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2015年01月23日 (金曜日)

イスラム国・人質事件の背景に新自由主義と戦争の民営化

イスラム国で拘束され生命の危機に直面している2人の日本人のうち、湯川遥菜氏のFACEBOOKには、みずからの職業を「民間軍事会社CEO」と書かれている。この民間軍事会社とは何かは、ほとんど知られていない。

結論を先に言えば、これは新自由主義の下で、戦争の民営化が進行する過程で出現する企業である。戦争に関連した諸業務を代行する企業である。

改めて言うまでもなく、公的なものを切り捨てて、民間にゆだねるのが新自由主義の基本的な方針である。それにより「小さな政府」をつくり、大企業の税負担を軽減して、国際競争力を高める国策である。公的医療を切り捨てて、民間企業に医療と福祉の市場を解放する安倍内閣の方針と同じ脈絡から、民間軍事会社も現れたのではないか。

◇背景に軍事大国化と新自由主義

日本の軍事大国化と新自由主義は、1996年に成立した橋本内閣の時代から本格化した。このうち前者について言えば、新ガイドラインの策定、周辺事態法(1999年)、テロ特措法(2001年)、イラク特措法(2003年)、有事立法(2003年)と進んでいったのだが、このうち「民間企業」が戦争に関与する温床をつくりだしたのは、民主党も賛成した有事立法である。

戦争に民間企業や自治体を強制的に協力させる体制が出来上がったのである。具体的には、高度な武器類の修理をIT関連企業にゆだねる、等。

こうした流れの中では、当然、戦争の民営化が想定される。民間企業に「戦争業務」を委託する方向性が浮上してきたのではないだろうか。行き着く先は傭兵の派遣会社の出現ではないだろうか。

戦争をビジネスにするのは、許しがたい行為である。と、いうのも直接的であれ、間接的であれ、何の罪もない人々を、銃撃や爆撃で打ち殺すからだ。国から命じられて、戦場に赴き他国の民に対して「鉄の雨」を降らせるのとは、悪質さの度合いが違う。ビジネスとしての人殺しが、戦争という名で正当化されているに過ぎない。

今回の悲劇の背景に日本の軍事大国化と新自由主義があることは疑いない。
しかも、事件を通じて、両方の政策が整合性を持っていることも明らかになった。

2015年01月22日 (木曜日)

地下鉄の車両内で高い数値のマイクロ波を記録、EUの安全基準の約4倍、将来的に発癌のリスクが拡大

電車で通勤・通学する人々にとっては、歓迎すべからぬニュースである。が、それを避けて通ると将来、発癌という後悔しかねない事態を招きかねない。

地下鉄の車両内でマイクロ波の測定を行ったところ、人体に悪影響を及ぼすと推測させる数値が観測された。

1月21日、午後8時ごろ、地下鉄有楽町線の社内で、わたしは高周波電磁波の測定器を使って、マイクロ波を測定した。観測された数値(6分の平均)は、 1223.6mv/mだった。この数値を国際比較するために、「μW/c㎡」に変換すると、「0.397μW/c㎡」となる。

ちなみに測定時には、座席がすべて埋まっていた。立っている乗客が10人程度。その多くの人々がスマフォなどの通信機器を使っていた。観測場所は、車両のドア付近である。

観測された「0.397μW/c㎡」をどのように評価すべきだろうか。マイクロ派の規制値を国際比較することで検討してみよう。恐るべき実態が見えてくる。

◇諸外国の規制値

ザルツブルグ市:0.0001μW/c㎡ (屋内の目標値)

EU:0.1μW/c㎡(屋外の提言値)、0.01μW/c㎡(室内の提言値)

イタリア:10μW/c㎡

スイス:6.6μW/c㎡

日本:1000μW/c㎡

有楽町線の中で観測された0.397 μW/c㎡は、日本の基準は軽々とクリアーしているが、ザルツブルグ市やEUの基準から評価すると、危険な領域とされている。

最も懸念されているマイクロ派のリスクは、遺伝子毒性である。発癌性である。ザルツブルグ市やEUは、遺伝子毒性のリスクを考慮して、極めて低い数値を設定している。

日本の規制値は、箸にも棒にもかからない。

ちなみにマイクロ波は、X線やガンマ線、さらには紫外線などと同様に「見えない」「匂わない」、おまけに被曝しても痛みを感じない。それゆえに安全だと勘違いしている人が後を絶たない。

2011年5月に、WHOの外郭団体・世界癌研究機関は、マイクロ波に発癌性がある可能性を認定している。携帯電話が普及しはじめた1990年代には、安全とされていたが、現在ではリスクがあると考えるのが常識となっている。

通勤・通学の際に高密度のマイクロ波を、1年、2年、5年、10年、あるいは20年と長期にわたって被曝した場合、人体影響を受ける可能性が高い。

2015年01月21日 (水曜日)

『〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機』、史的唯物論に基づいた安倍政権論

政治家や政策をどう評価するのかという問題を考えるとき、個々人の歴史観が決定的な影響を及ぼすことは論をまたない。政治家個人の資質により、あるいは偶然の運命により、世界は変革されると考える人(英雄史観)は、NHKが得意とする「その時歴史は動いた」のような番組を制作することになる。

「安倍首相を退陣させれば、日本は変わる」と考えるのは誤った解釈である。

一ツ橋大学名誉教授・渡辺治氏による一連の政治評論は、英雄史観とは対極の歴史観(史的唯物論)に基づいて現代の政治を客観的に分析している。

『〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機』(大月書店、渡辺治・岡田知弘・後藤道夫・二宮厚美)の中にある「安倍晋三個人と安倍政権-歴史における個人の役割」と題する章には、渡辺氏の歴史観が色濃く反映している。

