1. 米艦艇による中国の人工島接近事件、NHK職員による情報の垂れ流しと世論誘導②

マスコミ報道・世論誘導に関連する記事

2015年10月30日 (金曜日)

米艦艇による中国の人工島接近事件、NHK職員による情報の垂れ流しと世論誘導②

このところマスコミによる中国脅威論が広がっている。たとえばNHKは、「アメリカ軍の艦艇 中国の人工島に接近か」(10月27日 9時52分)と題する記事をウエブサイトに掲載している。これは放送されたニュースの文字版のようだ。

複数の欧米メディアは、南シナ海で人工島を造成し主権の主張を強める中国に対し、これを認めない立場を取るアメリカ政府が、人工島から12海里以内で軍の艦艇を航行させることをオバマ大統領が決断したと報じました。(略)

  アメリカ政府は、人工島は国際法上、領海の基点とはならないため、軍の艦艇を近づけても問題はないとしていますが、これまで中国側は主権の侵害に当たるとして批判してきました。アメリカ政府は今のところ、報道の確認を避けていますが、実行されれば中国の強い反発は必至で、米中間の緊張が高まることが予想されます。

改めて言うまでもなく、暗礁を埋め立てて人工島を設置し、そこに軍事基地を置く行為にはさまざまな問題を孕んでいる。人工島の周辺国にとっては、脅威の存在になることは言うまでもない。中止すべき戦略だ。

しかし、軍事大国化を進めているという点からすれば、歴代ホワイトハウスは中国政府の比ではない。アフガニスタンやイラクにおける米軍の軍事行動を見れば一目瞭然である。実際にこれらの国を空爆し、軍隊を送り、殺戮行為を働いたことは周知の事実である。しかも、イラクの場合は、侵攻の理由とされた化学兵器が存在しなかったことも明らかになっている。

アフガニスタンやイラクの以前にも、米軍はラテンアメリカをはじめ、世界各地に軍事基地を設置して、「解放」を口実に軍事介入してきた。

が、米国の軍事大国化に関しては、NHKはむしろ理解を示す視点から報じてきた。わたしが知る限りでは、絶対に「侵略」という言葉は使わなかった。

◇「中立」という勘違い

現在、日本には、自国の軍事大国化に関連して2つの住民運動がある。沖縄の基地問題に反対する住民運動と安保関連法に反対する住民(市民)運動である。これら2つの案件が引き金になり、安倍政権の支持率は相対的には低落している。特に沖縄では、安倍政権に対する憎悪が住民の間に広がっている。辺野古の埋め立てをめぐり沖縄県と国が法廷で争う日が近づいている。

この時期に米軍の艦艇が中国の人工島の近くを航行し、それをNHKが報じれば、沖縄の米軍基地を容認して、安保関連法を運用する方針もやむなしという世論が広がるのはいうまでもない。市民たちは安保関連法案に反対して国会議事堂を包囲したが、「やはり安倍さんが正しかった」ということになりかねない。

今回の米艦艇による人工島接近の戦略をだれが決めたのかは分からない。特定秘密保護法の壁に阻まれて知りようもない。が、何者かが安倍政権に加勢するために仕組んだ策略の可能性もゼロではない。わたしはむしろ意図的な計画があったと推測する。そしてNHKとのあうんの呼吸で、ニュースを垂れ流したとも考え得る。

NHKがこれまで一貫して米国・中国の軍事大国化を批判してきた過去があるのならまだしも、米軍による軍事行動の方はむしろ「理解」を示してきたのである。もちろんNHKが得意とする沖縄戦に関する資料の発掘は、一概に親米的とはいえないが、これとて本当に残忍な行為の画像をカットするなどかなりの自主規制が働いている。こうした番組を見て視聴者は、「やはりNHKは中立だ」と勘違いしてしまう。これが洗脳なのだ。

このようなNHKの実態を前提に今回の報道をみると、わたしには米艦艇の人工島への接近からニュース報道まで、意図的に仕組まれた世論誘導のような気がする。少なくとも疑ってみる必要がある。なぜ、今の時期なのかを再考する必要がある。