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2015年12月08日 (火曜日)

特定秘密保護法違憲訴訟却下判決を斬る、異次元安倍政権に覚悟を示せない司法とメディア

◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者、秘密保護法違憲訴訟原告)

私たちフリージャーナリスト42人が東京地裁に起こした特定秘密保護法違憲訴訟。「具体的な紛争を離れて、法律が憲法に適合するか判断出来ない」として、裁判所は違憲か否かさえ判断しないままの「却下」判決で11月18日、一審の幕が下りた。既成メディアも簡単に報じるだけだった。

しかし、それでいいのか。秘密保護法は安保法制とセットである。国民の「知る権利」を根こそぎ奪い、現行憲法の基本理念である国民主権、基本的人権、平和主義を根本から覆し、国の形すら変える法律である。

数の力を頼めば、いかなる違憲立法も解釈改憲で何とでもなると考えるのが、「異次元安倍独裁政権」だ。核兵器を含めた膨大な軍事機密の実態を秘密法で国民に目隠し。安保法制を成立させ、日米軍事一体化が進められた。日本は軍事以外で国際紛争を解決するより、軍事優先国家となり、「戦争し、戦争を仕掛けられる国」としての「具体的な危険」に、私たちはさらされている。

今、「憲法の番人」としての司法・裁判官、判決を報道するメディアに求められるのは、憲法学者や歴代内閣法制局長官が安保国会で示したような法律家、ジャーナリストとしての「異次元の覚悟」だったはずなのに…である。

◇違憲立法審査権の軽視

日本には、国会で成立した法律が憲法違反か否か、直接判断する憲法裁判所制度がない。だから、憲法違反の法律で国民の権利が侵害された場合、事案に応じ直接被害を受けた国民以外、憲法違反に対して審理を求め、裁判所に違憲か否かの判断を求めることは出来ない――裁判所の違憲立法審査権をこう狭く解釈する考えが司法には長く定着している。

法律専門家の中にも私たちの訴訟は無謀で、勝訴の可能性が薄いと考える人が多かったのも事実だ。しかし、憲法の基本理念に反し、国の在り方まで根本的に変えてしまう秘密法のような法律に、法曹界の惰性が安易に適用されては困るのだ。

何故なら、秘密法は国民が時の権力に対し、自分の判断を示すことを保証した憲法21条「表現の自由」を完全に否定する天下の悪法であるからだ。「違憲・無罪」と確信していても、情報を提供する側も受け取る側も、法律違反で拘束されることを恐れ、情報は国民全体に伝わらなくなる。その結果、戦前同様、変貌する国の真の姿を国民は知る由もなく、自らの意思・判断で国の進路を選択することが出来ない。その結果、行き着く先は、独裁・軍事政治と悲惨な戦争ということになるからだ。

◇違憲判断を避ける理由はない

こうした危険を避けるため、日本と同じく司法裁判所を持たない米国にも、「宣言判決」という制度がある。違憲立法で今争わなくては、社会に取り返しのつかない危害を及ぶ場合、違憲か否か、裁判所に判断を求めることが出来る。日本にも「宣言判決」によく似た「無名抗告制度」というのがある。

私たちも裁判制度に無知ではない。訴訟では、「無名抗告制度の一類型としてとらえれば、日本の裁判でも米国と同じような宣言判決に近い判決を出すことは可能である」「秘密保護法が施行されたことにより、フリージャーナリストとしての取材が、直接かつ現実的に侵害され、国民の『知る権利』が行使出来ていない」と、憲法の数々の条文や取材の体験を列記。秘密保護法の明白な違憲性を指摘して、裁判所の違憲判断を強く求めた。

しかし、谷口豊裁判長は「原告らは主観的な利益が侵害されたと主張しているものの、法に規定されている不利益処分(刑事訴追等)が原告らに現実的に発動されている状況を前提にするものではなく、原告らが直ちに解消されるべき法的不安定な状態に置かれているとは言えない」などとして、秘密法が違憲かどうかさえ判断しないまま訴えを退けた。

◇原告は具体的な被害を立証したが・・・

裁判中には、原告のうち林克明、寺澤有両氏がイスラム国によってフリージャーナリストが人質になった事件や、自衛隊や公安警察へ日ごろの取材経験から、「情報公開を要求しても、秘密保護法を持ち出し官庁が公開に消極的になっている」と具体的事実に基づいて陳述、被害も訴えている。

しかし、谷口裁判長は「取材対象者が取材拒否の方便として秘密保護法の存在を持ち出しているだけとも解され、秘密法の立法、施行に起因すると評価すべきでない」と、国家賠償も退けた。

今回の訴訟では、国民の「知る権利」の危機を心配して、法廷には毎回多くの傍聴者が詰めかけてくれた。その目も意識したのだろう。確かに谷口裁判長は原告二人の陳述を認めるなど丁寧には審理を進めた。

谷口裁判長は、「私は少なくとも原告の言い分をこの耳でじっくり聞いた。他より良心的な裁判官だったはず」と言いたげだった。しかし、官庁が情報公開を渋っても、「取材拒否の方便」と済ましてしまうなら、それをいいことに今後ますます官庁・官僚による情報統制が強まる。

私も司法記者経験がある。これまでの司法記者の常識や判例の流れからは、谷口裁判長の丁寧な訴訟指揮をもってしても、こうした判決が出される可能性について、判決前から十分予測はしていた。

谷口裁判長以上に、権力に媚びる裁判官が増えたのが、現在の司法の姿だ。違憲立法で直接被害を受けた国民が主張してさえ、憲法判断に踏み込んで判決を出す勇気を持つ裁判官はごく少数である。

案の定、司法記者はこの判決に何の驚き、危険性も感じず、淡々と判決文に沿って簡潔に報じた。その結果、大手メディアは私の古巣の朝日も含め、ベタ記事か、小さな扱い。私が調べた限りでは、争点に関して詳しく報じたところもなければ、「解説」で判決批判をしたところなど一つもなかった。

◇民意を軽く見る安倍政権

しかし、私には谷口裁判長の判決も既成メディアの判決報道も、それでいいとは到底思わない。私は司法記者の後、政治記者も経験している。では、政治記者の常識に照らせば、自民推薦の憲法学者や自民政権と二人三脚だった歴代内閣法制局長官が、安保国会で公然と安保法制を「違憲」と断じることなど、誰が予測しただろうか。

これまでの自民党政治も、憲法を守る護憲政治を忠実に展開して来た訳ではない。しかし、憲法を一定程度には意識、立憲国家の原則、その枠を大幅に逸脱したと国民に見られないよう、ごまかし・詭弁も含めそれなりには配慮し、政治を運営して来たのは間違いない。

最初からこの国を「立憲国家」とも思っていない。国会で数さえ揃えばどんな解釈改憲も可能…。こう思い上がり、国民世論も無視して違憲立法をしても平気の平左なのは、戦後政治の歴史を見ても、「異次元安倍政権」以外にない。

憲法破壊の「異次元政治・立法」で国が変質していくのを阻止しようとするなら、「異次元」の覚悟・行動しかないのだ。少なくとも憲法学者も歴代法制局長官も、「立憲政治」そのものが崩壊していく姿を目の前に見た危機感から、「異次元の抵抗」を行動で示した。しかも、その「抵抗」は、自らの職業的良心・矜恃(きょうじ)に基づいて、1本きちんした筋が通っている。

