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2015年04月23日 (木曜日)

DHCの吉田嘉明会長が澤藤統一郎弁護士を訴えた裁判の第7回口頭弁論、折本和司弁護士と宋文洲氏に対する2件の請求はすでに棄却

化粧品会社DHCの吉田嘉明会長が、 澤藤統一郎弁護士に対して6000万円の支払いを求めた名誉毀損裁判の第7回口頭弁論が、22日に東京地裁で開かれた。裁判官の交代があり、次回期日に澤藤弁護士がみずからの陳述書を要約して述べることなどを取り決めた。まもなく結審するものと思われる。

  8億円の献金問題を取り上げた記事をめぐる論評に対して吉田会長が起こした一連の裁判では、すでに2件の判決が下されている。いずれも吉田会長の訴えは棄却された。

 このうちの1件は、折本和司弁護士に対する請求である。もう1件は、事業家の宋文洲氏に対する請求である。

  法廷後に弁護士会館の会議室でジャーナリスト・烏賀陽弘道氏の講演があった。烏賀陽氏は、オリコンから5000万円の訴訟を起こされたのを機に、スラップの実態について調査してきた。米国における反スラップ法の実態にも詳しく、たとえば米国では、28州でスラップを禁止する法律が存在するという。

 スラップが認定されると、相手方の弁護士費用などの負担を義務づけられるなどの措置が課せられる。

 日本でスラップの概念が生まれてきたのは、最近のことである。オリコン訴訟を機に、烏賀陽氏が日本に紹介したと言っても過言ではない。

 スラップ対策としては、一般的には「反訴」、あるいは判決が確定した後に損害賠償を求める裁判提起などがある。澤藤弁護士の「戦後処理」にも注目が集まりそうだ。

  次回の口頭弁論は、7月1日(水)15時、631号法廷。

2015年04月23日 (木曜日)

2015年04月22日 (水曜日)

危険な安保関連法案、背景に多国籍企業の防衛部隊としての軍隊という考え方

  「国際平和支援法」の中身について、政府自民党と公明党が合意した。これは国際平和を口実とした他国の軍隊の後方支援を随時可能にするための法律である。両党は、同法の運用にあたっては、国会の事前承認を得ることで合意に達した。

  安保関連法案が今国会のテーマとなっている。意外に認識されていないが、これは特定秘密保護法の施行や憲法9条の解釈変更に見られる日本の軍事大国化の文脈の中で浮上してきた流れである。

 その背景には、グローバリゼーションに伴う「世界の警察」の役割分担を日本も引き受けざるを得ない状況が生まれている事情がある。特に米国による日本の軍事大国化の要求は露骨だ。日本の財界も、軍事大国化を容認している。

 「国際平和支援法」が、「平和活動」とかけ離れていることは、これまでの多国籍軍の「実績」を見れば明らかになる。活動の実態は、多国籍企業の権益が犯されかねない地域で、治安維持や平和を口実に軍事作戦を展開するというものである。

◆ラテンアメリカへの軍事介入

 安保関連法案に関して日本のメディアが報じないのは、軍事行動と多国籍企業の関係である。両者の関係を暴露することはタブーであるが、両者の関係が典型的に表れて、隠しようがない地域がある。ラテンアメリカである。主要な軍事介入だけでも次のようなものがある。

1954年 グアテマラの軍事クーデター

1959年 キューバ革命後のCIA等による介入

1965年 ドミニカ共和国への介入

1973年  チリの軍事クーデター

1979年 ニカラグアに対する介入

1980年 エルサルバドルに対する介入

1983年 グラナダに対する介入

 これらの軍事介入の背景に、多国籍企業の権益があったことは言うまでもない。たとえば1954年のCIAによるグアテマラに対する介入の背景には、米国のフルーツ会社の権益がからんでいた。

 当時のグアテマラ政府は、農地改革に着手していた。左翼政権ではなかったが、民主的な手続きに沿って「改革」を進めていた。「グアテマラの春」と呼ばれた時代である。

 ところがグアテマラ政府が米国のUFC(ユナイテッド・フルーツ・カンパニー)の土地に手を付けたとたんに、CIAのクーデターが勃発した。以後、グアテマラは1990年代まで実質的な軍事政権下におかれた。