安倍政権が、戦後政治を転換させる大国化を掲げたことに関して、マスメディアの安倍報道にも大きな特徴が現れている。メディアは、とくに安倍政権に批判的な姿勢や意見の持ち主であればあるほど、安倍政権の政治を安倍晋三個人の復古的、タカ派的体質に求める傾向が極めて強いということだ。たとえば、『朝日新聞』をはじめとした紙面の安倍評価では、安倍さえ引きづり下ろせば安倍的政治は止まると考えているふしが濃厚にみられるのだ。

たしかに、安倍政権における安倍晋三個人の果たす役割はきわめて大きい。決定的ともいえる。しかし、安倍政権の政治を安倍の思いつきに起因するととらえることは、その背景にあるアメリカやグローバル企業の要請を決定的に過小評価することになる。安倍がいなくなったところで、それに代わる政治をめざす対抗構想との担い手が力をもたなければ、政策実行のスピードを落とすことはできても、第二、第三の安倍が出てくるにすぎない点を見ていない。

政策決定の背景に安倍首相個人の意思よりも、財界が望む方向性を中心に据えた政策があるという見方である。つまり1990年代の初頭から始まった新自由主義と軍事大国化の流れが、安倍政権の政策を決定しており、安倍首相個人の極右的な言動は本流ではないとする見方である。

◇構造改革の時代-小泉政権論

このような観点から著されたものは、『〈大国〉への執念 安倍政権と日本の危機』だけではない。たとえば『構造改革の時代-小泉政権論』(花伝社)でも、政治家個人の思想と「時代の要求」について、次のように述べている。

しかし、ここで急いで付け加えておかなければならないことは、小泉は、九〇年代初頭に支配層が既存の小国主義と開発主義の政治を再編して、軍事大国化と構造改革を凶暴に始めようとした時代(黒薮注:新進党の時代を意味する)には、その遂行を担う政治家とはなれなかっただろうということである。

小泉はあくまで、構造改革、軍事大国化が第二段階に入ってその加速化が求められるにいたって初めてハイライトを浴びる政治家となりえたのである。

なぜ、ドラスチックな構想改革を断行するために、小泉議員がうってつけだったのだろか。渡辺氏は言う。

第一に、小泉は政治家の三世であり、一世の政治家のように、地元の住民の意思に敏感に反応したり後援会の維持・培養に腐心する必要はなかった。したがって、構造改革により地方や自らの支持基盤に大きな打撃と困難をもたらすことにさほど痛痒を感じることなく、「大胆に」、かつ断固として既存階層の利益を切り捨てることができたのである。

これが、小泉のもっとも得がたい特質である。自民党の安定した社会統合を支えてきた周辺部の支持基盤を冷酷に切って捨てる改革ができるのは、民主主義の下ではなかなか大変だからである。

 こうした小泉の資質は、「ブレない強さ」としていわれるが、政治家が、構造改革のような、諸階層の利益の削減を「ブレずに」やれるというのは、こうした住民の感情や利益に鈍感であることを意味する。急進的な構造改革の遂行期にはこうした鈍感な政治家が求められるのである。

歴代首相の個人的な政治信条とは別に、時の権力者たちが構築しようとしている社会のかたちが政策を決める大きな要素になるとする観点から見ると、安倍内閣が目指しているのは、小泉構造改革の後、一旦、停滞していた軍事大国化と新自由主義の流れを再び加速させることである。それを断行するに、安倍議員が適任だったということではないだろうか。

安倍首相は、日本を旧来の軍事大国に戻そうとしているわけではない。米国との連携により、多国籍企業防衛のための派兵を、ピンポイントに断行できる体制を目指しているのである。

ちなみに安倍内閣が重視している極右的な愛国心を養う教育は、国際競争の時代が求めていると考えれば説明が着く。国対抗の競争を勝ち抜くには、愛国心があった方が有利になるからだ。

2015年01月20日 (火曜日)

元中日の大豊選手が白血病で死亡、スピード計測器の電磁波とガンの関係、米国では訴訟が多発

中日ドラゴンズや阪神タイガースの主砲として活躍した大豊泰昭(たいほう・やすあき)氏が18日、名古屋市内の病院で亡くなった。享年51歳。2009年3月に、急性骨髄性白血病を発症して闘病していた。

急性骨髄性白血病は特に珍しい病気ではないが、大豊氏が野球選手だった事実を前提にすると、病因としてあるひとつの疑いが浮上してくる。

球の速度を計測するスピード計測器から発せられる電磁波による被曝の可能性である。

スピード計測器の仕組みについては、中央大学理工学部の白井宏教授が『R25』の中で次のように説明している。
 

スピード計測器や速度違反の取り締まりに使われるオービスなどは、電磁波を利用して速さの計測をしています。静止している物体に電磁波を当てると同じ周波数で反射し返ってきますが、動いている物体に当てると、その方向に応じて周波数が変化し返ってくるのです。これをドップラー効果といい、計測器はこの周波数の差を計算して速さを出しています.。

実は米国では、自動車のスピード違反の取り締まりに使うスピード計測器が原因とみられる癌が多発している。これについて電磁波研究の第一人者である荻野晃也博士は、『携帯電話は安全か?』(日本消費者連盟)の中で次のように述べている。

◇スピード計測器の電磁波

 米国では警察官が車の中からスピード測定を行います。ハンディ-なレーダ装置でスピード測定を行うもので、ポリス・レーダーと呼ばれています。以前から、警察官にはガン死が多いというウワサはあったのですが、電磁波問題が話題になると共に、このポリス・レーダーに対する疑惑が持ち上がったのは当然のことでした。

 1991年には、米国のシアトル市で「警察官協会」の人達による「レーダー・ガン使用に反対」するデモすらあったのです。警察官OBや家族で作っている協会としても、レーダーによる悪影響が心配になったのです。その効果もあって、シアトル市はレーダー・ガンを「使用禁止」にしました。