このまま安倍政治が続くならこの国は、戦前のドイツが「ワイマール憲法を持つ国」から「ナチス国家」に変質したように、国民の与り知らぬところで米国と二人三脚の軍事国家に変わってしまう。

だからこそ、私は「立憲国家」を守る立場の司法・裁判官にも、司法を監視するメディア・司法記者にも、憲法学者らと同様の筋の通った「異次元判決」、「異次元報道」をかすかに期待して、判決法廷に臨んだ。しかし、その思いは見事に裏切られた。

◇安保法制とアーミテージ・ナイレポート

今回の違憲訴訟の成り行きを注視し、法廷にも何度も足を運んでくれたのが、山本太郎参院議員だ。山本氏は国会で、「安保法制は、米国から日本に要求されていた第3次アーミテージ・ナイレポートの完全コピーだ」と追及した。事実、レポートを読んでも、安倍政権の政策は、「国民主権」をないがしろにして原発再稼働やTPP推進も含め、米国の要求する政策をそっくりそのまま受け入れたものと言うしかない。

アーミテージ氏と共同でレポートを作成したのは、元米国防総省次官補、ジョセフ・ナイ氏だ。知日家、オバマ政権の極東軍事戦略ブレーンとしても知られる。

そのナイ氏は、1昨年末、朝日の単独インタビューに答え、「今後、米軍は日本国内に固定した基地を持たず、日本の自衛隊基地と一体化し、米国と日本の部隊が一緒に配置されるかも知れません」と、在日米軍の将来像を語っている。

米国言いなりが安倍政権だ。自衛隊基地は今後、日米両軍の共同基地へと変質する。その場合、これまで米軍が単独で持っていた対中国を仮想敵国とした核弾頭は、自衛隊基地の中に隠し持たれると見るのが自然だろう。

万々一、対中国全面戦争になれば、核弾頭を装着した米軍機が日本の自衛隊基地から飛び立つ想定も成り立つ。もちろんその時には、米国本土より先に日本が、中国の核攻撃を受ける最悪の事態も覚悟しておかなくてはならない。

日米共同作戦行動となれば、どこに核弾頭を隠し、自衛隊のどの部隊がどこにどう運ぶのか。暗号なども含め、様々な細かい取り決めが必要だ。安保法制制定を既定路線として施行前から進んでいた日米軍事当局者の極秘会談では、こうした協議に大半の時間が費やされ、決められた数多くの合意事項こそ、「特定秘密の塊」と言えるだろう。

この国は、悲惨な戦争体験を通じ、憲法9条により平和国家を目指すと決意した。世界で唯一の被爆国として、絶対に核兵器を使わないし、使わせない、持ち込ませないことも国是としたはずだ。

しかし、憲法無視の安倍政権により、安保法制・集団的自衛権容認で憲法9条は実質なくなり、「不戦」を誓ったはずの国の姿が激変。どう変わったかさえ、秘密法で具体的な姿が国民には見えなくされている。だから私たちフリージャーナリストは、違憲訴訟を提起した。

立憲国家を守り抜くことは、私たち以上に「憲法の番人」である司法・裁判官の重要な役割・使命のはずだ。秘密法で裁判官にも「憲法から逸脱した国の姿」の具体的な事実が知らされていないなら、何より裁判官自身がもっと危機感を持つべきではないのか。そんな使命感のかけらもない裁判官から「法に規定されている不利益処分が原告らに現実的に発動されていない」と、ノー天気な却下判決を出されても、私たち原告は納得出来るはずがない。

◇重要影響事態法をこっそりと変更

もちろん、ノー天気は既成メディア・記者も同様だ。「特定秘密」は40万件を超えるとも言われている。多くは米国との核密約も含め、国の進路、憲法の基本理念、国民の権利にかかわる秘密であり、記者それぞれの取材対象のどこにでも埋もれているはずだ。私は現役記者時代、何にもましてこのような秘密文書を手に入れることに心血を注いだ。それが国民の「知る権利」に応えて「権力監視」の役割を担う記者の使命だからである。

しかし、安保国会報道を通して、日米核密約の中身など安保法制で変えられる軍事国家の姿の一端に迫る「特定秘密」を一つでも暴いたメディアはあったのか。少なくとも私の記憶・印象に残る特ダネを書いた既成メディアはどこもない。

安倍政権は国会で追及され、核弾頭を自衛隊が運ぶことを法文上否定していないことを渋々認めた。でも、「日本には非核3原則がある」として、自衛隊が実際に運ぶことは否定して見せた。

しかし、最近の若い記者は国会に提出されている法案の文面を隅から隅まで精査していないのが大半と聞くから、多分気付いていないのだろう。安倍政権は米軍の核弾頭を運べるよう、わざわざ法文の目立たない部分をこっそり変えているのだ。

それは、「重要影響事態法」末尾の「備考」部分だ。「周辺事態法」を下敷きに制定された法律だが、周辺法の「備考」では、「物品の提供には、武器(弾薬を含む)の提供を含まないものとする」となっていた。

しかし、影響法では、()内の「弾薬を含む」を削除している。政府見解は「弾薬に核弾頭は含む」である。つまり、()内を備考から除くことで、米軍から要請があった時には核弾頭を運べるよう、わざわざ条文を変更したのだ。恣意で法律を変えたのだから、安倍政権は米軍核弾頭運搬を念頭に置いていると見るべきだ。

外交にかかわる条文や法律法文の改変に少しでも政府が手を染める時には、その裏で極秘外交を通じ、何十、何百もの密約が隠されているというのが、記者の常識だ。なら、秘密法で「特定秘密」に指定された密約の中に、核運搬にかかわる様々な密約があるはずである。その文書の一つでも手に入れれば、安倍首相のウソも明白になり、安保国会の流れも変わったはずだ。

もちろん、出来なかったのは確かに既成メディア・記者のふがいなさ、力量・意欲の不足でもある。私なら「備考」の改変に気付けば、核密約文書の入手を試みる。手に入らなければ、自分のふがいなさを悔いる。それとともに取材を通し、実感した秘密法の壁の厚さだけでも、読者に知らせたいと思う。

◇ふがいないメディアの秘密法報道

しかし、改変にも気付かず、機密文書入手の難しさに最初からあきらめが先に立ち、積極的な取材も試みない「へなちょこ記者」が多くなったのが、今のメディアの姿だ。だからこそ、ますます秘密法は取材の壁として権力側の大きな武器になっている。

何故、安保法制報道で特定秘密の一つもメディアは暴けなかったか。秘密法はどのように特定秘密取材の壁になったのか。秘密保護法が施行されたことによるメディアの取材体験を通じた実害、国民の「知る権利」に危機についてなど、秘密法違憲訴訟判決報道を通じて、読者に知らせるべきことは山ほどあった。

「今のままではいけない」。そんな危機意識がメディア全体に少しでも共有出来ていたなら、私たち原告に言われるまでもなく、違憲訴訟にもっと関心を高め、判決の不当性をもっと大きく既成メディアは報道したはずである。

私が司法記者の頃は、世間の常識・国民の権利に照らして納得のいかない不当判決に出会った時には、読者を納得させ、心に響く判決批判解説をどう書き、紙面としてどうデスク・編集者に大きく扱わせるかが、他社の記者との競争だった。

