読売の部数は3年半で約110万部減、朝日は130万部、京都新聞社5社分の部数に匹敵、読売に懸念される加計学園事件の影響
4月のABC部数(新聞各社の公称部数)が明らかになった。新聞の凋落傾向には依然として歯止めがかかっていない。
この1年間で、読売は約19万部を減らした。ただし、この数字は「政府広報」の汚名をきせられる前の数字である。この件とは関係がない。
朝日は約36万部を減らした。朝日の方が読売よりも、部数減が激しいことを示している。
中央紙5紙のABC部数は次の通りである。()内は前年同月比である。
朝日:6,243,218(-363,344)
毎日:3,050,253( -65,179)
読売:8,811,732(-187,057)
日経:2,716,463( -14,309)
産経:1,594,855( -38,972)
全国の地方紙のABC部数は次の通りである。
◇肝心なのはABC部数ではなく実配部数
これらの数字を見る限り、新聞の凋落にまったく歯止めがかかっていないことがうかがえる。たとえば3年半前の2013年10月の部数と比較してみよう。()内は、3年半前の部数との差異である。
朝日:7,540,244(-1,297,026)
毎日:3,379,861( -29,608)
読売:9,882,625(-1,070,893)
日経:2,775,184( -58,721 )
産経:1,674,636( -79,781)
朝日は約130万部を、読売は110万部を減らしている。意図的な「朝日バッシング」が多いこともあって、朝日だけが部数を減らしている印象もあるが、低落傾向は変わらない。
両社を合わせると、約240万部が消えた。これは京都新聞の約5社分に相当する。
◇「『押し紙』は1部もありません」
しかし、新聞社の経営を読み解く場合、ABC部数はひとつの参考でしかない。と、いうのもABC部数には「押し紙」が含まれているからだ。
「押し紙」とは、新聞の「実配部数+予備紙(常識的には搬入部数の2%)を超えて、新聞社が販売店へ送付する新聞のことである。つまり「押し紙」を除いた実配部数がいくらあるかが、新聞社の経営実態を見る際に重要なのだ。
その点、朝日は秋山社長の時代から「押し紙」を減らす政策を取っているので実配部数は、読売よりもはるかに多い可能性もある。
ライバル紙の読売新聞との戦いは、ABC部数ではなく、実際に読者にお金を出して購読していただいている「実配部数」の勝負です。頑張っている所長(黒薮注:販売店主)さんたちを強力に応援して、「攻め」と「守り」のメリハリのある戦いを挑みます。(『新聞研究往来』2012年1月16日)
「押し紙」はあっても、他社よりは相対的にはパーセンテージが低い。
なお、「政府広報」の汚名をきせられた読売は、「押し紙」は1部も存在しないと公言している。読売の代理人、喜田村洋一自由人権協会代表理事は、それを裁判の場で主張している。しかし、たとえ「押し紙」は1部もなくても、今後、加計学園事件の影響でABC部数が激減する可能性もある。
【参考記事】「押し紙」否定論者の読売・宮本友丘副社長がABC協会の理事に就任していた、実配部数を反映しないABC部数問題に解決策はあるのか?
【写真】「押し紙」の回収風景。
「押し紙」回収の動画