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2015年11月16日 (月曜日)

パリの「同時多発テロ」、メディアが戦争としての定義を採用しない理由

フランスでISが断行した「同時多発テロ」は、今世紀の戦争の特徴を象徴している。客観的に見れば、ISが戦争をヨーロッパにまで持ち込んだというのが最も冷静な評価だ。テロの定義は間違っている。テロよりも悪質な戦争である。

小泉内閣が2003年に民主党の協力を得て(修正協議に応じて合意・成立)有事法制を成立させたころ、特攻隊の生還者で『昭和は遠く』(径書房)の著者・松浦喜一さんが、新世代の戦争について次のように話されていた。

「これからの戦争は、小泉さんが考えているように、上陸作戦を展開して、陣地を占領して攻撃に入る昔のスタイルではありません。いきなりミサイルが飛んでくるんです」

高いテクノロジーにより攻撃する側が反撃を受けることなく、安全地帯から相手を巧みに攻撃する戦術が定着するであろうという予想を、松浦さんはミサイルによる攻撃を例に説明されたのである。事実、シリアでそれが起こっている。

有志連合と呼ばれる軍事同盟は、最新技術の結晶である無人攻撃機を使ったり、はるか上空から、爆撃機による兵器の投下を繰り返し、地上を火の海と化している。だれが火だるまになるか分からない。民間人と軍人の区別などできるはずがない。もちろんISから市民へ向けた攻撃も想像されるが。その結果、難民がヨーロッパへ流入している。原因が自分たちにあるわけだから、ヨーロッパも彼らを受け入れざるを得ない。

こうした状況の下でIS側は、パリを舞台とした自爆テロに走った。追いつめられた側が極めて過激な行為に走った先例としては、日本の特攻隊による自爆攻撃がある。また米国市民を無差別に狙った爆弾搭載の気球作戦もあった。

パリの同時多発テロは、シリアでの戦争がヨーロッパまで拡大したことを意味する。単なるテロ行為ではない。テロ行為よりも悪質な戦闘行為である。しかも、空爆と同様に市民を巻き添えにしている。

現在の先進工業国と第3世界の間には、天然資源などが絡んだ利権の構図があるが、それについては報じない。大半のメディアは今回の事件を単なるISによるテロと位置づけ、戦争犯罪としては報じない。

「戦争」として定義すれば、自分たちの側の空爆も戦争犯罪として認識されてしまうからである。そこでどうしてもテロと定義させるを得ないのだ。恐らくこの点は、西側メディアの間で暗黙の報道協定になっているのではないか。

しかし、実態は新生代の戦争にほかならない。

今回の戦争の背景に、中国やロシアを含む先進工業国の利権があることをメディアは隠している。世界的なグローバリゼーションの流れが、他民族の自決権や文化・価値観を踏み倒していった結果、国際紛争が起きているのだ。

が、あまりも軽率に、テロ撲滅を口実に有志連合に参加しよというのが安倍政権の意向である。グローバリゼーションのあり方を問う米国の9・11の教訓とは何だったのだろうか?

2015年11月13日 (金曜日)

NHKへの苦情続出、 ワンセグに対して受信料を徴収、テレビの有無の調査権を主張、「押し紙」関連資料の受け取り拒否

メディア黒書(12日付け)で「NHKから国民を守る党」について書いたところ、NHKに対する何件かの疑問が読者からわたしのもとに届いた。

まず、携帯電話にワンセグの機能があることを理由に受信料を請求されたという話である。ワンセグとは、「携帯機器を受信対象とする地上デジタルテレビ放送」(ウィクペディア)のことだ。従ってワンセグの機能が備わった通信機器も受信料の徴収対象になるらしい。

また、テレビを所有しないために当然受信料の支払いを断ったところ、集金人が調査権を主張してきたという。集金人が室内に立ち入って、テレビを所有しているかしていないかを調査する権限があると強い口調で主張したというのだ。

そこでこの読者は、どういう法律に基づいて調査権を主張しているのかを質問したところ、放送法に書いてあるという。これに対して放送法のどこに書いてあるのかを尋ねると、いきなりインターホンを切って逃げていったという。もちろん放送法にNHKの集金人が他人の家に立ち入って、テレビの有無を確認できるとする条項は存在しない。

さらにわたし自身のNHK体験についていえば、次のようなことがあった。もう10年ぐらい前になるが、わたしは新聞の「押し紙」問題を取材している関係で、NHKにも「押し紙」に関する資料を提供しようとしたことがある。NHKは新聞社と経営上の取引がないので、「押し紙」問題をもっとも報じやすいメディア企業であると考えたのだ。

普通、メディア企業は、ある種の資料提供があった場合、断ることはない。提供を受けた資料を使うか使わないかは別として、少なくとも受け取った上で扱い方を決めるものだ。

ところがNHKの場合は、「押し紙」に関する資料の受け取りを頭から拒否してきたのだ。おそらく電話応対した職員が、「押し紙」はメガトン級のタブーであることを知っていたのではないか。「なんで報じないのか?」と詰め寄られるのが恐かったのか、拒否するときの声が震えていた。

「押し紙」問題を報じなくてもかまわないから、少なくとも資料の中身だけでも把握してほしいと説得したが、それも頑なに拒否してきた。たとえわたしが一方的に資料を送りつけても、誰が受け取るか分からないので、「無駄になります」とまで付け加えた。

NHKは「押し紙」問題に関しては、どのメディア企業よりも、無関心だった。おそらく最近、浮上している最高裁や検察審査会の問題についても、弱腰ではないかと思う。携帯電話の電磁波問題に至っては、一度も報じたことがないのではないか?肝心な問題に関しては、ダメなメディアというのがわたしの評価である。

ちなみにNHKの元会長・海老沢勝二氏は、2005年に読売新聞社に再就職している

2015年11月12日 (木曜日)

