1. 神戸大学病院の岩田健太郎医師が、ダイヤモンド・プリンセス号の感染対策失敗を告発

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2020年02月19日 (水曜日)

神戸大学病院の岩田健太郎医師が、ダイヤモンド・プリンセス号の感染対策失敗を告発

岩田健太郎教授(神戸大学医学部附属病院・感染症内科診療科長)が、ダイヤモンド・プリンセス号に入り、そのずさんな感染対策をユーチューブで告発した。救援を目的としてさまざまなルートを模索した後、実現した計画だったが、最終的に何者かによって追い出されてしまったという。ユーチューブ番組のリードは次の通りである。

ダイヤモンド・プリンセスに入りましたが、何者かによって1日で追い出されました。感染対策は悲惨な状態で、アフリカのそれより悪く、感染対策のプロは意思決定に全く参与できず、素人の厚労省官僚が意思決定をしています。船内から感染者が大量に発生するのは当然です。すぐに船内のみなさんを(医療者たちを含めて)助けてあげねばなりません。

《 岩田健太郎》島根県生まれ。島根医科大学卒業。沖縄県立中部病院、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院などで研修後、米国、中国で医師として勤務。2004年から亀田総合病院で感染症内科部長、総合診療感染症科部長、08年より神戸大学大学院医学研究科教授(微生物感染症学講座感染治療学分野)、同大学医学部附属病院感染症内科診療科長。著書多数。

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この告発にわたしは、2つの点で感銘を受けた。まず、ダイヤモンド・プリンセス号の内部の様子がリアルに報告された点である。マスコミ報道だけでは見えない部分が詳細に語られている。そこから政府の感染対策が失敗であった事実と、その原因が見えてくる。

もうひとつわたしが着目したのは、実績のある著名な医師が内部告発に踏み切った事実である。わたしは、滋賀医科大病院の事件を取材する中で、小線源治療のパイオニア・岡本圭生医師による内部告発に感銘を受けた。岡本医師は、患者をモルモットにしようとした医師らと、それを擁護する塩田学長を中心とする勢力と全面対決し、大学病院を追放されたのである。

医師の世界は閉鎖的な領域が広く、ひとりの医師が権威ある「同業者」を正面から批判することはこれまでほとんどなかった。一種の自殺行為である。ところが、岡本医師に続いて、岩田医師も内部告発に踏み切ったのである。(告発されたのは、厚労省の医系技官。)

このような現象は偶然のように見えるかも知れないが、わたしは、その背景に社会が進化する際の力学の原理が働いているのだと思う。生物が進化の法則に支配されているように、社会もやはり進化の法則に支配されているのだ。前者を発見したのはダーウィンで、後者を発見したのはマルクスとエンゲルスである。

新自由主義による競争原理の導入は負の側面がある一方で、権威主義よりも実績を重視せざるを得ない状況を生み出す。権威はあるが中身が空っぽの面々を追放しない限り、日本の医療が崩壊するという危機感が水面下で広がり、こうした状況の中から、岩田教授のような人が現れたのではないか。

わたしは、今後もこの種の内部告発が増えていくと予測している。