危険が指摘され始めたLED照明(ブルーライト)による人体影響、理学博士・渡邉建氏インタビュー②
◇LEDで睡眠障害が起こる理由
--LEDが睡眠障害の原因になるという説もありますが?
渡邉:網膜に神経節細胞というものがあります。15年ぐらい前になりますか、この細胞の新しいタイプが発見されました。ガングリオン・フォトセプターと呼ばれるもので、ここで受けた信号は、体内時計にあたる脳の視交叉上核というところへ送られます。
視交叉上核は、昼間であれば太陽光のブルーライトが目から入るために、昼間と判断して睡眠を妨げますが、夜になるとブルーライトが減るので、睡眠に入れる状態にします。ところが夜間にパソコンなどのブルーライトが多量に目に入ると、体内時計が夜と昼を勘違いして、眠れなくなるわけです。
常にブルーライトを浴びていると、1日のリズムが崩れてしまいます。少なくとも夜は、パソコンやスマフォを使わない方がいいですね。夜は赤みがかった色の明かりを使うのが賢明です。いまの白色LEDは読書には向かないですね。
ガングリオン・フォトセプターは、昼間と夜を識別するための細胞ではないかとする説が有力です。また、瞳孔の大きさをコントロールする信号を送っている細胞ではないかということも分かってきました。
◇LEDで熱帯魚の背骨が曲がった
--発癌性はどうでしょうか?
渡邉:紫外線には発癌性(毒性)があります。ブルーライトについても、活性酸素を発生させますから、免疫系に影響を及ぼし、発癌につながると思います。ですから、常時、過剰にブルーライトをあびるのは問題があると思います。
夜働いている女性が、乳ガンになる可能性が高いことは、かなり確かになってきています。夜になると、ブルーに対する感度が高くなりますから、それだけ人体影響も大きいのです。
筆者は、自宅で飼っているグッピー(熱帯魚)の水槽の照明を、通常の蛍光灯からLEDに切り替えた。その結果、腫瘍を発症するグッピーや背骨が曲がるグッピーが現れた。水草は、黒く変色した。この現象を、2014年9月1日に自身のウエブサイトで紹介したところ、20万件に近いアクセスがあった。
※筆者が自身のウエブサイト「MEDIA KOKUSYO」に掲載した奇形熱帯魚の記事
--グッピーに異変が起きた原因はLEDのブルーライトでしょうか?
渡邉:白色(青色LED内臓)を当てた結果、こういうことが起こったわけですから、それが原因だと考えてもいいだろうと思います。記事のコメント欄に、水槽がよごれていたのではないかとか、いろいろな書き込みがありましたが、背骨がまがるというのは、尋常ではないですね。
◇安全なLEDは存在するのか?
--LED照明の質によって危険度は異なりますか?
渡邉:質の高いLEDは、光の合成(3色)で白色を作ります。光の波長の組み合わせで、なるべく自然光に近いものを作ることが出来れば、よりリスクは少なくなります。
しかし、製造費が非常に高くなります。安いLEDは、青を基調にして、蛍光物質をかぶせて白色を出しているだけですから、製造費は安くなりますが、リスクは増します。多分、街灯などに使われているのは、いちばん安いタイプです。どうしてもLEDを使うというのであれば、安いものは避けるべきです。ただ、現段階では高いものでも、絶対安全とは限りません。
太陽光は、赤から青まで、あらゆる波長を持っているわけです。これが自然光です。
ところが、LEDはある特定の波長だけを使うわけです。波長の組み合わせに関して言えば、一番危険なのは、レーザーですね。特定の波長だけを出し、しかも、真っ直ぐに直進します。網膜に入ると網膜上で焦点を結びます。ですからそこが焼き切れてしまう恐れがあります。レーザー光源を覗いてはいけない。それで失明した人は多いのです。
自然光は、人類が馴染んでいますから、極端に、紫外線やブルーライトをあびない限りは、まあ安全でしょうね。
◇業界団体は安全を宣言しているが・・
--業界団体は安全宣言を出していますが。
渡邉:岐阜薬科大学や東北大学の研究成果を反映しているとは思えません。第一、これらの研究成果が公表されたのは、ここ半年のことで、しかも、ブルーライトで昆虫が死に至るという新発見にいたっては、昨年の12月の発表ですから、安全宣言に研究成果が反映されていないのが当然です。
たとえば照明学会という団体があるのですが、ここは通常のLEDの使用で問題がないだろうと言っています。
しかし、これまで「安全」と言われてきたLEDが、そう簡単な問題ではないぞ、ということになっています。東北大学の研究発表にインパクトがあるのは、殺菌作用があるのは、紫外線だけだと思われていたのが、波長が417nmとか467nmのブルーライトで昆虫が死んだからです。
--LEDの街灯などが、部屋に差し込んでいる場合の対策を教えて下さい。
渡邉:LEDの可視光線は電磁波ですが、少し性質が異なります。可視光線の実体はフォトンといふ粒子でもあると言われています。粒子でもあるし、電磁波でもある。粒子が当たって、網膜で電気的な反応が起こり、脳で光を認知しているわけです。
対処方法はいたって簡単で、光を遮断することです。しかし、LEDの光が当たる窓ガラスのカーテンは劣化します。カーテンがエネルギーを吸収しますから、色もあせます。
◇パソコンから目を守る方法
--パソコンの画面からもブルーライトが出ているわけですが、対策はあるのでしょうか?
渡邉:わたしはパソコンの画面を少し暗くしています(周辺はあかるく)。また、3原色をコントロールできるようになっているので、青色成分を落としています。そうすると画面全体がやや黄色っぽくなりますが、こうするほうが安全です。ただ、実際にどこまで効果があるのかは、分かりませんが・・・。
--赤色LEDと黄緑LEDは大丈夫ですか。
渡邉:今のところ害は報告されていないようです。LEDを直視し続けた場合などは別ですが、特に普段の生活では問題ないと思います。太陽光だって、ずっと見ていたら、眼は焼き切れますからね。
--新商品の安全性の問題をどのように考えればいいのでしょうか?
渡邉:ノーベル賞を2度受賞したキュリー夫人は、放射性物資のラジウムとかポロニウムを直に手で触っていました。はじめは危険性が分からなかったからです。その結果、晩年には、手が動かなくなったと言われています。いま携帯電話やスマフォを手にしている幼児が、大人になったとき、どうなるかはだれも知らないわけです。
スマフォや近所の携帯基地局のアンテナから放射される電磁波(放射線)は見えません。匂いも味もありません。ですから危険性に気づかない人が多いのです。分かっていないことはまだいっぱいあります。常にリスクを頭に入れておくべきだと思います。