深刻化するNHK問題、内部留保1兆円、恫喝による受信料徴収、嫌がらせ裁判、「NHKから国民を守る党」の活動に注目 

NHKに向ける国民の眼が厳しくなっている。籾井勝人氏が、2014年1月に会長に就任するや、籾井氏は早々に百田尚樹氏ら極右の面々を経営委員に抜擢したのを皮切りに、従軍慰安婦の問題で暴言を繰り返し、NHKの国際放送が政府広報の性質を帯びることを宣言し、私的に使ったハイヤー代を経費として計上したことは記憶に新しい。最近では「クローズアップ現代」でやらせがあったことが発覚した。

さらにほとんど報道されていないが、NHKは受信料を支払わない人に対して次々と裁判を起こしている。わたしの知人で出版労連傘下の労組・出版ネッツの委員長である澤田裕氏も、提訴され、敗訴して受信料24万円を強制的に支払わされた。

■参考記事:24万円の受信料滞納で出版労組委員長を訴えたNHKの「番組押し売り」と強制徴収の手口

◇内部留保1兆円

ここ数日、さらにNHKについて考えさせられる報道があった。まず、JCPの機関誌「しんぶん赤旗」が「NHK調査 戦争法反対の世論 設問変えごまかす?」と題する記事を掲載した。
 NHKは10日、11月世論調査(6~8日実施)で、安保関連法(戦争法)が必要かと尋ねたところ「必要だ」が40%で「必要でない」が21%だと報じました。設問で賛否を問うのでなく「必要」かどうかを聞くことによって、反対世論が多数から逆転したかのような印象を流す結果となっています。

 同時期実施のJNN(TBS系)世論調査(7、8日)では、戦争法成立について「評価しない」51%で、「評価する」を上回っています。

 10日の「読売」が発表した同紙世論調査でも、戦争法成立を「評価しない」が47%で、「評価」は40%。8日放送のフジテレビ番組では、視聴者対象の調査で戦争法を「廃止すべき」が65・7%となり、「可決してよかった」34・3%を圧倒しました。

 NHKの10月世論調査では、安保法の成立を評価するかどうかを質問していました。「評価」39%で、「評価せず」が54%で圧倒していました。安保法について“抑止力が高まる”という政府の説明に「納得できない」は59%と多数。戦争法反対の世論の流れを明確に示していました。今回の調査発表でこの設問の中身を変えたのです。(略)

さらに読売新聞が「NHK総資産、初めて1兆円超える…受信料増収」と題する記事を掲載する。

 NHKは10日、2015年度の中間決算を発表した。

  受信料収入は3316億円で、事業収入全体では3424億円となった。事業支出は3168億円で、事業収支差金は256億円を確保。予算に対し194億円の収支改善になっている。

  9月末の受信料支払率は年度目標の77%は下回っているものの、76・3%で昨年9月末の75・2%を1・1ポイント上回った。また、堅調な受信料の増収などにより、総資産が初めて1兆円を超える1兆27億円となった。負債を差し引いた純資産合計は6847億円。

これだけの資金力は、みずからの生活を切り詰め、時にはサラ金などから借金して受信料を支払う「まじめ」な人々がいるから確保できるのである。ちなみにわたしは、貧困層に属するので支払っていない。自分の取材費を切り詰めてまで、同業者(ジャーナリズム)の職員らの高級待遇をサポートしようとは思わない。

◇ビジネスモデルの問題

わたしが在住している埼玉県朝霞市の駅頭で、このところしばしば遭遇する興味深い活動がある。「NHKから国民を守る党」という団体が、オレンジ色の幟を立てて、街宣活動を展開しているのだ。街宣車も市内を走り回っている。

■「NHKから国民を守る党」のチラシ

はじめて街宣車を見たとき、わたしはかつて滋賀県の大津市で新聞販売店の労組が街宣車をだして、新聞の強制勧誘に応じないように呼びかけていたのを思い出した。周知のように日本では、洗剤やビール券などの景品を提供したり、時には恫喝により新聞購読の契約を迫る勧誘行為がはびこってきた。現在は、だいぶ下火になっているものの、以前はそれが社会問題になっていた。

勧誘員による暴行事件も頻発していた。

新聞とNHKという違いはあるが、両者のビジネスモデルは根本から間違っている。ジャーナリズムが結社の一次的目的ではなく、企業としての収益の方を優先しているのだ。その意味では、普通の企業と同じである。扱う商品がジャーナリズムの仮面をかぶっているに過ぎない。

しかも、両者とも日本の権力構造の歯車に組み込まれ、政治利用されているという共通点がある。「しんぶん赤旗」が報じた世論調査を悪用した世論誘導はその典型例ではないか?  また、読売が報じた内部留保1兆円は、NHKが巨大な利益追求型の企業である証にほかならない。

「NHKから国民を守る党」のチラシ(上記PDF)には、NHKによる偏向報道については詳しくは書かれていないが、ビジネスモデルについてはポイントを得た説明をしている。これを読めば報道検証をするまでもなく、とんでもない集団であることが分かる。

新聞と同様に報道の質以前のビジネスモデルに問題があるようだ。

2015年11月11日 (水曜日)

朝日新聞販売店は警察署の広報部か? 世田谷区のASA16店が警察との連携で日本新聞協会(白石興二郎会長[読売])から表彰される

メディア黒書でかねてから、奇抜でにわかに信じがたい現象として報じてきた事柄のひとつに新聞人と警察の「友好関係」がある。ジャーナリズムの重要な役割のひとつは、権力の監視である。その権力組織と親密になって情報をもらったり、なんらかの協力関係を構築することは、ジャーナリズムの基本原則そのものを崩してしまう。新聞ジャーナリズムの死活問題にほかならない。

日本新聞協会が主宰している「地域貢献賞」を呼ばれる賞がある。今年、この賞を受けた団体のひとつに東京世田谷区のASA(朝日新聞販売店)16店がある。受賞理由は、警察署と協働で防犯活動に取り組んでいるというものである。

新聞協会のウエブサイトによると、受賞理由は次のようになっている。

東京都世田谷区の成城警察署管内16の朝日新聞販売所ASAは、2005年から地域で発生した事件や防犯対策をまとめた「朝日新聞 防犯ニュース」を毎月4万4000部発行し、新聞に折り込んで配布している。警察署から提供される最新の情報を広く読者に届けることで、地域で暮らす人々の安全・安心に寄与している。

