1. 衆議院選挙の投票結果で明確になった自民VS共産の対決構造の浮上、新自由主義VS反新自由主義

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2014年12月17日 (水曜日)

衆議院選挙の投票結果で明確になった自民VS共産の対決構造の浮上、新自由主義VS反新自由主義

第47回衆議院選の投票結果は、日本の政治のゆくえを予測する顕著な特徴を示した。自民党と共産党の対立構造が明確になったのである。

次に示すのは、過去4回の総選挙で記録された比例区における自民党と共産党の得票数と得票率の比較である。比較対象として比例区を採用したのは、小選挙区制の下での投票は、「なるべく当選の可能性がある候補者へ」という選択肢をする人が多く、支持政党を調査する上では、適切ではないからだ。

比例区における得票数と得票率が、より正確に国民の支持政党の傾向を示している。

【自民党】
2009年衆議院選 1881万 (26.7%)自民→民主へ政権交代
2012年衆議院選  1662万 (27.6%)民主→自民へ政権交代
2013年参議院選 1846万 (34.7%)
2014年衆議院選  1765万 (33.1%)

【共産党】
2009年衆議院選 494万(7.03%)
2012年衆議院選  369万(6.1%)
2013年参議院選 515万(9.9%)
2014年衆議院選  606万(11.4%)

数字を見ると、2013年の参院選を境に、自民党と共産党が得票率をのばしてることが分かる。両党とも支持者を増やしている客観的な事実が確認できる。自民党が議席を維持してきた背景には、小選挙区制のメリットもあるが、それだけではなく、実質的に支持層を増やしているのである。

今回、2014年の衆議院選は、投票率が50.9%だったこともあって、得票数に関しては、自民党は2013年の参議院選よりも81万票減らしている。これに対して共産党は、低投票率の下でも、87万票増やしている。共産党が台頭してきた事実が数字から読み取れる。

◇今後すすむ2極化、自民VS共産

なぜ、このような傾向が現れてきたのか?
答えは簡単でアベノミックスを進めることを希望するのであれば、自民党へ、逆にアベノミックスの中止を希望するのであれば、共産党へという判断基準が広がったことである。

維新の党は、11.94%(2013年)から15.72%(2014年)へと得票率を増やしているが、これはアベノミックスに対する批判票には違いないが、「右からの批判」である。「金の無駄づかいはやめ、もっと急進的に構造改革=新自由主義を進めてほしい」という人々が投じた票である。

民主党も、得票率を増やしているが、これは自民党の対抗馬としての期待のあらわれだと思われる。もともと民主党は、構造改革=新自由主義の推進派で、左派よりも、右派に近い。しかし、中道左派と勘違いしている人がかなり多い。

こんなふうにみていくと、アベノミックスを進めるのか、それとも止めるのか、あるいは誰がアベノミックスを推進して、誰がアベノミックスに抵抗するのかの分岐点が、今回の選挙で明確になった。

◇ラテンアメリカにおける新自由主義の失敗

ラテンアメリカでは、1980年代に世界銀行と国際通貨基金が債務返済を口実として、新自由主義=構造改革を押し付けた歴史がある。が、完全に失敗。1990年代の終わりから、ベネズエラを筆頭に、次々と左派政権が誕生した。日本も同じような経過をたどる可能性がある。

そもそもアベノミックスとは、何か?端的に言えば、これは新自由主義=構造改革のことである。大企業の負担を軽減して、国際競争力を高めることを主眼としており、そのために①法人税の引き下げ、②消費税の引き上げ、③公共事業の縮小、④福祉・医療の切り捨てと地方への丸投げ、⑤「役所」のスリム化、⑥有望産業の育成、⑥教育のスリム化とエリートの養成、⑦司法制度を国際基準にする、などの政策が行われる。

これらの政策をドラスチックに進めると、国民が「痛み」を伴う。そこで公共事業などで税金をバラマキながら、①~⑦を達成していこうというのがアベノミックスである。

急進的な新自由主義=構造改革を断行したのは、改めていうまでもなく、小泉内閣である。小泉構造改革の不満が、民主党政権を生み、その民主党政権が新自由主義=構造改革へ回帰し批判の的になった。政権に復帰した自民党が、次に打ち出したのがアベノミックスという変形した新自由主義=構造改革である。

が、本質的な部分はなにも変わらない。