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2015年01月06日 (火曜日)

携帯基地局問題、解決への展望は地権者へ健康被害に対する損害賠償を求める勇気

携帯電話の基地局撤去を求める裁判は、九州を中心に全国で発生している。その大半は、住民が原告となって、電話会社に対し裁判を起こすオーソドックスな構図である。

次に示すのは、全国で最も基地局関連の裁判が多発している九州地区における訴訟の「足跡」である。

・沼山津裁判(熊本市)1997年

・御領裁判(熊本市)1998年

・三潴裁判(久留米市)2001年

・楡木裁判(熊本市)2001年

・春木裁判(別府市)2002年

・荘園裁判(別府市)2005年

・霧島裁判(霧島市)2005年

・延岡大貫裁判(延岡市)2009年

裁判の勝敗は、いずれも原告住民の敗訴である。電磁波による人体影響が医学的に立証されていないというのが、これまでの司法判断だった。

ただし、2009年に起こされた延岡大貫裁判(被告KDDI)では、基地局の周辺で健康被害が多発している事実は認定された。しかし、この裁判でも、医学的な立証が大きな壁として立ちはだかったのである。結果、今も住民たちは、基地局からの強い電磁波に被曝している。

◇地権者に対する提訴が必要

これまでの基地局裁判には、あるひとつの特徴がある。それは電話会社に基地局設置のスペースを提供している地権者が、法廷に立たされて、責任を追及された前例が1件もないことだ。地権者は常に係争の外側で、傍観者として係争を見守ってきた事実である。

地権者の責任は、電話会社と同等に重い。基地局近隣の住民が健康被害を受けるリスクを知りながら、あるいは実際に健康被害が発生していることを知っていながら、賃料ほしさに、電話会社にスペースを貸し付けるわけだから、「重罪」だ。

地権者の中には、みずからは基地局の影響が及ばないところに住んでいる「資産家」も少なくない。住民たちから苦情がでると、「窓口」は電話会社になっているので、電話会社と交渉してほしいというのが、彼らの常套手段になっている。

が、地権者を蚊帳の外において、電話会社と交渉するのは、電話会社の思うつぼである。電話会社と同様に、地権者の責任も問わなければならない。

今後、健康被害に対する損害賠償の問題も浮上してくると思うが、その際に地権者を被告にするのが得策である。地権者は、土地やビルの持ち主であるから、経済的にも賠償能力はある。

たとえば住民10名が、1人3000万円ぐらいの損害賠償(総計で3億円)は、十分に請求できるだろう。

◇兵庫県川西市の調停ケース

ちなみにこれまでわたしが取材した中では、裁判所が介入する係争に地権者を巻き込んだケースが1件だけある。裁判ではなくて調停である。2008年に解決した兵庫県川西市の例である。

これに関する詳細は、拙著『あぶない!あなたのそばの携帯基地局』(花伝社)に詳しいが、手短に言うと、NTTドコモ、阪急バス、それに住民の3者による調停事件である。

このケースでは、地権者である阪急バスが、住民の要望に応えて、NTTドコモに対して、スペースの賃貸を断った結果、事件はあっさりと解決した。

ただ、地方都市では地権者に対して、法的な措置を取ることに抵抗を覚える人も多いようだ。特に地権者が地域の有力者である場合などは、その傾向が強い。

わたしは地権者の責任を厳しく問うことで、基地局の設置に一定の歯止めをかけることができるのではないかと考えている。

2015年01月05日 (月曜日)

安倍首相と報道関係者との会食、山本太郎議員が質問主意書、小林秀雄ら戦前にも風に靡く文化人

第2次安倍政権が発足してから2年になる。この間の安倍首相と報道機関の親密な関係が批判の的になってきたが、昨年の12月24日、山本太郎議員が、公式に質問主意書のかたちで、この問題を指摘した。

質問主意書は8ページからなり、冒頭で安倍首相がこの2年間で報道関係者との会食を40回以上も重ねている事実を指摘して、「政権のトップとメディア関係者の親密な関係、メディアの癒着が、報道の中立公正公平、不偏不党の観点から批判の対象となることは、今や欧米などの先進諸国においては常識であり、安倍首相のこれらの行動は、国際的な常識から見ても極めて奇異であると言わざるを得ない」と述べている。

さらに飲食に関しては、報道関係者だけではなくて、企業や団体の関係者とも会食を重ねていることを指摘している。

一連の会食のうち、質問主意書では、具体的にいくつかの会食を指摘して、会計に関する明細を明らかにするように求めている。たとえば次の会食である。

特定秘密保護法が成立した10日後の2013年12月16日に、東京・赤坂の中国料理店で行われた会食。

安倍首相が初めて靖国神社を参拝した2013年12月26日に、東京・赤坂の日本料理店で行った会食。

消費増税が施行された2014年4月2日と翌3日に、行った会食。(料亭名は記されていない)。

2014年12月14日に行われた衆議院議員総選挙の2日後にあたる12月16に、東京・西新橋のすし店で行った会食。

会食に関する経理問題に加えて、山本議員は政府見解を求めている。

◇「アメと鞭」の政策

戦前から現代にいたるまで、国策を進めるうえで報道関係者(特に新聞)や文化人が果たしてきた負の役割は重大だ。しかし、両者が癒着する原因は、単に情交関係だけではなくて、利権がからんでいる。この点を見落としてはならない。

まず、新聞社についていえば、政府により新聞社の経営上の弱点を握られている事情がある。弱点を握ることで、政府は「アメと鞭」の政策を進める。たとえば次の「アメ」である。

①再販制度という既得権益。

②新聞に対する軽減税率の適用。

③本来、公取委が取り締まるべき「押し紙」問題の放置。

④本来、警察が取り締まるべき「折込チラシ詐欺」問題の放置。

⑤記者クラブを通じた情報提供。

⑥安倍首相による新聞社に対する単独インタビューの提供。

◇フリーランサーの経済的事情

一方、文化人に関して言えば、雑誌を見ればすぐに分かる。読者は昨年の朝日バッシングに、文化人の誰が便乗したかを、次の記事を参考に検証してみてほしい。

朝日バッシングに見る国際感覚の欠落、雑誌ジャーナリズムにおける海外との質の差が顕著に

おそらく背景に、フリーランサーの経済的事情があるのではないか?

