1. 危険が指摘され始めたLED照明(ブルーライト)による人体影響、理学博士・渡邉建氏インタビュー①

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2015年02月04日 (水曜日)

危険が指摘され始めたLED照明(ブルーライト)による人体影響、理学博士・渡邉建氏インタビュー①

青色LEDの開発に貢献した日本の研究者3名のノーベル物理学賞受賞を機に、関連製品のPRが大々的に行われている。一方で、ここ半年余りの間に、青色LEDによる人体への悪影響も指摘されるようになった。

東北大学大学院の研究チームは昨年12月、青色LEDを昆虫に照射したところ死に至ったとする研究結果を、英国の科学誌『Scientific Reports』に発表した。

また、岐阜薬科大学も同誌に、青色LEDが加齢黄斑変性症など失明に至る病気の原因になっているとの研究結果を発表。

さらに、LED光を浴びた熱帯魚の奇形など、民間レベルでもリスクが報告されている。LEDはどのような性質のものなのか。「これまで『安全』と言われてきたLEDは、そう簡単な問題ではない」と話す理学博士の渡邉建氏に、リスクとその対処法を聞いた。

--LEDはどこで使われていますか?

 渡邉:もっとも身近なものとしては、部屋の照明や街灯です。丈夫で長持ちして、電力の使用量も抑えられるということで従来の照明から、LEDへ切り替える人が増えています。また、パソコンのバックライトの照明にも使われています。

かつては特殊な蛍光灯を使っていたのですが、今はそれをやめて白色LEDのバックライトになっています。そこに液晶のスクリーンを置いているわけです。さらに携帯電話やスマートフォンのバックライトにも、LEDは使われています。

ちなみにLEDではありませんが、紫外線は冷蔵庫などの殺菌装置や、水をきれいにする装置で実用化されています。紫外線に毒性があることは周知ですが、青色LED(ブルーライト)にも、毒性があることが最近になって指摘されるようになっています。

後で述べますが、東北大学のグループが、ブルーライトを害虫駆除に応用する方向で研究を進めています。ですから、当然、人間の人体にも有害な可能性があります。

◇ブルーライトと電磁波

--そもそもLEDとはどのようなものなんでしょうか?

 渡邉:LEDは、Light-emitting diodeの頭文字を取った略称です。半導体の発光ダイオードのことです。これに電流を流すと光を発します。ですから文字通り「発光」ダイオードというわけです。

しかし、眼にみえない光を発する領域もあります。たとえばテレビのリモコンなどは、赤外線のLEDなので知覚できませんが、センサーが赤外線を感知するから機能するわけです。

 --LEDでは、どのような光の色が出せるのでしょうか?

 渡邉:赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫です(不可視光の赤外光、紫外光を出すLEDもあります)。これらの色光を組み合わせることで、別の色も合成できます。このうちブルーライト(青色LED)の開発は日本の3人の研究者によってなされ、昨年、ノーベル物理学賞を受賞しました。

最初に発明された色は赤でした。米国人のニック・ホロニアックという人が1960年代に赤LEDを作ったのです。そのうち黄や緑が開発されました。今、青が出てきたので、光の合成により白色もできるようになりました。

その意味では、ブルーライトの開発は、産業界にとっては、大きな貢献には違いありません。しかし、ブルーライトによる人体への影響も指摘されはじめているのです。

そもそもブルーライトとはどういう性質のものなのだろうか。
 読者は意外に感じるかも知れないが、この点を理解するためには、電磁波とは何かを理解しなければならない。

電磁波の「電」とは電気のことである。一方、電磁波の「磁」とは、磁気のことである。

 つまり電磁波とは、ごく端的に言えば、電気と磁気がその影響範囲である電磁場を作った電波の形状を描写した言葉である。「電磁波=電波」と考えてもよい。

  電磁波にはさまざまな種類がある。原発のガンマ線から医療現場のエックス線、さらには携帯電話の通信に使われるマイクロ波まで、かなり細かく分類されている。その分類の基準となるのが、電波の周波数(サイクル数)である。一秒間に繰り返す波の数により、下図PDFのように分類され、ヘルツ(サイクル/秒)という単位で表示される。

電磁波の分類PDF

 たとえば電力会社が提供する電気の周波数は、50ヘルツ(東日本)である。これは1秒間に50サイクルの波を意味する。ある種の無線PCは、2.5ギガヘルツ(25億サイクル/秒)、電子レンジは、2.45ギガヘルツ(約24億サイクル/秒)である。

周波数が高いほど波が小刻みになるので、波長が短くなる。それに伴いエネルギーも高くなるので波長によって、電磁波を分類することができる。

 さて、この電磁波の分類対象のひとつに可視光(380 ~ 780 nm)と呼ばれる帯域がある。文字通り、光として視ることが可能な帯域の電磁波である。本稿のテーマであるブルーライトは、可視光線に分類される。ブルーライトも、電磁波である。

◇ブルーライトで昆虫が死んだ

--ブルーライトによる、どのような人体影響が懸念されているのでしょうか?

