1. 評論

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2021年01月10日 (日曜日)

米国の混乱で露呈したトランプ政権による内政干渉の本質と戦略、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアにおける「不正選挙」キャンペーン、香港の「市民運動」に対するテコ入れ

トランプ大統領の支持者らが米国の議会党に乱入して、4人が死亡した。この事件は、はからずもベネズエラ、ボリビア、ニカラグア、それに中国に対するトランプ政権の敵対戦略の手口を露呈した。

その意味では、単に米国政治を考える機会というだけではなく、米国の対外戦略(策略)を考える格好の機会を与えてくれる。とりわけ日本のメディアは、ラテンアメリカの政情をほとんど報じないうえに、報じても不正確な情報しか提供しないので、トランプ政権による他国に対する内政干渉の手口を考える糸口になる。

米国の第3世界に対する戦略は、かつては海外派兵を柱としたが、現在は、他国の市民運動を資金面でテコ入れすることで、政治的な混乱を誘発し、「反米政権」の転覆を企てる戦略へ変わりつつあるのだ。現在の米国の「市民運動」をみるとそれが輪郭を現す。

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2020年05月12日 (火曜日)

NIE(Newspaper in Educationの間違いについて、子供の頭に慣用句を詰め込む弊害、教材に「押し紙」の可能性も

NIE(Newspaper in Education)をご存じだろうか。これは簡単に言えば、教育活動の中で新聞を教材として使う運動である。日本新聞協会が中心になって実施しているプログラムである。同協会のウェブサイトは、NIEを次のように説明している。若干長いが全文を引用してみよう。

NIE(Newspaper in Education=「エヌ・アイ・イー」と読みます)は、学校などで新聞を教材として活用することです。1930年代にアメリカで始まり、日本では85年、静岡で開かれた新聞大会で提唱されました。その後、教育界と新聞界が協力し、社会性豊かな青少年の育成や活字文化と民主主義社会の発展などを目的に掲げて、全国で展開しています。

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2020年02月19日 (水曜日)

神戸大学病院の岩田健太郎医師が、ダイヤモンド・プリンセス号の感染対策失敗を告発

岩田健太郎教授(神戸大学医学部附属病院・感染症内科診療科長)が、ダイヤモンド・プリンセス号に入り、そのずさんな感染対策をユーチューブで告発した。救援を目的としてさまざまなルートを模索した後、実現した計画だったが、最終的に何者かによって追い出されてしまったという。ユーチューブ番組のリードは次の通りである。

ダイヤモンド・プリンセスに入りましたが、何者かによって1日で追い出されました。感染対策は悲惨な状態で、アフリカのそれより悪く、感染対策のプロは意思決定に全く参与できず、素人の厚労省官僚が意思決定をしています。船内から感染者が大量に発生するのは当然です。すぐに船内のみなさんを(医療者たちを含めて)助けてあげねばなりません。

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2019年03月22日 (金曜日)

そもそもダビンチ手術の専門医がなぜ未経験の小線源治療? 滋賀医科大病院・泌尿器科の成田充弘准教授をめぐる事件、毎日放送がドキュメンタリーを放送、

滋賀医科大医学部付属病院で発覚した(小線源治療の)〝素人〝医師による小線源治療未遂事件を大阪毎日放送がドキュメンタリーに構成して、21日に放送した。タイトルは、「治療が受けられない?専門医師いるのに病院が治療認めない理由」。次のURLでアクセスできる。

https://www.mbs.jp/voice/

この事件は前立腺がんのダビンチ手術の専門医・成田充弘准教授が、みずからは全く経験のない治療法・小線源治療の手術を企てた事件。成田准教授は、本来であれば小線源治療の専門医・岡本圭生医師が担当すべき患者23人を「横取り」。彼らに対して小線源治療を断行しようとした。幸いに「手術訓練」まがいの手術は、岡本医師により阻止された。

成田准教授の経歴を調べたところ、やはり小線源治療の経験がない。下記のURLを参照:

滋賀医科大学・泌尿器科学講座スタッフ

 

 

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2019年01月11日 (金曜日)

滋賀医科大学病院の医療書類の改ざん問題、背景に大学病院の闇

滋賀医科大学病院で、一部の患者の同意を得ないままQOL調査(闘病生活の質に関するアンケート調査で、それにより治療の評価などを行う)が行われていたことが問題になっている。調査件数は総計で約800件。しかも、一部の回答については改ざんや、「代筆」の疑惑も浮上している。何が目的で、こうした違法な医療行為が行われたのだろうか。背景をたどっていくと大学病院の闇が見えてくる。

 

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2018年12月10日 (月曜日)

