USAID傘下の全米民主主義基金(NED)が、3月5日、行政機関と政府高官を相手に提訴、「予算を違法に保留している」
USAIDとCIAの傘下にあるNED(全米民主主義基金)は、3月5日、米国議会が同基金に割り当てた予算が違法に保留されているとして、3月5日、行政機関と政府高官を相手に、米国連邦地方裁判所に裁判を提起した。ピーター・ロスカム会長によると、NEDの予算は、事前通告なしに凍結されたという。
ENDは、USAIDから資金提供を受け、CIAからは戦略上のノウハウを受けてきた。表向きは、他国の民主化を支援することを活動の柱としているが、実態としては、米国に敵対する国や地域の市民運動やメディアをてこ入れして、親米世論を拡散し、社会を混乱させたうえで、最後にクーデターなどの手段で「反米政権」の転覆をはかることをゴールとしている。
USAIDの活動分野は多岐にわたるが、世論誘導の役割を担っているのがNEDなのである。NEDの活動により混乱を招いた典型的な例としては、香港の「雨傘運動」がある。NEDから資金援助を受けてきたとされる日本の一部のマスコミも、周 庭 ( しゅう てい 、Agnes Chow Ting)を「民主主義の女神」として称え、NEDの方針に追随した。
ラテンアメリカの中でキューバ政府と最も親密な関係にあるニカラグアとベネズエラに対しても、NEDは侵入して、「民主化」の旗を掲げ、大混乱を引き起こした。しかし、ニカラグアでもベネズエラでも、クーデターは失敗した。
NEDの今後については、存続されるのではないかとする見方もある。筆者も存続の可能性が高いとみている。その意味でも、裁判の行方が注目される。
2024年06月07日 (金曜日)
国境なき記者団の「報道の自由度ランキング」のでたらめ、スポンサーは米国政府系の基金NED
『週刊金曜日』(6月7日付け)が、「報道の自由度、世界ランキング70位でいいのか」と題する記事を掲載している。国境なき記者団が5月に発表した報道の自由度ランキングを評論した内容である。
筆者は、元朝日新聞記者の柴山哲也氏。日本のランキングが低迷していることを嘆き、その背景として記者クラブが内包する問題にも言及している。
この記事は、議論の前提そのものが間違っている。報道の自由度ランキングの主催者である国境なき記者団がどのような性質の団体なのかを踏まえることなく、ランキングの結果を過信して評論しているのだ。議論の前提に誤りがある。
台湾の蔡英文総統と全米民主主義基金(NED)のずぶずぶの関係、巧みな「反中世論」の形成戦略
米国の外交政策を考えるときに、欠くことができない視点がある。それは全米民主主義基金(NED = National Endowment for Democracy)による世論形成のための工作である。
NEDは1983年に当時のロナルド・レーガン米国大統領が設立した基金で、ウエブサイトによると、「海外の民主主義を促進する」ことを目的としている。言葉を替えると、米国流の価値観で他国の人々を染め上げ、親米政権を誕生させることを目的に設立された基金である。そのための助成金を、外国のNGO、市民団体、それにメディアなどに提供してきた。「第2のCIA」とも言われている。
NEDの活動の範囲は広く、毎年100カ国を超える国と地域のさまざまな組織に対して、2,000件を超える助成金を拠出している。NEDの財源は米国の国家予算から支出されるので、助成金の支出先、支出額、支出の目的は年次報告書で公開されている。従って年次報告書を見れば助成金の中身が判明する。(ただし、支出先の団体名までは追跡できない。)
2021年11月18日付けのキューバのプレンサ・ラティナ紙は、NEDによる助成金の特徴について、次のように述べている。
「米国民主主義基金(NED)が2021年2月23日に発表した昨年のキューバ向けプログラムに対して割り当てられた資金についての報告書によると、42のプロジェクトのうち、20がメディアやジャーナリストの活動に関連するものだった。割り当て額は、200万ドルを超えている」
NEDが採用したのは、キューバの左派政権を転覆させるための世論形成にメディアを動員する戦略だった。メディア向けのプロジェクトが全体の半数近くに及ぶ事実は、親米世論の形成が米国の外交戦略に組み込まれていることを示している。実は、この傾向は他の地域におけるNEDの活動でも変わらない。
台湾はNEDの活動が最も活発な自治体のひとつである。今年の1月に行われた総統選挙に焦点を合わせ、NEDと台湾政府の間でさまざまな工作が行われた。この点に言及する前に、助成金の支出先と金額をいくつか紹介しておこう。