分を申し立てた事件の続報である。浅野氏は先週、申立書をメディア向けに公開した。

それによると、事件の概要は次の通りである。あけび書房にも自社の主張があると推測されるが、ここでは浅野氏側の経緯説明を要約する。

まず、浅野氏とあけび書房は「 安 倍 晋 三 元首 相 銃 撃 ・ 山 上 徹 也 さ ん 裁 判 聴 記 」を出版することで合意した。これを受けて浅野氏は書籍の制作に取り掛かったが、二人の女性がアシスタントとして制作に加わった。二人は、フリーランスの編集者A氏と、ゴーストライターなどの業務を担当する辻井彩子氏である。辻井氏は、後に『石ころの慟哭』の著者になる。

浅野氏は、安倍殺害事件に関して書いた記事などを編集者Aに提出し、「赤入れ作業」を依頼した。それをあけび書房が入力した。完成後、これらの記述物を辻井氏へ渡し、辻井氏は書籍の制作に取りかかった。その際、辻井氏は新聞やインターネット上の記事も参照して執筆した。(推測になるが、浅野氏が提出した記事だけでは単行本としての分量が不十分だったためだろう。)

次に、浅野氏は辻井氏が作成した草案の修正を行った。特に、辻井氏が心情などを加筆した部分はすべて削除し、全体を再構成したうえでさらに加筆を行い、「最終原稿」とした。

その後、浅野氏はあけび書房に対して出版を撤回し、訴外の三一書房から、恐らく修正した原稿を出版した。

以上が申立書の概要である。念のため、原文の中から事件の経緯に関する重要部分を引用しておく。そのうえで、私見を述べたい。

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著名なメディア研究者による法的措置拡大へ、浅野健一氏による言論への法的対抗は妥当か

ジャーナリストで元同志社大学教授の浅野健一氏が、『石ころの慟哭 山上徹也・奈良地裁裁判の私記』(辻井彩子著、あけび書房)の出版差し止めの仮処分を裁判所に申し立てた件で、新しい動きがあった。浅野氏が、20日、みずからのフェイスブックで、この件についてSNSなどで意見を述べた人々に対して、「法的、道義的責任」を問うと投稿したのだ。筆者も含まれている。次の箇所である。

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2026年02月01日 (日曜日)

新聞ビジネスの構造と「押し紙」裁判――その解明と次なる検証課題

2月2日に発売される『ZAITEN』(財界展望社)が、「大新聞崩壊前夜」と題する特集を組んでいる。この特集記事の一つを、筆者(黒薮)が執筆した。記事のタイトルは、「毎日新聞が『新聞の秘密』を意図せずに暴露」である。

 記事の詳細についてはここでは触れないが、概略としては、日本の新聞社のビジネスモデルのからくりを、毎日新聞社の内部資料に基づいて解明したものである。新聞社がどのような方法でABC部数をかさ上げしているのかを立証した。

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2026年01月19日 (月曜日)

「司法の独立・裁判官の独立」について-モラル崩壊の元凶押し紙―(下)

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸 2026年(令和8年)1月15日

近時、弁護士が依頼者の金銭を横領する事件が多発しています。また、弁護士事務所の法人化、支店の設置、広告宣伝の自由化により、相談料無料・着手金無料をうたったホームページが多く見られるようになりました。日本版アンビュランス・ローヤーの出現という問題です。

(注:アンビュランス・ローヤーとはアメリカの俗語で、交通事故などの被害者が乗った救急車(ambulance)を追いかけ、病院で動揺している被害者やその家族に接触し、損害賠償請求の訴訟を持ちかけて依頼を得ようとする弁護士たちを指す言葉です。基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする日本の弁護士制度にはなじみません。)

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2026年01月16日 (金曜日)

「司法の独立・裁判官の独立」について-モラル崩壊の元凶押し紙―(上)

