読売の検索結果

2018年03月02日 (金曜日)

これは意外?読売・真村訴訟の判決で認定されているABC部数改ざん手口、PC上に架空の配達地区と架空読者を設定

新聞販売に関係した諸問題のなかで、メディア黒書でもあまり取りあげてこなかったテーマのひとつに、ABC部数の改ざん問題がある。これは裏をかえすと帳簿上で、「押し紙」部数を実配部数として計上する手口のことである。

当然、「押し紙」には読者がいないが、帳簿上では、「押し紙」の読者が存在するかのように改ざんするのだ。手口はいたって簡単だ。

新聞販売店の業務にパソコンが導入されていなかった時代は、ABC協会による調査が入る直前(新聞社から事前に通知がある)に、販売店は総出で偽の帳簿を作っていた。故高屋肇氏(毎日新聞の元店主)によると、ウソの名前と住所を延々と帳簿に書き連ねて、搬入部数と読者数(架空読者を含む)をほぼ一致させていたのだという。ABC協会の調査員も、帳簿を詳しく調査することはなかったという。

が、その後、新聞販売店の業務にもパソコンが導入された。それに伴い、今度は、パソコン上で、架空の読者を設定するようになった。少なくとも、筆者が取材した真村訴訟(被告・読売新聞社西部本社)のケースでは、パソコン上に架空の配達区、架空の住所、架空の読者が設定されていたことが司法認定された。

真村訴訟とは、YC広川(福岡)の真村店主が店主としての地位保全を求めて読売新聞を訴えた裁判である。2007年に真村氏の勝訴が最高裁で確定している。従って、読売によるABC部数の改ざん方法を考える上で、裏付けが確かな例といえるだろう。

◇PC上の架空配達区と架空読者

真村氏は自店のパソコン上の帳簿に26区と命名した架空の配達区を設定していた。この26区は、帳簿上で「押し紙」を実配部数として計上するための区だった。ここに架空の読者を設置して、実際には新聞を配達していないが、配達したことにして帳簿上の部数が、すべて実配部数になるように操作していたのである。

裁判の中で真村氏はこの事実を認めた。裁判所もそれを事実認定した。福岡高裁判決から、該当部分を引用しておこう。

平成11年5月ころからは、広川地区の28区域のうち26区を架空読者を計上するために利用し始めた。(甲131、原審での一審原告真村本人)

(真村氏は読売本社に)定数(搬入部数)1660部、実配数1651部と報告していたが、実際には26区に132世帯の架空読者を計上していたので、実際の配達部数は1519部を超えないことになる。

真村氏は、実際には1519部しか配達していなかったが、26区の132部を加えた総計1660部が実配部数であると報告したのだ。これは実配部数の虚偽報告にあたり、裁判所もそれを認定・批判しているが、同時に真村氏がそうせざるを得なかった背景を次のように認定している。

しかしながら、新聞販売店が虚偽報告をする背景には、ひたすら増紙を求め、減紙を極端に嫌う一審被告の方針があり、それは一審被告(読売)の体質にさえなっているといっても過言ではない程である。

これが部数至上主義といわれるものである。日本の新聞社の諸悪の根源である。

このように、(読売は)一方で定数と実配数が異なることを知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。そうであれば、一審原告真村の虚偽報告を一方的に厳しく非難することは、上記のような自らの利益優先の態度と比較して身勝手のそしりを免れないものというべきである。

読売の販売政策を裁判所は、「身勝手のそしりを免れない」と認定して、真村氏の地位を保全したのである。

このように実は、裁判の中でABC部数の改ざん方法は検証され、その悪質な手口が司法認定されているのである。

公正取引委員会は、早急に調査すべきだろう。また、国税局も毎年調査すべきだろう。

真村高裁判決の全文

◇「押し紙」1部もありません

参考までに喜田村ライブラリー(読売・裁判資料集)から、読売側の主張も紹介しておこう。出典は、対黒薮・新潮社の「押し紙」裁判(2010年11月16日・平成21年[ワ]第23459、読売の勝訴)である。読売の代理人・喜田村洋一・自由人権協会代表理事の質問に答えるかたちで、宮本友丘専務(当時)は、次のように証言した。

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。

 

2018年02月09日 (金曜日)

【訂正記事】読売がひと月で約10万部減、このうち約9万7000部が東京本社管内、2017年12月度のABC部数

【訂正記事】

昨日(8日)付け記事で、訂正・謝罪したように、2日付けで公表した新聞各社の2017年12月度のABC部数は、裏付け資料が間違っていた。次に示す数字が、2017年度12月度のABC部数である。

それによると、読売が前月比で約10万部の減部数になったのが著しい特徴としてあげられる。このうち東京本社管内の減部数は、9万7126部である。つまり読売の場合、減部数の大半が東京本社管内で起きたことを意味している。

対前年比で見た場合、朝日は約30万部、毎日は約16万部、読売は約24万部、日経は約23万部、産経の約4万の減部数となっている。

部数内訳は次の通りである。[ ]対前月数。()対前年同月数

朝日:6,038,803[-26,432](-299,212)
毎日:2,860,202[-39,509](-162,792)
読売:8,660,824[-104,542](-240,964)
日経:2,498,347[41,792](-227,863)
産経:1,520,115[-147](-44,499)

全国の新聞のABC部数・裏付け資料

ちなみに、独禁法の新聞特殊指定によると、「押し紙」とは、「実配部数+予備紙」を超えた部数を意味する。そして梱包されたまま回収されている「押し紙」は、予備紙としては使われていないわけだから、すべて「押し紙」ということになる。

新聞人は、新聞社と販売店が話し合って決めた注文部数を超えた部数が「押し紙」であり、従って「押し紙」は存在しないと主張してきたが、これは新聞特殊指定の解釈の誤りである。特殊指定は、優越的地位の濫用を防止するために、「押し紙」についての特殊な定義を設けているのである。