 ポリス・レーダーはマイクロ波・ミリ波を使う速度計なのですが、手で持って測定することから被曝量が多く、以前から問題になっていました。しかも90年にカリフォルニア州の調査で、「警察関係者のリンパ腫瘍が2・69倍、他のガンが2倍」との結果が出たことや、ポリス・レーダー近くでは1mw/c㎡ 近い被曝を受けることが明らかになったのです。

 このポリス・レーダーによって睾丸ガンなどになったとの訴訟もたくさんあります。

もっともこの問題を検証する前提として、スピード計測器から発せられる電磁波により、バッターがどの程度被曝するかを確かめる必要がある。

ちなみに元読売ジャイアンツの投手・角盈男氏(57)は、前立腺癌を発症している。ピッチャー、バッター、キャッチー、審判といったポジションとスピード計測器が引き起こすガンの間に因果関係はあるのか、今後、解明されなければならない。

  ポリス・レーダー使用警察官とガンの訴訟(米国)の一覧・PDF=出典『携帯電話は安全か?』

2015年01月19日 (月曜日)

「押し紙」の経理処理は粉飾決算に該当しないのか? 古くて新しい疑問

意外に知られていないが「押し紙」政策には、粉飾決算が連動している疑惑がかけられてきた。しかし、国税局はこれまで、それを問題にしたことがない。15年ほど前、わたしはこれについて販売店主に尋ねたところ、

「トラブルが起きたときは、国税の●●さんに連絡を取るように、発行本社から指示を受けています」

と、いう返事が返ってきた。国税局は、「押し紙」が誘発する経理問題をごまかして来た可能性がある。

◇「あれは『押し紙』ではなく、積み紙です」

「押し紙」とは、新聞社が販売店に対して搬入する新聞のうち、過剰になって配達されないまま廃棄される新聞のことである。たとえば、実配部数(実際に配っている新聞の部数)が2000部しかないのに、3000部を搬入すると1000部が過剰になる。この1000部が「押し紙」である。

しかし、帳簿上では「押し紙」部数は、カモフラージュされる。具体的には、実配部数(実際に配達した新聞)、見本紙、さらには予備紙として経理処理される。

従って、上記の例で言えば、新聞社が新聞販売店に搬入した3000部は、すべて販売店が自分で注文した新聞ということになる。当然、3000部に対する卸代金を支払う。

それゆえに新聞社は、新聞の押し売りは絶対していないと開き直ってきたのである。過剰になっている新聞の存在を第3者から指摘されると、

「あれは『押し紙』ではなく、積み紙です」

と、詭弁(きべん)を弄する。販売店が自分で積み上げている新聞だという主張である。

裁判所もこうした詭弁を見抜けず、新聞社の「押し紙」政策にお墨付きを与えてきた。「押し紙」は独禁法に抵触するから、新聞社は絶対に「押し紙」政策の存在を認めるわけにはいかない。

そこで押し売りではないことを示す「アリバイ」を作るために、経理上のトリックが使われる。

◇経理処理のトリック

帳簿上では、販売店に搬入する新聞はすべて販売店が注文したことになっているわけだから、当然、税の申告に際しても、それを前提としたものになる。「押し紙」が膨張させる事業税も消費税も支払うことになる。

さて、「押し紙」部数を経理処理する上で、もっとも難儀するのは実配部数として計上する新聞である。と、いうのも読者がいないことが発覚すると、粉飾決算になるからだ。かと言って、見本紙や予備紙を500部も1000部も計上するのは不自然だ。

そこで登場するのが、帳簿上(パソコン)に架空の配達地区を設定して、実配部数として処理する手口である。配達地区を設定する処理方法は、読売とYCが争った第一次真村訴訟の中で明らかになった。福岡高裁判決は、次のように架空配達区の存在を認定している。
平成11年5月ころからは、広川地区の28区域のうち26区を架空読者を計上するために利用し始めた。(甲131、原審での一審原告真村本人)

  一審原告真村は、平成13年6月当時、一審被告に対しては、定数(搬入部数)1660部、実配数1651部と報告していたが、実際には26区に132世帯の架空読者を計上していたので、実際の配達部数は1519部を超えないことになる。

YC(読売新聞販売店)の真村店主は、26区と呼ばれる架空地区を設定して、そこに架空読者を計上して、経理処理をしていたのである。

これが広く採用されている「押し紙」の経理処理の手口である。

◇「押し紙」を批判した福岡高裁判決

このような「不正」は、誰に責任があるのだろうか。販売店なのか、それとも新聞発行本社なのだろうか?

第1次真村裁判では、新聞発行本社である読売の責任が認定された。

ちなみに第1次真村裁判というのは、YC広川の真村店主が読売による改廃通告に対して、地位保全を求めた裁判である。2002年の提訴。地裁、高裁、最高裁と、販売店が勝訴したまれな例である。

読売が改廃の口実としたのが、経理上の汚点だった。虚偽を逆手に取って、それを改廃理由として持ち出してきたのである。しかし、裁判所は、こうした虚偽の背景には、読売の販売政策があることを認定したのである。

新聞に対する軽減税率の是非を考える際に、考慮すべき留意点ではないだろうか。

ちなみに真村氏は、2007年12月に最高裁で勝訴が確定した7ケ月後に、読売から再び改廃通告を受け、8月末に強制的に販売店をつぶされている。その結果、第2次真村訴訟がはじまり、現在に至っている。

読売は、何の後ろ盾もないひとりの元店主を10年以上も法廷に縛り付けているのである。それは、高校生ボクサーを世界チャンピョンが容赦なく打ちのめしている光景を連想する。審判もそれを止めようとはしない。