取り上げる情報は、高齢者を狙う振り込み詐欺や悪質商法の事例からひったくり対策、スマートフォン利用の危険性など幅広い。身近で起きる犯罪や事故への対策を詳しく紹介しており、安全なまちづくりに貢献する存在となっている。

「警察署から提供される最新の情報を」まとめて『朝日新聞 防犯ニュース』を発行し、新聞折込のかたちで配布しているというのだ。こうした活動には次のような問題点がある。

警察にとって好都合な情報だけが開示されて、住民に広報されている可能性が高い。

ASAの側から警察に恩を売ることで、かりに「押し紙」や折込広告の水増し・廃棄などが発生した場合も、刑事事件として処理されなくなる可能性が高い。事実、「押し紙」と折込広告の問題が取り締りの対象になったことは、皆無ではないにしろ、ほとんどない。

警察業務の一部が新聞販売網に入り込んでくることになり、公権力から独立したジャーナリズムの原則が完全に崩壊してしまう。

①から③のような重大な問題を新聞人が認識していないのだから、問題は相当に深刻といえよう。野球賭博が発覚した読売ジャイアンツの取締役オーナーでもある日本新聞協会の会長・白石興二郎氏が、この不祥事を理由に会長を辞任しないわけだから、「腐敗」や「癒着」についての認識があまい。

◇読売防犯協力会

ちなみに警察と新聞販売店の協力関係は、朝日に限ったことではない。YC(読売新聞販売店)が全国読売防犯協力会という組織をつくって警察に協力してきた事実は新聞業界内では周知となっている。同協会のウエブサイトは、会の目標について次のように述べている。

わたしたちの防犯活動の基本は「見ること」と「見せること」です。街をくまなく回って犯罪の予兆に目を配ります。そして、オレンジ色のベストや帽子を犯罪者に見せつけ、「この街は犯罪をやりにくい」と思わせることも狙っています。さらに、新聞のお家芸である情報発信なども含め、活動の目標は次の4点に集約できると思います。

1.配達・集金時に街の様子に目を配り、不審人物などを積極的に通報する

2.警察署・交番と連携し、折り込みチラシやミニコミ紙などで防犯情報を発信する

3.「こども110番の家」に登録、独居高齢者を見守るなど弱者の安全確保に努める

4.警察、行政、自治会などとのつながりを深め、地域に防犯活動の輪を広げる

日ごろから地域のみなさんのお世話になっているYCスタッフたちは、少しでも地元のお役に立ちたいと思っております。街で見かけたときは、気軽に声をかけていただければ幸いです。
新聞配達員や集金員が路地の隅々にまで、あるいは家庭の中にまで視線を走らせる行為は、「おせっかい」ではすまないだろう。何を基準に「犯罪の予兆」と判断するのかは個人差があるわけだから、彼らがスパイに変質する可能性も孕んでいる。

ちなみに全国読売防犯協力会と覚書を交わしている都道府県の警察は次の通りである。年月日は、覚書を交わした日を示す。

高知県警 2005年11月2日
福井県警 2005年11月9日
香川県警 2005年12月9日
岡山県警 2005年12月14日
警視庁 2005年12月26日
 
鳥取県警 2005年12月28日
愛媛県警 2006年1月16日
徳島県警 2006年1月31日
群馬県警 2006年2月14日
島根県警 2006年2月21日

宮城県警 2006年2月27日
静岡県警 2006年3月3日
広島県警 2006年3月13日
兵庫県警 2006年3月15日
栃木県警 2006年3月23日

和歌山県警 2006年5月1日
滋賀県警 2006年6月7日
福岡県警 2006年6月7日
山口県警 2006年6月12日
長崎県警 2006年6月13日

茨城県警 2006年6月14日
宮崎県警 2006年6月19日
熊本県警 2006年6月29日
京都府警 2006年6月30日
鹿児島県警 2006年7月6日

千葉県警 2006年7月12日
山梨県警 2006年7月12日
大分県警 2006年7月18日
長野県警 2006年7月31日

福島県警 2006年8月1日
佐賀県警 2006年8月1日
大阪府警 2006年8月4日
青森県警 2006年8月11日

秋田県警 2006年8月31日
神奈川県警 2006年9月1日
埼玉県警 2006年9月14日
山形県警 2006年9月27日

富山県警 2006年9月29日
岩手県警 2006年10月2日
石川県警 2006年10月10日
三重県警 2006年10月10日
愛知県警 2006年10月16日

岐阜県警 2006年10月17日
奈良県警 2006年10月17日
北海道警 2006年10月19日
沖縄県警 2008年6月12日

2015年11月10日 (火曜日)

週刊金曜日で天木直人氏氏が志岐武彦氏の『最高裁の黒い闇』を書評、「この国の司法のすべては最高裁が取り仕切っている」

今週の週刊金曜日が書評欄で志岐武彦氏の新刊『最高裁の黒い闇』(鹿砦社)を取り上げている。書評を書いているのは、元レバノン大使で評論家の天木直人氏である。

  凄い本が出た。(略)本書で記されているとおり、私(天木氏)は小沢一郎を嵌めた国策捜査を追及すべく、著者と協力して検察審査会の不正を暴こうとした。その過程でこの国の司法のすべては最高裁が取り仕切っていることを知った。

小沢一郎検審については、元参院議員の森裕子氏が志岐氏に対して500万円の金銭支払いや言論活動の一部禁止を主張して起こした名誉毀損裁判を機に、メディア黒書でも繰り返し取り上げてきた。その結果、わたし自身が歌手で作家の八木啓代氏から、200万円のお金を請求される名誉毀損裁判を起こされる事態になった。

■参考:歌手で作家の八木啓代氏が志岐武彦氏に訴えられた裁判と、黒薮が八木氏に訴えられた裁判の関係はどうなっているのか?

