1. 裁判に圧倒的に強い読売新聞、最高裁も読売裁判の関連情報開示に配慮

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2014年12月19日 (金曜日)

裁判に圧倒的に強い読売新聞、最高裁も読売裁判の関連情報開示に配慮

読売ジャイアンツが、同球団の元代表・清武英利氏(64)に対して損害賠償などを求めた裁判の判決が、18日、東京地裁であった。大竹昭彦裁判長は、清武氏に対して160万円の賠償を命じた。清武氏の反訴は棄却した。

判決を読んでいないので、論評は避けるが、読売がらみの裁判には、ある著しい特徴がある。読売の勝訴率が圧倒的に高いことである。

読売弁護団には、護憲派の喜田村洋一・自由人権協会代表理事ら、有能な弁護士が含まれていることも、勝率が高いひとつの要因だと思われるが、社会通念からして不自然な判決があることも否定できない。

その典型は、読売新聞販売店(YC)が2001年7月に、地位保全を求めて起こした裁判(仮処分申立て、後に本訴)だった。この裁判は、2007年12月に、YC側の勝訴判決が最高裁で確定した。ぞくに「真村裁判」と呼ばれる訴訟である。

判決の中で、はじめて読売の「押し紙」が認定されたこともあって関心を集めた。

ところが判決確定から半年後に、読売が再びYCに対して改廃を通告し、一方的に新聞の供給を止めた。その結果、YCの店主は、再び裁判を起こしたのである。それ以外に抵抗する方法がなかったのだ。これが第2次真村裁判である。

しかし、YC店主も弁護団も、勝訴の自信をみせていた。と、いうのも前訴で最高裁が店主の地位を保全していたからだ。実際、仮処分を申し立てたところ、すんなりと地位が保全された。仮処分の2審、3審、4審(特別抗告)も店主の勝ちだった。

ところが仮処分の審理と並行して進めていた本訴では、店主が全敗したのである。このうち控訴審(福岡高裁)で店主を敗訴させた裁判官は、なんと仮処分の2審で、店主を勝訴させた木村元昭氏裁判官だった。

木村裁判官は、仮処分の2審で店主を勝訴させた後、那覇地裁に異動になった。ところが第2次真村裁判が始まると、福岡高裁へ異動になり、第2次真村裁判を担当したのである。そして店主を敗訴させた。

わたしの手元に木村氏が書いた2つの判決があるが、読み比べてみると、同じ人物が書いたとは思えない。(拙著『新聞の危機と偽装部数』)

◇最高裁における読売裁判勝敗表

次のPDF資料は、最高裁判所に上告(あるいは上告受理申し立て)された裁判のうち新聞社が上告人、あるいは被上告人になった裁判の勝敗表である。このうち赤点で示したのが、読売関連の裁判である。

これを見ると、読売を相手に裁判をしても、勝ち目がないことが分かる。表示した資料の中で、唯一の例外は、①である。読売が上告(受理申し立て)を行ったが、「不受理」になり敗訴が決定している。

②は、上告人も被上告人も黒塗りで隠してあるが、実は上告人が読売で、被上告人がわたし「黒薮哲哉」である。こうした情報公開の仕方そのものが尋常ではない。なぜ、最高裁が読売に配慮するのか分からない。

最高裁における勝敗表PDF

この裁判は、MEDIA KOKUSYO(当時は、新聞販売黒書)の記事に対して、読売と3人の社員が、2230万円の金を支払うように求めて、2008年に起こしたものである。読売の代理人は、喜田村洋一・自由人権代表理事だった。

地裁と高裁は、わたしが勝訴した。これに対して、読売は上告受理申し立てを行った。そして最高裁は、PDF資料にあるように、高裁判決を差し戻す判決を下したのである。これを受けて東京高裁の加藤新太郎裁判長は、わたしに対して110万円の金を払うように命じたのである。

ちなみに加藤氏は、少なくとも2度、読売新聞に登場している。

◇想像力が欠落

わたしは数々の裁判を取材してきたが、裁判官には、想像力に乏しい人が多い。全員ではないが、想像力が欠落している人が多い。

自分が下す判決が、裁判の原告、あるいは原告の人生をどのように変えてしまうのか、想像できないのだ。わたしは判決により、離散した家族をいくつも知っている。人生が無茶苦茶になった人もいる。

受験を柱とした日本の学校教育は、想像力のない人間を増やしている。自分が書く判決の先に、被告や原告のどのような生活が待ち受けているのかが見えていないのではないだろうか。