2013年04月29日 (月曜日)

書評、高橋哲哉著『犠牲のシステム 福島・沖縄』  犠牲の上に成り立つ国家の実態

高橋哲哉著『犠牲のシステム 福島・沖縄』(集英社新書)は、日本における経済成長や安全保障が、一部の国民を犠牲にすることで成り立っている構図を描いている。具体例として高橋氏が取り上げているのは、福島第1原発と沖縄の米軍基地問題である。

前者について言えば、東京電力が首都圏から遠く離れた過疎地に原発を設置した結果、都市部の人々がその恩恵を受け、地元の人々が放射能による汚染に苦しめられることになった実態を告発している。後者については、沖縄に米軍基地を押し付けることで、安全保障体制を維持している実態を批判している。 沖縄が日本の半植民地という観点である。

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2013年04月25日 (木曜日)

政府関連の広報予算は450億円 シンポジウムの共催+広告+記事のパターン

政府による広報活動の予算はどの程度の規模なのだろうか。『日経広告研究報(2010年8,9月号)』にこれに関するレポートが掲載されている。記事の執筆者は日経広告研究所研究部長の篠田真宏氏である。

政府の広報活動は、「各省庁が独自に実施するものと、内閣府政府広報室が窓口となり各省庁の希望を募って政府全体の立場から国民に周知徹底すべきものを選びマスメディアなどに流すもの、の2つに分かれる」という。

同氏の調査では、09年度予算ベースで各省庁の広報予算は総額で350億円程度である。また、内閣府による広報予算は、90億円。つまり政府関係の広報予算は、年間で総額450億円にもなる。

公共広告の中には、地方自治体が出稿するものもかなり含まれているので、マスコミ企業が「役所」から受けている広告費は際限もなく多い。

ただし、内閣府による広報予算に関して言えば、2009年の秋、政権に就いた民主党が事業仕訳を実施して、予算規模を50億円前後に減額した。

媒体別の割り当て比率は、2009年度の場合、次のようになっている。

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2013年04月24日 (水曜日)

安倍首相は「押し紙」問題を把握している 新聞ジャーナリズム衰退の背景に構造的な問題

国会答弁で安部首相(当時、官房長官)が「押し紙」(偽装部数)問題に言及した時の議事録が公正取引委員会のサイトに掲載されていることが分かった。2006年3月24日、第164回国会の参議院予算委員会における末松信介議員(自由民主党)の質問に対する答弁である。

次のリンク先(末尾に近い位置にある「□国務大臣(安倍晋三君)」の箇所)である。

(「押し紙」に言及した国会議事録=ここをクリック)

ただいま委員が御指摘になった前段の部分なんですが、例えば、いわゆる販売店は、実態としては、一か月間無料で配るので取りあえず見てもらいたいとか、三年、四年購読するということをしていただければ一か月、二か月無料にするということを実態としてやっているのも間違いのない事実でありまして、私の秘書のところにもある新聞社が一か月間、二か月間ただで取ってもらいたいと、こういうことを言ってきたわけでありまして、私の秘書が取るわけのない新聞社が言ってきたわけでありまして、当然断ったそうであるわけでありますが。

 また、いわゆる押し紙も禁止されているのに、いわゆる押し紙的な行為が横行しているのではないかと言う人もいるわけでありまして、実態としてはそういうところもしっかりとちゃんとこれ見ていく必要もあるんだろうと、こう思うわけでありまして、

この議事録を読めば、安部首相はいうまでもなく、自民党議員が新聞社の弱点がどこにあるかを把握していることが推測できる。政府は警察庁や公取委と連携して、新聞社が公称部数を偽って広告料金を騙して取っている問題を刑事事件にすることもできる。

しかし、実際は放置している。なぜ、放置するのだろうか?新聞社が「メディアへの権力の介入は許さない!」と騒ぐからではない。

メディアの決定的な弱点を握った上で、政府広告をどんどん出稿してやれば、新聞ジャーナリズムを骨抜きにできるからだ。骨抜きにした上で、巨大部数を利用した世論誘導に利用できるからだ。

日本の新聞ジャーナリズムが機能不全に陥っている最大の原因は、記者の職能が劣っているからではない。偽装部数という構造的な問題があるのだ。この点をタブー視して新聞を批判してもまったく問題の解決にはならない。

 

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2013年04月22日 (月曜日)

反TPPで大学教員が870筆の署名、日刊紙は記者会見に参加するも一切報道せず

東京大学の醍醐聡名誉教授が『ジャーナリスト』(日本ジャーナリスト会議発行)の4月号に、「反TPPで870余名の大学教員が結集」と題する報告を掲載している。重要な内容なので、紹介しよう。

3月15日に安部首相がTPP交渉参加を表明したのに対抗して大学教員17名が、「TPP参加交渉から即時脱退を求める大学教員の会」を発足させ、署名活動を開始した。最初は100名の賛同者を集めることを目標としていたが、またまたく間に870筆が集まった。このうちの約400筆には、メッセージが添えられていた。

4月10日、記者会見を開き、印刷した署名とメッセージを報道各社に配布した。次に引用するのが、メッセージの一部である。

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2013年04月19日 (金曜日)