本書で志岐氏は、小沢一郎検審が孕んでいる「架空検審」疑惑だけではなく、森氏と八木氏が志岐氏の調査活動に対して、どのようなリアクションを示したかを詳しく記録している。それがストーリーの柱となって、重いはずのテーマを分かりやすく伝えている。

残念ながら八木氏がわたしに対して起こした裁判(被告は黒薮と志岐氏)については、記されていないが、読者は少なくとも、この新裁判の背景にある大本の事件については知ることができる。

◇八木氏らによる攻撃に耐えて

天木氏が書評で書いているように本書を読めば、「この国の司法のすべては最高裁が取り仕切っている」ことが具体的に理解できる。わたしは不祥事を繰り返してきた検察を擁護するつもりはないが、検察の「暴走」は裁判所が公正な裁判をおこなえば阻止できる。その意味では、やはり日本の司法は最高裁事務総局が牛耳っているといえよう。

その構図を典型的に示しているのが、本書が取りあげている小沢一郎氏に対する検察審査会による架空検審・架空議決疑惑だった。もちろん志岐氏は、その直接の証言者ではないが、疑惑を裏付ける資料(その大半は情報公開によって入手したもの)にはすべて裏付けがある。と、なれば志岐氏の主張は真実に相当することになる。

それにしても一市民の手で綿密な取材と調査が行われ、八木氏らによる批判に耐えながら、単行本として世に出た意義は大きい。

2015年11月09日 (月曜日)

前最高裁長官の竹崎博允氏が受けた大綬章、選考したのは内閣府賞勲局

前最高裁長官の竹崎博允氏が、大綬章を受けた。毎日新聞(11月5日付け)は「<秋の叙勲>皇居で大綬章授与式 竹崎前最高裁長官ら」というタイトルでこのニュースを報じた。

秋の叙勲の大綬章授与式が5日、皇居・宮殿「松の間」で行われた。桐花大綬章の竹崎博允前最高裁長官(71)ら日本人9人と、イタリアのマリオ・モンティ元首相(72)ら外国人2人に、天皇陛下が勲章を手渡された。

  受章者を代表して竹崎さんが「それぞれの分野において一層精進する決意でございます」とあいさつし、陛下は「国や社会のために、また人々のために尽くされてきたことを深く感謝しております」と述べて祝った。

竹崎氏は、2008年11月25日に最高裁長官に就任。そして2014年3月31日 に退官した。この約5年半の間に、わたしがなんらかの形で関係した範囲ですら、司法の公平性と欺瞞(ぎまん)を露呈する事件などが立て続けに起こっている。いずれも裁判の公平性と法治国家の信用にかかわる事件である。従って住民運動の間では、竹崎氏に対して厳しい評価が多い。

まず、わたしにとって最も身近な「押し紙」問題と「押し紙」裁判である。最高裁は「押し紙」問題に関しては、全面的に新聞社サイドに立っており、「押し紙」は1部も存在しないという新聞人の主張をうのみにしてきた。最高裁がかかわった「押し紙」裁判では、いずれも新聞社の主張を支持してきた。

前任長官の時代はそうではなかった。第1真村裁判のように、読売新聞社による「押し紙」を認定したケースもある。最高裁は、次の判決を認定している。

■第1次真村裁判・福岡高裁判決

◇2230万円請求の読売裁判

読売新聞社と3人の社員が名誉を毀損されたとして、わたしに対して2230万円の金銭支払いを主張し続けた裁判では、最高裁は、わたしを勝訴させた地裁と高裁の判決を否定して口頭弁論を開き、判決を高裁へ差し戻した。そして加藤新太郎裁判官がわたしに対して、110万円の金銭支払いを命じる判決を下したのだ。

その加藤氏も退官後にやはり勲章を受け、アンダーソン・毛利・友常法律事務所へ顧問として、(広義の)天下りをした。「(広義の)天下り」と書いたのは、最近、再就職した本人が所属していた「役所」が就職を斡旋していなければ、「天下り」にはあたらないと、やけに言葉の定義に執着している揚げ足取りの弁護士が増えているからだ。社会通念では、国策などに大きな影響を及ぼす国家公務員が退官後に役員として再就職することを、広義に「天下り」というのだ。

さらに竹崎長官時代に起きた重大事件としは、改めて言うまでもなく小沢一郎検審疑惑がある。小沢検審は、開かれていなかったのではないか、あるいは架空検審だったのではないかという疑惑が掛かっているのだ。疑惑を裏付ける十分な根拠もある。これについては、メディア黒書でも繰り返し報じてきたし、最近、志岐武彦氏が出版した『最高裁の黒い闇』(鹿砦社)に詳しい。

◇内閣府賞勲局

ところで読者は、この種の勲章制度を運営している組織をご存じだろうか。
結論を先に言えば内閣府である。内閣府に賞勲局という部署があり、「栄典制度の調査、研究、企画業務のほか、春秋叙勲等における勲章等の授与の審査などの栄典に関する事務を行って」いる。

もちろん授章者に支給される年金も税金から支出されている。

このような事実を考慮に入れて竹崎氏の授章を考える時、司法の独立性とはなにかという問題が浮上してくる。

たとえば特定の政治家を恣意的に政治の表舞台から消すことを可能にする検察審査会制度。それを運用している最高裁事務総局の元長官が、内閣府から勲章を授与されるのは、三権分立の制度にとって問題がある。鳩山由紀夫、小沢一郎、小渕優子といった政治家は、竹崎氏の受賞をどのように感じているのだろうか。

天皇と安倍首相の前で、黒い礼服に身をつつみ、頭(こうべ)をたれる竹崎氏の姿は、われわれに日本の司法とは何かという重大な問題を突きつけるのである。

余談になるが、先日、元裁判官で日本の裁判所を厳しく批判している瀬木比呂志(せぎ・ひろし)明治大教授が、「ニッポンの裁判」(講談社)で第2回城山三郎賞を受賞された。こちらについては、真っ当な受賞だ。

2015年11月06日 (金曜日)