確かに昔から最高裁の顔色を伺う裁判官は多かった。しかし、彼らも司法記者の書く解説での判決批判を気にせざるを得なかった。それが下級審裁判官をして国家権力べったりのヒラメ判決を出す歯止めとなって働いていたと思う。今は、朝日だけでなくそんな司法記者の書く「解説」には、めったにお目に掛かれない。

◇フリージャーナリストの役割

「喉元過ぎれば」は、既成メディアの悪弊である。秘密法も安保法制も成立直後には、「息長く違憲性を読者の伝えていく」と、メディアは約束したのではなかったのか。しかし、今回の判決報道を通じても、その約束は守られなかった。なら、引き続きフリージャーナリストがやり遂げるしかない。

私は朝日のぬるま湯組織を離れて初めて、フリーの人たちの清貧ながら高い志を実感として知った。原告団は判決後話し合い、裁判を継続する負担に耐えつつも大半が控訴することに賛成した。

今後、私たちは控訴審を通じて、安保法制と秘密保護法に対して危機感を持つ人と力を合わせ、今の司法と既成ジャーナリズムに風穴を開ける裁判での闘いを続ける。既成メディアが大きく報じようとしないとしても、是非、多くの人たちがこの違憲訴訟に関心を持ち、裁判所への監視を強めて戴きたい。
フリージャーナリスト42人による東京地裁特定違憲秘密保護法違憲訴訟判決の全文は以下からご覧ください。

■東京地裁特定違憲秘密保護法違憲訴訟判決の全文
≪筆者紹介≫ 吉竹幸則(よしたけ・ゆきのり)
フリージャーナリスト。元朝日新聞記者。名古屋本社社会部で、警察、司法、調査報道などを担当。東京本社政治部で、首相番、自民党サブキャップ、遊軍、内政キャップを歴任。無駄な公共事業・長良川河口堰のウソを暴く報道を朝日から止められ、記者の職を剥奪され、名古屋本社広報室長を経て、ブラ勤に至る。記者の「報道実現権」を主張、朝日相手の不当差別訴訟は、戦前同様の報道規制に道を開く裁判所のデッチ上げ判決で敗訴に至る。その経過を描き、国民の「知る権利」の危機を訴える「報道弾圧」(東京図書出版)著者。特定秘密保護法違憲訴訟原告。

2015年12月07日 (月曜日)

「NHKから国民を守る党」が朝霞市議選で議席を獲得

わたしが在住する埼玉県朝霞市の市議会議員選挙の投票と開票が6日に行われた。予想外だったのは、「NHKから国民を守る党」が議席を獲得したことである。同党の大橋昌信氏が1278票を獲得して当選した。

「NHKから国民を守る党」は、マスコミでは、「諸派」に分類される。「諸派」の候補者が当選した例は、地方選挙でも国政選挙でもきわめて少ない。諸派を、変わり者あつかいするひとが多いからだ。

◇日本型のアメリカンドリームとNHK

「NHKから国民を守る党」は、もともとNHKによる受信料の集金時のマナーの悪さを問題視する意識から誕生したようだが、NHKは報道内容でも大きな問題を抱えている。メディアリテラシーを少し勉強すると、NHKが政府による国策放送であることがはっきりとわかる。安倍政権が進めている新自由主義の考え方に国民を誘導している。

たとえば最近は、番組のさまざまところで「創意」や「工夫」を奨励する内容が目立つ。NHK番組を見ていると、「創意」や「工夫」をこらせば、だれでも起業に成功して、豊かな生活を手に出来るような錯覚を受ける。いわばアメリカン・ドリームとまったく同じ幻想を振りまいているのだ。

哲学者の柳田謙十郎の言葉を借りれば、これが「ブルジョア思想」と呼ばれる空気のような洗脳である。社会の発展や個人の幸福は、個々人の心がけにより決定されるという観念論哲学を基調とした考えである。今、それがメディアを通じて急激に広がっている。

しかし、社会の発展や個人の幸福は、実は客観的な条件を変革することなしにはあり得ない。少なくともそれに着手するのが政治の役割である。

新自由主義というシステムの下では、非正規労働者がいくら心がけを良くして、創意や工夫をこらしても、豊かな生活を手に入れることは不可能に近い。たとえ成功者が生まれても、それはほんの一握りである。むしろ例外である。客観的な社会体制そのものが万人を幸福にする制度にはなっていないからだ。

が、そうであればあるほどメディアは本質を覆い隠し、多くの若者を日本型のアメリカン・ドリームに導いていく。そうしなければ、新自由主義が崩壊するからだ。

NHKの職員は、自分たちの言動が日本全体にどのような負の影響を及ぼしているのか自覚すべきだろう。

2015年12月04日 (金曜日)

小児甲状腺癌の発生率が二本松市で50倍に、東京も被曝の圏外ではない

『月刊日本』が、福島の惨状を報じている。タイトルは、「福島で急増する子供の甲状腺癌」。岡山大学の津田敏秀教授の論文を紹介しながら、水面下で進行している被曝の実態を伝えている。

まず、子供に甲状腺癌が多発してる実態を次のように伝える。

 津田教授らは2014年12月31日までに集計された調査結果(黒薮注:福島県が実施したもの)を分析した。この時点までで、受診者29万8577人の内110人が悪性ないし悪性の疑いと判断され、そのうち87人が手術を行っている。津田教授らがこれら検査結果を地域別に分析したところ、甲状腺癌の発生率が全国平均と比べ、二本松市などでは50倍、郡山市などでは約40倍にも達していることがわかったという。

このような衝撃的な数値に疑義を唱える研究者らは、福島県が通常よりも精度の高い検査を行った結果、高い数値になったと反論するが、津田教授によると、たとえ検査の精度が原因で誤差が生じたとしても、50倍もの差異になることはありえないという。せいぜい2倍から7倍ぐらいだという。

福島はチェルノブイリと同じか、それをうわまわる深刻な被曝の実態に直面しているのだ。ちなみにチェルノブイリにおける小児甲状腺癌の発症のピークは、原発事故から10年目だった。福島の場合、2020年の東京オリンピックが開催されるころに最悪の事態になる可能性が高い。

◇東京も被曝している?

福島の原発事故の影響は東京には及ばないのだろうか。これに関しても、興味深いデータが紹介されている。1950年代に米国ユタ州のセント・ジョージという町で住民たちが次々と癌で死亡する不思議な現象が起きた。

その原因は、後にユタ州の隣に位置するネバダ州で1951年から97回の核実験が行われた影響であると推測されるようになった。セント・ジョージと核実験の距離は220キロだった。

これはちょうど福島と東京の距離に匹敵する。

そういえば東京の順天堂大学病院の血液内科受診者が急増しているとの報告もある。以前、メディア黒書で紹介した次の記事である。
■順天堂大学病院の血液内科受診者が急増、東京都も原発の汚染地帯か?特定秘密保護法の施行で隠蔽される情報

2015年12月03日 (木曜日)

金で政策を買う時代、進むモラルハザード、日弁連の政治連盟から政界へ多額の政治献金

11月末日に公表された政治資金収支報告書(総務省管理)によると、日弁連の政治団体である日本弁護士政治連盟から、国会議員に対して765万円の寄付金が贈られていることが分かった。

献金先の大半は、自民党と民主党の議員である。献金額は、ひとりあたり5万円から10万円。具体例をいくつか紹介しよう。

えだの幸夫(民主)10万円
菅直人(民主)10万円
岡田かつや(民主)5万円

逢沢一郎(自民)10万円
野田たけし(自民)5万円
根本匠(自民)10万円

■日本弁護士政治連盟の政治資金収支報告書

◇献金の目的は?