滋賀医大病院、前立腺がんの小線源治療をめぐり浮上してきた医療の深い「闇」、『紙の爆弾』が報じる

滋賀医科大学で前立腺がんの患者らを巻き込んだ医療事件が起きている。

この事件を筆者が知ったのは数ヶ月前で、数人のライターが取材していることも聞いていた。7日発売の『紙の爆弾』で、ジャーナリストの山口正紀氏が、事件を詳しく報告している。タイトルは、「滋賀医大病院 前立腺がん『小線源講座』廃止工作」、副題は「がん患者の命綱を断ち切る暴挙」。

前立腺がんは、男性が発症するがんで、60歳ごろから増え始める。胃がん、大腸がん、肺がんと同様に、発症率の高いがんのひとつである。その最先端治療のひとつに、滋賀医科大学の岡本圭生特認教授が開発した「小線源治療」がある。

山口氏のレポートによると、これは米国マウントサイナイ医科大学のネルソン・ストーン教授が開発したものである。岡本医師はそれを習得して、さらに改良を加え、「岡本メソッド」と命名した。

「岡本メソッド」では、非再発率(5年根治率)は高リスク症例でも96・3%で、治療成績が他の療法(30%~50%)に比べて卓越している。

岡本医師は、滋賀医大の小線源治療外来で、2015年から「岡本メソッド」による治療を始めた。評判はたちまち広がり、全国各地から患者たちが殺到した。治療件数は1000件を超えている。滋賀医大は、前立腺がん患者の「駆け込み寺」となったのだ。

当然、滋賀医大病院も、当初は岡本メソッドを病院の看板として支援していたのである。

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2018年08月28日 (火曜日)

ツイッターの言語を考える、軽薄な言葉の吐き捨てから、丸山健二氏のツィートまで

舌たらずな言葉づかいをする人が増えている。

読者は、「ウヨ弁」という言葉をご存じだろうか?筆者がこの言葉を知ったのは昨夜だ。経緯はツイッターで市民運動と住民運動の違いに言及したことである。次の投稿である。

数年前、尊敬する弁護士からこんなふうに質問された。「黒薮さん、住民運動と市民運動の違いが分かりますか?」。当時は分からなかった。住民運動は住民の実生活に根ざした運動で、市民運動は「賛同する人は結集を」と呼びかける無責任な運動。実際、内ゲバなどとんでもない事件を起こしている。

もう少し詳しくいえば、住民運動は住民が自分たちの生きる権利を求めて戦う運動である。たとえば水俣病を原点とする運動。広義に解釈すれば、中米のグアテマラやエルサルバドルで、軍事政権のテロから村や家族を守るために武装ほう起した人々の運動である。

これに対して市民運動というのは、特定の目標をかかげて、それに賛同する人を募り、運動を展開するものである。たとえば化学物質のリスクを知らせることを目的に全国各地から市民が結集するようなケースである。

両者の境界線は重複する部分もあるが、根本的な性質は異なっている。

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2015年06月11日 (木曜日)

メディアと公権力の一体化は国際的な傾向、信用できない国境なき記者団の報道の自由度ランキング

国境なき記者団が発表した2015年度の「世界報道自由度ランキング」で、日本は61位だった。

鳩山政権の時代には、11位になったこともある。

が、このランキングはまったく信用できない。第一、報道の自由という抽象的なものを序列化すること自体がナンセンスだ。ランキングを受け止める側には、「国境なき記者団=真のジャーナリズム」という先入観と幻想があり、序列化の愚に気づかない。

もちろん個々の記者やジャーナリストの中には、真摯に報道の役割を果たしている人も少なくない。しかし、メディア企業としての在り方には、国境を越えて克服しなければならない問題がある。

それは権力の中枢になっている人々の「広報部」の役割を引き受けているメディア企業が大半を占めている事実である。政府を筆頭とする公権力と情交関係を保ちながら、ニュースを制作する姿勢が慣行化しているのだ。

日本のマスコミだけが「×」で、海外は「○」という考えは間違っている。

中国のマスコミが、旅客船の転覆事故の際、政府に配慮して、遺族の不満を報じなかったらしいことは、日本のメディアが伝えた。それが事実であれば、中国における報道統制は、日本よりもよほど深刻だ。

中米ニカラグアで1970年代に革命戦争に参加したオマル・カベサスの手記、『山は果てしなき緑の草原ではなく』(現代企画室)には、当時のニカラグアのメディアについて、次のような記述がある。

ラジオというラジオは襲撃のことを報道し、国中が生々しい写真報道や情報の展開に釘付けになった。俺たち自身、現実とかけ離れた虚像を作り出す報道の影響の大きさに驚いた。