癌患者の急増と携帯電話の普及率は同じ上昇線を描く、2011年には国際がん研究機関がマイクロ波に発癌性がある可能性を認定

The Hunffington Postの日本版が、5日に「育児中にがんと診断、年間5万6千人もいた」と題する記事を掲載した。

国立がん研究センター(東京)は4日、18歳未満の子どものいる国内のがん患者が年間約5万6千人発生しているとする初の推計結果を発表した。

2009年から13年までに同センター中央病院に初めて入院したがん患者のデータをもとに都道府県のがん登録のデータなどから推計した。患者の平均年齢は男性46・6歳、女性43・7歳。子どもの総数は約8万7千人に上り、0~12歳が63%を占めた。

2011年に国内で新たにがんと診断された患者は推計で年間約85万人とされ、今回の約5万6千人は患者全体の約7%に相当する。

このところ癌患者の増加が指摘されている。噂ではなく、公式データでも裏付けられている。わたしはその原因が携帯電話の普及にあるのではないかと、考えて、牛歩ながら検証を進めている。

次に示すのは、拙著『電磁波に苦しむ人々』(花伝社)に収録して資料である。携帯電話の普及率(ページ上段)と癌患者数の年度別変化(ページ下段)を比較したものである。

■携帯電話の普及率と癌患者数の変遷PDF

2つのグラフを比べてみると、両方とも同じような上昇線を描いている

携帯電話は1990年代の初頭から普及が始まり、90年代の半ばを過ぎたころから爆発的に急増した。2013年の段階では、普及率が95%にも達している。それに伴いマイクロ派を送受信する携帯基地局も増えている。

一方、癌患者が増え始めるのも90年代の半ば以降である。

◇マイクロ波に発癌の可能性

メディア黒書で繰り返し注意を喚起してきたように、WHOの外郭団体であるIARC(国際がん研究機関)は、2011年にマイクロ波に発癌性の可能性があることを認定している。携帯電話基地局の周辺に住む人々が癌になる確率が相対的に高いと結論づけた疫学調査もある。特にドイツ、イスラエル、ブラジルで行われたマイクロ波と癌の関係を検証する疫学調査は有名だ。

さらに世界の著名な研究者がまとめた「バイオイニシアチブ報告2012」は、極めて微弱なマイクロ波であっても頭痛や睡眠障害の原因になることを指摘している。

ちなみに日本の総務省が定めているマイクロ波の規制値は、1000μW/cm2である。これに対して、たとえばオーストリアのザルツブルグ市の目標値は、0.0001μW/cm2である。日本の10万分の1である。欧米と日本では、マイクロ波の危険性についての認識が根本から異なっているのだ。

◇リスクがあるのは基地局周辺だけではない

最近までわたしは、癌のリスクにさらされるのは、携帯基地局の近隣住民だけと考えていたが、この考えは正しくないようだ。次の実験の結果だ。

わたしは、携帯基地局が近くに設置されていない住宅の一室で、携帯電話を通話の状態にしてマイクロ波の強度を測定してみた。その結果、携帯基地局の周辺とほとんど変わらない数値、あるいはそれ以上の数値が観測されたからだ。

つまり携帯電話で通話すると、本人だけではなく、近くにいる人々もマイクロ波による被曝が及ぶと言えよう。

携帯電話と脳腫瘍の関係は周知になり、通話の時はイヤホンを使う人がいるが、影響を受けるのは、本人の頭部だけではない。当然、電車内で携帯電話を使えば、同じような被曝状態になる。毎日、1時間、あるいは2時間、車内でイクロ波に被曝していれば、5年後、10年後に人体影響が生じるのはむしろ当然といえるだろう。

2015年11月05日 (木曜日)

日本の財界人が集団で中国を訪問、南沙諸島問題をめぐりマスコミの英雄史観とのギャップ

NHKなどのマスコミが南沙諸島問題で日中戦争の危機を煽りながら、暗黙のうちに安保関連法の存在意義をPRしている。こうした状況の下で、「経団連の榊原定征会長ら経済界首脳が参加する日中経済協会」が中国を訪問して、6年ぶりに中国政府の幹部と会談した。時事通信は次のように報じた。

経団連の榊原定征会長ら経済界首脳が参加する日中経済協会(会長・宗岡正二新日鉄住金会長)の訪中団は4日、中国の李克強首相と人民大会堂で会談した。

  この中で、日本側が知的財産権の保護強化や日中韓の自由貿易協定(FTA)交渉推進などを求めたのに対し、李首相は「積極的に進める」などと応じ、日本からの投資拡大に期待感を示した。

  中国の首相が日中経協の訪中団と会談したのは6年ぶり。李首相は「皆さんの訪中は中国との経済協力を深化させることに期待を抱いていることを表していると思う」と歓迎する意向を示し、榊原会長は「中国は日本にとって最も重要でかけがえのない隣国であり、パートナーだ」と応じた。

  中国経済の減速が懸念される中、李首相は「今後5年間で年平均6.5%以上の成長が必要だ」と安定成長を目指す方針を説明。「成長率は鈍化しているように見えるが、絶対量(金額)で見れば例年以上の成長をしている」と強調した。

昨日(4日)付けのメディア黒書でも述べたように、中国は日本にとって最大の貿易相手国である。2013年度の対中国輸出は302,852億円で、米国の197,430億円を大きく上回っている。比率にすると中国は、輸出全体の20.1%で第2位の米国の(13.1%)を大きく上回っている。

この数字から推測されるように、日中戦争が勃発して最大の損害を被るのは、日米の財界である。こんなことはわざわざ念を押すまでもなく、明白なことだが、案外理解していないメディアが多いようだ。

南沙諸島問題をめぐる緊張の高まりを根拠に戦争勃発の可能性を公言して、安保関連法の正当性、あるいはそれをごり押しした安倍首相の選択の正当性をPRする。こうした傾向が広がっている。

ただ、それが見識不足から来ているのか、悪意が原因なのかは判断のしようがない。かりに見識不足とすれば、それは具体的には基本的な歴史観の誤りである。歴史を動かす要素は何かという問題に対する答えの誤りである。