ちなみに文化人が時の政権にすり寄る傾向は、昔からあったようだ。たとえば半藤一利氏の『昭和史』(平凡社)は、太平洋戦争直後の文化人のコメントを紹介している。小林秀雄、亀井勝一郎、横光利一といった人々である。

中島健蔵:「(これは)ヨーロッパ文化というものに対する一つの戦争だと思う」

本多顕彰:「対米英宣戦が布告されて、からっとした気持ちです。・・・・・・聖戦という意味も、これではっきりしますし、戦争目的も簡単明瞭となり、新しい勇気も出て来たし、万事やりよくなりました」

小林秀雄:「大戦争がちょうどいい時にはじまってくれたという気持ちなのだ。戦争は思想のいろいろな無駄なものを一挙になくしてくれた。無駄なものがいろいろあればこそ無駄な口をきかねばならなかった」

亀井勝一郎:「勝利は、日本民族にとって実に長いあいだの夢であったと思う。即ち嘗てペルリによって武力的に開国を迫られた我が国の、これこそ最初にして最大の苛烈極まる返答であり、復讐だったのである。維新以来我ら祖先の抱いた無念の思いを、一挙にして晴すべきときが来たのである」

横光利一:「戦いはついに始まった。そして大勝した。先祖を神だと信じた民族が勝ったのだ。自分は不思議以上のものを感じた。出るものが出たのだ。それはもっとも自然なことだ。自分がパリにいるとき、毎夜念じて伊勢の大廟を拝したことが、ついに顕れてしまったのである」

■山本議員の質問主意書PDF

 

2014年12月31日 (水曜日)

2014年度、アクセスが多かった記事、注目の記事 

MEDIA KOKUSYOの主要ニュースです。アクセスが多かったものを中心に選びました。2015年度の更新は、5日からの予定です。

LEDを4ヶ月浴びた熱帯魚の背骨がS字型に変形、原因不明も重い事実

読売の部数が10カ月で約77万4000部減、「数字で見る読売新聞」には10,007,440部と表示、部数減は朝日の比ではない

ノーベル物理学賞の青色LEDと加齢黄斑変性の関係、受賞者と一体化して喜ぶメディアにも問題

LEDのリスクを提起する視点が欠落、ノーベル物理学賞をめぐるマスコミ報道の盲点

小渕優子議員の自民群馬県第5選挙区支部から、東京ドームへ入場料84万円、明治座から寄付金24万円

ソフトバンクが公開したNTTグループへの天下りリスト 総務省が基地局問題を規制しない背景か

鳩山検審に裏金づくりの疑惑、同じ請求書が2枚あったことが情報公開資料の精査で判明

米国とキューバが国交回復へ、背景にラテンアメリカの激変と国際政治地図の更新 

「最高裁をただす市民の会」が小沢検審の架空議決疑惑で、会計検査院に調査を要請 

インドのムンバイ市が携帯基地局の設置を厳しく規制、3200局が撤去の対象 

携帯ビジネス関連の企業から、自民党の政治資金団体へ多額の献金、日本電機工業会から5000万円、ドコモから600万円、東芝から1400万円、2大政党制の影のカラクリ

安倍首相が「共同通信加盟社編集局長会議」に参加、進むマスコミと政府の病理、背景に新聞に対する消費税の軽減税率適用問題など

米国CSIS (戦略国際問題研究センター)のウエブサイトで読み解く解釈改憲の舞台裏、安倍首相が米側に「強い日本を取り戻します」

2014年12月30日 (火曜日)

KDDI基地局の操業停止を求める延岡大貫訴訟で原告が上告、原告団声明が司法を厳しく批判、「住民に苦痛と絶望を与えているのは裁判所」

KDDI基地局の稼働差し止めを求めた延岡大貫訴訟の原告団(岡田澄太原告団長)は、12月5日の控訴審敗訴(福岡高裁宮崎支部・田中哲朗裁判長)を受けて、地域住民を交えた今後の対応策を話し合い、19日に最高裁に上告した。

控訴審判決は、一審に続いて健康被害が発生していることは認めつつも、「科学的観点からの立証は不十分だと言わざるを得ない」という内容だった。

控訴審では、過去に起きた携帯基地局の稼働差し止めを求める3件の裁判で、いずれも被告の電話会社を勝訴させた前歴がある裁判長が担当するなど、電磁波問題とは別に、司法の公平性も問われていた。

12月5日の判決後に発表された原告団声明で岡田団長は、みずからの体験に照らし合わせて、日本の司法制度を次のように批判している。

大貫町の住民を24時間、電磁波という「見えないムチ」で叩き続けているのはKDDIであり、まさに刑法で裁かれるべき刑事犯であります。

しかしながらこの憎きKDDIと並んで、私たち住民に苦痛と絶望を与えているのは裁判所であることを、この裁判を通じて思い知らされました。
裁判という解決手段の闘いを振り返って、私たちは裁判所・司法に対して、むなしさがこみ上げてきます。