献金の目的は不明だが、こうした政治献金がスラップ防止法を作るうえで大きな障害になっている可能性もある。

スラップとは、広義の恫喝訴訟、あるいは嫌がらせ訴訟のことである。不都合な言論を封じるために、勝敗を度外視して提訴することで、被告にされた者に経済的、あるいは精神的に負担をかける。

名誉毀損を理由に提訴されることが圧倒的に多い。と、いうのも名誉毀損裁判の法理は、原告に圧倒的に優位にできていて、無能な弁護士であっても収入源になるからだ。米国の多くの州では、スラップは禁止されていて、スラップと認定された場合は、被告の弁護士料の賠償など多大なペナルティーを課せられる。

ところが日本では、スラップは野放し状態になっている。裁判をビジネスと割り切って、水面下で名誉毀損裁判の提起を持ち掛ける営業行為を行っている弁護士も増えているようだ。こういう弁護士に限って、「人権」を売り物にしているものだ。

さらに最近では、フリーランスが「小遣い稼ぎ」で、弁護士抜きの名誉毀損裁判を起こすケースも増えている。「勝訴すれば、儲けもの」という感覚である。中には本当に名誉の回復を目的に提訴する者もいるが。

メディア業界から法曹界まで、金で政策を買う時代。日本人はここまで落ちぶれている。

2015年11月30日 (月曜日)

新聞業界から政界に927万円の政治献金、背景に新聞に対する軽減税率の問題、ジャーナリズムよりも特権の獲得を優先する日本の新聞人

新聞の業界団体から自民党を中心に、政界に927万円の政治献金が支払われていたことが、先日に公開された政治資金収支報告書(2014年度分)で判明した。

政治献金を支出したのは、新聞販売店の業界団体・日販協(日本新聞販売協会)である。厳密に言えば、日販協の政治団体である日販協政治連盟から、献金が行われていた。

ちなみに日販協は、新聞に対する軽減税率の適用を勝ち取るために、日本新聞協会と共闘している。両者の親密度は、再販制度の問題が浮上した1990年代から濃密になっている。

■政治資金収支報告書PDF

◇献金額の詳細

まず、「セミナー参加費」として236万円が支出されている。支出先は、述べ17人の議員や政治団体。

このうち支出額が際立って高いのは次の2氏である。

漆原良夫議員(公明党):40万円

丹羽雄哉議員(自民党):60万円

丹羽議員は、元読売新聞の記者で、自民党新聞販売懇話会の会長である。自民党新聞販売懇話会は、新聞業界と政界のパイプ役を務める団体で、小渕恵三元総理が在職中に、会長を務めていたこともある。その小渕政権下の1999年には、新ガイドライン、住民基本台帳法、盗聴法、国旗・国歌法などとんでもない法律が矢継ぎ早に成立した。

一方、寄付金はなんと135名もの国会議員に贈られている。寄付額は、3件の例外を除いて、ひと口で5万円。赤坂界隈で遊興する「おこずかい」程度の額だが、金額を総計すると691万円にもなる。

◇メディア全体が安倍内閣の「広報部」

献金行為の背景にあるのは、新聞に対する軽減税率の適用問題である。政治献金を支出してまで、業界の特権を獲得しようとしている日本の新聞人の実態が数字で浮き彫りとなった。

この倫理問題に関しては、書籍・雑誌などの出版業界から批判の声があがる可能性もほとんどない。と、いうのも出版業界も新聞人たちの政治力を頼りに、書籍・雑誌の軽減税率の適用を受けようとしているからだ。

こうした状況の下でメディア全体が、安倍内閣の「広報部」として取り込まれてしまう危機が高まっている。責任は重い。

2015年11月27日 (金曜日)

白熱灯と蛍光灯の禁止へ政府が方針、人体影響が懸念されるLED使用を奨励

朝日新聞(電子版・26日付け)が、「蛍光灯、実質製造禁止へ 20年度めど、LEDに置換」と題する記事を掲載している。「国内での製造と国外からの輸入を、2020年度をめどに実質的に禁止する方針」だという。

 政府は、エネルギーを多く消費する白熱灯と蛍光灯について、国内での製造と国外からの輸入を、2020年度をめどに実質的に禁止する方針を固めた。省エネ性能が高い発光ダイオード(LED)への置き換えを促す狙いだ。

 安倍晋三首相が26日に財界幹部を集めて官邸で開く「官民対話」で、省エネ対策の一環として表明する。今月末にパリで始まる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)に向けて、日本の温室効果ガス削減への取り組みを具体化する狙いもあるとみられる。

この記事は、途中から有料になっているので後半に何が書いてあるのかは不明だが、少なくとも記事の公開部分には、大切な記述が抜け落ちている。LEDが人体に及ぼすリスクについて書かれていない。大事な部分が欠落している。

記事に添付されている図(白熱灯・蛍光灯・LEDの長所と短所を比較したもの)にも、LEDによる人体への悪影響については触れられていない。

◇LEDによる人体影響

メディア黒書では、これまでLEDによる人体影響のリスクを取り上げてきた。おおむね次のような注視点があることが分かっている。

目に悪影響をあたえる。最悪の場合は、加齢黄斑変性症など失明に至るリスクが指摘されている。

睡眠障害の引き金になる。

可視光線の特定の周波数で光る青色LEDに殺虫能力がある。これは東北大学の研究で明らかになった。

LEDの照射で熱帯魚の背骨が変形したとする報告がある。

LEDを4ヶ月浴びた熱帯魚の背骨がS字型に変形、原因不明も重い事実

確かにLEDが人体に悪影響を及ぼすとする説が、多様な研究によってすでに定説となっているわけではない。しかし、LEDを含む電磁波研究の歴史は浅く、電磁波による人体影響が本格的に指摘されるようになったのは、1980年代に入ってからであり、最近になってわれわれの日常生活の中に入り込んできたLEDや携帯電話の通信に使うマイクロ波に至っては、まだ研究が始まったばかりなのである。本当に安全なのかは、今のところよく分かっていない。当然、長期被曝による人体影響は未知だ。

研究が進むにつれてリスクが浮上した典型のひとつは、携帯電話のマイクロ波である。マイクロ波は、当初は安全と考えられていた。ところが2011年にWHOの外郭団体である世界癌研究機関が、発ガン性の可能性を認定した。その後の研究では、ごく微量の被曝でも人体影響があることが分かっている。

LEDも同じような道筋をたどる可能性がある。と、すれば「予防原則」を重視して、国策として使用を奨励する前に、安全なのか危険なのかを検証しなければならないはずだ。ところが安倍首相には、そうした視点がない。いや、産業界の利権が絡んでいる可能性もある。

◇ロング・インタビュー

次のロング・インタビューは、理学博士の渡邉建氏にLEDのリスクについてうかがったものである。

■危険が指摘され始めたLED照明(ブルーライト)による人体影響、理学博士・渡邉建氏インタビュー①

■危険が指摘され始めたLED照明(ブルーライト)による人体影響、理学博士・渡邉建氏インタビュー②

2015年11月26日 (木曜日)