福岡・佐賀押し紙弁護団 弁護士 江上武幸 2026年(令和8年)1月15日

※日本に「司法の独立と裁判官の独立があるか」と聞かれたら、残念ながら「それはない」と答えざるを得ません。この問題については、岡口基一(元)裁判官が近著『裁判官はなぜ葬られたか』(講談社)で、自らの体験に基づく見解を述べておられます。

 なお、司法研修所29期には最高裁長官を含め、いわゆる出世組が多数おられますので(ちなみに押し紙訴訟の読売側代理人弁護士も同期です)、故・団藤重光最高裁判事のように、司法の世界の舞台裏を日誌等に残されておかれたら、貴重な資料になると思います。

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2025年07月31日 (木曜日)

2人の元裁判官に尋ねてみた――「報告事件(ペテン裁判)は本当に存在するのか」

「報告事件」と呼ばれるペテン裁判は、果たして実在するのだろうか。そうした疑問を胸に、7月24日、東京・千代田区の連合会館で開かれたシンポジウムに参加した。この企画は、『司法が原発を止める』(旬報社)の出版に合わせて行われたものである。

「報告事件」とは、最高裁事務総局が裁判の行方を水面下でコントロールする仕組みを指す。たとえば、公権力にとって不都合なテーマが裁判の争点となった場合、最高裁事務総局は当該裁判所の書記官に審理内容を報告させる。そして、国家の意に沿わない判決が下される可能性が浮上すると、人事異動を口実に裁判官を交代させ、判決を誘導するというのだ。こうした「報告事件」の噂は、かねてから裁判所関係者の間で絶えない。

この日の登壇者は、現在は弁護士として活動する井戸謙一氏と、同じく元裁判官で原発訴訟を支援している樋口英明氏。聞き手はジャーナリストの後藤秀典氏と、反原発運動家の武藤類子氏であり、司会は本書の企画・編集を担った鹿野健一氏が務めた。

シンポジウム後半の質疑応答で、私は挙手して次のように質問した。

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2023年07月10日 (月曜日)

日本新聞協会と「押し紙」を放置する公正取引委員会の密約疑惑、1999年の謎

  日本新聞協会と公正取引委員会の「押し紙」をめぐる密約疑惑をレポートした記事の転載である。出典は、『紙の爆弾』(6月7日号)。

裁判所は、弱者にとって「駆け込み寺」なのだろうか。こんな自問を誘う判決が、「押し紙」裁判で続いている。「押し紙」裁判とは、新聞社が販売店に対して課している新聞の仕入れ部数のノルマが独禁法の新聞特殊指定に違反するとして、販売店が損害賠償を求める裁判である。今世紀に入るころから急増したが、わたしが把握している限りでは、販売店が勝訴したケースは2件しかない。しかも、この2件は、政界に対する影響力が弱い地方紙を被告とした裁判である。朝日・読売・毎日・産経・日経の中央紙を被告とした裁判では、ことごとく新聞社が勝訴している。

「あなたがたが、わたしどもを訴えても絶対に勝てないですよ」

新聞社の担当員から、面と向かって釘を刺された販売店主もいる。が、それにもかかわらず「押し紙」裁判は絶えない。その背景に、販売店主たちが裁判官を水戸黄門と勘違いしている事情がある。しかし、裁判所は弱者を救済するための存在ではない。権力構造の維持を合法化するための機関にほかならない。

◆ブラックリストの野村武範・裁判官が大阪地裁へ

去る4月20日の朝、わたしは新幹線で東京から大阪へ向かった。元販売店主の濱中勇志さんが読売新聞大阪本社に対して、約1億2400万円の支払いを求めた裁判の判決がこの日の午後に予定されていたからだ。濱中さんの販売店では、搬入される新聞の約五〇%が、俗にいう「押し紙」になっていた。

 

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2022年04月04日 (月曜日)

金竜介弁護士らが金銭請求している5億8,000万円に道理はあるのか? 892人を被告とする損害賠償裁判、弁護士大量懲戒請求事件、東京地裁も困惑か?