繰り返しになるが「実配部数+予備紙」を超えた部数はすべて「押し紙」である。そして回収されている新聞は、予備紙としては使われていないのだから、残紙はすべて「押し紙」である。極めて単純な話なのだ。単純な話をわざわざ複雑にしてごまかしているのが、新聞人なのである。

12月度のABC部数は次の通りである。念を押すまでもなく、ABC部数は、公称の部数であって、実配部数ではない。減部数分が「押し紙」だった可能性もある。もちろん実配部数が減った可能性もある。

◇会食組に新聞人も

なお、昨年の年末、12月26日に安倍晋三首相と会食したマスコミ関係者は次の面々だ。新聞人も2名含まれている。

小田尚(読売)、粕谷賢之(日テレ)、島田敏男(NHK)、曽我豪(朝日)、田崎史郎(時事)、石川一郎(BSジャパン)

これでは「押し紙」問題は解決しない。

◇「押し紙」と折込広告の回収場面の動画

参考までに「押し紙」回収の場面と、水増しされた折込広告を回収している場面を撮影した動画を紹介しておこう。新聞人は1980年代から、「押し紙」問題を繰り返し指摘されてきたが、耳を傾けないわけだから、筆者も報じ続けざるを得ないだろう。

次の3点の動画は、「押し紙」を回収している場面である。回収されている新聞が古紙でないことは、新聞がビニールで梱包されていることで分かる。毎日新聞の場合、「押し紙」率が70%を超える販売店もあった。

【動画1】

 

【動画2】

 

【動画3「今朝の毎日新聞が数時間後には只の新聞紙(古紙)になるまでの様子」

◆折込広告の破棄

「押し紙」とセットになっている折込広告も破棄される。以下の「1」と「2」は、過剰になった折込広告を段ボール箱に入れる場面である。「3」は、折込広告が入った段ボールを、トラックに積み込む場面である。

なお、「3」は、販売店から紙収集場までをカメラが追跡している。素人が撮影した動画だが、こんな場面はNHKに40年勤務しても撮影できないだろう。

【1,大量廃棄されるユニクロの折込広告】

 

【2,大量廃棄される山田養蜂場の折込広告】

 

【3,販売店から折込広告を搬出する場面】

 

◇読売に対する反論

 真村訴訟での「押し紙」政策認定については、読売はその解釈を認めていない。事実、この点に言及した『月刊Hanada』の記事(黒薮執筆)に、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送りつけた。そこで、それに対する筆者の反論と、判決を以下に掲載しておこう。滝鼻氏が希望されるようであれば、抗議文の全文を掲載する。

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

真村裁判福岡高裁判決

2018年01月11日 (木曜日)

2017年11月のABC部数、日経は年間で27万部減、朝日は30万部減、読売は24万部減、新聞の「押し紙」型ビジネスモデルはほぼ崩壊

2017年11月度の新聞のABC部数が明らかになった。それによると、この1年間で朝日新聞は、約30万部を減らし、読売新聞は約24万部を減らした。地方紙を含む全国76紙のベースでみると、125万部が減部数となった。新聞の凋落傾向に歯止めはかかっていない。

中央紙5紙のABC部数は次の通りである。()内は前年同月比である。

朝日新聞:6,065,235(-295,411)
毎日新聞:2,899,711(-127,973)
読売新聞:8,765,366(-239,403)
日経新聞:2,456,555(-268,224)
産経新聞:1,520,262(-46,318)

2017年11月のABC部数(全紙)

◇減部数の中身は「押し紙」

ちなみにABC部数には、新聞販売店からの注文部数を超えて搬入される「押し紙」が含まれている。従ってABC部数の減部数が購読を中止した読者の数を示しているわけではない。それよりも「押し紙」を減らした結果がABC部数の減部数として現れていると解釈すべきだろう。

新聞社が「押し紙」を減らさざるを得ない背景には、販売店の経営悪化がある。折込広告の受注が激減しているので、折込広告の水増し収入で、「押し紙」で生じる損害を相殺する従来のビジネスモデルが機能しなくなっているのだ。

こうした状況の下では、「押し紙」を減らさない限り、新聞販売店の経営は成り立たない。これが新聞の凋落の中身なのである。読者(その大半は高齢者)そのものが極端に減っているわけではない。

それにしてもこれだけ多量の新聞が減部数になっていながら、新聞社はなぜ、倒産しないのだろうか。会食の場で、安倍首相から素晴らしい秘策でも受けているのかも知れない。独禁法違反で公正取引委員会が動けば、手も足もでないはずなのだが。

 

新聞の注文部数とは、新聞特殊指定によると、「実配部数+予備紙」のことである。従って梱包されたまま回収されている新聞は、予備紙としては使われておらず、理由のいかんにかかわらず「押し紙」ということになる。新聞業界は業界ぐるみで、独禁法に違反している可能性が高い。

 

【動画】「押し紙」回収の現場。毎日新聞のケース

 

2018年01月09日 (火曜日)

読売「北田資料」に見る「押し紙」の実態、読売は「押し紙」を否定

新聞販売店が次々と経営破綻の寸前に追い込まれている。原因は、インターネットの台頭と表裏関係にある「紙新聞」の衰退という状況の下で、「押し紙」が重い負担となって販売店にのしかかってきたことである。販売店の経営悪化が、従業員の待遇を押し下げる。士気を奪う。こうした新聞販売現場の空気が、新聞発行本社の幹部へ伝わっているのかも疑問だ。

しかし、「押し紙」問題は最近になって浮上してきたものではない。日販協(日本新聞販売協会)の会報のバックナンバーを調べてみると、少なくとも1970年代から、大きな問題になっている。日販協が独自の「残紙」調査を行い、新聞発行本社へ「押し紙」政策の中止を申し入れたりもしている。

