2015年11月26日 (木曜日)
八木啓代氏に10万円の賠償命令、志岐氏の主張の一部を認め、八木氏の抗弁(反論)はまったく認めず、「八木VS志岐」裁判
市民運動家の志岐武彦氏が、歌手で作家の八木啓代氏に対して、多数のツイートなどで名誉を毀損されたとして、200万円の賠償を求めた裁判で、東京地裁の佐藤隆幸裁判官は、25日、志岐氏の主張の一部を認め、八木氏に対して10万円の支払いを命じた。
原告(志岐氏)と被告(八木氏)の双方から多量の書面が提出されたにもかかわらず、判決では志岐氏の主張の一部が認められたにとどまった。
志岐氏の主張に関していえば、裁判所が名誉毀損として認定したのは、八木氏が発信した6件のツイートと1件の電子メールである。
一方、被告・八木氏の抗弁(志岐氏に対する反論のこと)については、まったく認められなかった。すべてが不認定となった。
八木氏に対する10万円の賠償命令は、わたしが知る名誉毀損裁判の判例と比較すると著しく低額だが、もともとわたしは高額訴訟・高額賠償には反対の立場だから、今回の賠償額は妥当だと考えている。今後の名誉毀損裁判でも、このような傾向が現れることを希望する。
◇ツイートによる名誉毀損
この裁判の最大の争点は、八木氏が発した約200件(リツイート等を含む)が、志岐氏の社会的な地位を低下させたかどうかという点だった。とはいえ200件のツイートすべてを詳細に審議したわけではない。しかし、70件のツイートについての裁判所の評価(別紙PDF・準備中)が記されているので、読者には参考にしてほしい。
ちなみに裁判所が名誉毀損と認定したツイートは次の通りである。
■(18)さらに驚愕することには、志岐さんがある方に送ったメールで、私(八木)が話したこととして、まったく事実無根なことが書かれているのを確認しています。嘘でなければ妄想でしょうRT
■(98)もっと驚くべきことは、志岐氏は、他の人に送ったメールでは、私と直接会って話し、私も「それは知っていた」と認めたと書いているのである。私は志岐氏になど会っていないし、ましてや認めるはずもない。すべて妄想なのである。
■(172)ちなみに、私のことも言ってないことを言ったとした偽メールを送られています。RT@553Sandhood @Chteaux1000『一方的に悪質な嫌がらせをなさっているのは志岐さんなのですが』そこのところを具体的に
■(177)ちなみに、私も志岐さんに、言ってもいないことを「八木が(志岐氏に)告白した」とかいう根も葉もない悪質なデマメールを第三者に送られたりしてブチ切れています。@553Sandhood」
■(33)志岐さんがごちゃごちゃ言っているようですが、この方は、そもそも会ってもいないし言ってもいないのに、「八木と会って、直接聞いた」などと、真っ赤なデマを他人に吹聴していたという事実があります。そのことだけで、嘘つきであるか妄想癖があるかのどちらかだとしか申し上げようがありません。
■(201)これなんか相当キモい。[URL]私がかけたことない電話を受けたそうだRT @Cruisingtrain @t_kawase 人格的におかしい人が「普通」の人を追い詰めていく、という類のホラーが一番怖い。生きている人間が一番怖いよ(笑)。
◇電子メールによる名誉毀損
八木氏が複数の人たちに送った電子メールも、志岐氏の「社会的地位を低下させ、その名誉を毀損するものと解するのが相当である。」と名誉毀損を認定した。次のメールである。
この件につきまして、志岐氏は私八木に関しても、まったく事実無根の内容の誹謗中傷のメールを複数の人に送るなど、かなり悪質な行動を取られております。(場合によりましては、森さんの裁判の中で、私も証言をする可能性もございます)自分の自費出版の本を売りたいがために、売名のためなら何でもするような、このような輩の言動を真にお受けになることのないよう、ご注意願います。
◇八木氏の抗弁は認められず
一方、八木氏の主張(抗弁、あるいは反論)はまったく認められなかった。
たとえば、志岐氏に対するツイッターによる攻撃は、対抗言論として正当であるという主張に対して、裁判所は次のように判断した。
被告は、表現の自由の保障を根拠とする「対抗言論の法理」により、論争となっている点に関連する批判や反論は、名誉毀損となる人格攻撃であっても許容される旨主張する。
しかし、かかる被告の主張は、一定の場合には人格攻撃が許容されるとするその結論自体が、容易には採用し難いものであるというほかない。
◇本人訴訟の壁
志岐氏の主張の一部を除いて、裁判所が双方の主張をことごとく退けた要因はいくつかあるが、ツイートの評価に関していえば、ツイートそのものがすでに公知となっている特定事実を前提とした「評論・意見」と解釈された事情がある。評論・意見に関しては、名誉毀損にならないという判例も多く、裁判はそれを採用したようである。
双方の主張の大半が認められなかった第2の要因は、主張の不十分さ、あるいは証拠不足である。この裁判が弁護士がいない本人訴訟であったことが、適切で無駄のない主張を展開する上では、やはり障害になったといえよう。
◇八木氏のコメント
損害賠償を命じられた八木氏がメディア黒書に宛てたコメントは次の通りである。PDFを全文で紹介しよう。
注:このコメントは、本人の希望で2016年3月10日に変更した。
注:八木氏の反論については次の記事を参照