なぜ、私たちの助けてくださいという命の叫びを裁判所・司法は分からないのか、分かろうとしないのか。

立法の行き過ぎを諫め、行政の横暴を質し、国民が健康で文化的な営みをすることの担保を担っているのが、司法であり、それが司法の責務ではないのか。

国民の基本的人権をそして生存権を、あらゆる事象から守り抜くことが「司法」の存在意義ではないのか。

その司法が、立法に慮り行政にすり寄り、その裏返しとして国民の基本的人権を踏みにじるという、今の司法はまさに死んでいるとしか思えません。
三権分立の要である位置にいながら、自らその職責を忘れ、国民を絶望の淵へと導こうとしています。

■原告団声明全文

■判決の要旨

2014年12月26日 (金曜日)

鳩山検審に裏金づくりの疑惑、同じ請求書が2枚あったことが情報公開資料の精査で判明

2010年9月14日に検察審査会(以下、小沢検審)が小沢一郎議員に対して下した起訴相当議決は、最高裁事務総局による架空議決だったのではないかという疑惑があることはすでに周知となっている。

しかし、同じ時期に平行しておこなわれていた鳩山由紀夫元首相に対する検察審査会(鳩山検審)に関する疑惑についてはほとんど知られていない。

鳩山検審疑惑が浮上したのは、今年の8月だった。『最高裁の罠』の著者・志岐武彦氏が疑惑の裏付けを解明したのである。

先日、わたしはMEDIA KOKUSYOに「『最高裁をただす市民の会』(志岐武彦代表)が小沢検審の架空議決疑惑で、会計検査院に調査を要請」と題する記事を書いた。

「最高裁をただす市民の会」が、会計監査院に対して調査を依頼したという内容だ。が、この記事では、読者の混乱を避けるために、あえて書かなかったことがある。それが鳩山検審疑惑である。

実は、鳩山検審疑惑についても、「市民の会」は、同じ日に会計検査院に対して調査を要請する文書を提出した。

【注】検察審査会というのは、検察の組織ではなくて、検察による不起訴事件を検証して、被疑者を法廷に立たせる法的権限を持っている最高裁事務総局の組織である。審査員は、有権者から抽選で選ばれる。

鳩山検審疑惑とは、最高裁事務総局、あるいは裁判所にかかっている疑惑なのだ。その疑惑とは、ずばり裏金づくりである。にわかに信じがたい事であるが、「市民の会」は、裁判所による裏金づくりを示す決定的な証拠を握ったのである。

ちなみに鳩山事件とは、鳩山元首相が母親から資産譲渡を受け、秘書がこれを支援者120人からの献金として政治資金収支報告書に記載した事件である。鳩山氏は不起訴になったが、これを不服とした市民により、東京検察審査会への申し立てがあり、鳩山検審が開かれたのである。その鳩山検審で、裏金づくりが行われた決定的な裏付け証拠があるのだ。

◇裏金づくりの方法
この疑惑を理解するために、読者はまず、自分が検察審査会の事務局員という立場で、裏金づくりをするには、どのような方法を取るかを、たとえば次のような設定で、考えてほしい。

【設定】
、検察審査会の審査員名簿に、Aさん、Bさん2人の架空審査員を加える。

、審査会を開催するたびに、Aさん、Bさんの日当と交通費を「裏口座」に振り込む。

これはもっともオーソドックスな裏金づくりの方法である。

【請求手続き】
しかし、検察審査会の事務局に日当と旅費を請求する場合に不可欠になるのは、請求書である。経理処理をする上で、架空人物であるAさん、Bさんが作成した請求書が不可欠になる。

ところがAさん、Bさんは架空人物であるから、検察審査会の事務局員が架空の請求書を作成せざるを得ない。その際、たとえばBさんの請求書に、間違ってAさんに関する記載事項(シリアルナンバー、身分)を記載すれば、同じ内容のAさんの請求書が2枚できてしまう。

◇裏金づくりの足跡

Aさんの請求書が2枚存在していることに気づいた時点で、1枚を破棄して、最初からBさんの請求書を作成しなおしていれば、内部告発がない限り、裏金づくりは発覚しない。が、鳩山検審のケースでは、同じ審査員(A)の請求書が2枚あることに気づいた職員が、請求書上で訂正作業を行ったようだ。そして、別の人物(B)の請求書としてお金を支出したのである。

その足跡が情報公開資料を精査した結果、明らかになったのだ。

Bさんが実在する人物であれば、自分で作成する請求書の記入事項(シリアルナンバー、身分など)を間違うはずがない。たとえば間違ったとしても、最初から請求書をつくりなおすだろう。後から職員がとんでもない間違いに気づいたから、請求書上で訂正作業をせざるを得なかったのだ。

次に示すのは、鳩山検審の関係者による訂正作業の跡を示す書面である。

■請求書上の訂正作業の跡を示す書面

繰り返しになるが、本人が請求書を作成して提出していれば、自分に該当しない身分やシリアルナンバーを記入するはずがない。職員が作成したから間違ったのである。

以上の点を踏まえて、11月19日付けの次の記事を読むと、鳩山検審疑惑とは何かが見えてくる。

  鳩山検審に架空審査会の疑惑、いわくつきの請求書で浮上した裏金づくりの舞台裏、志岐武彦氏が新事実を指摘 

ちなみに東京地裁の事務局は、この問題についての説明を延々と引き延ばしている。

写真出典:ウィキペディア

2014年12月25日 (木曜日)