1980年代の初頭には国会で、共産党、公明党、社会党が、合計で15回も新聞販売の問題を取りあげた。しかし、問題は解決しないまま放置された。

その後、「押し紙」問題は、一旦、表舞台から姿を消した。日本経済が好調になったために、折込広告の需要が急激に増え、「押し紙」によって発生する損害を、折込広告の水増しで相殺できたからである。新聞販売店は折込広告で経営が成り立っていたのである。それが新聞のビジネスモデルだった。

販売店主の中には、折込広告の水増しが発覚すれば、即座にビジネスモデルが崩壊するので、正常な取り引きに徹すべきだと考える人も多かったが、新聞社が耳を貸さなかったのである。販売政策を決定するのは、新聞社なので、販売店側は、社の方針に従わざるをえなかった。従わなければ、強制改廃の対象になった。責任があるのは、新聞社の側である。

しかし、このようなビジネスモデルは、折込広告の需要がなくなれば成り立たない。実に単純な原理である。このところ新聞社が急激にABC部数を減らしているが、これは「押し紙」を減らさざるを得なくなった結果である可能性が高い。読者離れも進んでいるが、「押し紙」整理の要素の方が強い。

新聞経営者の多くは、経営者としてもダメな人が多いので、既存のビジネスモデルが孕んでいるリスクを予測できなかったのである。そして、今、悪夢が現実のものとなった。

参考までに、1970年代から80年代の時期の「押し紙」の実態を紹介しておこう。例に引くのは、北田資料と言われる有名な資料で、1982年3月8日に、共産党の瀬崎博義議員が国会質問で取りあげた。読売新聞・鶴舞直売所の「押し紙」の実態である。

◇北田資料

なお、読売の代理人弁護士である喜田村洋一・自由人権協会代表理事は、読売には1部も「押し紙」は存在しないし、読売の歴史上でも1部も存在しなかったと主張してきたが、読売の「押し紙」政策は、2007年に真村訴訟の中で認定されている。筆者がこの主張を『月刊HANADA』で展開したところ、読売の滝鼻広報部長が抗議文を送りつけてきたので、それに対する筆者の反論を紹介しておこう。以下のリンクである。

読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

真村裁判・福岡高裁判決

2017年11月03日 (金曜日)

ここ10年の新聞発行部数の変化、朝日は約187万部減、読売は約127万部減、毎日は約94万部減、「押し紙」分を含めるとさらに深刻

次に示すのは、ここ10年間における中央紙のABC部数の変遷である。社名の左側の数字は2017年11月のもので、()内は10年前、つまり2007年11月のものである。

朝日 6,136,337(8,010,922)
毎日 2,942,247(3,882,063)
読売 8,713,985(9,983,032)
日経 2,702,584(2,882,495)
産経 1,519,645(2,167,187)

朝日新聞は約187万部、読売新聞は約127万部、毎日新聞は約94万部の減部数となっている。これら3社の減部数の合計は、約408万部となり、発行部数が44万部程度の京都新聞社が、9社消えた状況に匹敵する。大変な凋落ぶりである。

しかも、メディア黒書で繰り返し報じてきたように、これらの部数には「押し紙」が含まれているので、実際には、ABC部数に現れた数値よりもさらに部数減の規模が大きい可能性が高い。

■■「押し紙」とは?

「押し紙」とは、新聞社が新聞販売店に対して、搬入する新聞のうち、配達されないまま回収される新聞のことである。たとえば2000部しか配達していない販売店に3000部を搬入すると、過剰になった1000部が「押し紙」である。偽装部数ともいう。

ただし、予備紙(配達中の破損などに備えて余分に確保しておく新聞で、通常は、搬入部数の2%)は、「押し紙」に含まれない。

公正取引委員会の見解は、実際に配達する新聞の部数に予備紙をプラスした部数が、正常な新聞販売店経営に必要な部数であって、それを超えた部数は、機械的にすべて「押し紙」と定義している。新聞社は、「押し紙」についても、卸代金を徴収する。

新聞人ら(ここでは新聞社の経営陣)は、一貫して「押し紙」は1部も存在しないと主張している。しかし、次の動画を見る限り、故意に嘘をついているとしか思えない。ちなみに今年、新聞人らが新聞週間のために決めた標語は、「新聞で見分けるフェイク 知るファクト」である。彼らは、次の動画を凝視すべきだろう。

【動画】「押し紙」の回収。本記事とは関係ありません。

【参考動画】

新聞週間の標語「新聞で見分けるフェイク 知るファクト」の裏面で新聞部数の偽装「押し紙」、大量廃棄される天満屋の折込広告 

新聞の凋落、水増しされ大量廃棄される県民共済の折込広告、「折り込め詐欺」の実態

「折り込め詐欺」:山田養蜂場のケース

「折り込め詐欺」:ユニクロのケース

新聞没落、1販売店から月間30トンの「押し紙」、「折り込め詐欺」の発覚でクライアントが折込広告に見切りか?

 

2017年10月27日 (金曜日)

没落へ向かう新聞業界、1年で朝日は約30万部減、読売は21万部減、毎日は11万部減、9月度のABC部数

2017年9月のABC部数が明らかになった。それによると新聞の部数減の傾向にはまったく歯止めがかかっていない。ここ1年で、朝日新聞は約30万部、読売新聞は約23万部、それに毎日新聞は約11万部の部数を減らした。

朝日 6,136,337(-296,822)
毎日 2,942,247(-107,150)
読売 8,713,985(-228,146)
日経 2,702,584(-22,677)
産経 1,519,645(-49,203)

地方紙とブロック紙を含めて、一般紙で部数を増やした新聞社は1社も存在しない。軒並み部数を減らしている。次に示すのは、全国76紙のABC部数である。

全国76紙のABC部数

◇「新聞で見分けるフェイク 知るファクト」

なお、ABC部数には、「押し紙」が含まれている。

「押し紙」とは、新聞社が新聞販売店に対して、搬入する新聞のうち、配達されないまま回収される新聞のことである。たとえば2000部しか配達していない販売店に3000部を搬入すると、過剰になった1000部が「押し紙」である。偽装部数ともいう。

