1. パリの「同時多発テロ」、メディアが戦争としての定義を採用しない理由

マスコミ報道・世論誘導に関連する記事

2015年11月16日 (月曜日)

パリの「同時多発テロ」、メディアが戦争としての定義を採用しない理由

フランスでISが断行した「同時多発テロ」は、今世紀の戦争の特徴を象徴している。客観的に見れば、ISが戦争をヨーロッパにまで持ち込んだというのが最も冷静な評価だ。テロの定義は間違っている。テロよりも悪質な戦争である。

小泉内閣が2003年に民主党の協力を得て(修正協議に応じて合意・成立)有事法制を成立させたころ、特攻隊の生還者で『昭和は遠く』(径書房)の著者・松浦喜一さんが、新世代の戦争について次のように話されていた。

「これからの戦争は、小泉さんが考えているように、上陸作戦を展開して、陣地を占領して攻撃に入る昔のスタイルではありません。いきなりミサイルが飛んでくるんです」

高いテクノロジーにより攻撃する側が反撃を受けることなく、安全地帯から相手を巧みに攻撃する戦術が定着するであろうという予想を、松浦さんはミサイルによる攻撃を例に説明されたのである。事実、シリアでそれが起こっている。

有志連合と呼ばれる軍事同盟は、最新技術の結晶である無人攻撃機を使ったり、はるか上空から、爆撃機による兵器の投下を繰り返し、地上を火の海と化している。だれが火だるまになるか分からない。民間人と軍人の区別などできるはずがない。もちろんISから市民へ向けた攻撃も想像されるが。その結果、難民がヨーロッパへ流入している。原因が自分たちにあるわけだから、ヨーロッパも彼らを受け入れざるを得ない。

こうした状況の下でIS側は、パリを舞台とした自爆テロに走った。追いつめられた側が極めて過激な行為に走った先例としては、日本の特攻隊による自爆攻撃がある。また米国市民を無差別に狙った爆弾搭載の気球作戦もあった。

パリの同時多発テロは、シリアでの戦争がヨーロッパまで拡大したことを意味する。単なるテロ行為ではない。テロ行為よりも悪質な戦闘行為である。しかも、空爆と同様に市民を巻き添えにしている。

現在の先進工業国と第3世界の間には、天然資源などが絡んだ利権の構図があるが、それについては報じない。大半のメディアは今回の事件を単なるISによるテロと位置づけ、戦争犯罪としては報じない。

「戦争」として定義すれば、自分たちの側の空爆も戦争犯罪として認識されてしまうからである。そこでどうしてもテロと定義させるを得ないのだ。恐らくこの点は、西側メディアの間で暗黙の報道協定になっているのではないか。

しかし、実態は新生代の戦争にほかならない。

今回の戦争の背景に、中国やロシアを含む先進工業国の利権があることをメディアは隠している。世界的なグローバリゼーションの流れが、他民族の自決権や文化・価値観を踏み倒していった結果、国際紛争が起きているのだ。

が、あまりも軽率に、テロ撲滅を口実に有志連合に参加しよというのが安倍政権の意向である。グローバリゼーションのあり方を問う米国の9・11の教訓とは何だったのだろうか?