著作権侵害で2億3千万円請求、「0円」で和解 穂口氏「実質勝訴、ネット社会にとって明るいニュース」

YouTube上の動画を携帯電話で視聴するためのサイト『TubeFire』が著作権を侵害しているとして、レコード会社など31社が、同サービスを運営するミュージックゲート社に約2億3千万円の損害賠償などを求めた裁判が12月17日、東京地裁で和解した。

主な和解内容は、被告の権利侵害を認定する代りに、原告は損害賠償を請求しない、など。原告のレコード会社らが10,431個分のファイルが違法にダウンロードされたと主張したにもかかわらず、実際には121個しか確認できなかった上に、「ダウンロード」と「ファイル変換」を勘違いしていたことが判明し、請求額は「0円」となった。

裁判を終えた被告の穂口氏は、筆者の取材に対し、裁判を起こす際には「自分達の『思い込み』が間違っていないか」を確認すべきで、実質勝訴、との認識を示した。レコード会社側の勘違いとは何だったのか。意外な幕切れで終わった“著作権侵害”事件を解説する。(和解条項、および穂口氏陳述書は、PDFダウンロード可)【続きはMyNewsJapan】

2014年12月24日 (水曜日)

青色LEDによる人体影響を示唆する体験談はネット上に複数ある、環境問題で優先されるのは被害の事実

LEDと人体影響の関係を示唆するブログがMEDIA  KOKUSYO以外にもあることが分かった。それを紹介する前に、簡単にこれまでの経緯を振り返ってみよう。

東北大学大学院の研究グループが、青色LEDに殺虫能力があることを12月初旬にイギリスの科学誌「Scientific Reports」で発表した後、MEDIA KOKUSYOの次の記事にアクセスが殺到した。

LEDを4ヶ月浴びた熱帯魚の背骨がS字型に変形、原因不明も重い事実

アクセス数は1週間で20万件に迫り、フェイスブックの「いいね!」は2万4000件を超えた。

当然、さまざまなリアクションがあった。フェイスブックの書き込み欄に記された読者からのコメントは45件。その大半は科学的な根拠がないというものだった。

ところがLEDで熱帯魚が病気になったという報告が、今年の9月の段階ですでにネット上で公開されていたことが、読者からの情報提供で分かった。次のブログである。

■LEDライトを購入するも熱帯魚は死ぬは水草は枯れるは散々だった話 

◇環境問題では被害の事実が優先

環境汚染の問題を考える際、最も大事なのは、異変が発生した事実である。科学的根拠ではない。と、いうのも科学的な根拠が研究室の中で解明されるのを待ってから、対策に乗りだすとすれば、それまでに被害が拡大してしまうからだ。それゆえに予防原則を採用して、被害が発生している事実が重なった場合は、すぐに対策を取らなくてはならない。

科学的な根拠を解明することは大事だが、時間を要する。新しい製品が商品化された後に、ようやく安全性の検証がはじまるのが普通だ。

その典型例は、携帯電話に使われるマイクロ波である。携帯電話の普及が始まったのは、1990年代の初頭である。当時、マイクロ波の危険性を指摘する研究者は極めて限られていた。

WHOの外郭団体・世界がん研究機関がマイクロ波に発癌性がある可能性を認定したのは、20年後の2011年5月である。「危険」が判明するまで20年もの歳月を要しているのだ。

LEDの危険は、東北大学や岐阜薬科大学の研究で、ようやく指摘され始めた段階である。これから10年後に、あるいは20年後に、どのような健康被害が問題になるかは分からない。眼の疾患だけではすまない可能性の方が高い。

◇1月に実験をスタート

なお、前出の記事、「LEDを4ヶ月浴びた熱帯魚の背骨がS字型に変形、原因不明も重い事実」は実験に基づいた記事ではない。たまたまLEDを放射したところ熱帯魚に腫瘍や奇形が発生した事実を述べたに過ぎない。

しかし、来年の1月から、LEDのブルーライトを被曝した魚と被曝しなかった魚を比較する実験に着手する予定にしている。定期的にMEDIA KOKUSYOで報告したい

2014年12月23日 (火曜日)

日弁連から政治連盟を通じて山本一太議員らに政治献金、スラップの問題は棚上げ

総務省が公表した最新の政治資金収支報告書(2013年度分)によると、日弁連の政治団体・日本弁護士政治連盟から、依然として国会議員に政治献金が支出されていることが分かった。

支出先には、山本一太、世耕弘成、森まさこ議員らが含まれている。また、公明党の地方本部に対して献金が行われていることも分かった。

献金の目的は不明。

ちなみに現在、問題になっている高額訴訟の引き金を作ったひとりは、公明党の漆原良夫議員である。2002年5月、「赤ひげ」と題するブログで、次のように述べている。

 善良な市民が事実無根の報道で著しい人権侵害を受けているにもかかわらず、商業的な一部マスメディアは謝罪すらしていません。

  これには、民事裁判の損害賠償額が低い上、刑事裁判でも名誉毀損で実刑を受けた例は極めて少なく、抑止力として機能していない現状が一因としてあります。

 私は、懲罰的損害賠償制度を導入しなくとも現行法制度のままで、アメリカ並みの高額な損害賠償は可能であると指摘しました。これに対し、法務大臣は、「現行制度でも高額化可能」との認識を示しました。