ただし、予備紙(配達中の破損などに備えて余分に確保しておく新聞で、通常は、搬入部数の2%)は、「押し紙」に含まれない。

公正取引委員会の見解は、実際に配達する新聞の部数に予備紙をプラスした部数が、正常な新聞販売店経営に必要な部数であって、それを超えた部数は、機械的にすべて「押し紙」と定義している。新聞社は、「押し紙」についても、卸代金を徴収する。

今年の秋の新聞週間の標語は、「新聞で見分けるフェイク 知るファクト」であるが、「押し紙」行為こそがフェイク情報の典型といえよう。ダフ屋まがいの新聞人によるしつこい新聞拡販はなくなったが、実配部数を偽る行為はまったく解決していない。それゆえにABC部数を解析する際には、注意を要する。ABC部数が必ずしも実配部数を意味するわけではない。

【動画】「押し紙」を回収する現場。ABC部数がフェイク情報であることの裏付け。

【写真】毎日新聞の「押し紙」。毎日新聞・蛍池販売所の元所長・高屋肇氏提供。

2017年08月21日 (月曜日)

新聞崩壊、17年度上期のABC部数、朝日は1年で33万部減、読売は約19万部減、増えたのは4紙のみ

 

2017年上期のABC部数(1月~6月の平均部数)が明らかになった。新聞部数の低落傾向にはまったく歯止めがかかっていない。

中央紙について言えば、朝日新聞は約630万部、読売新聞は約880万部、毎日新聞は約300万部となった。前年の同期比でみると、朝日は約-33万部、読売は約-19万部、毎日は約-8万部となった。

朝日新聞 6,258,582(-325,208)
毎日新聞 3,016,502(-77,111)
読売新聞 8,830,415(-186,823)
日経新聞 2,718,263(-12,331)
産経新聞 1,555,261(-24,420)

調査対象になった76紙のうち、前年同期比でプラスになったのは、4紙だけだった。読売(中部)が92部、山陰中央新報が1830部、読売中高生新聞が6248部、ニッキン新聞が318部である。

2017年度上期のABC部数(全社)

◇「予備紙」という詭弁(きべん)

ちなみに、ABC部数には、いわゆる「押し紙」が含まれているので、ABC部数が販売(配達)部数を現しているわけではない。「押し紙」とは、「実配部数+予備紙」を超えて搬入された新聞部数のことである。予備紙の割合は、伝統的には2%とされてきたが、現在は日本新聞協会(厳密には新聞販売公正取引協議会)により、この「2%ルール」が削除された状態になっている。従って、過剰になった新聞を「予備紙」と呼ぶことで、「押し紙」は1部も存在しないという詭弁が成り立っている。こうして多くの新聞社が、独禁法の網の目をくぐり抜けて、「押し紙」政策を続けている。

政府も司法もそれを容認している。仲間であるからだ。醜いメディア政策といえよう。

読売新聞のように「押し紙」は1部も存在しないと公言している新聞社もある。読売の代理人であり、自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士に至っては、「押し紙」裁判などの中で、読売に限って、「押し紙」は1部も存在しないという主張を繰り返した。

しかし、これは真実ではない可能性がある。今後の検証が必要だ。

 

【参考記事】毎日新聞の2店、「押し紙」70%の決定的証拠、実際の全国総部数は150万部前後か?

2017年06月18日 (日曜日)

【読売熟読】読売防犯協力会の正体、共謀罪法案の成立で新聞販売店と警察が連携した「住民監視活動」がはじまる

強行採決で共謀罪法案が成立した。この法案が成立するプロセスで同時進行したのが、加計学園の問題と突如として現れた改憲論である。安倍首相が国会答弁ではからずも口にした「読売新聞を熟読して」は、こうした与党の一連の動きの背景に、読売新聞が共同歩調を取っていることを露呈した。

共謀罪法案の成立は、日本の刑法の運用を根本的に変えてしまう。それが社会全体に計り知れない負の影響を及ぼすことはいうまでもない。

従来、日本の刑法は、犯罪を実行した段階で、警察権力が逮捕権を行使するのが原則だった。ただ、命にかかわるような重大犯罪の場合、これでは手遅れになるので、例外的に犯罪実行の前段でも逮捕権を行使できる犯罪がいくつか指定されている。社会はそれで十分に機能してきたのだ。

ところが共謀罪法案が成立したことで、277の犯罪について、「共謀」(具体的には、話し合いなど)の段階で、逮捕権を行使できるようになった。しかも、この277の犯罪の中には、名誉毀損や著作権違反など出版関係者に直接かかわるものも含まれている。その一方で、政治家に不利にはたらく公職選挙法にかかわる犯罪は除外さている。

政府は、共謀罪法案を成立させる理由として、東京オリンピックに向けて、国連越境組織犯罪防止条約を批准するためと説明しているが、これはまったくの嘘である。国連越境組織犯罪防止条約は、国際金融犯罪を取り締まるためのもので、テロ対策は批准の条件にはなっていない。

共謀罪法案が成立する一連のプロセスの中で、日本の政治家の著しい劣化が明らかになった。

◇「不審人物などを積極的に通報」 

さて、本稿はここからが肝心なのだが、共謀の段階で警察が逮捕権を行使するためには、共謀の証拠を掴む必要がある。スパイ活動は必然になるだろう。

そのスパイ活動の体制はすでに構築されている。しかも、われわれの日常の中に入り込んでいる。

読者は、読売防犯協力会という団体をご存じだろうか。これは読売新聞販(YC)と警察が協力して、「防犯」のための「通報活動」をおこなう組織である。本部は読売新聞社の中にある。

同協会のウエブサイトには、4つの活動目標が記されている。

1.配達・集金時に街の様子に目を配り、不審人物などを積極的に通報する

2.警察署・交番と連携し、折り込みチラシやミニコミ紙などで防犯情報を発信する

3.「こども110番の家」に登録、独居高齢者を見守るなど弱者の安全確保に努める

4.警察、行政、自治会などとのつながりを深め、地域に防犯活動の輪を広げる

【出典】

つまり販売店の従業員が新聞配達や新聞の集金をしながら、「不信な人」を見かけたら、警察へ情報提供する役割を果たすのだ。新聞配達員は、路地の隅々にまで足を運ぶので、この種の活動には適任だ。

