1. 「押し紙」の経理処理は粉飾決算に該当しないのか? 古くて新しい疑問

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2015年01月19日 (月曜日)

「押し紙」の経理処理は粉飾決算に該当しないのか? 古くて新しい疑問

意外に知られていないが「押し紙」政策には、粉飾決算が連動している疑惑がかけられてきた。しかし、国税局はこれまで、それを問題にしたことがない。15年ほど前、わたしはこれについて販売店主に尋ねたところ、

「トラブルが起きたときは、国税の●●さんに連絡を取るように、発行本社から指示を受けています」

と、いう返事が返ってきた。国税局は、「押し紙」が誘発する経理問題をごまかして来た可能性がある。

◇「あれは『押し紙』ではなく、積み紙です」

「押し紙」とは、新聞社が販売店に対して搬入する新聞のうち、過剰になって配達されないまま廃棄される新聞のことである。たとえば、実配部数(実際に配っている新聞の部数)が2000部しかないのに、3000部を搬入すると1000部が過剰になる。この1000部が「押し紙」である。

しかし、帳簿上では「押し紙」部数は、カモフラージュされる。具体的には、実配部数(実際に配達した新聞)、見本紙、さらには予備紙として経理処理される。

従って、上記の例で言えば、新聞社が新聞販売店に搬入した3000部は、すべて販売店が自分で注文した新聞ということになる。当然、3000部に対する卸代金を支払う。

それゆえに新聞社は、新聞の押し売りは絶対していないと開き直ってきたのである。過剰になっている新聞の存在を第3者から指摘されると、

「あれは『押し紙』ではなく、積み紙です」

と、詭弁(きべん)を弄する。販売店が自分で積み上げている新聞だという主張である。

裁判所もこうした詭弁を見抜けず、新聞社の「押し紙」政策にお墨付きを与えてきた。「押し紙」は独禁法に抵触するから、新聞社は絶対に「押し紙」政策の存在を認めるわけにはいかない。

そこで押し売りではないことを示す「アリバイ」を作るために、経理上のトリックが使われる。

◇経理処理のトリック

帳簿上では、販売店に搬入する新聞はすべて販売店が注文したことになっているわけだから、当然、税の申告に際しても、それを前提としたものになる。「押し紙」が膨張させる事業税も消費税も支払うことになる。

さて、「押し紙」部数を経理処理する上で、もっとも難儀するのは実配部数として計上する新聞である。と、いうのも読者がいないことが発覚すると、粉飾決算になるからだ。かと言って、見本紙や予備紙を500部も1000部も計上するのは不自然だ。

そこで登場するのが、帳簿上(パソコン)に架空の配達地区を設定して、実配部数として処理する手口である。配達地区を設定する処理方法は、読売とYCが争った第一次真村訴訟の中で明らかになった。福岡高裁判決は、次のように架空配達区の存在を認定している。
平成11年5月ころからは、広川地区の28区域のうち26区を架空読者を計上するために利用し始めた。(甲131、原審での一審原告真村本人)

  一審原告真村は、平成13年6月当時、一審被告に対しては、定数(搬入部数)1660部、実配数1651部と報告していたが、実際には26区に132世帯の架空読者を計上していたので、実際の配達部数は1519部を超えないことになる。

YC(読売新聞販売店)の真村店主は、26区と呼ばれる架空地区を設定して、そこに架空読者を計上して、経理処理をしていたのである。

これが広く採用されている「押し紙」の経理処理の手口である。

◇「押し紙」を批判した福岡高裁判決

このような「不正」は、誰に責任があるのだろうか。販売店なのか、それとも新聞発行本社なのだろうか?

第1次真村裁判では、新聞発行本社である読売の責任が認定された。

ちなみに第1次真村裁判というのは、YC広川の真村店主が読売による改廃通告に対して、地位保全を求めた裁判である。2002年の提訴。地裁、高裁、最高裁と、販売店が勝訴したまれな例である。

読売が改廃の口実としたのが、経理上の汚点だった。虚偽を逆手に取って、それを改廃理由として持ち出してきたのである。しかし、裁判所は、こうした虚偽の背景には、読売の販売政策があることを認定したのである。

新聞に対する軽減税率の是非を考える際に、考慮すべき留意点ではないだろうか。

ちなみに真村氏は、2007年12月に最高裁で勝訴が確定した7ケ月後に、読売から再び改廃通告を受け、8月末に強制的に販売店をつぶされている。その結果、第2次真村訴訟がはじまり、現在に至っている。

読売は、何の後ろ盾もないひとりの元店主を10年以上も法廷に縛り付けているのである。それは、高校生ボクサーを世界チャンピョンが容赦なく打ちのめしている光景を連想する。審判もそれを止めようとはしない。

この裁判で読売側代理人として「大活躍」してきたのが、喜田村洋一自由人権協会代表理事である。

■第一次真村裁判の福岡高裁判決