八木啓代氏に10万円の賠償命令、志岐氏の主張の一部を認め、八木氏の抗弁(反論)はまったく認めず、「八木VS志岐」裁判

市民運動家の志岐武彦氏が、歌手で作家の八木啓代氏に対して、多数のツイートなどで名誉を毀損されたとして、200万円の賠償を求めた裁判で、東京地裁の佐藤隆幸裁判官は、25日、志岐氏の主張の一部を認め、八木氏に対して10万円の支払いを命じた。

原告(志岐氏)と被告(八木氏)の双方から多量の書面が提出されたにもかかわらず、判決では志岐氏の主張の一部が認められたにとどまった。

■判決

■別紙(準備中

志岐氏の主張に関していえば、裁判所が名誉毀損として認定したのは、八木氏が発信した6件のツイートと1件の電子メールである。

一方、被告・八木氏の抗弁(志岐氏に対する反論のこと)については、まったく認められなかった。すべてが不認定となった。

八木氏に対する10万円の賠償命令は、わたしが知る名誉毀損裁判の判例と比較すると著しく低額だが、もともとわたしは高額訴訟・高額賠償には反対の立場だから、今回の賠償額は妥当だと考えている。今後の名誉毀損裁判でも、このような傾向が現れることを希望する。

◇ツイートによる名誉毀損

この裁判の最大の争点は、八木氏が発した約200件(リツイート等を含む)が、志岐氏の社会的な地位を低下させたかどうかという点だった。とはいえ200件のツイートすべてを詳細に審議したわけではない。しかし、70件のツイートについての裁判所の評価(別紙PDF・準備中)が記されているので、読者には参考にしてほしい。

ちなみに裁判所が名誉毀損と認定したツイートは次の通りである。

■(18)さらに驚愕することには、志岐さんがある方に送ったメールで、私(八木)が話したこととして、まったく事実無根なことが書かれているのを確認しています。嘘でなければ妄想でしょうRT

■(98)もっと驚くべきことは、志岐氏は、他の人に送ったメールでは、私と直接会って話し、私も「それは知っていた」と認めたと書いているのである。私は志岐氏になど会っていないし、ましてや認めるはずもない。すべて妄想なのである。

■(172)ちなみに、私のことも言ってないことを言ったとした偽メールを送られています。RT@553Sandhood  @Chteaux1000『一方的に悪質な嫌がらせをなさっているのは志岐さんなのですが』そこのところを具体的に
                                                 
■(177)ちなみに、私も志岐さんに、言ってもいないことを「八木が(志岐氏に)告白した」とかいう根も葉もない悪質なデマメールを第三者に送られたりしてブチ切れています@553Sandhood」

■(33)志岐さんがごちゃごちゃ言っているようですが、この方は、そもそも会ってもいないし言ってもいないのに、「八木と会って、直接聞いた」などと、真っ赤なデマを他人に吹聴していたという事実があります。そのことだけで、嘘つきであるか妄想癖があるかのどちらかだとしか申し上げようがありません。

■(201)これなんか相当キモい。[URL]私がかけたことない電話を受けたそうだRT @Cruisingtrain @t_kawase 人格的におかしい人が「普通」の人を追い詰めていく、という類のホラーが一番怖い。生きている人間が一番怖いよ(笑)。

◇電子メールによる名誉毀損

八木氏が複数の人たちに送った電子メールも、志岐氏の「社会的地位を低下させ、その名誉を毀損するものと解するのが相当である。」と名誉毀損を認定した。次のメールである。

この件につきまして、志岐氏は私八木に関しても、まったく事実無根の内容の誹謗中傷のメールを複数の人に送るなど、かなり悪質な行動を取られております。(場合によりましては、森さんの裁判の中で、私も証言をする可能性もございます)自分の自費出版の本を売りたいがために、売名のためなら何でもするような、このような輩の言動を真にお受けになることのないよう、ご注意願います。

◇八木氏の抗弁は認められず

一方、八木氏の主張(抗弁、あるいは反論)はまったく認められなかった。
たとえば、志岐氏に対するツイッターによる攻撃は、対抗言論として正当であるという主張に対して、裁判所は次のように判断した。

 被告は、表現の自由の保障を根拠とする「対抗言論の法理」により、論争となっている点に関連する批判や反論は、名誉毀損となる人格攻撃であっても許容される旨主張する。

 しかし、かかる被告の主張は、一定の場合には人格攻撃が許容されるとするその結論自体が、容易には採用し難いものであるというほかない。

◇本人訴訟の壁

志岐氏の主張の一部を除いて、裁判所が双方の主張をことごとく退けた要因はいくつかあるが、ツイートの評価に関していえば、ツイートそのものがすでに公知となっている特定事実を前提とした「評論・意見」と解釈された事情がある。評論・意見に関しては、名誉毀損にならないという判例も多く、裁判はそれを採用したようである。

双方の主張の大半が認められなかった第2の要因は、主張の不十分さ、あるいは証拠不足である。この裁判が弁護士がいない本人訴訟であったことが、適切で無駄のない主張を展開する上では、やはり障害になったといえよう。

◇八木氏のコメント

損害賠償を命じられた八木氏がメディア黒書に宛てたコメントは次の通りである。PDFを全文で紹介しよう。

■八木啓代氏のコメント

注:このコメントは、本人の希望で2016年3月10日に変更した。

注:八木氏の反論については次の記事を参照

■メディア黒書の記事に八木啓代氏が抗議、八木氏の反論を掲載、メディア黒書に対して2件目の裁判提起を示唆

2015年11月25日 (水曜日)

「大阪維新の会」圧勝の背景に、東京に対する大阪人の劣等感と対抗意識、それに公務員に対する妬(ねた)み

大阪維新の会が22日に投票が行われた府知事選と大阪市長選で圧勝した。知事選では、現職の松井一郎知事が64%の得票率を得た。大阪市長選でも新人の吉村洋文氏が56%を占めた。他党はまったく歯が立たなかった。

選挙になると候補者は得票率を伸ばすための戦略を練る。大きな選挙になると、世論誘導の専門家を広告代理店から招聘(しょうへい)することも珍しくない。

「維新の会」の立ち位置は、結論を先にいえば極右である。自民党よりもさらに右寄りだ。とりわけ新自由主義の導入に熱心で、松井・橋下体制下では、「無駄をはぶく」を口実として、さまざまな合理化が進んた。今後も同じ路線が継続されることは間違いない。

安倍政権の政策を見れば明らかなように、新自由主義が目指しているものは、中央政府をスリム化して、経済を市場原理に委ねることである。そのために従来は中央が担っていた仕事を、民間に移したり、地方にゆだねる形を推進する。

改めて言うまでもなく、後者は地方分権の推進である。その最終段階が、大阪都と道州制の導入ということになりそうだ。

「地方に権限をゆだねる」とか、「地方を活性化する」などと言われれば聞こえはいいが、実態はバラ色ではない。たとえば医療や福祉政策を地方自治体にまる投げして、財源が不足すれば、これらの分野を地方の権限で切り捨ててしまうことになりかねない。その可能性が極めて強い。新自由主義と自己責任論が結びつき、民間の保険産業が急台頭しているのも、このような政策的、あるいは思想的な背景があるのだ。