政府広告の出稿形態、4日連続の広告で読売に6200万円

政府広告(内閣府)はどのような形式で出稿されているのだろうか。昨年末に内閣府から入手した内部資料を解析したところ、幾つかのことが分かってきた。

ここでは、政府広告を中央紙から地方紙まで全国の新聞に4日連続で掲載した例を紹介しよう。  まず、最初に示すのは、2010年12月における読売新聞(渡邉恒雄主筆)の例である。広告名と内閣府が支出した金額を示した。

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2013年04月18日 (木曜日)

自民党は偽装部数問題を把握しているはず 汚点を逆手に取るメディアコントロール

自民党は、「押し紙」問題を把握している可能性が高い。その根拠になるのが自民党新聞販売懇話会の存在である。この団体は新聞業界の陳情窓口になってきた経緯があり、日販協(日本新聞販売協会)と極めて親密な関係にある。

一部の議員は日販協の政治連盟から献金を受けている。たとえば高市早苗政調会長は2011年度と2010年度に総額で120万円の政治献金を受けた。

日販協は1990年代の初頭までは、熱心に「残紙」問題に取り組んできた。会員が全国の新聞販売店主である関係上、この問題を避けて通れない事情があった。

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2013年04月05日 (金曜日)

司法制度改革がもたらした高額訴訟の波、人権派の看板で「訴訟ビジネス」も

小泉構造改革の一環である司法制度改革の中で浮上したのは、裁判の迅速化により冤罪を生みかねない裁判員制度の導入だけではない。高額訴訟も意図的に導入された。

名誉毀損裁判の賠償請求額や賠償額が高額化していることは周知の事実である。たとえば最近では、ユニクロが文春に請求した2億2000万円の訴訟、レコード会社31社が作曲家・穂口雄介氏に請求した2億3000万円の訴訟などが起きている。その他、武富士、オリコン、読売といった企業が個人に対して5000万円、1億円といった規模の高額訴訟を起こしてきた。

わたしの場合は、読売(渡邊恒雄主筆)から総額で約8000万円を請求された。

このような実態になった原因は、新自由主義=構造改革から生まれてきた司法制度改革だった。

2001年6月に発表された司法制度改革審議会意見書にも、賠償額の高額化の必要性を述べた記述がある。

損害賠償の額の認定については、全体的に見れば低額に過ぎるとの批判があることから、必要な制度上の検討を行うとともに、過去のいわゆる相場にとらわれることなく、引き続き事案に即した認定の在り方が望まれる(なお、この点に関連し、新民事訴訟法において、損害額を立証することが極めて困難であるときには、裁判所の裁量により相当な損害額を認定することができるとして、当事者の立証負担の軽減を図ったところである。)。

 ところで、米国など一部の国においては、特に悪性の強い行為をした加害者に対しては、将来における同様の行為を抑止する趣旨で、被害者の損害の補てんを超える賠償金の支払を命ずることができるとする懲罰的損害賠償制度を認めている。しかしながら、懲罰的損害賠償制度については、民事責任と刑事責任を峻別する我が国の法体系と適合しない等の指摘もあることから、将来の課題として引き続き検討すべきである。

このような流れの中で、公明党の漆原良夫議員が国会で次のような発言をするに至った。

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2013年04月02日 (火曜日)

密室で争点整理、素人の主観で死刑判決も、裁判員を断れば罰金も、裁判員制度の恐怖、

司法の劣化の象徴が裁判員制度の導入である。この制度は、冤罪を生みかねない恐ろしい制度である。

2007年に内閣府が発表した「裁判員制度に関する特別世論調査」によると、「あまり参加したくないが,義務であるなら参加せざるをえない」と回答した人が44・5%、「義務であっても参加したくない」が33・6%だった。つまり裁判員制度を歓迎しない人が約8割にも達してるのである。と、なれば導入を目指している政府や最高裁は、裁判員制度をPRしなければならない。こうした状況の中で新聞が世論誘導の装置と化したのである。

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2013年04月01日 (月曜日)

著作権裁判の勝訴4周年 弁護士懲戒請求はいまだに決定待ち

3月30日は東京地裁が著作権裁判(原告:読売・江崎法務室長VS被告:黒薮)で、わたしに対して勝訴判決を下した日である。判決が2009年であるから、勝訴4周年である。

この裁判は読売の江崎法務室長が、わたしに対してEメールで催告書を送付したことに端を発している。催告書は、わたしが新聞販売黒書に掲載した次の文章の削除を求めたものである。

前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。? 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。? 当社販売局として、通常の訪店です。

この文章は読売と係争状態になっていたYC広川(読売新聞販売店)に対する訪問再開を、読売の販売局員がYC広川に伝えたのを受けて、店主の代理人弁護士が読売に真意を確認したところ、送付された回答書である。(わたしはこの回答書を新聞販売黒書に掲載した。)

江崎氏が回答書の削除を求める根拠として、催告書の中で主張したのは、回答書が著作物であるからというものだった。しかし、著作物とは、著作権法によると、次の定義に当てはまるものをいうので、江崎氏の主張は的外れだ。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。????  

つまり回答書が著作物であるという催告書の記述は、完全に間違っている。それにもかかわらず削除に応じなければ、刑事告訴も辞さない旨が記されていたのだ。当然、わたしは怪文書と判断した。正直、読売の法務室長の強引さに気味が悪くなった。

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