集金に訪れた家で、複数の人々が何か打ち合わせをしていて、それを不信に感じれば携帯電話で警察に通報する。こうした役割を担うのだ。

◇再び「読売新聞を熟読して」 

読売防犯協力会と覚書を交わしている全国の警察は次の通りである。

■覚書を交わしている全国の警察

安倍首相が国会答弁で、「読売新聞を熟読して」と言ったのは、偶然ではない。読売は、日本の極右勢力と連動している極めて危険な新聞社なのである。

 

【写真】左:安倍首相。右:読売新聞の元社長、特高警察出身の正力松太郎

2017年06月14日 (水曜日)

読売の部数は3年半で約110万部減、朝日は130万部、京都新聞社5社分の部数に匹敵、読売に懸念される加計学園事件の影響

4月のABC部数(新聞各社の公称部数)が明らかになった。新聞の凋落傾向には依然として歯止めがかかっていない。

この1年間で、読売は約19万部を減らした。ただし、この数字は「政府広報」の汚名をきせられる前の数字である。この件とは関係がない。

朝日は約36万部を減らした。朝日の方が読売よりも、部数減が激しいことを示している。

中央紙5紙のABC部数は次の通りである。()内は前年同月比である。

朝日:6,243,218(-363,344)
毎日:3,050,253( -65,179)
読売:8,811,732(-187,057)
日経:2,716,463( -14,309)
産経:1,594,855( -38,972)

全国の地方紙のABC部数は次の通りである。

■2017年度4月のABC部数(全紙)

◇肝心なのはABC部数ではなく実配部数

これらの数字を見る限り、新聞の凋落にまったく歯止めがかかっていないことがうかがえる。たとえば3年半前の2013年10月の部数と比較してみよう。()内は、3年半前の部数との差異である。

朝日:7,540,244(-1,297,026)
毎日:3,379,861(   -29,608)
読売:9,882,625(-1,070,893)
日経:2,775,184(   -58,721 )
産経:1,674,636(   -79,781)

朝日は約130万部を、読売は110万部を減らしている。意図的な「朝日バッシング」が多いこともあって、朝日だけが部数を減らしている印象もあるが、低落傾向は変わらない。

両社を合わせると、約240万部が消えた。これは京都新聞の約5社分に相当する。
◇「『押し紙』は1部もありません」

しかし、新聞社の経営を読み解く場合、ABC部数はひとつの参考でしかない。と、いうのもABC部数には「押し紙」が含まれているからだ。

「押し紙」とは、新聞の「実配部数+予備紙(常識的には搬入部数の2%)を超えて、新聞社が販売店へ送付する新聞のことである。つまり「押し紙」を除いた実配部数がいくらあるかが、新聞社の経営実態を見る際に重要なのだ。

その点、朝日は秋山社長の時代から「押し紙」を減らす政策を取っているので実配部数は、読売よりもはるかに多い可能性もある。

ライバル紙の読売新聞との戦いは、ABC部数ではなく、実際に読者にお金を出して購読していただいている「実配部数」の勝負です。頑張っている所長(黒薮注:販売店主)さんたちを強力に応援して、「攻め」と「守り」のメリハリのある戦いを挑みます。(『新聞研究往来』2012年1月16日)

「押し紙」はあっても、他社よりは相対的にはパーセンテージが低い。

なお、「政府広報」の汚名をきせられた読売は、「押し紙」は1部も存在しないと公言している。読売の代理人、喜田村洋一自由人権協会代表理事は、それを裁判の場で主張している。しかし、たとえ「押し紙」は1部もなくても、今後、加計学園事件の影響でABC部数が激減する可能性もある。

 

【参考記事「押し紙」否定論者の読売・宮本友丘副社長がABC協会の理事に就任していた、実配部数を反映しないABC部数問題に解決策はあるのか?

【写真】「押し紙」の回収風景。

「押し紙」回収の動画

2017年05月27日 (土曜日)

自由人権協会・喜田村洋一代表理事に対する疑問、共謀罪には反対だが、一貫して読売新聞社をサポート、二枚舌の典型

自由人権協会が5月15日付けで共謀罪に反対する声明を出している。声明そのものは、ステレオタイプな内容で特に感想はないが、筆者はある大きな疑問を感じている。

■自由人権協会の共謀罪反対声明

同協会の代表理事を務めている喜田村洋一弁護士が、一貫して読売新聞をサポートしてきた重い事実である。読売新聞は、安倍首相が熟読を勧めた新聞で、改憲論を主導し、共謀罪法案でも旗振り人の役を演じている。公称で約800万部の部数を有し、大きな影響力を持っている。

喜田村氏はその読売新聞をサポートしながら、その一方では共謀罪法案に反対する声明を出しているのだ。

この人物が過去に何をやったのか、筆者は克明に記録してきた。喜田村弁護士が作成した資料(主に裁判関係)も永久保管している。それを基に手短にいくつかの事実を紹介しておこう。

◇2つの真村訴訟

周知のように喜田村弁護士は、ロス疑獄事件の三浦和義被告や薬害エイズ裁判の安倍英被告の代理人弁護人を務めて無罪を勝ち取ったことで有名だ。これらの判決については、様々な意見があるが、弁護士としての職能が優れていることは間違いない。

その職能を生かして読売新聞をサポートしてきたのである。たとえば、福岡県広川町のYC店主が2002年に起こした地位保全裁判-真村訴訟で、読売の代理人を務めた。この裁判は、2007年12月に最高裁で真村店主の勝訴で決着した。

