1. 昨年の衆院選で新聞関係者が自民を中心に139人の候補者を推薦していた、新聞に対する軽減税率適用と引き替え

新聞業界の政界工作に関連する記事

2015年01月14日 (水曜日)

昨年の衆院選で新聞関係者が自民を中心に139人の候補者を推薦していた、新聞に対する軽減税率適用と引き替え

ジャーナリズムの役割を放棄して、情報産業に変質した日本の新聞社の実態を如実に示す2つの事実を紹介しよう。もっとも「情報産業に変質した」といっても、これは昨今に起こった現象ではなく、枝葉末節の新聞肯定論は否定しないとしても、基本的に日本の新聞社は創業以来、公権力と本気で戦ったことはない。特に、ここ数年のデタラメぶりは目にあまるものがある。

まず、最初に紹介する事実は、昨年暮れに行われた衆議院議員選挙で新聞関係者が選挙活動を行ったことである。業界紙の報道によると、日本新聞協会と協同して新聞に対する消費税の軽減税率の適用を求めている日本新聞販売協会(日販協)が、衆院選で139人の候補者を推薦し、このうち131人が当選したという。

支援の対象となった候補者は、業界紙によると、「新聞への軽減税率適用に協力する候補」である。当選した議員の政党別内訳は、自民が102人、公明が19人、民主が9人、無所属が1人である。詳細は次の通りである。

  ■当選議員一覧PDF

結果として新聞関係者は、安倍政権下で進む新自由主義の再起動と軍事大国化の流れを、後押ししたことになる。安倍政権のサポーターになることで、新聞に対する軽減税率の適用を勝ち取る道を選んだのだ。

改めていうまでもなく、政治献金も支出している。

■参考記事:新聞業界から150人を超える議員へ献金、背景に軽減税率の問題、90年代には「新聞1部につき1円」の献金も

ちなみ新聞関係者は、なぜ、軽減税率適用にこだわりを見せるのだろうか。それは「押し紙」(販売店へ搬入される読者数を超えた新聞で、卸代金の徴収対象になる。「押し紙」は独禁法に違反する。)にも、消費税がかかるからだ。

読者から購読代金が集金できない「押し紙」の消費税を負担すれば、新聞販売店がつぶれて、販売網は崩壊しかねない。本来、「押し紙」政策をやめれば、軽減税率適用は不要だが、新聞社は、公称部数をかさ上げすることで、紙面広告の収入を増やそうとしている。それゆえに「押し紙」政策をやめない。

「1部も『押し紙』はない」と開き直ってきたのである。

第2の事実は、軽減税率に関する密約存在の可能性である。

◇密約存在の可能性

『マスコミ市民』(2015年1月)に掲載された川崎泰資氏と桂敬一氏の対談の中で、川崎氏が密約について、次のように述べている。

それから、読売のナベツネが主導して軽減税率の中に新聞を入れる密約ができました。そうすると、今度の選挙は新聞代の値上げを避けるために強権政権に協力したという話になるのです。

川崎氏に対して、桂氏も次のようにこの問題に言及している。

裏は取れませんが、現実にそういう流れができています。しかし、朝日にしても軽減税率となると、実施してほい気持ちが販売を中心にある。産業退勢のなか、どの社も独りで実施反対で頑張るなどできない。今度の総選挙は、そういう事情の下、言うべきことも言いにくい状況があり、一体どうなってしまうのか心配です。

かりに密約が事実だとすれば、政策上で便宜を図ってもらうことを条件に、新聞関係者たちは特定候補を支援したことになる。政策の買収にほかならない。

もともとジャーナリズムは自分の主張を展開する手段であるから、電波利権がからむ放送は別として、新聞が特定政党の支持を打ち出すのは自由だ。むしろ好ましい。しかし、日本の新聞関係者のように、「公正・中立」の看板をかかげ、その対極で政治活動をすることは、あるまじき行為である。

◇メディアコントロールの方法

権力を持つ者が言論をコントロールする最も簡単は方法は、経営上の弱点に付け込むことである。それを前提、利権を提供することだ。たとえば次の項目は、メディアコントロールの道具として機能する。

①独禁法違反の「押し紙」の放置。(本来は、公取委が取り締まるべき問題。)

②折込広告の詐欺行為の放置。(本来は、警察が取り締まるべき問題。)

③軽減税率の適用。

④再販制度の維持。

新聞と政界の関係を知れば、新聞紙面の読み方も違ってくるのではないだろうか。読者は、世論誘導に騙されてはいけない。

冒頭の動画:水増した折込広告を段ボールに詰めて、新聞販売店から搬出している場面を撮影したもの。段ボールは、新聞社の販売会社が提供していた