この裁判で読売側代理人として「大活躍」してきたのが、喜田村洋一自由人権協会代表理事である。

■第一次真村裁判の福岡高裁判決

2015年01月17日 (土曜日)

新聞に対する軽減税率問題の背景にある「押し紙」問題、腐敗が進むなかでメディアコントロールのアキレス腱に

メディアをコントロールして世論誘導するための合理的な方法は、メディア企業の経営上の汚点を逆手に取って、「アメとムチ」の政策を導入することである。

新聞関係者が安倍首相と飲み食いを繰り返す一方で、新聞に対する(消費税の)軽減税率適用を求めて、選挙協力したり、政治献金を支出している事実は、すでに両者が情交関係を構築していることを如実に現している。腐敗と堕落は想像以上に進んでいる。

メディアコントロールの鍵を握るのは、経営部門への介入である。編集内容への介入は、実は枝葉末節にすぎない。この原理は戦前から変わらない。

たとえば新聞研究者の故新井直之(創価大学教授)は、『新聞戦後史』(栗田出版)の中で、1940年2月12日に内閣情報部が制作した「新聞指導方針について」と題する文書を紹介して、メディアコントロールの原理が戦前から変わっていないことを説明している。

・・幸いここに新聞用紙の国家管理制度が現存する。現在商工省に於いてはこの用紙問題を単なる物資関係の『事務』として処理しているが、もしこれを内閣に引取り政府の言論対策を重心とする『政務』として処理するならば、換言すれば、政府が之によって新聞に相当の『睨(にらみ)』を利かすこととすれば、新聞指導上の効果は相当の実績を期待し得ることと信ずる。

しかし、現在、日本の公権力が新聞社に対するメディアコントロールの最上の材料にしているものは、用紙問題ではない。軽減税率の問題でもない。意外に知られていないが、「押し紙」問題である。

「押し紙」とは、新聞社が販売店に対して搬入する新聞のうち、過剰になって配達されないまま廃棄される新聞のことである。たとえば、実配部数(実際に配っている新聞の部数)が2000部しかないのに、3000部を搬入すると1000部が過剰になる。この1000部が「押し紙」である。

肝心な留意点は、「押し紙」についても、新聞社は販売店に対して卸代金を請求している事実である。帳簿上では、「押し紙」部数についても販売店が注文したことになっているからだ。当然、消費税もかかる。読者から消費税を徴収できる実配新聞とは異なり、「押し紙」の消費税は、販売店が支払う。

これではあまりにも販売店の経済負担が増えるので、新聞関係者は新聞に対する軽減税率の適用を求めているのである。従って、新聞社が「押し紙」をやめれば、軽減税率を適用しなくても、新聞販売店の経営は維持できる可能性が高い。

と、すればなぜ新聞は「押し紙」をやめないのだろうか。その理由は、次の3点に集約できる。

①「押し紙」をやめると、販売収入が激減する。

②「押し紙」により新聞の公称部数をかさ上げして、紙面広告の価格をつり上げているために、「押し紙」をやめると、広告収入も減ってしまう。

③「押し紙」を中止すると、これまでの公称部数がウソだったことが判明して、広告主(紙面広告・折込広告)が、訴訟を起こすリスクが生じる。

ちなみに「③」に関連して補足説明するが、折込広告の適正枚数は、新聞販売店に搬入する新聞の総数に一致させる基本原則があるので、「押し紙」がある販売店では、折込広告は水増し状態になることが多い。この水増し行為で得た収益で、販売店は「押し紙」で生じる損害を相殺する。相殺し切れない部数については、新聞社が補助金を支給する。

それゆえに新聞社が補助金を中止すると、販売店は簡単に自主廃業に追い込まれる。販売店が、新聞社に対して従順になり、「押し紙」をも受け入れざるを得ないゆえんにほかならない。

これが多くの新聞社のビジネスモデルである。繰り返しになるが、新聞関係者がこうした「商法」を中止すれば、軽減税率を適用しなくても、経営が成り立つ可能性が高い。むしろ経営はよくなるだろう。

◇毎日新聞に見る「押し紙」の実態

さて、具体的な「押し紙」の実態を紹介しよう。次に示すのは、2004年に毎日新聞社から流出した内部資料である。

内部資料PDF

赤字「A」は、毎日新聞社が全国の販売店に搬入した朝刊の部数である。約395万部である。(2002年10月の時点)

これに対して赤字「B」は、販売店が読者に対して発行した領収書の枚数である。約251万枚である。

「A」と「B」の差異が「押し紙」ということになる。その数は、約144万部である。若干、購読料の未集金分があるので、数字が下がるとしても、優に搬入部数の3割以上が「押し紙」である。

「押し紙」による収益は、想像以上に大きい。新聞の原価を2000円として計算すると、「押し紙」100万部で、月額20億円の収益になる。年間では、240億円。新聞の原価を極端に低く設定し、たとえば1000円として
計算しても、年間で120億円の収益になるのだ。

「押し紙」こそが新聞社の最大の汚点なのだ。公取委が「押し紙」政策に対してメスを入れたならば、倒産する新聞社がでかねない。逆説的に考えれば、だからこそ、公権力は、「押し紙」を放置して新聞社を助け、メディアをコントロールする体制を作っているのだ。

軽減税率の問題以前に、実は「押し紙」問題があるのだ。自民、公明はこの問題をどう処理するのだろうか?

2015年01月15日 (木曜日)

2014年11月度のABC部数、読売は年間で66万部減、朝日は48万部減

2014年11月度における新聞のABC部数が公表されている。わたしが注目していたのは、読売新聞と朝日新聞の部数増減だった。

まず、読売新聞のABC部数は、1年でどの程度変動したのだろうか?