当時は司法制度改革推進本部のトップに小泉首相を据えて、広義の構造改革=司法制度改革が始まったばかりの時期だった。それから10年が過ぎ、スラップが大きな問題になっている。訴訟ビジネスが横行している。スラップは、国会でも何の問題にもなっていない。

献金先の議員と政党は次の通りである。

◇献金先の議員と政党

藤田幸久(民主):5万円
北神圭朗(民主):5万円
世耕弘成(自民):10万円

溝手顕正(自民):5万円
衛藤晟一(自民):5万円
川上義博(民主):5万円

小川勝也(民主):10万円
鈴木寛(民主):10万円
米山隆一 (維新):10万円

林芳正(自民):10万円
いそざき陽輔(自民):5万円
松野信夫(民主):10万円

岡崎トミ子(民主):10万円
吉田はるみ(民主):5万円
大河原雅子(民主):10万円

島村宜伸(自民):10万円
古川俊治(自民):10万円
水野けんいち(みんな):10万円

谷ひろゆき(民主):5万円
山本一太(自民):10万円
辻泰弘(民主):10万円

宇田こうせい(減税日本):10万円
愛知治郎(自民):10万円
森まさこ(自民):10万円

公明党東京都本部:10万円
公明党埼玉県本部:10万円
公明党大阪府本部:5万円
公明党京都府本部:5万円
公明党神奈川県本部:10万円
公明党愛知県本部:10万円
公明党香川県本部:5万円

政治資金収支報告書PDF

2014年12月22日 (月曜日)

米国とキューバが国交回復へ、背景にラテンアメリカの激変と国際政治地図の更新

米国とキューバが国交回復へ向けて動き始めた。

これから両国が話し合いに入るわけだから、最終的にどのような形で関係が改善されるのかは分からないが、このような動きの背景には、国際政治の勢力図が大きく変化した事情がある。

オバマ大統領による人権重視の姿勢や人道主義が今回の決断を生んだのではない。ラテンアメリカ全体と米国の力関係が決定的に変わってきたことが根底にある。

周知のように米国は、1959年のキューバ革命の後、1961年からキューバとの国交を断絶した。経済封鎖も断行し、現在に至っている。また、CIAがカストロ主将の暗殺計画を巡らせるなど、キューバの左派政権を排除する動きを延々と続けてきた。

ところが今世紀に入るころから、米国の裏庭といわれてきたラテンアメリカで政治地図が塗り変わりはじめる。次に示すのは、現在の南アメリカ(スペイン語・ポルトガル圏)における各国政府の政治姿勢を色分けしたものである。赤表示が左派、あるいは中道左派の政権である。

コロンビア:フアン・マヌエル・サントス

ベネズエラ:ニコラス・マドゥロ

ペルー:オジャンタ・ウマラ

エクアドル:ラファエル・ コレア

チリ:ミチェル・バチェレ 

アルゼンチン:クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル 

ボリビア:フアン・エボ・モラレス・アイマ 

パラグアイ:オラシオ・マヌエル・カルテス・ハラ

ウルグアイ:ホセ・ムヒカ

ブラジル:ジルマ・ヴァナ・ルセフ

ラテンアメリカの中でも南米は、左傾化が典型的に現れている地域である。
赤で示した国々がキューバと親密な関係にあることは言うまでもない。特にベネズエラとキューバの間には強い連帯がある。

中米のニカラグアとエルサルバドルも左翼政権で、キューバとは極めて親密な関係にある。つまりラテンアメリカでは、キューバの孤立はほぼ解消しているのだ。

◇海外派兵と経済封鎖

前世紀まで米国はラテンアメリカに対して、海外派兵を繰り返してきた。あるいは1973年のチリの軍事クーデターに典型的に見られるように、CIAによるクーデターや軍部への支援などで、左翼政権転覆を企ててきた。

こうした軍事介入とセットになっていたのが経済面で孤立化をはかる政策だった。わたしは1985年に内戦中のニカラグアへ行ったことがあるが、この国も米国による経済封鎖に苦しんでいた。たとえば商店は、極端に物品が不足していた。隣国・エルサルバドルでは、どこでも販売されているコカコーラが、ニカラグアでは不足していて、空き瓶を持参しなくては売ってくれない。

さらに米国は、ニカラグアの隣国ホンジュラスを基地の国にかえて、「コントラ」と呼ばれる傭兵部隊を組織し、新政権の転覆を企てていた。FSLN(サンディニスタ民族解放戦線)が政権の座にいる限り、戦争と飢えはなくならないという暗黙のキャンペーンを繰り広げて、反政府勢力を広げていったのである。

その結果、FSLNは、1990年の大統領選で敗北して政権を失う。みずからが打ち立てた議会制民主主義のルールに従って、野に下ったのである。しかし、今世紀に入って本格化したラテンアメリカ全体の左傾化の中、2006年にFSLNは再び政権を奪還し、現在に至っている。

◇LAへの軍事介入の歴史

次に示すのは、第2次大戦後に米国がラテンアメリカに対して実施した主要な海外派兵、あるいはクーデターの一覧である。

■1954年 グアテマラ

■1961年 キューバ

■1964年 ブラジル

■1965年 ドミニカ共和国

■1971年 ボリビア

■1973年 チリ

■1979年 ニカラグア内戦

■1980年 エルサルバドル内戦

■1983年 グレナダ

■1989年 パナマ

なかば当たり前に行われていたラテンアメリカへの軍事介入が、今世紀になってからは公然と出来なくなっている。ラテンアメリカ諸国の連帯が強固になり、キューバの孤立もほぼ解消された。この地域全体が米国の裏庭ではなくなったのだ。