ところがその半年後、読売は別の理由をつけて、一方的に真村店主を解任した。その結果、再び店主は地位保全裁判を提起せざるを得なかったのである。これら一連の動きの中で、喜田村氏が東京から福岡へ何度も出張して、「大活躍」したのである。

この2度目の真村訴訟は仮処分申立てと本訴の2本立てで行われた。最初に判決が出たのは仮処分だった。店主の勝訴だった。裁判所は読売に対して、店主を元の地位に戻すように命令を下した。ところが読売はこの命令に従わなかった。

そのために裁判所は読売に対して、店主へ間接強制金を支払うように命じた。読売はこれには従った。1日に確か3万円だったと記憶している。

しかし、間接強制金の累積が3600円円を超えたころ、本訴で読売が勝訴した。そのために店主は、それまで受け取っていきた間接強制金の返済を求められた。喜田村弁護士らは、確実に返済をさせるために、真村店主の自宅を仮差し押さえたのである。その後、間接強制金の返済を求めて、店主を裁判にかけている。

◇黒薮裁判

真村店主が2度目の地位保全裁判を起こした2008年は、読売が裁判を多発した年である。前年の福岡高裁で同社の「押し紙」政策が認定されており、その影響もあったのではないかと思う。

まず、2月に喜田村氏らは、筆者に対して2件の裁判を起こした。1件は、著作権裁判、もう1件は名誉毀損裁判である。

著作権裁判は筆者の勝訴だった。裁判の中で喜田村弁護士らが、虚偽の事実をでっちあげて裁判を起こしていた高い可能性が認定された。当時の法務室長と共謀したでっち上げだった。

■弁護団声明

名誉毀損裁判は、地裁、高裁が筆者の勝訴。しかし、最高裁が口頭弁論を開いて、判決を高裁へ差し戻し、高裁の加藤新太郎裁判官が筆者に110万円の支払を命じる判決を下した。その加藤裁判官が、読売新聞の紙面に2度にわたりインタビューで登場していたことが後に判明した。退官後には、勲章をもらい、大手弁護士事務所へ再就職している。

読売は2009年にも筆者に対して裁判を起こした。総括すると、わずか1年半の間に、3件の裁判を起こして、約8000万円を請求したのである。

当然、これら一連の裁判はスラップの典型ではないかという批判が上がった。そのために出版労連が筆者を全面支援してくれた。九州からは、真村訴訟の弁護団が駆けつけて、東京で無償の弁護活動を展開してくれた。

また、筆者は逆に読売に対して、3件の裁判が一連一体の言論弾圧にあたるとして、5500万円の賠償を求める裁判を起こした。喜田村弁護士については、著作権裁判におけるでっち上げを根拠として、弁護士懲戒請求にかけた。しかし、2年半後、日弁連は請求を棄却した。

次の準備書面で事件の本質を的確に指摘している。

■懲戒請求申立の準備書面(2)

◇平山裁判

さらに喜田村弁護士らは、別の事件も起こしている。
筆者が最初の裁判に巻き込まれた時期、「押し紙」を断った久留米市の店主を解任して、地位不存在を確認する裁判を起こした。平山裁判である。

この裁判は店主の平山氏の敗訴で終わった。店主を解任する際、読売は読者調査(新聞の配達先を調べる作業)を行ったのだが、その費用まで店主に請求したのである。

平山氏は裁判の途中で病死された。告別式の出棺時に、中学生の息子さんが肩を小刻みに震わせて泣いていたのが筆者の印象に残っている。裁判の本人尋問の中で、この息子さんが幼少のころ、読売の担当員にからまれている平山氏をみかねて、担当員に「もう帰れ」と怒鳴った証言があった。

その後、裁判は奥さんが引き継がれた。しかし、敗訴して1000万円を超える賠償金を支払わされたのである。

これら一連の読売裁判を担当したのが、喜田村弁護士である。

◇7つの森書館裁判、清武裁判

喜田村弁護士が担当したのは、販売店訴訟だけではない。周知のように、7つの森書館や元読売記者の清武英利氏の裁判でも、読売の代理人を務めている。これらの裁判についても、不当裁判という批判が多い。

犯罪者も含めてすべての人は人権を有しているわけだから、読売を弁護する行為をどう評価するかは難しいが、読売を支援するのであれば、共謀罪に反対する声明など出すべきではない。自由人権協会そのものがまったく訳の分からない団体ということになってしまう。

【写真】喜田村弁護士らが断行した仮差押えの証拠

真村裁判・黒薮裁判・平山裁判については、拙著『新聞の危機と偽造部数』(花伝社))に詳しい。

 

2017年05月11日 (木曜日)

「読売新聞をぜひ熟読して」、新聞社が政府の広報部になった背景に絶望的な政界工作、事実を示す生資料を公開!

安倍首相の国会答弁が失笑をかっている。憲法改正の考え問われて、

  「読売新聞をぜひ熟読して」

と、答弁したのだ。

政界と新聞業界の関係は古くて新しい。手短に歴史を振り返ってみよう。

次に紹介する資料については、何度か単行本などで内容を紹介したが、生資料をインターネットで公開するのは今回がはじめてだ。

資料のタイトルは、「第四十回 通常総会資料」。1991年7月26日に日販協(日本新聞販売協会)が東京の如水会館で開いた通常総会の資料である。

この中に当時、新聞関係者の政界工作の受け皿になっていた自民党議員の一覧表が出ている。有力な議員が続々と名前を連ねている。小泉、小沢、森、石原・・・・。議員一覧(自民党新聞販売懇話会)は次の通りである。

■議員一覧

新聞関係者が本格的に政界工作に乗りだしたのは、1980年代の後半である。当時、新聞販売店に対する事業税の軽減措置が取られていた。しかし、これを廃止する政策が打ち出されていた。そこで金銭がらみの政界工作により、延長させていたのである。

新聞販売店から政治献金を募り、それを自民党新聞販売懇話会の議員に献金していた。

1990年代に入ると政界工作のテーマは、再販制度の維持に変わった。再販制度がなくなると、おなじ系統の新聞販売店のあいだで競争がはじまり、有力な販売店が台頭する。それは新聞社と販売店の縦の関係を崩壊させる。販売店のコントロールが難しくなる。