次の某氏のツイッターが、大阪の悲劇を的確に描写している。

繰り返すけど今の大阪はピノチェト政権下のチリみたいな状況に片足突っ込んでる訳でね。メディアの主導権を握られた上で、新自由主義的経済と縁故主義中心の世界に突っ込んでいるんだから、そりゃ優秀な人から逃げ出していきますよ。かつてラテンアメリカで失敗した事のリプレイが始まってるんだからさ

もともと地方政党というのは、中央政府が最終的に行き着く地方分権政策の受け皿の性質があるのだ。それゆえに日本の新自由主義政党、具体的には自民と民主と維新の折り合いは本音の部分では極めて親密だ。たとえば民主党は、安保関連法案では自民党と対立したが、新自由主義の経済政策では同じ方向を向いている。「反自民」よりも、「反共」の側面の方がはるかに強い。

◇安倍政権よりも右の維新

それにしてもなぜ、大阪住民の多くが維新の会に投票したのだろうか。あるいはこれを逆に言えば、維新の会は、どのような戦略の下で大規模な集票に成功したのだろうか。わたしは基本的に3つのポイントがあると思う。

大阪人がもつ東京に対する激しい劣等感と対抗意識
維新は大阪の地方政党であることを打ち出すことで、中央に対する対抗意識をあおり、集票に結び付けたのではないか。

公務員に対する特殊な感情を逆手にとった。橋下代表の公務員批判は有名だ。公務員は最も生活が安定した層である。当然、多くの人々は彼らの地位を妬む。となれば公務員を正面から批判したり、虐めたりする行為に共感を覚える層が生まれる。それが集票に結び付く。

橋下代表の奇抜でたくましい言動を、現在の公権力に対する斬新な挑戦と勘違いしている有権者が多いこと。が、既に述べたように維新の権力批判は、右からの批判に過ぎない。新自由主義に対する批判ではない。

2015年11月24日 (火曜日)

森裕子氏は参院選の出馬自粛を、みずからが起こした裁判の戦後処理と検証が先ではないか?

11月16日付けの森裕子氏のTWITTER。森氏は来年の参院選に「野党統一候補」として出馬する意欲を記している。市民グループから森氏に対して、野党統一候補になるように要請があったというのだ。

来夏参院選から一人区の新潟選挙区。
市民グループから森ゆうこに対し、野党統一候補になるようにとの要請が行われた。11月15日に生活県連拡大幹事会が開催され、森ゆうこ代表が「野党統一候補」立候補を目指す!
との方針が確認された。

文中にある「市民グループ」が具体的にどの団体を意味しているのかは不明だが、「市民グループ」と「森裕子」が同じ文脈に現れると、わたしは2013年10月の一事件を思い出す。森氏が一市民に対して500万円の金銭支払いと言論活動の一部禁止を求め、辣腕・小倉秀夫弁護士を代理人に立てて一市民を名誉毀損で提訴した件である。

一市民とは志岐武彦氏のことである。

元国会議員によるスラップの可能性を疑った日本ジャーナリスト会議のフリーランス部会は、訴えられた側の志岐氏から話を聞く場を設けた。

これら一連の経緯は志岐氏の近刊『最高裁の黒い闇』(鹿砦社)に詳しい。この本には、森氏が起こした裁判の背景に、日本の司法の闇をめぐる志岐氏と森氏の論争があったことが記されている。その議論は森氏による提訴によって、法廷に持ち込まれたわけだが、不思議なことに肝心の森氏は法廷に一度も出廷しなかった。従って、わたしには訴訟の提起が単なる嫌がらせ(スラップ)に映った。国会議員によるスラップと位置付けた。

裁判は志岐氏が勝訴した。その後、志岐氏は森氏を擁護していた歌手で作家の八木啓代氏を名誉毀損で提訴した。「森VS志岐」論争に関して、志岐氏を批判する多量のツイートを投稿し続けたのが訴因だった。たとえば次のようなツイートである。

『とにかく明らかなのは、志岐さんには、誰もかけていない電話が聞こえ、会ってもいないのに会った記憶が作られ、そこでは、志岐さんに都合の良い事実が暴露されるらしいことである。早急に病院に行かれた方がよろしいかと思う』

『ちなみに、どうせまともな人は信じないので改めて書く必要もないと思いますが、志岐氏が昨日付のブログに書いていることは、すべて妄想です。かなり症状が進んでいるなと思います。早い内に病院か教会に行かれる方がよいと思います。』

『とりあえず志岐氏に関しては、かけてもいない電話を受けたとか、存在しないメールを受け取ったとか、会ってもいないのに話を聞いたとか、そういう「症状」でいらっしゃるとしか申し上げようがありません。個人的には、すみやかに病院に行かれることをおすすめしたいです。』

『Masato Shiotsu - co2@co2masato統失じゃあないですか!RT @nobuyoyagi: とりあえず志岐氏に関しては、かけてもいない電話を受けたとか、存在しないメールを受け取ったとか、会ってもいないのに話を聞いたとか、そういう「症状」でいらっしゃるとしか申し上げようがありません。』

【注】:「統失」は、統合失調症の意味

『病的な虚言癖」でなければそういうことになりますね RT @co2masato 統失じゃあないですか!RT @nobuyoyagi: とりあえず志岐氏に関しては、かけてもいない電話を受けたとか、存在しないメールを受け取ったとか、会ってもいないのに話を聞いたとか、そういう「症状」』

『山崎氏のブログ記事からだとそういう可能性もありますね。… いずれにしても医師の診断を受けるべきかと RT @co2masato 人格障害の可能性もありますね。』

◇まず、裁判の「戦後処理」を

これに対して八木氏も、志岐氏に対して本人訴訟(弁護士抜き)で名誉毀損裁判を起こした。ところが八木氏はどういうわけか被告として、わたしの名前も加えていたのだ。「サクラ・フィナンシャル・ニュース」の次の記事で名誉を毀損されたというのだった。

■【特報】「志岐武彦VS八木啓代」の名誉毀損裁判、背景に疑惑の小沢一郎検審をめぐる見解の違い

さらに八木氏は、メディア黒書の次の4本の記事についても、名誉毀損だという自論を展開している。

■「志岐武彦VS八木啓代」裁判の本人尋問、ツイッターによる名誉毀損は認められるのか? 8日の13:30分から東京地裁

■「志岐武彦VS八木啓代」裁判の口頭弁論、7月8日に尋問の予定、注目されるツイッターの表現に対する司法判断

■「志岐武彦VS八木啓代」裁判、争点外のもうひとつの着目点「ツイッター表現に見る精神障害に対する偏見の有無」

■森裕子裁判の「戦後処理」、勝者の志岐武彦氏が25日に歌手の八木啓代氏を提訴、Twitterで「虚言癖」「早い内に病院か教会に行かれる方がよいと思います」

(詳細については、裁判が終わってからメディア黒書か書籍で公表予定)

つまり森裕子氏が口火を切った訴訟による「司法の闇」をめぐる論争は、また終わっていないのである。不幸にも法廷で続いている。

と、すれば森氏は問題が解決するまで森氏は、参院選への出馬を控えるべきではないか。

わたしは森氏が出馬するのであれば、新潟県の各市民団体に「森VS志岐」裁判、「八木VS志岐」裁判、それに「八木VS志岐・黒薮」裁判に関する情報を提供するつもりだ。

同時に森氏に対しては、最高裁がらみの諸問題についての見解と公約を明らかにするように求めたい。

2015年11月23日 (月曜日)

東京地裁103号法廷の一事件、差別意識のある裁判官に公正・中立な裁判はできるのか?