◆海外派兵の本当の目的は、多国籍企業の権益

 日本の自衛隊を海外へ派兵する動きが始まったのは、1990年代である。ソ連や東側諸国の社会主義が崩壊して、巨大市場が世界に登場した時期である。同時にビジネスの国際化が本格化して、軍事力で多国籍企業の権益を守る体制の構築が始まった。

 自衛隊を海外へ派兵する際に口実になってきたのは、「国際貢献」「平和維持活動」であった。しかし、海外派兵の本当の目的は、多国籍企業の権益を守ることである。

 グローバリゼーションの中で、特定秘密保護法が施行されたり、憲法9条の骨抜きをめざす動きが浮上しているゆえんにほかならない。安保関連法案も、こうした文脈の中で考えなければならない。

2015年04月16日 (木曜日)

「志岐武彦VS八木啓代」裁判、争点外のもうひとつの着目点「ツイッター表現に見る精神障害に対する偏見の有無」

旭化成の元役員で『最高裁の罠』(K&Kプレス)の著者・志岐武彦氏が、多量のツイッター発信により名誉を毀損されたとして、歌手で作家の八木啓代氏に対して200万円の損害賠償を求めた事件の口頭弁論が、4月15日、東京地裁で開かれた。

裁判長の交代が公式に告げられたあと、提出書面の確認、次回までに準備する書面の確認が行われた。次回の期日5月27日に本人尋問の日程が決定される見込み。

この裁判は、本人訴訟なので、裁判長から志岐氏と八木氏に対する尋問が行われる予定。また、反対尋問では、被告と原告が「直接対決」することになる。

◇「統失じゃあないですか!」

この裁判の注目点は、ツイッターによる言論を裁判所がどう判断するのかという点である。志岐氏が名誉を毀損されたとしているツイッターは、200件にもなる。その一部を紹介しよう。

『とにかく明らかなのは、志岐さんには、誰もかけていない電話が聞こえ、会ってもいないのに会った記憶が作られ、そこでは、志岐さんに都合の良い事実が暴露されるらしいことである。早急に病院に行かれた方がよろしいかと思う』

『ちなみに、どうせまともな人は信じないので改めて書く必要もないと思いますが、志岐氏が昨日付のブログに書いていることは、すべて妄想です。かなり症状が進んでいるなと思います。早い内に病院か教会に行かれる方がよいと思います。』

『とりあえず志岐氏に関しては、かけてもいない電話を受けたとか、存在しないメールを受け取ったとか、会ってもいないのに話を聞いたとか、そういう「症状」でいらっしゃるとしか申し上げようがありません。個人的には、すみやかに病院に行かれることをおすすめしたいです。』

『Masato Shiotsu - co2@co2masato統失じゃあないですか!RT @nobuyoyagi: とりあえず志岐氏に関しては、かけてもいない電話を受けたとか、存在しないメールを受け取ったとか、会ってもいないのに話を聞いたとか、そういう「症状」でいらっしゃるとしか申し上げようがありません。』

【注】:「統失」は、統合失調症の意味。

『病的な虚言癖」でなければそういうことになりますね RT @co2masato 統失じゃあないですか!RT @nobuyoyagi: とりあえず志岐氏に関しては、かけてもいない電話を受けたとか、存在しないメールを受け取ったとか、会ってもいないのに話を聞いたとか、そういう「症状」』

『山崎氏のブログ記事からだとそういう可能性もありますね。… いずれにしても医師の診断を受けるべきかと RT @co2masato 人格障害の可能性もありますね。』

◇精神障害者に対する差別

裁判の争点にはならないが、一連のツイッターの内容が精神障害者に対する重大な差別にあたる可能性もある。たとえば、ツイッターの中で平然と行われた次のやりとりである。

「統失じゃあないですか!」

「とりあえず志岐氏に関しては、かけてもいない電話を受けたとか、存在しないメールを受け取ったとか、会ってもいないのに話を聞いたとか、そういう「症状」でいらっしゃるとしか申し上げようがありません。」

