1. 前最高裁長官の竹崎博允氏が受けた大綬章、選考したのは内閣府賞勲局

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2015年11月09日 (月曜日)

前最高裁長官の竹崎博允氏が受けた大綬章、選考したのは内閣府賞勲局

前最高裁長官の竹崎博允氏が、大綬章を受けた。毎日新聞(11月5日付け)は「<秋の叙勲>皇居で大綬章授与式 竹崎前最高裁長官ら」というタイトルでこのニュースを報じた。

秋の叙勲の大綬章授与式が5日、皇居・宮殿「松の間」で行われた。桐花大綬章の竹崎博允前最高裁長官(71)ら日本人9人と、イタリアのマリオ・モンティ元首相(72)ら外国人2人に、天皇陛下が勲章を手渡された。

  受章者を代表して竹崎さんが「それぞれの分野において一層精進する決意でございます」とあいさつし、陛下は「国や社会のために、また人々のために尽くされてきたことを深く感謝しております」と述べて祝った。

竹崎氏は、2008年11月25日に最高裁長官に就任。そして2014年3月31日 に退官した。この約5年半の間に、わたしがなんらかの形で関係した範囲ですら、司法の公平性と欺瞞(ぎまん)を露呈する事件などが立て続けに起こっている。いずれも裁判の公平性と法治国家の信用にかかわる事件である。従って住民運動の間では、竹崎氏に対して厳しい評価が多い。

まず、わたしにとって最も身近な「押し紙」問題と「押し紙」裁判である。最高裁は「押し紙」問題に関しては、全面的に新聞社サイドに立っており、「押し紙」は1部も存在しないという新聞人の主張をうのみにしてきた。最高裁がかかわった「押し紙」裁判では、いずれも新聞社の主張を支持してきた。

前任長官の時代はそうではなかった。第1真村裁判のように、読売新聞社による「押し紙」を認定したケースもある。最高裁は、次の判決を認定している。

■第1次真村裁判・福岡高裁判決

◇2230万円請求の読売裁判

読売新聞社と3人の社員が名誉を毀損されたとして、わたしに対して2230万円の金銭支払いを主張し続けた裁判では、最高裁は、わたしを勝訴させた地裁と高裁の判決を否定して口頭弁論を開き、判決を高裁へ差し戻した。そして加藤新太郎裁判官がわたしに対して、110万円の金銭支払いを命じる判決を下したのだ。

その加藤氏も退官後にやはり勲章を受け、アンダーソン・毛利・友常法律事務所へ顧問として、(広義の)天下りをした。「(広義の)天下り」と書いたのは、最近、再就職した本人が所属していた「役所」が就職を斡旋していなければ、「天下り」にはあたらないと、やけに言葉の定義に執着している揚げ足取りの弁護士が増えているからだ。社会通念では、国策などに大きな影響を及ぼす国家公務員が退官後に役員として再就職することを、広義に「天下り」というのだ。

さらに竹崎長官時代に起きた重大事件としは、改めて言うまでもなく小沢一郎検審疑惑がある。小沢検審は、開かれていなかったのではないか、あるいは架空検審だったのではないかという疑惑が掛かっているのだ。疑惑を裏付ける十分な根拠もある。これについては、メディア黒書でも繰り返し報じてきたし、最近、志岐武彦氏が出版した『最高裁の黒い闇』(鹿砦社)に詳しい。

◇内閣府賞勲局

ところで読者は、この種の勲章制度を運営している組織をご存じだろうか。
結論を先に言えば内閣府である。内閣府に賞勲局という部署があり、「栄典制度の調査、研究、企画業務のほか、春秋叙勲等における勲章等の授与の審査などの栄典に関する事務を行って」いる。

もちろん授章者に支給される年金も税金から支出されている。

このような事実を考慮に入れて竹崎氏の授章を考える時、司法の独立性とはなにかという問題が浮上してくる。

たとえば特定の政治家を恣意的に政治の表舞台から消すことを可能にする検察審査会制度。それを運用している最高裁事務総局の元長官が、内閣府から勲章を授与されるのは、三権分立の制度にとって問題がある。鳩山由紀夫、小沢一郎、小渕優子といった政治家は、竹崎氏の受賞をどのように感じているのだろうか。

天皇と安倍首相の前で、黒い礼服に身をつつみ、頭(こうべ)をたれる竹崎氏の姿は、われわれに日本の司法とは何かという重大な問題を突きつけるのである。

余談になるが、先日、元裁判官で日本の裁判所を厳しく批判している瀬木比呂志(せぎ・ひろし)明治大教授が、「ニッポンの裁判」(講談社)で第2回城山三郎賞を受賞された。こちらについては、真っ当な受賞だ。