1. 滋賀医大病院、前立腺がんの小線源治療をめぐり浮上してきた医療の深い「闇」、『紙の爆弾』が報じる

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2018年12月10日 (月曜日)

滋賀医大病院、前立腺がんの小線源治療をめぐり浮上してきた医療の深い「闇」、『紙の爆弾』が報じる

滋賀医科大学で前立腺がんの患者らを巻き込んだ医療事件が起きている。

この事件を筆者が知ったのは数ヶ月前で、数人のライターが取材していることも聞いていた。7日発売の『紙の爆弾』で、ジャーナリストの山口正紀氏が、事件を詳しく報告している。タイトルは、「滋賀医大病院 前立腺がん『小線源講座』廃止工作」、副題は「がん患者の命綱を断ち切る暴挙」。

前立腺がんは、男性が発症するがんで、60歳ごろから増え始める。胃がん、大腸がん、肺がんと同様に、発症率の高いがんのひとつである。その最先端治療のひとつに、滋賀医科大学の岡本圭生特認教授が開発した「小線源治療」がある。

山口氏のレポートによると、これは米国マウントサイナイ医科大学のネルソン・ストーン教授が開発したものである。岡本医師はそれを習得して、さらに改良を加え、「岡本メソッド」と命名した。

「岡本メソッド」では、非再発率(5年根治率)は高リスク症例でも96・3%で、治療成績が他の療法(30%~50%)に比べて卓越している。

岡本医師は、滋賀医大の小線源治療外来で、2015年から「岡本メソッド」による治療を始めた。評判はたちまち広がり、全国各地から患者たちが殺到した。治療件数は1000件を超えている。滋賀医大は、前立腺がん患者の「駆け込み寺」となったのだ。

当然、滋賀医大病院も、当初は岡本メソッドを病院の看板として支援していたのである。

◇重大な医療事故の寸前

が、岡本医師とは所属が異なる泌尿器科の河内明宏教授らのグループが奇妙な動きをはじめる。派閥争いなのかも知れないが、現時点では真相は分からない。

なぜか「岡本メソッド」を希望して来院した患者の一部を、岡本医師の小線源治療外来ではなく、河内医師の泌尿器科へ送り込むようになったのだ。ところが河内医師には、「岡本メソッド」の経験が十分ではない。そこで患者が「岡本メソッド」を希望すると、自分の未経験を隠したまま治療計画を立てる。こうして泌尿器科で小線源治療を受ける予定に組み込まれた患者は23名にもなった。

岡本医師は、危険きわまりない泌尿器科の方針に対して行動を起こした。医大の学長に、未経験者が「岡本メソッド」を使う危険性を強く進言したのだ。その甲斐があって、泌尿器科に送られた23人が直接小線源治療の医療事故にあう最悪の事態だけは回避できたが、インフォームドコンセントが十分ではなかったために希望する治療を受けることができなかった。

◇提起された2つの裁判

不幸中の幸いで、自分の意思に反して泌尿器科へ送られた患者は、岡本医師が治療を引き継ぐことになった。

しかし、問題はこれで落着したわけではなかった。泌尿器科の責任を明らかにする過程で、岡本医師と院長の関係が悪化したのだ。そして2017年11月に病院側は暴挙にでる。同年の12月末で小線源講座を打ち切ることを告知したのである。

この時点で既に2018年度の治療予約が入っていたので、大混乱になった。病院はやむなく打ち切りの期限を2019年末まで延期した。しかし、小線源講座の打ち切り方針はそのままだった。

この事件では、4人の患者が河内明宏教授らを提訴している。十分なインフォームドコンセントが行われておらず、「治療方法を自己決定する権利が侵害され、精神的苦痛を被った」とする内容である。

病院はウェブサイトに、「岡本医師は成田準教授を指導する立場にあり、協働して準備してきたにもかかわらず、直前に協力を拒んだ」とする見解をだした。これに対して岡本医師は、11月16日に、この見解は事実に反するとして、削除を求める仮処分を申し立てた。

この事件では、900名を超える人々が患者会を結成している。今後の展開が注目される。