1. 公取委と消費者庁が黒塗りで情報開示、「押し紙」問題に関する交渉文書、新聞社を「保護」する背景に何が?

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2022年09月17日 (土曜日)

公取委と消費者庁が黒塗りで情報開示、「押し紙」問題に関する交渉文書、新聞社を「保護」する背景に何が?

筆者は、今年の6月、公正取引委員会と消費者庁に対して、新聞の「押し紙」に関するある資料の情報公開を申し立てた。

9月になって消費者庁が資料を開示したが、肝心な記述部分を黒塗りにしていた。はからずもこうした情報公開の方法は、新聞社を延々と「保護」してきた公権力の姿勢を浮き彫りにした。背景に権力構造がすけて見える。

この資料は、公正取引委員会と日本新聞協会の間で行われた広義の「押し紙」問題に関する話し合いの記録である。

発端は1997年にさかのぼる。この年、公正取引委員会は、北國新聞社に対して「押し紙」の排除勧告を発令した。北國新聞が、販売店に対してノルマ部数を割り当てた事実を指摘して、改善を勧告したのである。

同時に公取委は、北國新聞以外にも、これと類似した手口の「押し紙」政策を実施している新聞社があるとして、日本新聞協会に対し、「本件勧告の趣旨の周知徹底を図ることを要請」した。

これに対抗して日本新聞協会は奇策にでる。結論を先に言えば、残紙の「2%ルール」を撤廃したのだ。これはどういう意味を持つのか?

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「2%ルール」というのは、新聞の搬入部数の2%を超える残紙を「押し紙」と定義する業界内の自主ルールである。2%を超える残紙は「押し紙」とみなす取り決めである。

たとえばある販売店への新聞の搬入部数が1000部とすれば、そのうちの2%にあたる20部については「予備紙」として認められる。20部を超える残紙が「押し紙」ということになる。

ちなみに「押し紙」行為は独禁法で禁止されている。

ところが日本新聞協会は、公取委による「押し紙」の取り締まりに対して、「2%ルール」を廃止したのだ。その結果、販売店の残紙は、すべて「予備紙」ということになってしまったのだ。こうして「押し紙」の概念を消してしまったのである。

搬入部数の30%が残紙になっていても、それは「押し紙」ではなく、販売店が自主的に購入した「予備紙」という解釈になった。裁判所も、それに準じた判決を下す方向性になった。佐賀新聞の「押し紙」裁判に見るような例外はあるにしても。

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公取委は「押し紙」を取り締まるために北國新聞に対して排除勧告を発令し、新聞協会に対しても、同じ趣旨の要請を行ったのだが、新聞協会がそれに対抗して「2%」ルールを外したために、かえって「押し紙」問題が深刻になったのである。

実際、その後、搬入部数の50%が「押し紙」といったケースが、当たり前に報告されるようになった。

こうした状況の下で、当然、次のような疑問が浮上した。公取委が北國新聞社に対する「押し紙」の排除勧告を出してから、新聞業界が「2%ルール」を撤廃するまでの間に、公取委と新聞協会の間でどのような交渉があったのかという疑惑である。そこでわたしは、調査を第一歩として交渉記録の情報開示を請求したのである。請求の文面は次の通りである。

「平成10年1月に公正取引委員会が下した(株)北國新聞社に対する審決の後、同年8月に新聞公正取引協議会が公正競争規約から特殊指定関連の文書を削除するまでの期間に、公取委と新聞公正取引協議会の間で行われた特殊指定に関する話し合いの全記録(規約に関連しない話し合いの部分については除く)」

交渉記録は公取委が作成したものであるが、その後、この文書は消費者庁へ移られ、そこで保存されている。だった。そこで筆者は消費者庁あてに情報公開請求を行ったのである。消費者庁は、公取委と協議して対処すると回答した。

しかし、消費者庁と公取委は、肝心の記述を黒塗りにすることで、日本新聞協会を保護する姿勢に出たのである。半世紀も続いている「押し紙」問題で、これ以上、新聞社に便宜を図る必要はないはずだが。

新聞社が権力構造の歯車であるから、こうした保護策に出たのではないか?それとも別の取り引きがあったのか?全容を解明が必要だ。新聞業界の中に、政界フィクサーがいた可能性も考慮しなくてはいけない。

次のPDFが黒塗りで開示された書面である。

■新聞特殊指定、無題紙の取り扱いについて

今後、筆者は消費者庁に対して不服を申し立てる

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