1. これは意外?読売・真村訴訟の判決で認定されているABC部数改ざん手口、PC上に架空の配達地区と架空読者を設定

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2018年03月02日 (金曜日)

これは意外?読売・真村訴訟の判決で認定されているABC部数改ざん手口、PC上に架空の配達地区と架空読者を設定

新聞販売に関係した諸問題のなかで、メディア黒書でもあまり取りあげてこなかったテーマのひとつに、ABC部数の改ざん問題がある。これは裏をかえすと帳簿上で、「押し紙」部数を実配部数として計上する手口のことである。

当然、「押し紙」には読者がいないが、帳簿上では、「押し紙」の読者が存在するかのように改ざんするのだ。手口はいたって簡単だ。

新聞販売店の業務にパソコンが導入されていなかった時代は、ABC協会による調査が入る直前(新聞社から事前に通知がある)に、販売店は総出で偽の帳簿を作っていた。故高屋肇氏(毎日新聞の元店主)によると、ウソの名前と住所を延々と帳簿に書き連ねて、搬入部数と読者数(架空読者を含む)をほぼ一致させていたのだという。ABC協会の調査員も、帳簿を詳しく調査することはなかったという。

が、その後、新聞販売店の業務にもパソコンが導入された。それに伴い、今度は、パソコン上で、架空の読者を設定するようになった。少なくとも、筆者が取材した真村訴訟(被告・読売新聞社西部本社)のケースでは、パソコン上に架空の配達区、架空の住所、架空の読者が設定されていたことが司法認定された。

真村訴訟とは、YC広川(福岡)の真村店主が店主としての地位保全を求めて読売新聞を訴えた裁判である。2007年に真村氏の勝訴が最高裁で確定している。従って、読売によるABC部数の改ざん方法を考える上で、裏付けが確かな例といえるだろう。

◇PC上の架空配達区と架空読者

真村氏は自店のパソコン上の帳簿に26区と命名した架空の配達区を設定していた。この26区は、帳簿上で「押し紙」を実配部数として計上するための区だった。ここに架空の読者を設置して、実際には新聞を配達していないが、配達したことにして帳簿上の部数が、すべて実配部数になるように操作していたのである。

裁判の中で真村氏はこの事実を認めた。裁判所もそれを事実認定した。福岡高裁判決から、該当部分を引用しておこう。

平成11年5月ころからは、広川地区の28区域のうち26区を架空読者を計上するために利用し始めた。(甲131、原審での一審原告真村本人)

(真村氏は読売本社に)定数(搬入部数)1660部、実配数1651部と報告していたが、実際には26区に132世帯の架空読者を計上していたので、実際の配達部数は1519部を超えないことになる。

真村氏は、実際には1519部しか配達していなかったが、26区の132部を加えた総計1660部が実配部数であると報告したのだ。これは実配部数の虚偽報告にあたり、裁判所もそれを認定・批判しているが、同時に真村氏がそうせざるを得なかった背景を次のように認定している。

しかしながら、新聞販売店が虚偽報告をする背景には、ひたすら増紙を求め、減紙を極端に嫌う一審被告の方針があり、それは一審被告(読売)の体質にさえなっているといっても過言ではない程である。

これが部数至上主義といわれるものである。日本の新聞社の諸悪の根源である。

このように、(読売は)一方で定数と実配数が異なることを知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎としているという態度が見られるのであり、これは、自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢であると評されても仕方のないところである。そうであれば、一審原告真村の虚偽報告を一方的に厳しく非難することは、上記のような自らの利益優先の態度と比較して身勝手のそしりを免れないものというべきである。

読売の販売政策を裁判所は、「身勝手のそしりを免れない」と認定して、真村氏の地位を保全したのである。

このように実は、裁判の中でABC部数の改ざん方法は検証され、その悪質な手口が司法認定されているのである。

公正取引委員会は、早急に調査すべきだろう。また、国税局も毎年調査すべきだろう。

真村高裁判決の全文

◇「押し紙」1部もありません

参考までに喜田村ライブラリー(読売・裁判資料集)から、読売側の主張も紹介しておこう。出典は、対黒薮・新潮社の「押し紙」裁判(2010年11月16日・平成21年[ワ]第23459、読売の勝訴)である。読売の代理人・喜田村洋一・自由人権協会代表理事の質問に答えるかたちで、宮本友丘専務(当時)は、次のように証言した。

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。