2013年11月度部数:1000万7440部 

2014年11月度部数:934万5155部

対前年同月差:66万285部減

ちなみに読売のウエブサイト「数字で見る読売新聞」は、現在(2015年1月15日)の時点でも、2013年11月の数字「1000万7440部」を表示している。「読売1000万部」へのこだわりのようだ。

これに対して朝日新聞の内訳は次の通りである。

◇朝日新聞のABC部数

2013年11月度部数:752万474部 

2014年11月度部数:704万2644部

対前年同月差:48万4830部減

両社とも大きく部数を減らしている。

社会的な要因としてインターネットの普及が背景にあると思われるが、新聞の公器性という観点から見れば、新聞社の幹部が安倍首相と飲み食いを重ねるなど、ジャーナリズム集団として、あるまじき行為を繰り返していることが、新聞そのものの信用を失墜させている可能性が高い。読者はすでに腐敗を見抜いている。

なお、ABC部数は、新聞の発行部数を示す数値なので、必ずしも発行された新聞がすべて配達されているとは限らない。搬入される新聞の約60%が「押し紙」だったケース(毎日新聞・蛍ケ池販売所。2006年12月の例)もある。

2014年度11月度のABC部数の詳細(全紙)PDF

【訂正】
 14日付けの記事で、衆院選で139人の候補者を推薦した団体の名称を日本新聞協会と表記しましたが、日本新聞販売協会(日販協)の誤りでした。日本新聞協会に対して謝罪します。

2015年01月14日 (水曜日)

昨年の衆院選で新聞関係者が自民を中心に139人の候補者を推薦していた、新聞に対する軽減税率適用と引き替え

ジャーナリズムの役割を放棄して、情報産業に変質した日本の新聞社の実態を如実に示す2つの事実を紹介しよう。もっとも「情報産業に変質した」といっても、これは昨今に起こった現象ではなく、枝葉末節の新聞肯定論は否定しないとしても、基本的に日本の新聞社は創業以来、公権力と本気で戦ったことはない。特に、ここ数年のデタラメぶりは目にあまるものがある。

まず、最初に紹介する事実は、昨年暮れに行われた衆議院議員選挙で新聞関係者が選挙活動を行ったことである。業界紙の報道によると、日本新聞協会と協同して新聞に対する消費税の軽減税率の適用を求めている日本新聞販売協会(日販協)が、衆院選で139人の候補者を推薦し、このうち131人が当選したという。

支援の対象となった候補者は、業界紙によると、「新聞への軽減税率適用に協力する候補」である。当選した議員の政党別内訳は、自民が102人、公明が19人、民主が9人、無所属が1人である。詳細は次の通りである。

  ■当選議員一覧PDF

結果として新聞関係者は、安倍政権下で進む新自由主義の再起動と軍事大国化の流れを、後押ししたことになる。安倍政権のサポーターになることで、新聞に対する軽減税率の適用を勝ち取る道を選んだのだ。

改めていうまでもなく、政治献金も支出している。

■参考記事:新聞業界から150人を超える議員へ献金、背景に軽減税率の問題、90年代には「新聞1部につき1円」の献金も

ちなみ新聞関係者は、なぜ、軽減税率適用にこだわりを見せるのだろうか。それは「押し紙」(販売店へ搬入される読者数を超えた新聞で、卸代金の徴収対象になる。「押し紙」は独禁法に違反する。)にも、消費税がかかるからだ。

読者から購読代金が集金できない「押し紙」の消費税を負担すれば、新聞販売店がつぶれて、販売網は崩壊しかねない。本来、「押し紙」政策をやめれば、軽減税率適用は不要だが、新聞社は、公称部数をかさ上げすることで、紙面広告の収入を増やそうとしている。それゆえに「押し紙」政策をやめない。

「1部も『押し紙』はない」と開き直ってきたのである。

第2の事実は、軽減税率に関する密約存在の可能性である。

◇密約存在の可能性

『マスコミ市民』(2015年1月)に掲載された川崎泰資氏と桂敬一氏の対談の中で、川崎氏が密約について、次のように述べている。

それから、読売のナベツネが主導して軽減税率の中に新聞を入れる密約ができました。そうすると、今度の選挙は新聞代の値上げを避けるために強権政権に協力したという話になるのです。

川崎氏に対して、桂氏も次のようにこの問題に言及している。

裏は取れませんが、現実にそういう流れができています。しかし、朝日にしても軽減税率となると、実施してほい気持ちが販売を中心にある。産業退勢のなか、どの社も独りで実施反対で頑張るなどできない。今度の総選挙は、そういう事情の下、言うべきことも言いにくい状況があり、一体どうなってしまうのか心配です。

かりに密約が事実だとすれば、政策上で便宜を図ってもらうことを条件に、新聞関係者たちは特定候補を支援したことになる。政策の買収にほかならない。

もともとジャーナリズムは自分の主張を展開する手段であるから、電波利権がからむ放送は別として、新聞が特定政党の支持を打ち出すのは自由だ。むしろ好ましい。しかし、日本の新聞関係者のように、「公正・中立」の看板をかかげ、その対極で政治活動をすることは、あるまじき行為である。

◇メディアコントロールの方法

権力を持つ者が言論をコントロールする最も簡単は方法は、経営上の弱点に付け込むことである。それを前提、利権を提供することだ。たとえば次の項目は、メディアコントロールの道具として機能する。

①独禁法違反の「押し紙」の放置。(本来は、公取委が取り締まるべき問題。)

②折込広告の詐欺行為の放置。(本来は、警察が取り締まるべき問題。)

③軽減税率の適用。

④再販制度の維持。

新聞と政界の関係を知れば、新聞紙面の読み方も違ってくるのではないだろうか。読者は、世論誘導に騙されてはいけない。

冒頭の動画:水増した折込広告を段ボールに詰めて、新聞販売店から搬出している場面を撮影したもの。段ボールは、新聞社の販売会社が提供していた

2015年01月13日 (火曜日)