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2015年04月01日 (水曜日)

早河洋会長らテレビ朝日の幹部、安倍首相と官邸などで会食を繰り返していた、古賀氏の見解は「右からの安倍批判」

テレビ朝日の「報道ステーション」で、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が安倍政権を批判するなどの「騒動」が起きたことに対して、テレビ朝日の早河洋会長が謝罪したことが報じられている。早河氏は、古賀氏の降板に関しても、「官邸からの圧力めいたものは一切ない」と弁解したという。

メディア企業と安倍内閣の癒着といえば、本ウェブサイトでも報じたように、『ZAITEN』(4月号)が、「安倍首相とメシを食うモラル無きマスコミ人たち」と題する記事で、その実態を暴露している。同記事は、2013年1月から2015年2月までの間に、安倍首相と会食したメディア関係者のリストを掲載している。

それによるとテレビ朝日の関係者は、安倍首相と3回、会食している。詳細は次の通りである。

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2015年03月24日 (火曜日)

遁走・負傷、救助されて、「安心して号泣してしまいました」、チュニジアのテロに巻き込まれた結城法子・陸上自衛隊3等陸佐(少佐)の手記、自衛隊の海外派兵に「暗雲」

23日付けの産経新聞(電子)が、「結城さんが手記 朝日記者の怒声に『ショック…』 国際報道部長が謝罪『重く受け止めおわびします』」と題する記事を掲載した。

これはチュニジアでテロに巻き込まれた自衛隊員・結城教子氏が、公表した手記の中で、病院に同氏を取材に訪れた朝日新聞記者を日本大使館員が制したところ、「取材をさせてください。あなたに断る権利はない」と怒鳴ったというもの。

チュニジアの博物館襲撃テロで負傷し、首都チュニスのシャルル・ニコル病院に入院中で陸上自衛隊3等陸佐の結城法子さん(35)=東京都豊島区=は20日、共同通信など一部メディアに手記を寄せ、「現実のこととは思えませんでした」と事件当時の恐怖を振り返った。

 また、結城さんは手記で、朝日新聞記者と日本大使館員の取材をめぐるやりとりについて「『取材をさせてください。あなたに断る権利はない』と日本語で怒鳴っている声が聞こえ、ショックでした」と記した。

 これを受け、朝日新聞の石合力・国際報道部長は朝日新聞デジタルのホームページ(HP)に「取材の経緯、説明します」と題した見解を掲載し、「記者には大声を出したつもりはありませんでしたが、手記で記されていることを重く受け止め、結城さんにおわびします」と謝罪した。

◇産経新聞の編集者が考えるニュース価値は?

この記事を読んだとき、わたしは産経新聞の編集者が考えるニュース価値とは何かを考えた。不当に取材を制限されて抗議したことに、どのようなニュース価値があるのか、わたしにはさっぱり分からない。

大半の記者が取る態度ではないだろうか。取材を妨害されて、引き下がるのはどうかと思う。それが産経の方針らしいが。

むしろ結城氏が巻き込まれたテロ事件でニュース価値があるとすれば、ベテランの自衛隊員であっても、戦闘になれば、冷静に対処できず、遁走した事実である。負傷者の側に入った事実である。これは今後、自衛隊の海外での軍事活動を考える上で参考になるのでは。

結城・陸上自衛隊3等陸佐は、手記で次のように述べている。

銃を持った警察が助けに来てくれた時には安心して号泣してしまいました。母を助けるようにお願いしましたが、歩ける人が先と言われ、私は母と別れ救急車へ連れていかれました。

実際の戦闘と演習では、まったく状況が異なる。それは型の練習ばかりを繰り返している空手家が、実践になれば、まったく通用しない原理と同じである。「安心して号泣」するようでは、戦闘には参加しないほうがいい。

自衛隊のベテランでも、戦闘になれば恐怖を感じる証。日本人は戦闘にはむかない。

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2015年03月11日 (水曜日)

文部科学省が「大学の世界展開力強化事業」の中間評価を発表、進む大学の淘汰と少数精鋭の人材育成

文部科学省は、3月10日に、「大学の世界展開力強化事業」(平成24年度採択分)の14のプロジェクトについて、中間評価結果を決定した。このプロジェクトは、

「国際的に活躍できるグローバル人材の育成と大学教育のグローバル展開力の強化を目指し、高等教育の質の保証を図りながら、日本人学生の海外留学と外国人学生の戦略的受入を行うアジア・米国・欧州等の大学との国際教育連携の取組を支援することを目的」

と、したものである。

この事業を推進しているのは、文部科学省の下に設置された「大学の世界展開力強化事業プログラム委員会」である。委員は、2014年7月の時点で、14人。この中には、電気メーカーや経団連の関係者も名を連ねている。