◇ナポレオン・坂本龍馬・・・

われわれが受験教育の中で教えられた歴史観、あるいはメディアの影響で自覚なしに身に着けている歴史観は、いわゆる英雄史観と呼ばれるものである。たとえばナポレオンや坂本龍馬など、英雄的な人物の出現によって社会が変革したとする考えである。

それゆえに「もし、30年前に小泉純一郎が首相になっていたら、日本に『失われた20年』はなかった」などと平気で言う。

しかし、政策というものは、政治家個人の判断で決まっているわけではない。安保関連法にしても、安倍首相の個人的な思想をよりどころにして制定されたわけではない。政策の方向を決めているのは、その時代の経済を牛耳っている人々である。安倍氏は、実働部隊として先頭に立っただけに過ぎない。

安保関連法が米国と日本の財界からの要請であったことは、たとえば米国のアーミテージ報告や経済同友会の過去の提言を検証すれば裏付けを取ることができる。

財界がどういう要望を持っているかを無視して、日本の政策は決定されない。たとえば90年代に小選挙区制が導入されたが、これは類似した政策を柱とする2大保守政党により、どちらが政権を取っても確実に新自由主義=構造改革の導入を進めていきたいという財界の要望の結果にほかならない。

そのためには、自民党を分裂させるのが得策だった。すなわち反対派を形成することを特技とした(元)急進的な新自由主義者・小沢一郎氏に活躍の舞台が巡ってきたのである。小沢一郎氏が急進的新自由主義者であったことは、彼の著書『日本改造計画』などで明らかだ。冒頭から、自己責任論を展開している。

安倍首相が政権の座に就くことができたのも、極右思想という多少の問題はあっても、彼のような独断的な人でなければ、反対の世論が強い安保関連法を成立させることが難しいからである。つまり舞台裏には、政治を牛耳っている人々がいるのだ。その面々が、今回、集団で中国を訪問したのである。

橋下徹氏が地方政党にこだわっているのも、大阪都構想に象徴されるように新自由主義=構造改革の最終段階として、地方分権の政策が想定されているからにほかならない。地方政党は、新自由主義の政策の「受け皿」である。従って、「維新の党」は必然であって、斬新な存在でもなんでもない。

先ほどわたしは、日中戦争はあり得ないと書いたが、それならなぜ自民党などは、安保関連法を強行採決したのだろうか。あるいは安保関連法は、地球上のどの地域を想定したものなのだろうか?

この点に関しては、軽々しいことは言えないが、あくまでもわたしの直観で言えば、中東やアフリカの可能性が高い。

2015年11月04日 (水曜日)

安倍内閣の支持率回復と南沙諸島問題を利用したメディアによる世論誘導

安倍内閣の支持率が若干回復している。次に示すのは、大手メディアによる世論調査の比較である。

【10月30日朝日新聞デジタル】
(30%台半ば→41%)

世論の反対が強い安全保障関連法の成立に突き進んだ結果、安倍内閣の支持率は30%台半ばまで落ち込んだが、内閣改造を経た今月の調査で支持率は41%まで上昇した。一方、安保関連法への反対が半数程度を占める状況は、依然として変わっていない。データをみると、経済政策への期待感が背景にあることが浮かび上がる…

【読売新聞】
(41%→46%)

読売新聞社は、第3次安倍改造内閣が発足した7日から8日にかけて緊急全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は46%で、前回調査(9月19~20日)から5ポイント上昇し、不支持率は45%(前回51%)に下がった。安全保障関連法が成立した直後の前回は、支持率が下落して不支持率を下回っていた。今回は支持率がわずかながら不支持率を上回り、拮抗きっこうした。

【時事ドットコム】
(38/5%→39.8%)

  時事通信が9~12日に実施した10月の世論調査によると、安倍内閣の支持率は前月比1.3ポイント増の39.8%で、5カ月ぶりに増加に転じた。不支持率は同3.6ポイント減の37.7%で、3カ月ぶりに支持率を下回った。

あくまで大メディアによる世論調査に信憑性があるという前提で、内閣支持率が回復した要因を考えてみると、経済政策への期待感だけではなく、ひとつには大メディアが南沙諸島問題を重点的に取り上げて、日本の軍事大国化を「やむを得ない」とする世論を形成していることがあげられるだろう。

4日のNHKニュースも、インドネシアで中国に対抗するために、軍による警備が強化されていることを報じていた。ボートに武装した兵士が乗り込んで、海上を警備しているビデオが公開された。

また、中国海軍の戦艦に守られた中国漁船が密漁を繰り返して、現地の漁民の収入が激減しているとも報じていた。映像で状況が紹介されたわけだから、これらの実態は少なくとも事実が含まれていることは疑いない。問題の全体像を報じたのか、それとも我田引水のかたちで安倍内閣に都合のいい部分だけを報じたのかは別として、報じられた事実を否定することはできない。

こうした画像が次々と画面に登場すると、おそらく多くの人々は、安保関連法で揺れた国会を思い出して、「やっぱり安倍さんが正しかった」と思うだろう。内閣支持率の上昇にもつながる。

ただ、NHKも民法も公権力や企業から完全に独立したメディアではないので、世論誘導されていることも念頭に置かなければならない。湾岸戦争で、油にまみれた真っ黒や鳥の映像がやらせだった事は、今や認定済みとなっている。イラクに化学兵器がなかったことも明らかになっている。メディアは常に世論誘導の道具として、公権力に協力するのだ。

◇日中戦争を予測する愚

こうした状況の下で、当然、中国と日米の間で戦争が起きるのではないかと発言している識者が現れている。が、この考えがいかに愚論であるかは、次の数字を見れば明らかだ。

【日本の対中国輸出】

対中国:302,852億円(20.1%)

対米国:197,430億円(13.1%)

【米国の対中国輸出】

米国から中国への輸出については、谷口智彦(たにぐち・ともひこ)慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授によると、「2010年までの10年間で、米国から中国への輸出額は468%伸びた。131%で伸び率2位のブラジル向けを超絶する突出ぶりである。」(WEDGE)