こうした状況の下でラテンアメリカに急接近しているのが、中国とロシアである。たとえば2014年の7月、中国の習近平主席がブラジル、アルゼンチン、ベネズエラ、キューバ、の4カ国を訪問している。

その際、ブラジルは中国との間で、ビジネス、科学、技術、防衛、教育、航空路線など、実に54分野にわたる戦略的提携を結んだ。

ロシアのプーチン大統領がウクライナ問題でEU諸国からの食料に対して輸入禁止措置を取った際に、新しい輸入元になったのもブラジルだった。

参考記事:安倍首相がトリニダード・トバゴへ乗り込んだ本当の理由

◇キューバに市場を求める米国

もともとソ連が崩壊して冷戦が終結したとき、米国が新市場を独占するのではないかとの見方が有力だった。しかし、世界はそういう方向へは進まなかった。米国は「世界の警察」にはなったが、経済は必ずしもそうはならなかった。

東ヨーロッパは、EU寄りになった。ロシアも上海協力機構などを通じて、米国よりも、むしろ中国に接近した。さらに世界の人口の大半を占める第3世界で民族自決の波が台頭してきた。その典型がラテンアメリカである。米国を中心とした世界は、ゆるやかに崩壊へ向かっているのである。

こうした状況の下で、米国がキューバに対する経済封鎖を続けるメリットがあまりなくなってきた。キューバに対する経済封鎖に、ラテンアメリカ諸国からの批判も強い。それを無視すると関係が悪くなる。かといって、それをかつてのように軍事介入でつぶすこともできなくなっている。

キューバの経済状況は、決してよくないが、経済封鎖が持続しても、将来的には改善していくことは間違いない。

これに対して米国はキューバに新市場を求めている。オバマ大統領の善意が、対キューバ政策の見直しに繋がっているのではない。

世界の政治地図が変化してきた現れである。

2014年12月20日 (土曜日)

新刊『ルポ 電磁波に苦しむ人々-携帯基地局の放射線』が発売

新刊、『ルポ 電磁波に苦しむ人々-携帯基地局の放射線』が発売になりました。

原発のガンマ線による人体影響は周知になっていますが、最近、同じ放射線の仲間であるマイクロ波(携帯電話の通信に使用)の危険性も否定できなくなってきました。本書は、携帯基地局の周辺で起きている健康被害や生態系の破壊を取材した本です。

また、なぜ、基地局問題が放置されているのかを、政治腐敗の観点から指摘しています。

【販売】すでに書店に配本されています。アマゾンでは25日から発売です。

  ■目次PDF

2014年12月19日 (金曜日)

裁判に圧倒的に強い読売新聞、最高裁も読売裁判の関連情報開示に配慮

読売ジャイアンツが、同球団の元代表・清武英利氏(64)に対して損害賠償などを求めた裁判の判決が、18日、東京地裁であった。大竹昭彦裁判長は、清武氏に対して160万円の賠償を命じた。清武氏の反訴は棄却した。

判決を読んでいないので、論評は避けるが、読売がらみの裁判には、ある著しい特徴がある。読売の勝訴率が圧倒的に高いことである。

読売弁護団には、護憲派の喜田村洋一・自由人権協会代表理事ら、有能な弁護士が含まれていることも、勝率が高いひとつの要因だと思われるが、社会通念からして不自然な判決があることも否定できない。

その典型は、読売新聞販売店(YC)が2001年7月に、地位保全を求めて起こした裁判(仮処分申立て、後に本訴)だった。この裁判は、2007年12月に、YC側の勝訴判決が最高裁で確定した。ぞくに「真村裁判」と呼ばれる訴訟である。

判決の中で、はじめて読売の「押し紙」が認定されたこともあって関心を集めた。

ところが判決確定から半年後に、読売が再びYCに対して改廃を通告し、一方的に新聞の供給を止めた。その結果、YCの店主は、再び裁判を起こしたのである。それ以外に抵抗する方法がなかったのだ。これが第2次真村裁判である。

しかし、YC店主も弁護団も、勝訴の自信をみせていた。と、いうのも前訴で最高裁が店主の地位を保全していたからだ。実際、仮処分を申し立てたところ、すんなりと地位が保全された。仮処分の2審、3審、4審(特別抗告)も店主の勝ちだった。

ところが仮処分の審理と並行して進めていた本訴では、店主が全敗したのである。このうち控訴審(福岡高裁)で店主を敗訴させた裁判官は、なんと仮処分の2審で、店主を勝訴させた木村元昭氏裁判官だった。

木村裁判官は、仮処分の2審で店主を勝訴させた後、那覇地裁に異動になった。ところが第2次真村裁判が始まると、福岡高裁へ異動になり、第2次真村裁判を担当したのである。そして店主を敗訴させた。

わたしの手元に木村氏が書いた2つの判決があるが、読み比べてみると、同じ人物が書いたとは思えない。(拙著『新聞の危機と偽装部数』)

◇最高裁における読売裁判勝敗表

次のPDF資料は、最高裁判所に上告(あるいは上告受理申し立て)された裁判のうち新聞社が上告人、あるいは被上告人になった裁判の勝敗表である。このうち赤点で示したのが、読売関連の裁判である。

これを見ると、読売を相手に裁判をしても、勝ち目がないことが分かる。表示した資料の中で、唯一の例外は、①である。読売が上告(受理申し立て)を行ったが、「不受理」になり敗訴が決定している。