そして現在は、新聞に対する消費税の軽減税率適用を求める政界工作が続いている。新聞関係者は、2015年に税率8%の据え置きを勝ち取った。しかし、それに満足せず、現在は5%への軽減を求めている。

「押し紙」にも消費税がかかるからだ。しかも、「押し紙」には読者がいないので、消費税を販売店が負担することになるからだ。

現在、新聞販売懇話会に属する議員数は不明だが、2006年頃は、少なくとも100名を超えていた。山本一太議員や高市早苗議員が中心だった。

◇政府広報であることが発覚

しかし、政界工作とジャーナリズムは共存できない。こんな事は常識中の常識だが、日本では問題になってこなかった。お金がからんだ工作であるにもかかわらず誰も指摘しない。

「押し紙」問題にメスが入らないのも、新聞関係者が政治献金を通じて政界との「良好」な関係を構築しているからにほかならない。逆説的に考えれば、政界は新聞社の弱点を巧みに握ることで、新聞・テレビをコントロールしているのだ。

しかし、大半の新聞が、「政府広報」であることが発覚し始めている。国会の答弁で、首相が堂々と「読売新聞をぜひ熟読して」という段階にまでなっているのだ。

【写真】正力松太郎(元読売新聞社長、特高警察の出身で元A級戦犯容疑者)

2017年04月08日 (土曜日)

危惧される読売新聞販売店(YC)と警察によるスパイ活動、共謀罪と読売防犯協力会の関係

国会で共謀罪が審議入りした。平成の治安維持法とも言われるこの法律の審議入りに対して全国的な規模で反対の声が広がっている。日本ペンクラブも共謀罪に反対する声明を出している。

■日本ペンクラブの声明

この法律の危険な側面のひとつに、法律の施行に連動して、国家権力によるスパイ活動の必然性が浮上してくる点である。と、いうのも「共謀」を立証するためには、それを裏付ける情報の入手が不可欠になるからだ。その結果、会話の盗聴やインターネットの監視などが、昼夜を問わず日常的に行われるようになるのは間違いない。

旧ソ連や軍事政権下のチリ、それに北朝鮮のようになるのは間違いない。

◇新聞販売店を通じた情報収集

こうした状況の下で、特定の組織が警察によりスパイ活動に悪用されかねない危険性がある。たとえば全国読売防犯協力会(Y防協)という組織がある。これは全国の読売新聞販売店(YC)と警察の協力で、防犯活動を展開するボランティア組織である。本部は、読売新聞東京本社内にある。

警察と新聞関係者が協力体制を敷いている例は、世界でも極めてまれだが、このようなことが可能なのは、読売の故正力松太郎社長(元A級戦犯容疑者・写真)が戦前の特高警察の出身という特殊な事情があるようだ。

新聞販売店は早朝(午前2時)に仕事を開始する。しかも、販売店網は全国の隅々にまで張り巡らされている。そのため販売店をある種の「警察支部」的な拠点にすれば、確かに防犯には効果的だ。路地裏まで「監視」できる。

Y防協のウエブサイトによると、「活動の目標は次の4点に集約できる」という。

1.配達・集金時に街の様子に目を配り、不審人物などを積極的に通報する

2.警察署・交番と連携し、折り込みチラシやミニコミ紙などで防犯情報を発信する
3.「こども110番の家」に登録、独居高齢者を見守るなど弱者の安全確保に努める

4.警察、行政、自治会などとのつながりを深め、地域に防犯活動の輪を広げる

■出典

「1」は特に懸念材料だ。読者の自宅を訪れた集金人から、訪問先の家に集まってなにかを話し合っている人々に関する情報が警察へ通報されるかも知れない。

防犯活動そのものは社会貢献に違いないが、それを警察と連携し、しかも、情報の通報が活動の中心になっているわけだから、共謀罪が成立すれば、Y防協は準スパイ組織に変質する危険性がある。

◇読売と全国の警察が覚書

Y防協が覚書を交わしている警察は次の通りである。

■出典

高知県警 2005年11月2日
福井県警 2005年11月9日
香川県警 2005年12月9日
岡山県警 2005年12月14日
警視庁 2005年12月26日

鳥取県警 2005年12月28日
愛媛県警 2006年1月16日
徳島県警 2006年1月31日
群馬県警 2006年2月14日
島根県警 2006年2月21日

宮城県警 2006年2月27日
静岡県警 2006年3月3日
広島県警 2006年3月13日
兵庫県警 2006年3月15日
栃木県警 2006年3月23日

和歌山県警 2006年5月1日
滋賀県警 2006年6月7日
福岡県警 2006年6月7日
山口県警 2006年6月12日
長崎県警 2006年6月13日

茨城県警 2006年6月14日
宮崎県警 2006年6月19日
熊本県警 2006年6月29日
京都府警 2006年6月30日
鹿児島県警 2006年7月6日
千葉県警 2006年7月12日

山梨県警 2006年7月12日
大分県警 2006年7月18日
長野県警 2006年7月31日
福島県警 2006年8月1日
佐賀県警 2006年8月1日

大阪府警 2006年8月4日
青森県警 2006年8月11日
秋田県警 2006年8月31日
神奈川県警 2006年9月1日
埼玉県警 2006年9月14日

山形県警 2006年9月27日
富山県警 2006年9月29日
岩手県警 2006年10月2日
石川県警 2006年10月10日
三重県警 2006年10月10日

愛知県警 2006年10月16日
岐阜県警 2006年10月17日
奈良県警 2006年10月17日
北海道警 2006年10月19日
新潟県警※ 2003年3月26日
沖縄県警 2008年6月12日

※新潟県警との締結は、03年9月に当時の生活安全部長と新潟県読売防犯協力会が締結したもの。県警の希望で新規更新はしていない

2017年02月23日 (木曜日)