米国も日本は経済的に中国に大きく依存している。こうした状況のもとで中国との戦争になれば、もっとも損害を受けるのは日米の財界である。

日本の財界や米国政府が従軍慰安婦の問題や靖国神社の問題で、必ずしも安倍内閣を支持しないゆえんにほかならない。
それに政治の方向性は、安倍首相の個人的な思想で左右されているわけでない。もちろんそうした要素も皆無ではないが、それよりも政界の舞台裏にいる人々、つまり日本経済を牛耳っている財界が政治を動かしているのだ。その財界が中国を敵視しているはずがない。彼らは、金さえ手にできれば、誰とでも手を組むのだ。

日中戦争の可能性を指摘する識者には、日本の軍事大国化に加勢しようという意図があるようだ。そもそも政治の力学が分かっていない。天才的な政治家、たとえばナポレオンのような人物が登場すれば、世の中が変革を遂げるわけではない。英雄史観は時代錯誤だ。歴史観そのものが根本的に間違っているのだ。

2015年11月02日 (月曜日)

ソニーミュージックを作曲家・穂口雄右氏が刑事告訴、『ZAITEN』最新号が報じる

 1日に発売になった『ZAITEN』(財界展望社)に、黒薮の記事が掲載されました。タイトルは、「キャンデーズの生みの親に刑事告訴されたソニー・ミュージックの〝悪い手癖〝」。

「キャンデーズの生みの親」とは、米国在住の作曲家・穂口雄右氏である。穂口氏は、「春一番」、「微笑がえし」、「年下の男の子」など数多くのヒット曲をてがけた。

この刑事告訴には前段がある。それはレコード会社など31社が穂口氏に対して2億3000万円の金銭支払いを要求した著作権裁判である。この裁判については、MyNewsJapanやメディア黒書でも報じた通りである。わたしはこの裁判を恫喝訴訟、あるいはスラップだと考えている。

従って、今回の刑事告訴には、前訴の「戦後処理」の意味があるようにも感じられる。

参考までに、前段の裁判が終わった直後に穂口氏に対して行ったロングインタビューを紹介しておこう。

■ソニーなどレコード会社31社が仕掛けた2億3000万円の高額裁判に和解勝利した作曲家・穂口雄右氏へのロングインタビュー(上)

■ソニーなどレコード会社31社が仕掛けた2億3000万円の高額裁判に和解勝利した作曲家・穂口雄右氏へのロングインタビュー(下)

2015年10月30日 (金曜日)

米艦艇による中国の人工島接近事件、NHK職員による情報の垂れ流しと世論誘導②

このところマスコミによる中国脅威論が広がっている。たとえばNHKは、「アメリカ軍の艦艇 中国の人工島に接近か」(10月27日 9時52分)と題する記事をウエブサイトに掲載している。これは放送されたニュースの文字版のようだ。

複数の欧米メディアは、南シナ海で人工島を造成し主権の主張を強める中国に対し、これを認めない立場を取るアメリカ政府が、人工島から12海里以内で軍の艦艇を航行させることをオバマ大統領が決断したと報じました。(略)

  アメリカ政府は、人工島は国際法上、領海の基点とはならないため、軍の艦艇を近づけても問題はないとしていますが、これまで中国側は主権の侵害に当たるとして批判してきました。アメリカ政府は今のところ、報道の確認を避けていますが、実行されれば中国の強い反発は必至で、米中間の緊張が高まることが予想されます。

改めて言うまでもなく、暗礁を埋め立てて人工島を設置し、そこに軍事基地を置く行為にはさまざまな問題を孕んでいる。人工島の周辺国にとっては、脅威の存在になることは言うまでもない。中止すべき戦略だ。

しかし、軍事大国化を進めているという点からすれば、歴代ホワイトハウスは中国政府の比ではない。アフガニスタンやイラクにおける米軍の軍事行動を見れば一目瞭然である。実際にこれらの国を空爆し、軍隊を送り、殺戮行為を働いたことは周知の事実である。しかも、イラクの場合は、侵攻の理由とされた化学兵器が存在しなかったことも明らかになっている。

アフガニスタンやイラクの以前にも、米軍はラテンアメリカをはじめ、世界各地に軍事基地を設置して、「解放」を口実に軍事介入してきた。

が、米国の軍事大国化に関しては、NHKはむしろ理解を示す視点から報じてきた。わたしが知る限りでは、絶対に「侵略」という言葉は使わなかった。

◇「中立」という勘違い

現在、日本には、自国の軍事大国化に関連して2つの住民運動がある。沖縄の基地問題に反対する住民運動と安保関連法に反対する住民(市民)運動である。これら2つの案件が引き金になり、安倍政権の支持率は相対的には低落している。特に沖縄では、安倍政権に対する憎悪が住民の間に広がっている。辺野古の埋め立てをめぐり沖縄県と国が法廷で争う日が近づいている。

この時期に米軍の艦艇が中国の人工島の近くを航行し、それをNHKが報じれば、沖縄の米軍基地を容認して、安保関連法を運用する方針もやむなしという世論が広がるのはいうまでもない。市民たちは安保関連法案に反対して国会議事堂を包囲したが、「やはり安倍さんが正しかった」ということになりかねない。

今回の米艦艇による人工島接近の戦略をだれが決めたのかは分からない。特定秘密保護法の壁に阻まれて知りようもない。が、何者かが安倍政権に加勢するために仕組んだ策略の可能性もゼロではない。わたしはむしろ意図的な計画があったと推測する。そしてNHKとのあうんの呼吸で、ニュースを垂れ流したとも考え得る。

NHKがこれまで一貫して米国・中国の軍事大国化を批判してきた過去があるのならまだしも、米軍による軍事行動の方はむしろ「理解」を示してきたのである。もちろんNHKが得意とする沖縄戦に関する資料の発掘は、一概に親米的とはいえないが、これとて本当に残忍な行為の画像をカットするなどかなりの自主規制が働いている。こうした番組を見て視聴者は、「やはりNHKは中立だ」と勘違いしてしまう。これが洗脳なのだ。

