文部科学省が「大学の世界展開力強化事業」の中間評価を発表、進む大学の淘汰と少数精鋭の人材育成
文部科学省は、3月10日に、「大学の世界展開力強化事業」(平成24年度採択分)の14のプロジェクトについて、中間評価結果を決定した。このプロジェクトは、
「国際的に活躍できるグローバル人材の育成と大学教育のグローバル展開力の強化を目指し、高等教育の質の保証を図りながら、日本人学生の海外留学と外国人学生の戦略的受入を行うアジア・米国・欧州等の大学との国際教育連携の取組を支援することを目的」
と、したものである。
この事業を推進しているのは、文部科学省の下に設置された「大学の世界展開力強化事業プログラム委員会」である。委員は、2014年7月の時点で、14人。この中には、電気メーカーや経団連の関係者も名を連ねている。
大学に対して参加を募り、審査を経て参加が認められると、1プロジェクトにつき年間6千万円(5年)の補助金が支給される。
今回、中間評価の対象になったのは、2012年に参加が認められた15の大学による14のプロジェクトである。詳細は次の通り。
この年に参加を申し込んだ大学は、62校、71プロジェクト。採用されたのが15校14プロジェクトであるから、大半の大学は審査の段階で門前払いされたことになる。
審査に合格して実際に補助金を受け、プロジェクトに着手したのは、東京大学、早稲田大学、慶応大学といった超エリート校ばかりである。
◆進む多国籍企業化
改めていうまでもなく、大学の段階から国家予算を投入して少数精鋭の「国際人」を養成するプロジェクトは、構造改革=新自由主義の政策に連動して進んでいる企業の多国籍化に対応するための教育政策である。
事実、各大学が提案したプロジェクトのほどんどすべてが、ビジネスに結びつく内容である。その背景には、疑いなく多国籍企業のための人材養成という意図がある。外国語の取得にしても、おそらくビジネス目的の域をでない。
内閣府が3月3日付けで公表した『平成26年度企業行動に関するアンケート調査結果(対象は上場企業)』によると、海外で現地生産を行う企業の割合は、平成25年度実績で71.6%と過去最高に達している。
こうした状況の下で、企業に代って、国が率先して人材の養成に乗り出しているのである。国際化そのものは、歓迎すべきことだが問題は、プロジェクトに参加できる大学が、超エリート校だけに絞られていることである。
かつて日本企業は入社後に人材を育成していたが、現在は、その役割を国が選ぶ大学が代行しているのだ。ここには構想改革=新自由主義の教育政策、あるいは教育目標の特徴が顕著に表れている。
企業サイドからすれば、人材育成の経費を節約して即戦力を得るわけだから、国際競争力を高めることができる。政府サイドからすれば、大半の大学を切り捨てることで、財政支出を抑えることができる。ただし、産業の頭脳になる超エリート校に対してだけは、重点的に補助金を支給する。
2006年、第1次安倍内閣の下で教育基本法が改定され、教育の目的として「職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う」という文言が新たに加わった。これを口実として、大学で企業の人材育成が行われるようになったのである。
ちなみに「大学の世界展開力強化事業」が始まったのは、2011年、鳩山政権下で一時的に停滞していた構造改革=新自由主義の導入を再発進させた菅政権の時代である。以後、グローバリゼーションと連動しながら、急進的な構造改革=新自由主義があらゆる分野で導入されていく。