②は、上告人も被上告人も黒塗りで隠してあるが、実は上告人が読売で、被上告人がわたし「黒薮哲哉」である。こうした情報公開の仕方そのものが尋常ではない。なぜ、最高裁が読売に配慮するのか分からない。

最高裁における勝敗表PDF

この裁判は、MEDIA KOKUSYO(当時は、新聞販売黒書)の記事に対して、読売と3人の社員が、2230万円の金を支払うように求めて、2008年に起こしたものである。読売の代理人は、喜田村洋一・自由人権代表理事だった。

地裁と高裁は、わたしが勝訴した。これに対して、読売は上告受理申し立てを行った。そして最高裁は、PDF資料にあるように、高裁判決を差し戻す判決を下したのである。これを受けて東京高裁の加藤新太郎裁判長は、わたしに対して110万円の金を払うように命じたのである。

ちなみに加藤氏は、少なくとも2度、読売新聞に登場している。

◇想像力が欠落

わたしは数々の裁判を取材してきたが、裁判官には、想像力に乏しい人が多い。全員ではないが、想像力が欠落している人が多い。

自分が下す判決が、裁判の原告、あるいは原告の人生をどのように変えてしまうのか、想像できないのだ。わたしは判決により、離散した家族をいくつも知っている。人生が無茶苦茶になった人もいる。

受験を柱とした日本の学校教育は、想像力のない人間を増やしている。自分が書く判決の先に、被告や原告のどのような生活が待ち受けているのかが見えていないのではないだろうか。

2014年12月18日 (木曜日)

「最高裁をただす市民の会」が小沢検審の架空議決疑惑で、会計検査院に調査を要請

小沢一郎議員(当時は民主党)に対する検察審査会(以下、小沢検審)による起訴相当議決(2010年9月14日)が、最高裁事務総局による架空議決だったのではないかとの策略疑惑が浮上して約4年になる。

この問題は、当初、週刊誌が盛んに報じていたので、記憶している読者も多いと思うが、実は現在も調査は続いている。わたしも会員になっている「最高裁をただす市民の会」(志岐武彦代表)は、9日、会計監査院に対して、調査を求める要望書を提出した。調査項目は、以下の2点。

①小沢検審には、本当に審査員はいたか?

②経理書類の再検証。

「市民の会」は、小沢検審が架空であったと推論するに十分な裏付けを入手している。そのなかで、経理上のさまざまな疑惑も浮上している。

なぜ、経理疑惑なのか?
架空議決を行うには、審査員も架空にしなければならない。しかし、帳簿上は、架空の審査員に対しても、旅費や日当を支給する必要が生じる。その結果、架空審査員には、必然的に不正経理が連動してしまうのだ。

◇事件の背景

発端は、小沢一郎氏が2010年に東京第5検察審査会(以下、第5検審)の議決により、強制起訴に追い込まれ、最終的には無罪になった件である。メディアでも大きく報道され、喜びを露呈した小沢氏の映像はわれわれの記憶に新しい。

ところが第5検審の起訴議決には、当初から不可解な点があった。起訴議決を行った日が、小沢氏が立候補していた民主党代表選の投票日と重複したのだ。故意なのか、偶然なのか、いずれにしても不自然さを払拭できない。

そのために、何者かが「小沢排除」をたくらみ、なんらかの裏工作を行ったのではないか、という噂が広がったのだ。特に小沢氏の支持者の間で、小沢検審に対する漠然とした不信感が広がった。

ちなみに検察審査会は、「検察」という名前を付しているが、検察の組織ではなく、文字通り「検察」を「審査」する最高裁事務総局の機関である。 従って小沢氏の支援者らが抱いた不信感は、最高裁事務総局に向けられたものだった。

調査の先頭に立ったのは、志岐武彦氏、石川克子氏(市民オンブズマンいばらぎ)、それに森裕子議員だった。が、見解の相違から、森氏は志岐・石川の両氏と決別した。しかし、ある時期まで協力関係を維持して、3氏が調査の成果を上げたことは紛れのない事実である。

◇どのような疑惑があるのか?

調査では、次のような疑惑が浮上した。

有権者から審査員を選ぶPC上のくじ引きソフトが、デタラメだった。検察審査会の事務局が手動で審査員候補を入力したり、削除できる仕組みになっていた。しかも、PC上のくじ引きが終わった後、データの跡を残さないシステムになっていた。

架空審査員の設定を可能にする仕組みが構築されていたのである。これは森氏が議員の職権を使って調査した結果だ。森氏の『検察の罠』に詳しい。

検察審査会が議決を下す前には、担当検察官が、みずからの意見を述べる機会を与えるルールになっている。(検察審査会法41条)しかし、担当検察官の出張記録を情報公開制度を利用して入手し、検証したが議決前に担当検察官が出張した記録は見当たらなかった。

情報公開制度を利用して審査員の旅費支払いの実態などを調べたところ、小沢検審では、検審当日ではなく、後日にまとめて経理処理が行われていたケースが複数あることが分かった。これについて経理を担当した東京地裁を追及したところ、「資金がショートしたから」と返答している。常識的にはあり得ないことである。

 本当に審査員がいれば、できないはずの経理処理である。

2012年7月30日、森議員は国会で、小沢検審には本当に審査員が存在したのかどうかを問うた。森議員の質問に応じて、会計検査院が調査に着手した。

会計検査院は、全国11の検察審査会の会議に「平成二十三年(2011年)5月から7月までに出頭したとして旅費等が支払われている189人に調書を直送」し、旅費の受け取りの有無を確認した。

