1. 反TPPで大学教員が870筆の署名、日刊紙は記者会見に参加するも一切報道せず

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2013年04月22日 (月曜日)

反TPPで大学教員が870筆の署名、日刊紙は記者会見に参加するも一切報道せず

東京大学の醍醐聡名誉教授が『ジャーナリスト』(日本ジャーナリスト会議発行)の4月号に、「反TPPで870余名の大学教員が結集」と題する報告を掲載している。重要な内容なので、紹介しよう。

3月15日に安部首相がTPP交渉参加を表明したのに対抗して大学教員17名が、「TPP参加交渉から即時脱退を求める大学教員の会」を発足させ、署名活動を開始した。最初は100名の賛同者を集めることを目標としていたが、またまたく間に870筆が集まった。このうちの約400筆には、メッセージが添えられていた。

4月10日、記者会見を開き、印刷した署名とメッセージを報道各社に配布した。次に引用するのが、メッセージの一部である。

TPPは米国流新自由主義の終着点の一つで、日本社会の全体を市場原理に明け渡すものです。内容がブラックボックスのまま後戻りできない交渉に絶対に参加してはいけません。

わずか世界の1%の人々が握る企業が、残りの99%の人々のみならず国家をも支配できるシステムです。抜けることもできない、しかも、審議内容は参加国の国会議員ですら知ることができない仕組みなのに、なぜ賛成?

TPP参加は瀕死の日本農業の息をとめるものであり、自国民の食料を確保するという国として当然の責務を放棄するものです。

記者会見に参加したのは、全国紙と通信社8社、それにテレビ局1社。業界紙を含むとと39社だった。

ところが記者会見の内容を報道したのは、日本農業新聞と「しんぶん赤旗」の2紙だけだったという。

わたしはこの記事を読んだとき、1980年代に共産、公明、社会の3党が5年間に15回にわたって販売部数の偽装など新聞販売問題を追及したにもかかわらず、マスコミが1行も報じなかった事実を思い出した。記者席は常に満席だったらしい。しかし、それは会社員として情報を収集していただけで、報道はしなかったのだ。

日本のメディアは昔から何も変わっていない。その原因を記者の職能に矮小化する傾向があるが、わたしは、本当の原因はもっと根本的な部分にあるのだと思う。新聞社が日本の権力構造の歯車のひとつになっていることが、その原因にほかならない。

新聞社は「正義の看板」を掲げているために、大半の国民は彼らによる世論誘導には気づかない。朝日は「左」で、読売は「右」だと思っている。その結果、簡単に騙されてしまう。

ちなみにこれまで新聞がスクラムを組んで世論誘導を断行した例としては、次のようなものがある。消費税導入、小選挙区制の導入、政権交代?、小泉劇場、政権交代?・・・。そしてアベノミックス。簡単に騙される側も無知だ。