「黒書」が携帯電話、スマフォ、無線PCのリスクを知らせるチラシを無料で提供、携帯基地周辺で配布を

携帯電話や無線PCなどの通信に欠くことができないのが、基地局である。マイクロ波による人体影響を想定して、インドや欧米では、基地局の設置を規制する動きがある。特にインドのムンバイ市では、2013年1月に、市当局が約3200局の基地局を撤去の対象に指定した。

ところが日本では、基地局の設置に実質的に規制がない。電磁波の規制値をクリアーしていれば、自由に設置してもいいことになっている。その規制値は、たとえばオーストリアのザルツブルグ市に比較すると、1000万倍も緩やかなもので規制にはなっていない。箸にも棒にもかからない数値である。

こうした実態の背景に、ひとつには、IT関連の企業や業界団体、それに電話会社の労働組合からの莫大な政治献金がある。

自民党の政治資金団体・日本国民政治協会の政治資金収支報告書(2012年度分)によると、携帯電話3社(NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク)のうち、NTTドコモとKDDIが政治献金を送っている。

■参考記事:携帯ビジネス関連の企業から、自民党の政治資金団体へ多額の献金、日本電機工業会から5000万円、ドコモから600万円、東芝から1400万円、2大政党制の影のカラクリ

改めて言うまでもなく、政治献金を提供するということは、政策の買収である。議会制民主主義の国では、やってはいけないことである。ところが日本では、自民党政治の下でそれが慣行化している。

かつて「エコノミック・アニマル」という言葉が流行したが、自社の収益を伸ばすために、住民の健康を犠牲にする企業の姿勢は、「エコノミック・アニマル」を通りこして、「死の商人」に等しい。

電磁波問題に関しては、国会議員もなかなか腰をあげないのが実態である。携帯電話や無線PCのヘビーユーザーが増えている状況の下で、これらの通信機器のリスクを口にすると、嫌われるからだ。大衆(特に若い世代)の支援を失いかねないからだ。ヘビーユーザーの大半は、「完全」と信じて、携帯電話を使いたい人々である。

「タバコはストレス解消になる」と言って、頑なに禁煙を拒否する心理と同じだ。

◇自由に配布できるチラシ

次にリンクしたのは、無線通信機器(携帯電話、無線PC,スマートフォンなど)や携帯基地局の安全性について考えるためのチラシである。特定の電話会社を名指していないので、修正することなくすべての基地局の周辺で配布できる。わたしを含めた制作者が著作権を放棄したので、誰でも自由に使うことができる。

表裏の両面を印刷して、基地局周辺や駅頭で配布することができる。

 ■著作権を放棄したチラシPDF

 ■著作権を放棄したチラシWORD

2015年01月12日 (月曜日)

NTTドコモのインド戦略に暗雲、背景に携帯基地局の設置を厳しく規制する動き

『東洋経済(電子版)』(1月10日)に、「NTTドコモの誤算、インド投資撤退に難航、投資先の通信会社は960億円の債務超過」と題する記事が掲載されている。インドにおける携帯ビジネスが当初の予想どおりにいかなくなり、撤退しようにも、撤退できなくなったというのだ。

インドの投資案件から撤退を決めていたNTTドコモが、退くに退けない状況に陥っている。懸案は2009年に行った投資だ。ドコモは現地の通信事業者であるタタ・サービシズリミテッド(以下、タタ社)に合計2670億円を出資し、株式の26.5%を保有している。

だが、厳しい競争環境に加えて、獲得した電波が割り当てられないという誤算続き。業績は赤字で、投資から5年で減損など2220億円もの関連損失を計上している。

実は、インドで携帯ビジネスを進めている企業は、NTTドコモに限らず、大きな壁に突き当たっている。現地を取材していないので、確定的なことは言えないが、その大きな背景には、日本では報じられていないある決定的な事情があるのだ。

結論を先に言えば、携帯基地局の設置が極めて厳しく規制されるようになったのだ。その背景については、MEDIA KOKUSYO(2014年11月28日)で紹介した次の記事に詳しい。

インドで携帯基地局の規制がはじまる

ムンバイ市が、学校、大学、孤児院の近くでの携帯基地局設置を禁止

インドで最も人口が多いムンバイ市は、2013年8月、学校、大学、孤児院、児童リハビリテーション施設、それに老人ホームから100メートル以内に携帯基地局を設置することを禁止した。同市は、学校や大学、それに病院などに設置されているアンテナを撤去するように命じた。

さらにムンバイ市は、マンションの最上階に住む全居住者の承諾と、マンション居住者全体の70%の承諾がない場合、住宅の屋根にアンテナを設置することを禁止した。

 これにより法律に抵触する状態で設置されている3200の基地局の撤去が始まった。この政策は、もともと2013年1月に発案されたもの。(略)

ムンバイ市があるマハラシュトラ州の州政府は、2013年10月の中旬、放射線の規制値を10倍厳しくするかわりに、ムンバイ市の方針を採用しない試案を発表した。現在、州政府と市当局の交渉が続いている。(黒薮訳)

■出典 

◇理工系の先進国・インド

欧米こそが科学技術の先進国という偏見に支配されている人々は、インドが理工系の先進国に近づいている事実を冷静に受け止めるようとはしない。インドは、マイクロ波が生態系に及ぼす研究でも先端を走っている。

たとえば現在の段階では、ほとんど着手されていないマイクロ波が植物に及ぼす影響について、インド工科大学のギリッシュ・クマール教授は、『基地局からの放射に関するレポート』(Report on Cell tower Radiation,2010)で次のように述べている。

 携帯局タワーから放たれる電磁放射は、その付近の野菜、穀物、果実などの植物に影響を及ぼす。携帯電話用のEMFは種子を枯らし、発芽と根の成長を阻害し、穀物、果実、植物の成長に、農業全体に影響を与えることを、研究結果が決定的に示している。高圧EMF送電線近くの麦畑・トウモロコシ畑の減収も報告されている。(渡邉建訳)

◇海外派兵の目的は?