このようなNHKの実態を前提に今回の報道をみると、わたしには米艦艇の人工島への接近からニュース報道まで、意図的に仕組まれた世論誘導のような気がする。少なくとも疑ってみる必要がある。なぜ、今の時期なのかを再考する必要がある。

2015年10月29日 (木曜日)

癌の多発とスマホの普及、NHK職員による情報の垂れ流しと世論誘導①

NHKニュース(29日の7時)が、シリア難民にとってスマート・フォンの活用がライフラインになっている実態を報じていた。

NHKの番組には、スマート・フォンや携帯電話が日常生活のなかにすっかり定着した文明の機器という大前提に立った報道ばかりが目立つ。これらの無線通信機器をNHKが、番組と読者の双方向をつなぐ道具として位置付けていることは言うまでもない。

こうした報道に接していると海外で社会問題になっている無線通信機器による公害、つまり電磁波問題など日本にはもとからなかったかのような錯覚に陥る層も多いのではなかろうか。この新世代公害について、薄々は聞いたことがあっても、NHKが積極的にスマート・フォンの活用をPRしているからには、安全な機器だと勘違いする人も多いのではないだろうか?

まして安倍首相が電話料金の値下げを提案すれば、無線通信機器の爆発的普及が電磁波被曝のリスクを飛躍的に高めるという視点から検証する世論は消えてしまうのではないか。NHKが「一億総スマホ社会」へ向けて旗振り人の役割をしているように見える。これは大罪。

当然、最近急激に上昇線を描いている発癌率を電磁波や化学物質による複合汚染という化学的な観点から再検証しようという空気も生まれない。わたしは癌の増加と携帯電話の普及が同じ上昇線を描いている事実は、十分に検証するに値すると考えているが、そんなことを公言すれば頭がおかしくなったと誤解されかねない空気が生まれている。これが世論誘導の恐ろしさにほかならない。

ちなみにWHOの外郭団体であるIARC(国際がん研究機関)は、2011年に無線通信に使われるマイクロ波に発癌性の可能性があることを認定している。この動きに象徴されるようにマイクロ波からガンマ線やエックス線にいたるまで、広義の電磁波、あるいは放射線が人体に悪影響を及ぼすと考えるのが、世界の研究者の傾向にほかならない。

広島・長崎・福島と核の被爆国である日本は、本来、電磁波問題にはもっとも敏感にならなければならないはずだが、メディアがその動きを押しつぶしている。電磁波問題と放射線問題は別物だと勘違いしている人も多い。

わたしは過去に地下鉄の車内で、簡易測定器を使ってマイクロ波の強度を測定したことがある。結果は驚くべきことに、平均するとEUが定めている提言値の約4倍ぐらいの数値だった。通勤・通学で地下鉄を利用している人々は、癌の予備軍と言っても過言ではない。取り返しがつかない状態になったとき、その原因を推測することになるかも知れない。

こうした未来のリスクを完全に無視して、NHKはスマート・フォンや携帯電話をPRしている。そこには世の中で起きている現象に、一旦は疑いを差し挟んでみるというジャーナリズムの基本的な視点が完全に欠落している。公務員が国策放送を垂れ流しているのとあまり変わらない

2015年10月28日 (水曜日)

朝日バッシングの標的にされた植村隆氏が北星学園非常勤講師を失職する危機、問われる知識人・学者たちの良心

橋詰雅博(フリージャーナリスト・元日刊ゲンダイ記者)

元朝日新聞記者で韓国従軍慰安婦問題を巡りねつ造記者とバッシングを受けた植村隆氏(57)が、北星学園非常勤講師の職を失う岐路に立たされている。

植村氏を支援する日本ジャーナリスト会議などに入った情報によると、同大の田村信一学長が植村氏や大学の彼の支援者と今まで3回会い、「来年度の雇用は学内に反対の声が強く、難しい見通し」と話している。

大学などへの脅し、嫌がらせは昨年ピークの月が800件だったが、今では月数件と激減している。学長は「事態は収束している」と認識。それにもかかわらず雇用継続契約の締結が難しいとしたその理由を①15年度の警備費が3200万円と昨年の2倍に増えたこと②教職員が「疲れた。もう解放してほしい。平穏なキャンパスに戻りたい」と訴えている―などを挙げた。

学長は当初、「(雇用契約を打ち切るかどうか)、私が決める」と発言してきたが、植村氏らと会談を重ねた結果、予想外に反発が強かったためここにきて教職員代表でつくる評議会で決めてもらうと方針を転換している。

「1年で雇用を打ち切ったら、植村氏や大学を脅迫する側を喜ばせるだけ」「昨年、脅迫に屈せず、雇用を継続し、国内外から高い評価を受けたのにそれを台無しにしてよいのか」と打ち切り反対意見よりも、学内は打ち切り止む無しのムードのようだ。

この流れを止めて雇用継続に向かわせようという動きもある。植村氏が教えた韓国人留学生が帰国後、自分が通う大学で植村氏の雇用継続を求め約1000人の署名を集め、それを北星学園大に提出し、打ち切り再考を要請した。

また、89歳と高齢の玖村敦彦東大名誉教授(支援者)が学長、副学長、理事長、事務局長、雇用継続に反対しているリベラル派教員などに雇用継続を要請した手紙を出し、一部の理事が反対派を説得している。

大学は11月中に結論を出す予定だ。打ち切りと決まれば、植村氏の雇用は来年3月までとなる。もちろん、植村氏は雇用継続を求めている。

支援団体などは、ジャーナリスト有志で声明を出す、記者会見をしてメディアに取り上げてもらうなどの対策を考えている。

植村さんは26日に開かれた東京地裁での第3回口頭弁論に出廷し、その後の報告集会で韓国訪問、産経新聞から受けたインタビューの様子を説明した。「ねつ造記者ではない」とキッパリ言い、極めて元気だった。

※写真は植村隆氏

橋詰雅博
日刊ゲンダイ記者を経てフリーのジャーナリスト。
ブログ「橋詰雅博の焦点」