全国精神障害者家族連絡会が編集した『みんなで歩けば道になる--全家連30年のあゆみ』の冒頭で、山下利政理事長(当時)は、次のように精神障害者が置かれている実態を指摘している。

「かつて精神障害者は座敷牢に閉じこめられ、人間扱いされない時代があった。それは人間の尊厳に対する著しい冒とくであった。精神障害者というだけで、本人とその家族は偏見の目で見られ、社会的にも制度的にも差別を受け続けてきた。多くの病者、家族が苦渋の中に生き、ある者は苦しみに耐えかねて自らの命を絶った。」

ちなみに統合失調症とは、かつての精神分裂病である。この病気は高齢者を除くだれにでも発症のリスクがある。発症年齢が若ければ、症状が重い傾向にある。

脳の神経伝達物質の分泌が活発になりすぎて、思考が混乱する病気だ。本人も症状には気づいているが、自分が置かれているのが現実の世界なのか、それとも空想の世界なのかの区別が付かなくなり、空想の世界を前提とした会話が口をついて出ることがある。第3者には、それが妄想に聞こえる。しかし、一番苦しいのは、患者本人である。

今後、八木氏のツイッターを精神障害者がどのように受け止めるのかという点も取材する

2015年04月15日 (水曜日)

2014年度の非正規雇用率は37.9%、10人のうち4人が非正規雇用者の時代に

『社会実情データ図録』によると、2014年度の非正規雇用者比率は、37.9%となった。前年度比でも、1.7%増えており、近い将来、勤労者の10人に4人までが非正規という不安定な雇用形態が定着する可能性が高い。

非正規雇用者とは、パート、アルバイト、派遣社員、嘱託などである。

新自由主義=構造改革の導入に伴い、労働法制の規制緩和が行われたことが、非正規雇用者比率が上昇していった大きな背景と言えよう。実際、非正規雇用者が増え始めたのは、日本で最初の新自由主義=構造改革を断行した橋本内閣の時代である。

橋本内閣が成立した1996年の翌年にあたる97年までは、正社員の数は徐々に増えていた。ところが97年をピークに正社員は減り始め、逆に非正規社員が増えていく。

そして非正規社員が一気に増えたのは、急進的な新自由主義=構造改革を断行した小泉内閣(2001年4月~2006年9月)の時代である。2001年の非正規雇用率は27.1%だったが、2006年には33.2%に急上昇している。

その後、新自由主義=構造改革に対する世論の反発が強まり、「改革」は停滞した。しかし、小泉構造改革の後継者とも言える第2安倍政権が誕生した後、再び非正規雇用率が上昇し始めた。

新自由主義=構造改革で大企業の業績は順調に回復しているが、雇用形態の変化を考慮すると、必ずしもそれが国民全体の購買力を高めることにつながるとは限らない。また、多国籍企業の内部留保が日本の国民に「還元」される保証はどこにもない。

2015年04月15日 (水曜日)

2015年04月14日 (火曜日)

米国・キューバの国交回復報道、日本のメディアが報じない「テロ支援国認定の解除」の意味

米国のオバマ大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長の会談が11日に、中米のパナマ市で実現し、両国の国交正常化へ向けて大きく舵を切った。これまで両国の最大の障害になってきたのは、米国がキューバをテロ支援国家として認定していることだった。

昨年の暮れに始まった国交正常化交渉でキューバが前面に押し出して要求したのは、テロ支援国家の認定を解除することだった。これに対して、米国側はテロ支援国家の解除と国交正常化は別問題とする立場を貫いてきた。

こうした交渉のプロセスは日本のメディアも報じてきたが、テロ支援国家解除の持つ重要な意味を解説しているマスメディアは皆無に近かった。

結論を先に言えば、それはテロ支援国家の認定が解除されない限り、キューバは、国交が正常化されたとしても、世界銀行などから、融資を受けることが出来ない点である。それゆえにキューバは、テロ支援国家の認定解除に異常なこだわりを見せているのだ。

