1. 「大阪維新の会」圧勝の背景に、東京に対する大阪人の劣等感と対抗意識、それに公務員に対する妬(ねた)み

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2015年11月25日 (水曜日)

「大阪維新の会」圧勝の背景に、東京に対する大阪人の劣等感と対抗意識、それに公務員に対する妬(ねた)み

大阪維新の会が22日に投票が行われた府知事選と大阪市長選で圧勝した。知事選では、現職の松井一郎知事が64%の得票率を得た。大阪市長選でも新人の吉村洋文氏が56%を占めた。他党はまったく歯が立たなかった。

選挙になると候補者は得票率を伸ばすための戦略を練る。大きな選挙になると、世論誘導の専門家を広告代理店から招聘(しょうへい)することも珍しくない。

「維新の会」の立ち位置は、結論を先にいえば極右である。自民党よりもさらに右寄りだ。とりわけ新自由主義の導入に熱心で、松井・橋下体制下では、「無駄をはぶく」を口実として、さまざまな合理化が進んた。今後も同じ路線が継続されることは間違いない。

安倍政権の政策を見れば明らかなように、新自由主義が目指しているものは、中央政府をスリム化して、経済を市場原理に委ねることである。そのために従来は中央が担っていた仕事を、民間に移したり、地方にゆだねる形を推進する。

改めて言うまでもなく、後者は地方分権の推進である。その最終段階が、大阪都と道州制の導入ということになりそうだ。

「地方に権限をゆだねる」とか、「地方を活性化する」などと言われれば聞こえはいいが、実態はバラ色ではない。たとえば医療や福祉政策を地方自治体にまる投げして、財源が不足すれば、これらの分野を地方の権限で切り捨ててしまうことになりかねない。その可能性が極めて強い。新自由主義と自己責任論が結びつき、民間の保険産業が急台頭しているのも、このような政策的、あるいは思想的な背景があるのだ。

次の某氏のツイッターが、大阪の悲劇を的確に描写している。

繰り返すけど今の大阪はピノチェト政権下のチリみたいな状況に片足突っ込んでる訳でね。メディアの主導権を握られた上で、新自由主義的経済と縁故主義中心の世界に突っ込んでいるんだから、そりゃ優秀な人から逃げ出していきますよ。かつてラテンアメリカで失敗した事のリプレイが始まってるんだからさ

もともと地方政党というのは、中央政府が最終的に行き着く地方分権政策の受け皿の性質があるのだ。それゆえに日本の新自由主義政党、具体的には自民と民主と維新の折り合いは本音の部分では極めて親密だ。たとえば民主党は、安保関連法案では自民党と対立したが、新自由主義の経済政策では同じ方向を向いている。「反自民」よりも、「反共」の側面の方がはるかに強い。

◇安倍政権よりも右の維新

それにしてもなぜ、大阪住民の多くが維新の会に投票したのだろうか。あるいはこれを逆に言えば、維新の会は、どのような戦略の下で大規模な集票に成功したのだろうか。わたしは基本的に3つのポイントがあると思う。

大阪人がもつ東京に対する激しい劣等感と対抗意識
維新は大阪の地方政党であることを打ち出すことで、中央に対する対抗意識をあおり、集票に結び付けたのではないか。

公務員に対する特殊な感情を逆手にとった。橋下代表の公務員批判は有名だ。公務員は最も生活が安定した層である。当然、多くの人々は彼らの地位を妬む。となれば公務員を正面から批判したり、虐めたりする行為に共感を覚える層が生まれる。それが集票に結び付く。

橋下代表の奇抜でたくましい言動を、現在の公権力に対する斬新な挑戦と勘違いしている有権者が多いこと。が、既に述べたように維新の権力批判は、右からの批判に過ぎない。新自由主義に対する批判ではない。