大学に対して参加を募り、審査を経て参加が認められると、1プロジェクトにつき年間6千万円(5年)の補助金が支給される。

今回、中間評価の対象になったのは、2012年に参加が認められた15の大学による14のプロジェクトである。詳細は次の通り。

 中間評価PDF

この年に参加を申し込んだ大学は、62校、71プロジェクト。採用されたのが15校14プロジェクトであるから、大半の大学は審査の段階で門前払いされたことになる。

審査に合格して実際に補助金を受け、プロジェクトに着手したのは、東京大学、早稲田大学、慶応大学といった超エリート校ばかりである。

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2015年03月10日 (火曜日)

経済同友会が人材育成に重点を置いた高等教育の改革を提言、目的に合致しない学校は補助金カットで切り捨て

歴代内閣の政策の方向性は、経済同友会や経団連が発表する提言を色濃く反映する傾向がある。それは教育に関する政策にまで及んでいる。国境なき競争の時代に突入した状況の下で、人材の育成が多国籍企業の将来を左右する鍵になるからだ。

2月27日、経済同友会は、『「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」に対する意見~新たな高等教育機関には高い質を求める~』と、題する提言を発表した。

◇目的に合致しない学校は廃校へ

経済同友会が要望する教育制度の改革とは、具体的にどのようなものなのだろうか。結論を先に言えば、高等教育を通じて、企業にとって即戦力になるエリートを育成し、その目的を達成できない学校については、補助金をカットすることで、廃校に追い込むというドラスチックなものである。

こうした提言が打ち出された背景には、「社会教育の機会が減少している」にもかかわらず、「専門技能を要する職種への求人倍率が高まっている」ことがある。それゆえに「学術的な一般教養を中心とする教育よりも、専門的な実務技能の習得が意味を持っている」からだという。

つまり大学や専門学校など、高等教育の場を、企業のための人材づくりの場に変えてしまえという提言である。

その具体的な方法は、既に述べたように目標の成果度合いに応じた補助金の分配である。そこでは、次に示すように成果があがらない教育機関の切り捨てが前提になっている。

「また、退出メカニズムの関連では、まず成果と関連する指標(就職状況や資格取得状況など)の詳細な公開を義務付け、さらにはその成果に応じた補助金の支出を実施する。さらには、成果に連動した廃止基準と廃止方法を明確化することによって新陳代謝を促し、質の高い高等教育機関を後押しする仕組みを組み込むべきである。また、それと同時に、廃止する学校に所属する学生を保護する制度の整備が不可欠である」

経済同友会の提言は、構造改革=新自由主義の政策から派生する副次的な「改革」のひとつである。広義の構造改革に属する。

企業のために即戦力になる少数のエリートを育成する一方で、その目的に合致しない教育機関を切り捨てる。それは国の財政支出を抑え、「小さな政府」を作る構造改革=新自由主義の方向性とも完全に合致している。

しかし、そもそも企業に貢献する人材を育成することが教育本来の目的なのだろうか。もしそうであれば、学校の自治権が崩壊しかねない。経済活動に直接貢献しない分野は、切り捨てられることになる。

教育の本来の目的は、文化的な遺産を後世へ継承することである。

 ■経済同友会の提言全文PDF

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2014年12月01日 (月曜日)

トヨタから自民党へ6000万円の献金、トヨタが販売する「水素自動車」1台につき200万円から300万円の補助金

安倍内閣の下では、政治献金により政策を取り決める暗黙の了解があるようだ。

まず、テレビ朝日の次の報道(2014年8月7日)に注目してほしい。

 次世代のエコカーとして注目されている燃料電池車について、政府は、購入した場合に最大300万円の補助金を支給する方針を固めました。

  燃料電池車は走行中に水しか出さず、究極のエコカーと呼ばれています。トヨタが今年度中に一般向けに販売するほか、ホンダや日産なども販売を計画しています。価格が1台700万円程度とガソリン車よりも割高なため、政府は販売に合わせて、1台につき200万円から300万円の補助金を出し、世界に先駆けて普及させる方針です。電気自動車の購入補助金などとともに、来年度予算の概算要求にも盛り込まれる見通しです。

燃料電池車は「水素で走る車」である。引用文には、具体的に水素自動車を販売する会社としてトヨタの名前があがっている。

そのトヨタグループから、自民党の政治資金団体・国民政治協会に対する政治献金(最新の2013年度分)を調べたところ、7000万円を超える額が支出されていることが分かった。

このうちの大半は、トヨタ自動車からのもので、6440万円。

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