ところが日本のメディアによるキューバ報道に接していると、キューバは自国のプライドをかけて、 テロ支援国家の汚名返上を求めてきたかのような印象を受ける。これは基本的に間違いである。背景に国際金融機関からの融資問題があるのだ。

◇重要なのは対米関係

日本の新聞社は、中南米に本格的な拠点を置いて、ラテンアメリカの事件を報じていない。4月13日付け毎日新聞にいたっては、「1990年代から次々と誕生した反米左派政権の多くは、キューバを『思想的盟主』と仰ぎ、産油国ベネズエラの経済援助に頼っていた。キューバが対米関係改善にかじを切ったことで2本の柱の1本を失うことになり、難しい対応を迫られている」などと述べているが、そもそもラテンアメリカ諸国は、一貫して、米国によるキューバに対する経済封鎖に反対してきた。米国との関係改善を求めてきたのである。

ラテンアメリカ諸国がベネズエラに頼っていることも事実だが、やはり経済の鍵を握っているのは、対米関係なのである。ベネズエラか、それとも米国かと言った単純な色分けはできない。

さらに毎日新聞は、ベネズエラのマドゥロ大統領がマスコミの取材を避けるために「影武者」を使っているとか、まったくニュースとして価値がないことを報じている。

2015年04月13日 (月曜日)

統一地方選挙、自民党と共産党の対立構造が徐々に鮮明に、新自由主義=構造改革の導入の是非をめぐる対立点

今回の統一地方選の特徴は、自民党と共産党が議席を伸ばしたことである。特に共産党は、全国41の道府県議会選挙で、前回の75議席から111議席へと大きく議席数をのばした。

日本の政治の対抗軸は、新自由主義=構造改革を導入するのか、それともそれを止めるのかという点と、軍事大国化を進めるのか、それともそれを止めるのかという2点に集約される。このような対立構造に、政党の政策を当てはめると、若干の幅はあるものの、前者の政策を提唱しているのは、自民党、民主党、維新の会などである。

特に維新の会は、道州制を提唱するなど、急進的な新自由主義=構造改革の路線を取っている。自民党よりもさらに「右」である。

これに対して後者は、共産党と社民党である。特に共産党は、新自由主義=構造改革と軍事大国化の導入には全面的に反対している。それが政策の中心と言っても過言ではない。

しかし、このような客観的な構図は国民の間でなかなか理解されていない。あたかも自民党と民主党が基本的な政策で対立しているかのような報道が行われてきたからだ。

自民党と民主党の違いは、新自由主義=構造改革の導入と軍事大国化をドラスチックに進めるのか、それともゆるやかに進めるかの違いにすぎない。スピードの違いだけであって、根本的な相違点はない。これが二大政党制のからくりである。

実際、民主党の原点ともいえる1993年に成立した細川政権は、新自由主義=構造改革の遅れにいらだった小沢一郎氏らが、自民党を飛び出して結成したグループである。改革派には違いないが、新自由主義=構造改革の急進的な導入こそが「改革」と考える人々だった。

新自由主義=構造改革と軍事大国化をめぐる政界の対立構造が国民の間で理解されるようになってきたのは、つい最近のことである。共産党は、昨年12月に行われた衆院選でも躍進している。同じ流れが、今回の統一地方選挙でも現れた。

◇危険な大阪都構想の本質

ちなみに維新の党は、急進的な新自由主義=構造改革政党である。たとえば近々に住民投票が行われる大阪都構想(道州制の導入)は、やはり急進的な新自由主義=構想改革の推進政権であった第一次安倍内閣の下でも、提唱されている。

道州制というのは、地方分権を押し出した政策で、福祉や医療、それに教育などの分野を中央政府から地方に移譲することを特徴としている。当然、財源が不足すれば、地方自治体の責任で公共サービスを切り捨てる。こうして小さな中央政府を作り、大企業の税負担を軽減していくのだ。

これは新自由主義の典型的な政策のひとつである。一時期、地方政党が台頭した時期があったが、地方分権の文脈で考えると整合性があるのだ。

今回の統一地方選挙で、維新の会は、大阪市議会では8議席増やし36議席とした 。府議会でも42議席を獲得して第1党を維持した。

これは維新の会が打ち出している急進的な新自由主義=構造改革が有権者から支持された結果である可能性もあるが、同時にマスコミが政策の対立点を明確にしなかった結果、道州制の危険な本質が浸透していない結果とも言える。