インドで携帯基地局の設置に厳しい規制が課せられるようになった事実は重い。今後、欧米でも同じ傾向が現れる可能性が高い。

ただ、日本の場合、自民党と民主党に対して、IT関連の業界から多額の政治献金が行われているので、規制が大幅に遅れる可能性が高い。当然、人的被害も拡大することになるだろう。献金の実態については、次の記事を参考にしてほしい。

■携帯ビジネス関連の企業から、自民党の政治資金団体へ多額の献金、日本電機工業会から5000万円、ドコモから600万円、東芝から1400万円、2大政党制の影のカラクリ

NTTドコモのケースは、日本政府の立場からすれば、単に日本企業1社の権益にかかわる問題なので、傍観せざるを得ないが、かりにインドに進出している日本企業全体の権益にかかわるような問題が起きた場合、どのような措置が取られるのだろうか。おそらく、条件さえ整えば、それは海外派兵である。そのために安倍内閣は、改憲を急いでいるのである。

海外派兵は、国際貢献が目的ではない。経済がグローバル化する中で、多国籍企業の権益を守ることが本当の目的なのだ。しかも、安倍内閣は、それを日本単独でも行える体制を整えようとしている。

かつて海外派兵といえば、他国を植民地化することだったが、現在は、企業防衛が最大の目的になっている。同じ派兵でも、太平洋戦争時のスタイルに戻そうとしているのではない。そのために血税が注ぎ込まれるのである。

2015年01月09日 (金曜日)

ブログ「一市民が斬る」が鳩山検審裏金疑惑の裏付け資料を公開、問われる最高裁事務総局の責任

最高裁事務総局の組織である検察審査会の裏金疑惑を追及している志岐武彦氏が主宰するブログ「一市民が斬る」が、8日付けで、鳩山検審における裏金作りを証拠だてる主要な資料を公開した。

鳩山検審の主要な資料PDF

裏金作りの手口は、架空と思われる審査員の日当と旅費を、偽の請求書で支出させ、銀行口座に振り込むという古典的なものだった。しかし、裏金作りの首謀者が、偽の請求書に誤った金額やシリアル番号などを書き込んでいた足跡が、情報公開資料の精査によって発覚した。

偽の審査員の名前も間違っていた可能性が極めて高いが、情報公開資料にあるこの箇所が黒塗りにされているので、確実なことは言えない。

鳩山検審における裏金作りの手口は次の通りである。

鳩山検審に裏金づくりの疑惑、同じ請求書が2枚あったことが情報公開資料の精査で判明

志岐氏が解明した2つの検審事件-小沢検審と鳩山検審-のうち後者には、確証がある。実在する審査員が自分で請求書を作成したのであれば、絶対に起こりえない記入ミスを犯し、それに捺印(情報公開資料では、黒塗り)しているからだ。

なぜ、裁判所の不正が重大問題なのだろうか?

◇鳩山氏がなぜ不起訴なのか?

改めていうまでもなく、裁判所は、人を裁く特権を持った機関であるからだ。人を裁く機関が、組織ぐるみで不正(鳩山検審・小沢検審)を働くようでは、彼らが下している判決そのものが信用できなくなる。事実、このところだれが判断しても、おかしな判決や議決が増えている。

たとえば、「押し紙」裁判の判決である。多量の写真、動画、証言、裏付け書類が存在するにもかかわらず、裁判所は権力構造のひとつである新聞社を基本的に救済してきた。中央紙の勝率は、圧倒的に高い。

携帯電話の基地局の撤去を求める裁判でも、裁判所は、論理が破綻した的はずれな判決を出している。たとえば延岡大貫訴訟である。この裁判では、住民が受けている健康被害を認定しながら、医学的な根拠が不明であることを理由に、住民を敗訴させ、被告のKDDIを救済したのである。

しかも、裁判官は原告住民の要請にもかかわらず、現地を「取材」していない。物事を判断するさいの基本すら踏み外しているのである。

さらに鳩山検審・小沢検審の議決も、個人的に変だと思う。鳩山氏がなぜ不起訴になったのか疑問が残る。

わたしは「人を裁く特権」を持つ機関は、ある意味では尊ぶべきだと思う。が、そうであれば、不正が発覚した以上は、裏金を返済した上で、幹部が総辞職すべきだろう。最も厳しい「処分」が妥当だ。納税者として、当然の要求である。

繰り返しになるが、検察審査会の不祥事は、その上部機関である最高裁事務総局の不祥事である。

これから特定秘密保護法が本格的に運用されるだろう。警察による不当な逮捕にお墨付きを与えるのも、裁判所である。逆説的に言えば、裁判所に誇りと尊厳があれば、特定秘密保護法の濫用も防止できるのである。

【訂正】8日付け本サイトの記事の中で、「2008年1月は、安倍内閣の時代である」と書きましたが、「福田内閣」の間違いでした。訂正に伴い、記事全体を若干修正しました。

2015年01月08日 (木曜日)

小沢検審疑惑と鳩山検審疑惑のルーツは自民党の時代、輪郭を現す権力抗争

本サイトで繰り返し報じてきた検察審査会をめぐる2つの疑惑。小沢検審疑惑と鳩山検審疑惑の共通点について、解説しておこう。そこから検察審査会制度の闇、あるいはそれを牛耳っている最高裁事務総局の実態が輪郭を現してくる。