裁判官の資質について考える機会があった。改めて言うまでもなく機会とは、18日に判決が言い渡された特定秘密保護法違憲訴訟の法廷で、谷口豊裁判長が記者クラブに対しては、判決の言い渡し前に2分間の撮影を許可したが、フリーランスのフォトジャーナリストに対してはそれを認めず、しかも、その理由説明を回避した事件のことである。

既に述べたように、18日の判決法廷では、原告のフリージャーナリストの1人が突然に立ち上がり、谷口裁判長に対してフリーランスに対しては、撮影を許可しない理由の説明を求めた。

これに対して谷口裁判長は、判決後にその理由を説明することを約束した。しかし、これに納得せず、5,6名の原告が抗議の退廷を行った。

わたしは谷口裁判長は、忠実に約束を守るものと思っていた。しかし、理由を説明することはなかった。

原告が不穏当な行動を取ったというのが前言を翻し、説明を拒否した理由らしい。しかし、質問したり、退廷する行為は原告の正当な権利である。それを理由に、約束を破ってもいいことにはならない。

今回の谷口裁判長の姿勢は、裁判官の資質を評価する大事な指標になる。裁判では裁判官に中立・公平さが求められる。法廷に立つ人々は、たいてい裁判官は中立・公正な姿勢を守りながら係争を裁くものと考えている。このようなイメージが消えると、裁判所の存在価値そのものがなくなってしまう。軍事法廷が民主主義の国で受け入れられないのは、裁判官そのものが中立の立場ではないことをが周知になっているからにほかならない。

今回、谷口裁判長が起こした差別事件を通じて、当然、わたしは谷口氏の裁判官としての資質を疑わぜるを得ない。そして特定秘密保護法違憲訴訟において谷口裁判長は、そもそも訴訟が始まった時点で、すでに国側を勝訴させることを決めていたのではないかと勘ぐる。

原告と被告の双方が提出した膨大な量の紙面を熟読したうえで、どちらの主張が正しいかを判断したのではなく、訴訟の初めから結論を決めていたのではないかを考えざるを得ない。法廷撮影をめぐる露骨な差別を通じて、わたしはそんなふうに考えるようになった。少なくとも、裁判官にとって最も大事な中立・公正の意識が欠落しているようだ。

谷口裁判長が最初から、国を勝訴せることを決めていたとすれば、1年半に渡った審理は一体何だったのか? これほど原告をバカにした話はないだろう。

国が裁判官に高給を支払い、人を裁くただならぬ特権を与えている前提には、中立・公正は裁判の遂行よりも、別の目的があるのではないか。が、今回の差別事件で、日本の裁判官の質が見えてきた。

◇判決法廷の中継が不可欠

ちなみにすでに法廷での審理や判決を実況中継している国もある。中米のグアテマラである。次に示すのは、米国の独立系テレビ局「Democracy Now! 」が放映した画像で、1980年代の初頭に先住民族に対してジェノサイド(大量虐殺)を断行した元将軍で元大統領・リオス・モントが禁固80年の判決を受ける場面を記録した動画である。

 

■日本語版

現在の日本では、判決の瞬間を画像で記録することは禁じられている。グアテマラよりもはるかに遅れている。

2015年11月20日 (金曜日)

新聞やテレビが報じなかった判決後の事件、特定秘密保護法の判決言い渡し後に法廷で何が?谷口豊裁判長が原告に「これはオフレコにしてほしい」

18日に東京地裁で判決の言い渡しがあった特定秘密保護法違憲訴訟で、メディアが報じなかった「密室」での事件があった。既報したように、判決そのものは原告が敗訴した。

判決が言い渡される午後3時を過ぎたころ、法廷正面の扉から黒服に身を包んだ3人の裁判官が現れて、所定の席に着いた。とはいえ、判決言い渡しの前に司法記者クラブの記者が画像撮影を行う段取りになっている。テレビのニュースなどで法廷の内部が映し出されることがあるが、その画像撮影は判決の前に行い、判決の瞬間そのものを記録に残すことは厳しく禁じられている。

改めて言うまでもなくこのような理不尽なルールがあることは、原告も知っていた。それでも原告の豊田直巳氏ら3人の映像ジャーナリストが裁判所に対して事前に撮影申請を行った。しかし、谷口豊裁判長は、それを認めなかった。記者クラブに所属する記者に対しては撮影を認めたが、フリーランスの映像ジャーナリストについては認めなかったのだ。

原告であるわたしは、原告たちの中にこの問題について釈然としない思いで出廷している人が多いことを知っていた。

■記録に残すに値する差別事件

谷口裁判長を中に2人の判事が狛犬(こまいぬ)のように両側に並び判決法廷の段取りが整った。記者クラブの記者による撮影が始まる一瞬のすきをついて原告席から元朝日新聞記者の吉竹幸則氏が立ち上がった。そして谷口裁判長に発言を求めた。

吉竹氏は、フリーランスに対しては撮影を許可しなかった理由を説明するように求めた。

谷口裁判長は、判決を言い渡した後にその理由を説明すると答えた。

これに対して吉竹氏は、撮影が終わってから説明を受けても画像記録は残らないので意味がないと反論した。

谷口裁判長は、再び判決後に説明すると繰り返した。

吉竹氏に続いてやはり原告で元読売新聞記者の山口正紀氏が立ち上がり、裁判所の差別的な扱いに対して抗議の念を現すために、記者クラブによる撮影の間、退席すると宣言して、傍聴席のエリアにある出入口へ向かった。山口氏に続いて5人の原告が退廷した。

張り詰めた空気の中で裁判所の書記官が、記者クラブの記者たちに撮影に入るように指示した。2分間の撮影の間、3人の裁判官は石像のように動かなかった。表情も変えなかった。

この後、谷口裁判長は原告を敗訴させる判決を読み上げた。判決の言い渡しでは、通常は主文しか読まないが、谷口裁判長は、判決要旨を読み上げた。

判決の言い渡しを終えると、3人の裁判官は席を立って法廷正面の「ほら穴」の中へ一列になって戻っていった。法廷から彼らの背中へ向けてブーイングが起こったことは言うまでもない。

書記官が法廷を埋めた傍聴者に退席を促した。しかし、納得できないのか、なかなか席を立とうとはしない。が、やがてぼつぼつと退廷が始まった。最後まで残ったのは、三一書房のOBで編集工房朔の三角忠氏だった。三角氏は席を立つ気配がない。やがて複数の職員が三角氏を取り囲んだ。それでも三角氏は平然と動かない。

どれだけ時間が経過したかは不明だが、三角氏はようやく腰を上げた。

再び三人の裁判官が「ほら穴」から現れた。着席してしばらく無言だったが、谷口裁判長は、「差別」理由の説明はおこなわないと前言を翻した。吉竹氏らの行動により信頼関係が損なわれたのが、説明しない理由なのだと言う。訴訟の最終段階になって、原告に裏切られたのが許せないと告白した。ただし、「これはオフレコにしてほしい」と念を押した。

「オフレコにしてほしい」と言えば、オフレコにしてもらえると考えているらしい。原告は繰り返し説明を求めたが、結局、谷口裁判長は「差別」理由を説明しないまま法廷を去った。

