1. スマホに使われるマイクロ波に発がんリスク、総務省の規制値の何が間違っているのか?

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2022年12月12日 (月曜日)

スマホに使われるマイクロ波に発がんリスク、総務省の規制値の何が間違っているのか?

スマホや携帯電話の通信に使われるマイクロ波による人体影響が懸念されている。しかし、日本の総務省は、マイクロ波の強度を厳しく規制していない。その根拠となっている考え方にどのような問題があるのだろうか?

通信基地局の設置をめぐり電話会社と住民のトラブルが多発している状況下で、マイクロ波による人体影響(リスク)を科学的に把握しておく必要がある。

次に示すのは、日本の総務省が定めた規制値と、欧州評議会が定めた規制値(厳密には勧告値)の比較である。数値が少なければ少ないほど規制が厳しいことになる。

日本の総務省:1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)

欧州評議会:0.1μW/c㎡、(勧告値)

日本以外の多くの国々も、なかり高い数値を設置している傾向があるが、日本の総務省の規制値は、米国の規制値と並んで世界一高い。

◆マイクロ波の熱作用と非熱作用

マイクロ波による人体影響には、大別して2つの学説がある。人体影響は、「熱作用」に限定されるという説と、熱作用に加えて「非熱作用」も考慮しなければならないという説である。この2つの説の違いが、総務省による規制値と欧州評議会による勧告値の違いを生じさせたのである。

■熱作用
「熱作用」とは、マイクロ波が熱を発生させる作用のことである。典型的な例としては、電子レンジがある。マイクロ波に熱作用があるがゆえに、マイクロ波を放射することで、食品を加熱することができる。

日本の総務省は、マイクロ波の熱作用だけを考慮して、1000 μW/c㎡というとてつなく緩やかな規制値を設置したのである。

■非熱作用
これに対して「非熱作用」とは、「熱作用」以外の作用の総称である。その代表格は、遺伝子毒性である。遺伝子を破壊して癌を引き起こす作用である。他にも神経系に悪影響を及ぼして、パーキンソン病などを発生させるとする説もある。

「熱」は知覚できるが、「非熱」は知覚できない。それはちょうどレントゲン撮影で、熱も痛みも感じない原理と同じである。それゆえにわれわれはエックス線のリスクについての情報を得て、はじめて自主的に被曝をさける行動をとる。

ところが総務省は、マイクロ波の「非熱作用」について注意喚起していない。従って日本人の大半は、マイクロ波の「非熱作用」によるリスクをまったく認識していない。恐ろしいことである。

電磁波(放射線)は、エネルギーの高いガンマ線やエックス線から、エネルギーの低い低周波電磁波(家電や送電線)までさまざまな種類(領域)がある。かつてはガンマ線やエックス線などエネルギーの高いものは危険で、エネルギーの低いものは安全とされていた。

ところが今世紀に入るころから、電磁波はエネルギーの大小とはかかわりなく、すべて「非熱作用」があるとする説が有力になってきた。こうした学説の変化に反応するかたちで、欧米では国が設置している緩やかな規制値とは別に、地方自治体が独自に厳しい規制値を設置する動きが現れたのである。

その典型例が、欧州評議会の勧告値、0.1μW/c㎡なのだ。

◆科学的な疫学調査

次に示すのは、ブラジルで実施された疫学調査(冒頭の図)である。この調査は、癌で死亡した人の住居とそこから最短の基地局までの距離を計測して、統計としてまとめたもので
ある。基地局の近くほど、癌による死亡率が高いという結果を示した。

基地局の周辺ほど癌が多いことを示すブラジルの疫学調査、癌による死亡7191例と基地局の距離の関係を検証 疫学調査①

この種の疫学調査(2011年に公表)は、現在では基地局の数が増えすぎて、実地そのものが困難になっている。当時は3Gの時代で、マイクロ波のエネルギーも現在と比較してかなり低い。かりに同じような調査が5G基地局を対象に実施できれば、さらにマイクロ波の遺伝子毒性が輪郭を現わす可能性もある。(ただし、エネルギーが高ければ高いほど、リスクが高くなるという確証も現時点では存在しない)。

◆アンケート調査の問題点

マイクロ波による電磁波過敏症を調査する際、よくアンケートが行われる。基地局周辺の住民に対して、調査員が「問診」のかたちで、電磁波過敏症の症状(めまい、吐き気、頭痛など)を聞きたす調査である。

わたしは、この種の調査をまったく信用していない。と、いうのも「問診」による調査は、質問の仕方で答えがどうにでも変わるからだ。また、回答者は心理的な影響も受けるからだ。実際、基地局の設置された地域で、ひとしく身体の不調を訴える人がいるわけではない。

しかし、電磁波過敏症が客観的な存在であることは紛れもない事実である。人口の一定割合は、電磁波過敏症に罹患している。

これに対してブラジルで実施されたような疫学調査は、癌という客観的な病気と基地局までの距離を調べたものであるから、心因性の要素を排除しており、信ぴょう性が極めて高い。科学的な根拠がある。しかも、調査対象がラットではなく人間なのである。ラットの体質と人間の体質は異なるわけだから、やはり人間で調査した結果は重みがある。調査の規模も大きい。