なお、2つの検審疑惑の詳細については、次の記事を参考にされたい。

「最高裁をただす市民の会」が小沢検審の架空議決疑惑で、会計検査院に調査を要請 

鳩山検審に裏金づくりの疑惑、同じ請求書が2枚あったことが情報公開資料の精査で判明

繰り返しになるが、検察審査会とは、「検察」の名を付しているものの、検察による不起訴決定の当否を審査する最高裁事務総局の組織である。従って検察審査会の不正は、裁判所の不正にあたる。

2つの検審疑惑を解明した『最高裁の罠』(K&Kプレス)の著者・志岐武彦氏によると、この問題を考えるうえで、欠くことができないのは、2008年1月に最高裁がおこなったある「改革」である。

2008年1月21日、最高裁は、「全国に201カ所ある検察審査会のうち地方の50カ所を廃止し、9都市の大規模地裁管内で計14カ所を増設再編案を発表した」(日経新聞・2008年1月22日)のである。

このうち小沢検審と鳩山検審の舞台となった東京検察審査会(東京地裁内)は、「審査会を2カ所から6カ所へ増やす」ことになった。つまり従来は、第1検察審査会と第2検察審査会の2つだけだったが、これに第3、第4、第5、第6の検審を新たに設置することになったのだ。

事実、この計画は実施され、現在、東京地裁管内には、6つの検察審査会が置かれている。

◇なぜ、新設の検察審査会なのか?

小沢検審と鳩山検審は、どの検審に割り当てられたのだろうか?結論を先に言えば、小沢氏が第5検審で、鳩山氏が第4検審である。いずれも新設の検審が小沢事件・鳩山事件を担当することになったのだ。両人とも野に下ったばかりだった。(注:小沢氏の場合は、最初は第1検審、2回目で第5検審)。

なぜ、2人は新設に割り当てられたのか。答えは簡単で、検察審査員(補充員を含む)の任期は半年で、半年ごとに審査員の半数が入れ替わる制度になっているために、従来からある第1と第2では、架空審査員を設定することが出来ないからだ。

まったく新しい審査会であれば、架空審査員の設定と架空議決、さらには裏金づくりの舞台までを準備することが可能になるからだ。事実、小沢検審と鳩山検審には、本サイトで繰り返し述べてきた、根拠のある疑惑がかかっている。

◇第1次安倍内閣と検審の関係

志岐氏が指摘している2008年1月は、福田内閣の時代である。この時期に検察審査会の改編がおこなわれたわけだから、それ以前の内閣で改革案ができていたものと推測される。

当時は、小泉構造改革により社会的な格差が広がり、政権交代の世論が高まってきた時期である。多くの国民が新自由主義からの脱皮を求めたのである。

その結果、何が起こったか。改めて言うまでもなく民主党の台頭である。
安倍内閣に続く、福田・麻生の両政権は、やむなく構造改革=新自由主義の手直しをよぎなくされたが、それも失敗に終わり、民主党政権の成立が避けられなくなった。

そして実際に鳩山内閣が成立したのである。が、鳩山政権は、米国の圧力に屈した。鳩山氏の後任として、菅政権は構造改革=新自由主義への回帰をはかり、反新自由主義とまでは言えないまでも、民衆に一定のシンパシーを持っていた小沢氏は排除されたのである。

その後、鳩山氏は第4検審で、小沢氏は第5検審で、そろって議決を受けることになる。小沢氏が「起訴」で、鳩山氏が「不起訴」である。

が、現在、小沢検審と鳩山検審に本当に審査員がいたのかという根拠のある疑惑かかっているのである。

繰り返しになるが、新設の検察審査会は、自民党政権の時代に準備が整っていたのである。権力抗争と疑われても仕方がない。

2015年01月07日 (水曜日)

マイクロ波による人体影響とPCの誤作動、WiMAXサービスを提供しているUQコミュニケーションズは安全を断言

携帯電話、スマートフォン、無線のパソコンなどの通信に使われるマイクロ波の安全性について、通信会社はどのように考えているのだろうか。今回は、これまでMEDIA KOKUSYOであまり取り上げなかったUQコミュニケーションズのWiMAXサービスを検証してみた。

同社は、無線でパソコンを操作することを可能にしたWiMAXサービスを提供している。UQが使用しているマイクロ波は、同社のウエブサイトにある野坂章雄社長のあいさつによると、「2.5GHz帯の周波数30MHz」である。

2.5GHzという周波数は、家庭に普及している電子レンジの2.6 GHzに極めて近い。そのために最近、MEDIA KOKUSYO宛てに、電子レンジに近い周波数の電波を使用したパソコンの機能や人体影響に関する問い合わせが時々よせられるようになっている。

そこで昨年の12月にUQに問い合わせてみた。

 

黒薮:これ(無線のパソコン)は電子レンジの近くで使ってはいけないということですか?

UQ:そうですね。電子レンジ等をお使いになりますと、そちらの電波が干渉を受ける可能性がございますので、やはり通信中でしたら、あまりご使用ならない方がよろしいかと思います。

黒薮:電子レンジと同じ周波数であれば、体に悪くないですか?

UQ:そうですね。基本的には体に害のないレベルのものです。

黒薮:だってマイクロ波はWHOの外郭団体が、2011年に発癌性(の可能性)を認定していませんか。

UQ:はい。

黒薮:もし、健康被害が出た場合の補償はしていただけるのですか?

QU:基本的には、そういう話を聞いたことがないので、もし、そういったことがあれば、お問い合わせいただいての対応になるかと思います。

黒薮:対応していただけるわけですね。

UQ:そうですね。

黒薮:今のところは、(被害が)出ていないということですね。

UQ:さようでございます。

UQの主張をまとめると、①WiMAXサービスを利用しているときは、電磁レンジは使わない方がいい、②WiMAXサービスは人体に影響を及ぼすことはない、③健康被害が発生した場合は対処する、の3点である。