博報堂、環境省のクールビスでも国家予算の使途に疑問符、新聞広告では読売と日経を優遇①

内閣府、文部科学省、総務省に続いて、環境省でも、博報堂による国家予算の使途が不透明な実態が分かった。約8億6000万円のプロジェクトで、博報堂は新聞広告はどのように出稿したのか?何が疑惑なのか?総論を紹介する。

クールビズとは、環境庁が進める地球温暖化防止やCO2削減のプロジェクトの総称である。その環境庁と博報堂の親密な関係は有名だ。たとえば、2007年6月8日に、民主党の末松義規議員が、環境省から博報堂へ3年間で約90億円もの国家予算が、環境関連プロジェクトに支出されていた事実を国会で追及したことがある。

その後も、自民党の竹本直一議員が、東日本大震災からの復興プロジェクトに関して、博報堂に対し除染関係の業務で約9億6000万円が計上された事実を国会で指摘した。

環境省と博報堂は、どのような国家予算の「食い方」をしているのか?

昨年、筆者は環境庁に対して博報堂との取引実態を示す各種の契約書、見積書、請求書を情報公開請求した。今年に入って、プロジェクトの「成果物」についても、情報公開を請求した。これに応じて環境省が開示した資料の中に何件ものクールビス関連のプロジェクトに関する書面があった。そのうちのひとつを本稿で紹介しよう。

プロジェクトのタイトル:「平成27年度低炭素社会づくり推進事業委託業務」

契約金:862,852,000円

◇契約額が約1億円増額に

約8億6300万円のプロジェクトであるが、よく調べてみると、当初、環境省と博報堂が契約した時の価格は、約7億7600万円であったことが分かった。つまり一旦、契約した後、金額を増額して、再契約を結んだのである。しかも、増額が1億円近い巨額となっている。

環境省は見積書の表紙については開示したが、その明細は非開示にしたので、8億6300万円の具体的な使途はよく分からない。使途を推測する唯一の手がかりは、契約書に明記された作業内容であるが、記述が抽象的で、具体的にどのような作業を行う契約が結ばれたのかは、ほとんど分からない。

◇具体性のない仕様書

通常、プロジェクトの契約書には、「仕様」の欄に、詳細に作業内容を明記する。たとえば新聞広告に関して言えば、○月○日に、○○新聞に○○段スペースを掲載する、というふうに。しかし、環境省と博報堂と契約文は次のようなありさまだ。

・スポーツ・音楽・映画等の観点からも積極的に温暖化対策を啓発すること。

・自治体やNPO法人等地域関係者が連携した温暖化対策を実地すること。

もちろんウエブサイトの管理・運営など具体的な作業の取り決めもある。しかし、筆者が契約書を精査した限りでは、プロジェクトの中身が具体化されていないという強い印象を受けた。

契約の当事者である環境省と博報堂も、このような契約内容の問題点を認識しているのか、仕様書に「業務実施上の留意点等について」という節を設けて、プロジェクトの方向性を定めようとしているように見受けられるが、それも十分とはいえない。

たとえば新聞広告について言えば、次の記述に見るように、広告を掲載する新聞も掲載日も明記されていない。

・放送や新聞等の広告枠を利用した直接的な情報発信のみではなく、ニュース素材や社会現象となるようなPRとすることで、報道媒体によるニュース等に取り上げられ、高いパブリシティ効果を発揮させるメディア戦略を実行すること。

このような取り決めでは、博報堂の裁量で自由に作業を決定できることになりかねない。環境省が見積書の明細を開示できなかった事情もこのあたりに潜んでいるのではないか。国家予算の使い方には透明性が求められるはずなのだが。

■仕様書の例

◇箸にも棒にもかからない報告書

筆者は、このプロジェクトの実施報告書を入手した。これを手掛かりに、博報堂がどのような仕事をしたのかを検証してみた。

報告書は158ページである。しかし、仕事についての詳細を報告した内容というようりも、「成果物」の羅列の印象が強い。たとえば、博報堂が制作したロゴを使った媒体をコピーして掲載しているのだが、そのためのスペースに55ページも割いている。博報堂が執筆したオリジナルの文章はほとんどない。

■ロゴを使った媒体をコピーの例

しかも、博報堂が請け負った他のクールビス関連のプロジェクトの報告書の文面をコピーしたとしか思えない記述もある。

ほとんど報告書の態をなしていないのが実態なのだ。

◇日経と読売を優遇

新聞広告について検証してみよう。既に述べたように、新聞広告の具体的な仕様は、契約書には明記されていない。もっとも、環境省が開示しなかっただけで、別の書面を保管している可能性はあるが、少なくとも報告書を見る限り、ずさんな広告出稿を行った事実が確認できる。報告書によると、次の新聞に広告が掲載された。広告のサイズにも注目してほしい。

7月1日 日経 (15段)
7月17日 日経 (30段)
12月9日 日経(16段+記事スタイルの広告7段) 
12月16日 読売(15段)
12月20日読売(5段+記事スタイルの広告10段)
12月24日 読売Kodomo新聞(記事スタイルの広告11段)
12月24日~26日 ブロック紙+地方紙31紙(5段)
1月号 エコチルこども環境情報紙(記事スタイルの広告11段)

ちなみに「30段」広告とは、新聞の見開き2ページを割いた広告である。博報堂は出稿先として、なぜか日経と読売を優遇したのである。ちなみに読売広告社は、博報堂グループの傘下に入っている。

◇ジャーナリズム不在の悲劇

見積書も請求明細が開示されていないので、広告費として、日経や読売にいくら支払われたのかも分からない。

このような広告費ばら撒きの構図の下では、新聞ジャーナリズムを機能不全にすることができる。博報堂はジャーナリズムの監視がないところで、事業を展開することができるのだ。その結果、国家予算の使途に関する博報堂に対する疑惑が、環境省だけではなく、内閣府、総務省、文科省などでも浮上しているのである。