1. 朝日新聞販売店は警察署の広報部か? 世田谷区のASA16店が警察との連携で日本新聞協会(白石興二郎会長[読売])から表彰される

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2015年11月11日 (水曜日)

朝日新聞販売店は警察署の広報部か? 世田谷区のASA16店が警察との連携で日本新聞協会(白石興二郎会長[読売])から表彰される

メディア黒書でかねてから、奇抜でにわかに信じがたい現象として報じてきた事柄のひとつに新聞人と警察の「友好関係」がある。ジャーナリズムの重要な役割のひとつは、権力の監視である。その権力組織と親密になって情報をもらったり、なんらかの協力関係を構築することは、ジャーナリズムの基本原則そのものを崩してしまう。新聞ジャーナリズムの死活問題にほかならない。

日本新聞協会が主宰している「地域貢献賞」を呼ばれる賞がある。今年、この賞を受けた団体のひとつに東京世田谷区のASA(朝日新聞販売店)16店がある。受賞理由は、警察署と協働で防犯活動に取り組んでいるというものである。

新聞協会のウエブサイトによると、受賞理由は次のようになっている。

東京都世田谷区の成城警察署管内16の朝日新聞販売所ASAは、2005年から地域で発生した事件や防犯対策をまとめた「朝日新聞 防犯ニュース」を毎月4万4000部発行し、新聞に折り込んで配布している。警察署から提供される最新の情報を広く読者に届けることで、地域で暮らす人々の安全・安心に寄与している。

取り上げる情報は、高齢者を狙う振り込み詐欺や悪質商法の事例からひったくり対策、スマートフォン利用の危険性など幅広い。身近で起きる犯罪や事故への対策を詳しく紹介しており、安全なまちづくりに貢献する存在となっている。

「警察署から提供される最新の情報を」まとめて『朝日新聞 防犯ニュース』を発行し、新聞折込のかたちで配布しているというのだ。こうした活動には次のような問題点がある。

警察にとって好都合な情報だけが開示されて、住民に広報されている可能性が高い。

ASAの側から警察に恩を売ることで、かりに「押し紙」や折込広告の水増し・廃棄などが発生した場合も、刑事事件として処理されなくなる可能性が高い。事実、「押し紙」と折込広告の問題が取り締りの対象になったことは、皆無ではないにしろ、ほとんどない。

警察業務の一部が新聞販売網に入り込んでくることになり、公権力から独立したジャーナリズムの原則が完全に崩壊してしまう。

①から③のような重大な問題を新聞人が認識していないのだから、問題は相当に深刻といえよう。野球賭博が発覚した読売ジャイアンツの取締役オーナーでもある日本新聞協会の会長・白石興二郎氏が、この不祥事を理由に会長を辞任しないわけだから、「腐敗」や「癒着」についての認識があまい。

◇読売防犯協力会

ちなみに警察と新聞販売店の協力関係は、朝日に限ったことではない。YC(読売新聞販売店)が全国読売防犯協力会という組織をつくって警察に協力してきた事実は新聞業界内では周知となっている。同協会のウエブサイトは、会の目標について次のように述べている。

わたしたちの防犯活動の基本は「見ること」と「見せること」です。街をくまなく回って犯罪の予兆に目を配ります。そして、オレンジ色のベストや帽子を犯罪者に見せつけ、「この街は犯罪をやりにくい」と思わせることも狙っています。さらに、新聞のお家芸である情報発信なども含め、活動の目標は次の4点に集約できると思います。

1.配達・集金時に街の様子に目を配り、不審人物などを積極的に通報する

2.警察署・交番と連携し、折り込みチラシやミニコミ紙などで防犯情報を発信する

3.「こども110番の家」に登録、独居高齢者を見守るなど弱者の安全確保に努める

4.警察、行政、自治会などとのつながりを深め、地域に防犯活動の輪を広げる

日ごろから地域のみなさんのお世話になっているYCスタッフたちは、少しでも地元のお役に立ちたいと思っております。街で見かけたときは、気軽に声をかけていただければ幸いです。
新聞配達員や集金員が路地の隅々にまで、あるいは家庭の中にまで視線を走らせる行為は、「おせっかい」ではすまないだろう。何を基準に「犯罪の予兆」と判断するのかは個人差があるわけだから、彼らがスパイに変質する可能性も孕んでいる。

ちなみに全国読売防犯協力会と覚書を交わしている都道府県の警察は次の通りである。年月日は、覚書を交わした日を示す。

高知県警 2005年11月2日
福井県警 2005年11月9日
香川県警 2005年12月9日
岡山県警 2005年12月14日
警視庁 2005年12月26日
 
鳥取県警 2005年12月28日
愛媛県警 2006年1月16日
徳島県警 2006年1月31日
群馬県警 2006年2月14日
島根県警 2006年2月21日

宮城県警 2006年2月27日
静岡県警 2006年3月3日
広島県警 2006年3月13日
兵庫県警 2006年3月15日
栃木県警 2006年3月23日

和歌山県警 2006年5月1日
滋賀県警 2006年6月7日
福岡県警 2006年6月7日
山口県警 2006年6月12日
長崎県警 2006年6月13日

茨城県警 2006年6月14日
宮崎県警 2006年6月19日
熊本県警 2006年6月29日
京都府警 2006年6月30日
鹿児島県警 2006年7月6日

千葉県警 2006年7月12日
山梨県警 2006年7月12日
大分県警 2006年7月18日
長野県警 2006年7月31日

福島県警 2006年8月1日
佐賀県警 2006年8月1日
大阪府警 2006年8月4日
青森県警 2006年8月11日

秋田県警 2006年8月31日
神奈川県警 2006年9月1日
埼玉県警 2006年9月14日
山形県警 2006年9月27日

富山県警 2006年9月29日
岩手県警 2006年10月2日
石川県警 2006年10月10日
三重県警 2006年10月10日
愛知県警 2006年10月16日

岐阜県警 2006年10月17日
奈良県警 2006年10月17日
北海道警 2006年10月19日
沖縄県警 2008年6月12日