1年後に結果が出た。回答は146人からあった。これを根拠に会計検査院は、審査員は存在していたと結論づけたのである。

ところが後に調査上の重大、かつ滑稽(こっけい)なミスが発覚する。確かに会計検査院は、調査を実施したが、小沢検審の時期は調査対象から外していたのである。この事実を石川克子氏が、資料の精読で発見した。

小沢検審が疑惑の対象になり、小沢検審についての調査を求められていながら、肝心の小沢検審は除外して調査し、「問題ない」としたのである。

なお、疑惑はほかにもある。次のPDFが疑惑をまとめたのもである。

 調査報告「小沢検察審査会」架空議決の8つの根拠

◇鳩山検審でも裏金疑惑

今回、「市民の会」が提出した要望書は、上記「③」と「④」の調査を求めたものである。全文は次の通りである。

会計審査員に対する要望書の全文PDF

なお、鳩山検審でも裏金疑惑を推論するに十分な証拠が見つかっている。これについても、調査を求める要望書が提出された。

参考記事:鳩山検審に架空審査会の疑惑、いわくつきの請求書で浮上した裏金づくりの舞台裏、志岐武彦氏が新事実を指摘

 

2014年12月17日 (水曜日)

衆議院選挙の投票結果で明確になった自民VS共産の対決構造の浮上、新自由主義VS反新自由主義

第47回衆議院選の投票結果は、日本の政治のゆくえを予測する顕著な特徴を示した。自民党と共産党の対立構造が明確になったのである。

次に示すのは、過去4回の総選挙で記録された比例区における自民党と共産党の得票数と得票率の比較である。比較対象として比例区を採用したのは、小選挙区制の下での投票は、「なるべく当選の可能性がある候補者へ」という選択肢をする人が多く、支持政党を調査する上では、適切ではないからだ。

比例区における得票数と得票率が、より正確に国民の支持政党の傾向を示している。

【自民党】
2009年衆議院選 1881万 (26.7%)自民→民主へ政権交代
2012年衆議院選  1662万 (27.6%)民主→自民へ政権交代
2013年参議院選 1846万 (34.7%)
2014年衆議院選  1765万 (33.1%)

【共産党】
2009年衆議院選 494万(7.03%)
2012年衆議院選  369万(6.1%)
2013年参議院選 515万(9.9%)
2014年衆議院選  606万(11.4%)

数字を見ると、2013年の参院選を境に、自民党と共産党が得票率をのばしてることが分かる。両党とも支持者を増やしている客観的な事実が確認できる。自民党が議席を維持してきた背景には、小選挙区制のメリットもあるが、それだけではなく、実質的に支持層を増やしているのである。

今回、2014年の衆議院選は、投票率が50.9%だったこともあって、得票数に関しては、自民党は2013年の参議院選よりも81万票減らしている。これに対して共産党は、低投票率の下でも、87万票増やしている。共産党が台頭してきた事実が数字から読み取れる。

◇今後すすむ2極化、自民VS共産

なぜ、このような傾向が現れてきたのか?
答えは簡単でアベノミックスを進めることを希望するのであれば、自民党へ、逆にアベノミックスの中止を希望するのであれば、共産党へという判断基準が広がったことである。

維新の党は、11.94%(2013年)から15.72%(2014年)へと得票率を増やしているが、これはアベノミックスに対する批判票には違いないが、「右からの批判」である。「金の無駄づかいはやめ、もっと急進的に構造改革=新自由主義を進めてほしい」という人々が投じた票である。

民主党も、得票率を増やしているが、これは自民党の対抗馬としての期待のあらわれだと思われる。もともと民主党は、構造改革=新自由主義の推進派で、左派よりも、右派に近い。しかし、中道左派と勘違いしている人がかなり多い。

こんなふうにみていくと、アベノミックスを進めるのか、それとも止めるのか、あるいは誰がアベノミックスを推進して、誰がアベノミックスに抵抗するのかの分岐点が、今回の選挙で明確になった。

◇ラテンアメリカにおける新自由主義の失敗

ラテンアメリカでは、1980年代に世界銀行と国際通貨基金が債務返済を口実として、新自由主義=構造改革を押し付けた歴史がある。が、完全に失敗。1990年代の終わりから、ベネズエラを筆頭に、次々と左派政権が誕生した。日本も同じような経過をたどる可能性がある。

そもそもアベノミックスとは、何か?端的に言えば、これは新自由主義=構造改革のことである。大企業の負担を軽減して、国際競争力を高めることを主眼としており、そのために①法人税の引き下げ、②消費税の引き上げ、③公共事業の縮小、④福祉・医療の切り捨てと地方への丸投げ、⑤「役所」のスリム化、⑥有望産業の育成、⑥教育のスリム化とエリートの養成、⑦司法制度を国際基準にする、などの政策が行われる。

これらの政策をドラスチックに進めると、国民が「痛み」を伴う。そこで公共事業などで税金をバラマキながら、①~⑦を達成していこうというのがアベノミックスである。

急進的な新自由主義=構造改革を断行したのは、改めていうまでもなく、小泉内閣である。小泉構造改革の不満が、民主党政権を生み、その民主党政権が新自由主義=構造改革へ回帰し批判の的になった。政権に復帰した自民党が、次に打ち出したのがアベノミックスという変形した新自由主義=構造改革である。

が、本質的な部分はなにも変わらない。