渡邉:問題視されていることは、複数あります。昨年12月に東北大学大学院農学研究科の堀雅敏准教授らのグループが、LEDのブルーライトに殺虫効果があるという研究結果を英国の『Scientific Reports』に発表しました。昆虫に特定の波長を持つブルーライトを放射したところ、昆虫が死ぬことが分かったのです。

これまで、ブルーライトよりも波長が短い(エネルギーがより高い)紫外線に殺菌作用があることは知られていましたが、それよりも波長が長い(エネルギーが低い)ブルーライトで、細菌どころか昆虫が死ぬことが分かったのです。これは従来の常識を覆した発見で、驚きに値します。

東北大学大学院の研究チームは、ショウジョウバエの蛹(さなぎ)に、紫から赤までのピーク波長378~702nmのLED光を放射して、羽化できずに死亡した割合を調べた。その結果、440nmと467nmの波長のブルーライトがもっとも致死率が高いことが分かった。そこで今度は、ショウジョウバエの卵、幼虫、成虫に対して467nmのブルーライトを当てたところ、いずれも「照射」により死亡した。

 次に蚊の蛹にブルーライトを当てて殺虫効果を調べる実験を行った。その結果、417nmの波長のブルーライトだけが高い殺虫率を示した。

 こうした実験結果を踏まえて、東北大学のプレスリリースでは次のように結論づけている。

青色光は様々な昆虫種に対して殺虫効果を示します。また、その効果は卵、幼虫、蛹、成虫のいずれの発育段階でも得られます。ただし、青色光であっても効果的な波長は昆虫の種により異なっております。また、ショウジョウバエのように、ある種の昆虫にとっては、紫外線よりも青色光のほうが高い殺虫効果を示し、動物に対する光の致死効果は波長が短いほど大きいという従来の考えは当てはまらない動物種の存在が明らかになりました。 
 

渡邉:東北大学の研究結果からすると、特定の波長のブルーライトが細胞を傷つける可能性があります。細菌とは異なり、かなり高度な生物に属す昆虫が死ぬわけですから、人体に対する影響にも注視する必要があります。

◇目の網膜を傷つける理由
 --ほかにどのような人体影響が問題になっていますか?

 渡邉:目に対する悪影響も懸念されています。これについては昨年の6月、岐阜薬科大のグループが研究結果を、同じイギリスの科学誌『Scientific Reports』に掲載しました。ブルーライトが眼精疲労や網膜の急性障害、加齢黄斑変性、色素変性の原因のひとつではないかと考察される実験結果を公表したのです。

マウスの視細胞を被検体に使って、LEDによる青光、白光、緑光で曝露させ、それぞれの活性酸素の量を調べた実験です。活性酸素の量が増えるということは、細胞に障害が起きていることを意味します。

実験の結果、緑色光ではまったく変化がありませんでしたが、青光と白光では、活性酸素の量が増えました。白色LEDも青色LEDを基本に作っているわけですから、白色LED光でも活性酸素が増えて当然です。

紫外線は角膜や水晶体に吸収されますが、青色光は、網膜に達するのです。光は電磁波エネルギーですから、自然に消えるわけではありません。物がぶつかったら痛いでしょう。なにかの作用に変質します。この場合ですと活性酸素の発生でしょう。それが網膜の障害となって現れるわけです。

白色LEDを照明に使っている職場で働いているひとたちが、「目が疲れる」と訴えるのは、当たり前のことではないでしょうか。

 岐阜薬科大学薬効解析学研究室の原英彰教授の研究グループは、ブルーライトが目に障害を及ぼすメカニズムを解明した。プレスリリースによると、「細胞障害の原因となる活性酸素の量は、青色LED、白色LEDの順に多く、緑色LEDでは増加」しなかった。障害の原因については、次のように述べている。

ブルーライトの波長を含むLEDを細胞に照射した際に活性酸素が増加したことによって細胞のエネルギー産生の場であるミトコンドリアが障害を受け、さらにタンパク質合成の場である小胞体に障害が起きることで、細胞障害が惹き起こされたと考えられます。