鳩山検審に裏金づくりの疑惑、同じ請求書が2枚あったことが情報公開資料の精査で判明
2010年9月14日に検察審査会(以下、小沢検審)が小沢一郎議員に対して下した起訴相当議決は、最高裁事務総局による架空議決だったのではないかという疑惑があることはすでに周知となっている。
しかし、同じ時期に平行しておこなわれていた鳩山由紀夫元首相に対する検察審査会(鳩山検審)に関する疑惑についてはほとんど知られていない。
鳩山検審疑惑が浮上したのは、今年の8月だった。『最高裁の罠』の著者・志岐武彦氏が疑惑の裏付けを解明したのである。
先日、わたしはMEDIA KOKUSYOに「『最高裁をただす市民の会』(志岐武彦代表)が小沢検審の架空議決疑惑で、会計検査院に調査を要請」と題する記事を書いた。
「最高裁をただす市民の会」が、会計監査院に対して調査を依頼したという内容だ。が、この記事では、読者の混乱を避けるために、あえて書かなかったことがある。それが鳩山検審疑惑である。
実は、鳩山検審疑惑についても、「市民の会」は、同じ日に会計検査院に対して調査を要請する文書を提出した。
【注】検察審査会というのは、検察の組織ではなくて、検察による不起訴事件を検証して、被疑者を法廷に立たせる法的権限を持っている最高裁事務総局の組織である。審査員は、有権者から抽選で選ばれる。
鳩山検審疑惑とは、最高裁事務総局、あるいは裁判所にかかっている疑惑なのだ。その疑惑とは、ずばり裏金づくりである。にわかに信じがたい事であるが、「市民の会」は、裁判所による裏金づくりを示す決定的な証拠を握ったのである。
ちなみに鳩山事件とは、鳩山元首相が母親から資産譲渡を受け、秘書がこれを支援者120人からの献金として政治資金収支報告書に記載した事件である。鳩山氏は不起訴になったが、これを不服とした市民により、東京検察審査会への申し立てがあり、鳩山検審が開かれたのである。その鳩山検審で、裏金づくりが行われた決定的な裏付け証拠があるのだ。
◇裏金づくりの方法
この疑惑を理解するために、読者はまず、自分が検察審査会の事務局員という立場で、裏金づくりをするには、どのような方法を取るかを、たとえば次のような設定で、考えてほしい。
【設定】
1、検察審査会の審査員名簿に、Aさん、Bさん2人の架空審査員を加える。
2、審査会を開催するたびに、Aさん、Bさんの日当と交通費を「裏口座」に振り込む。
これはもっともオーソドックスな裏金づくりの方法である。
【請求手続き】
しかし、検察審査会の事務局に日当と旅費を請求する場合に不可欠になるのは、請求書である。経理処理をする上で、架空人物であるAさん、Bさんが作成した請求書が不可欠になる。
ところがAさん、Bさんは架空人物であるから、検察審査会の事務局員が架空の請求書を作成せざるを得ない。その際、たとえばBさんの請求書に、間違ってAさんに関する記載事項(シリアルナンバー、身分)を記載すれば、同じ内容のAさんの請求書が2枚できてしまう。
◇裏金づくりの足跡
Aさんの請求書が2枚存在していることに気づいた時点で、1枚を破棄して、最初からBさんの請求書を作成しなおしていれば、内部告発がない限り、裏金づくりは発覚しない。が、鳩山検審のケースでは、同じ審査員(A)の請求書が2枚あることに気づいた職員が、請求書上で訂正作業を行ったようだ。そして、別の人物(B)の請求書としてお金を支出したのである。
その足跡が情報公開資料を精査した結果、明らかになったのだ。
Bさんが実在する人物であれば、自分で作成する請求書の記入事項(シリアルナンバー、身分など)を間違うはずがない。たとえば間違ったとしても、最初から請求書をつくりなおすだろう。後から職員がとんでもない間違いに気づいたから、請求書上で訂正作業をせざるを得なかったのだ。
次に示すのは、鳩山検審の関係者による訂正作業の跡を示す書面である。
繰り返しになるが、本人が請求書を作成して提出していれば、自分に該当しない身分やシリアルナンバーを記入するはずがない。職員が作成したから間違ったのである。
以上の点を踏まえて、11月19日付けの次の記事を読むと、鳩山検審疑惑とは何かが見えてくる。
鳩山検審に架空審査会の疑惑、いわくつきの請求書で浮上した裏金づくりの舞台裏、志岐武彦氏が新事実を指摘
ちなみに東京地裁の事務局は、この問題についての説明を延々と引き延ばしている。
写真出典:ウィキペディア