逮捕されたり起訴されても被疑者がその罪状を知ることができない異常な実態を正当化する特定秘密保護法に対して、はっきりと「違憲」を宣告する独立性と勇気がない裁判官に、われわれ国民は人を裁くというただならぬ特権と高給を与えてもいいものだろうか。司法が権力構造の歯車として組み込まれていると考えざるを得ないのである。疑問が多い裁判だった。

新聞やテレビが、判決後のこの事件を記録し、報じなかったことは、日本のジャーナリズムの立ち位置をよく示している。これではダメなんだ。

2015年11月19日 (木曜日)

特定秘密保護法違憲訴訟、原告の訴えを「肩すかし」で却下、違憲・合憲の判断を避ける

フリーランスのジャーナリスト・編集者・写真家など43名が、特定秘密保護法は違憲であり、取材活動を委縮させられるとして、同法の無効確認などを求めた裁判で、東京地裁は、18日、原告の請求を退ける判決を下した。

谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が実際に適用された具体例が存在しないことを理由に、現在の段階では「法律が憲法に適合するか否かを判断することはできない」として、原告の請求を退けた。

■判決全文PDF

裁判所が公開した判決要旨は、この点について次のように述べている。
我が国の法体系の下において,裁判所は,具体的な紛争を離れて,法律が憲法に適合するか否かを判断することはできない。また,具体的な紛争を前提とする場合であっても,法律の違憲無効.を抗告訴訟として争うことができるのは,例外的な事情があるときに限られる。

しかるに,本件において,原告らの主張をみても,特定秘密保護法に関する具体的な紛争が生じているということはできないし,抗告訴訟として争うことができる例外的な事情があるとも認められない。したがって,本件法律無効確認請求に係る訴えは,不適法であるから,これを却下することとした。

原告団はすでに控訴を決定している。

■解説/特定秘密保護法の性質を無視した判決

この訴訟は、2013年12月に成立し、1年後に施行された特定秘密保護法が憲法に違反するという認定を求めた憲法裁判である。ところが日本の司法制度の下では、実際に発生した具体的事件で、取り締りの根拠となった法律が適用された場合に限って、違憲か合憲を判断するのを原則としている。従って特定秘密保護法を理由とした逮捕・起訴・言論抑圧などが明確に確認できない現在の段階では、同法が違憲か合憲かを具体的事件にそくして判断しようがないから、原告の訴えを却下したというのが、この判決のポイントである。

谷口豊裁判長は、特定秘密保護法が違憲であるとも、合憲であるとも判断せずに、原告の訴えを「肩すかし」というかたちでかわしたことになる。この種の司法判断をするのは、いわゆる憲法裁判所の役割という立場のようだ。その憲法裁判所は、日本の司法制度の中には組み込まれていない。存在しない。

ちなみに特定秘密保護法を根拠とした具体的な逮捕・起訴・取り締りが存在しないから憲法判断が出来ないという見解は、特定秘密保護法の危険な本質をよく理解していない証にほかならない。たとえば理解していても、故意に隠したとしかいいようがない。

と、いうのも特定秘密保護法の下では、公権力が言論を規制する事件を起こしたとしても、その行為が特定秘密保護法に基づいたものであることが公言されることはないからだ。警察は、「特定秘密保護法に基づいて逮捕する」とは宣告しない。起訴後の裁判でも、この点は秘密にされたまま審理が進む。

当然、逮捕された側は、その根拠が分からず、ロシアの作家・ソルジェニーツィンのように「えっ、どうして私が?」と自問することになる。シリアで消息を絶っているジャーナリストの安田純平氏に関する報道が皆無なのも、特定秘密保護法による規制を疑うより仕方がない。つまり、特定秘密保護法が原因で不可解な事態が生じたとしても、それを立証することは出来ないことになっているのだ。

このような事態が発生することが特定秘密保護法の大きな落とし穴であり、問題点であるとすれば、こうした法律の制定行為自体が、憲法の精神を無視した行為にほかならない。事件である。当然、その行為が行き着いた先にある特定秘密保護法が違憲か否かを判断しなければならい。

施行されたばかりの法律の違憲性を問うた今回の裁判を、「門前払い」にした谷口判例は、TPP違憲訴訟や今後に予想される安保関連法案の違憲訴訟にも影響を及ぼしそうだ。こうして日本はファシズムへ向かって進んでいく。

2015年11月17日 (火曜日)

18日に特定秘密保護法違憲訴訟の判決、懸念される安保関連法との連動的運用

フリーランスのジャーナリスト、編集者、写真家などが起こした特定秘密保護法違憲訴訟の判決が18日に東京地裁で下される。判決後、参議院会館で報告集会が開かれる。詳細は次の通りである。

日時:3月18日 15時

場所:東京地裁 103号法廷

報告集会:15時30分から、参議院会館B109会議室

◇多国籍企業のための海外派兵という脈絡の中で

メディア黒書でも既報したように、特定秘密保護法は、もともと日本が軍事大国化する中で、米軍と自衛隊の共同作戦の際に生じる秘密事項を保持するための法的根拠を得る目的で浮上してきた。しかし、いざフタをあけてみると、秘密指定の権限をもつ行政機関が次に示す19省庁にも広がっていた。

(1)国家安全保障会議 (2)内閣官房 (3)内閣府 (4)国家公安委員会 (5)金融庁 (6)総務省(7)消防庁 (8)法務省 (9)公安審査委員会 (10)公安調査庁 (11)外務省 (12)財務省 (13)厚生労働省 (14)経済産業省 (15)資源エネルギー庁 (16)海上保安庁 (17)原子力規制委員会 (18)防衛省 (19)警察庁

秘密指定の権限をもつ行政機関を並べてみれば明らかなように、この法律により、日本の政治に関する情報は、「役所」の裁量でほとんど特定秘密あつかいにすることができる。特定秘密に指定された情報を職員が開示したり、逆に何者かが収集する行為が発覚した場合、最高で禁固10年という重い刑罰がある。戦前の治安維持法の現代版にほかならない。

報道に携わる者には、この法律の適応が除外されるという条項はあるが、「報道に携わる者」とは、NHKや新聞社などいわゆる企業に所属し、記者クラブや軽減税率(新聞社)、それに補助金(NHK))などの既得権益を提供することで簡単にコントロールできる記者のことで、フリーランスに関しては、除外される可能性が高い。そこでフリーランスの報道関係者43名が違憲訴訟を起こしたのである。

従ってこの点に関して裁判所がどのような判断を下すのかが、ひとつの注目点である。

◇安保関連法との複合汚染

この法律の脅威は、安保関連法と連動したときに一層危険度が増す。たとえば海外における自衛隊員の戦闘による死者数や活動実態が特定秘密により封印された場合、「日本軍」が海外でなにをやっているのかがまったく把握できなくなる。

核兵器の運搬が行われていても、その運搬作業が特定秘密に指定された場合、表向きは、運搬作業など実施されなかったことになってしまう。これでは憲法で保障された国民の知る権利が侵害されてしまう。

太平洋戦争下の中国大陸で旧日本軍が起こした重大な戦争犯罪に対する深い反省のない安倍政権が、このような法律を運用する危険性をいくら強調してもしすぎることはない。

繰り返しになるが、特定秘密保護法の危険性は、安保関連法案と連動すると規模を増す。「複合汚染」により猛毒と化すのだ。