3月初旬、わたしは2人の弁護士が起こした損害賠償訴訟で、被告にされたAさん(男性)を取材した。この訴訟の背景には、一時期、メディアがクローズアップした一連の弁護士大量懲戒請求事件がある。現在では報道は消えてしまったが、しかし、水面下で事件は形を変えて続いている。

被告・Aさんによると、自らが被告にされた裁判では、被告の人数が892人にもなるという。Aさんは、その中の1人である。

この裁判を起こしたのは、金竜介弁護士(写真:出典=出典=台東協同法律事務所HP)と金哲敏弁護士の2名である。2人の原告の代理人は高橋済弁護士である。訴状は、2021年4月21日に東京地裁で受理された。

請求額は約5億8,000万円である。まもなく提訴から1年になるが、未だに口頭弁論が開かれていない。わたしが3月に東京地裁に問いあわせたところ、担当書記官は、「何もお答えできることはありません」とあいまいな返事をした。Aさんも、自分の答弁書を提出したが、その後、裁判所からの連絡はない。他の被告がどのような対応をしているのかも、知りようがない。

わたしは東京地裁で裁判資料の閲覧を求めたが、これも認められなかった。理由はわからない。

◆大量懲戒請求への道

事件の発端は、インターネット上のサイト「余命三年時事日記」に特定の弁護士に対して懲戒請求を働きかける記事が掲載されたことである。同ウエイブサイトからは懲戒請求のために準備した書式がダウンロードできたという。その書式に自分の住所や名前などを記入して、「まとめ人」に送付すると、集団による大量懲戒請求の段取りが整う。

高橋弁護士が作成した訴状によると、「少なくとも平成29年(2017年)11までに」は懲戒請求を働きかける記事が掲載されていたという。懲戒請求の理由は、次のとおりである。訴状から引用する。

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2021年12月20日 (月曜日)

情報公開請求の不透明な実態、最高裁事務総局が裁判官人事に関する書類の開示を拒否

情報公開制度が形骸化している。開示請求を受けた公的団体が、自分たちにとって不都合な情報は開示しない、あるいはたとえ開示しても、肝心な部分は黒塗りで公開することが半ば当たり前になってきた。

情報の透明化を求める世論が広がる一方で、情報を密室に閉じ込めてしまおうとする力も強まっている。その具体的な実態を最高裁事務総局に対する情報公開請求を例に紹介しよう。

◆「報告事件」とは何か?

2021年11月29日、筆者は最高裁事務総局から1通の通知書を受け取った。それは、筆者が同事務総局に対して開示を求めていた裁判官人事に関する文書類を開示しない決定通知だった。

今年の3月22日、筆者は次の文言の情報公開請求を申し立てた。

「裁判官の人事に関する文書の全タイトル。期間は、2018年4月から2021年2月。」

この情報公開請求の目的は、最高裁事務総局による「報告事件」についての調査である。「報告事件」というのは、最高裁事務総局が下級裁判所に対して審理内容の報告を求め、国策などにかかわる判決が下る可能性が浮上すると、担当裁判官を交代させることで、判決の方向性をコントロールする裁判を意味する。元裁判官らが、この種の制度が存在すると話しており、筆者は、その信ぴょう性を確認するために「報告事件」の調査を始めたのである。【続きはデジタル鹿砦社通信】 

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2021年11月29日 (月曜日)

最高裁長官を退任後に宮内庁参与へ、竹崎博允・元長官ら、「勤務実態」は闇の中、最高裁に関する2つの情報公開調査のレポート

石棺のような窓のない建築物。出入口に配備された警備員。

外界とは厚い壁で隔てられ、通信手段は郵便だけに限定され、メールもファックスも通じない。

最高裁判所には不可解なグレーゾーンがある。その中で何が進行しているのか──。

今年に入って、わたしは最高裁の実態を調べるための一歩を踏み出した。情報公開制度を利用して、複数の「役所」から最高裁に関連する情報を入手した。

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