2015年04月10日 (金曜日)

「春の新聞週間」、「押し紙」など新聞社経営の汚点がジャーナリズムを堕落させる、新聞に対する軽減税率の適用にも重大問題

4月6日から12日までの一週間は、日本新聞協会が設けている「春の新聞週間」である。この間、新聞や新聞社系のウエブサイトに新聞をPRする記事が掲載されるようだ。

たとえば茂木健一郎氏は、「ネット時代こそ、新聞で脳を鍛える」と題する記事(朝日新聞デジタル 4月8日)で、「時代の記録において新聞紙面に勝る物はない」と述べている。

新聞週間に関連する記事の一部は、日本新聞協会から新聞各社に配信されているようだ。3月21日付けの業界紙『新聞情報』によると、新聞協会の「新聞メディアの強化に関する委員会は、春の新聞週間用記事として、インタビュー記事と軽減税率に関する解説記事を配信する」という。このうちインタビュー記事に登場するのは次の方々。

※AKB48の内山奈月
※茂木健一郎
※鎌田實

また、新聞協会は「米プリンストン大のポール・スター教授に『新聞の公共性と知識課税』をテーマに寄稿を依頼した」という。

◇新聞は紙面の質で勝負するもの

このような実態に読者は違和感を感じないだろうか?新聞協会が主導して新聞各社に指示を出し、新聞のPRを展開していることになるからだ。しかも、タレントや作家にPRの協力を求めているのだ。

本来、新聞は紙面そのものがPRであるはずだ。スクープを連発したり、タブーに挑戦したり、さらにはルポを連載したりして、紙面の質を高めることがPRになる。ところが、日本の新聞社は一般企業が自社製品をCMで宣伝するように、自社の紙面を著名人を使ってPRしているのだ。

新聞販売の現場では、高価な景品を提供して新聞を購読してもらう慣行が延々と続いてきたが、同じことが紙面でも行われるようになっているのだ。

景品を提供しなければ読んでもらえない新聞とは何か?あるいはタレントを使わなければ読んでもらえない新聞とは何か?

この異常な事態に加えて、今年の新聞週間は、「軽減税率に関する解説記事を配信する」という。つまり著名人を使って新聞をPRし、それに連動するかたちで、新聞に対する軽減税率の適用を訴える戦略を展開しているのだ。

◇経営上の汚点が報道自粛の原因

日本の新聞社が欧米なみの調査報道ができない最大の要因は、経営上の汚点が多いからだ。具体的には、「押し紙」、折込広告の水増しである。また、既得権のひとつである再販制度を守りたいという思惑もある。さらに軽減税率という新たな既得権を得ることを業界の目標にしているので、報道を自己規制せざるを得なくなっている。

かりに新聞社が公権力の腐敗を暴く調査報道を続けたと仮定しよう。何が起こるのだろうか?わたしの予測は次の通りである。

①公取委が「押し紙」問題を摘発する。
②警察が折込広告の水増しにメスを入れる。
③政府が再版制度を撤廃して規制緩和を進める。
④政府が新聞に対する軽減税率の適用を見送る。
⑤政府や官庁が公共広告の出稿を控える。
⑥労基署が販売店の労務にメスを入れる。
⑦公取委が新聞の景品付き販売を禁止する。
⑧警察が新聞の勧誘を取り締まる。

①から⑧は、いずれも公権力による新聞経営への介入である。メディアに対する攻撃は、紙面よりも、むしろ経営上の汚点に対して加えられる。紙面の批判に新聞社は痛痒を感じない。「見解の相違」と反論すれば十分だからだ

2015年04月09日 (木曜日)

誰が小沢一郎検審の捏造報告書を流出させたのか?「森VS志岐」裁判の未解明部分

森裕子・元参院議員が、旭化成の元役員で『最高裁の罠』(K&Kプレス)の著者・志岐武彦氏に500万円の損害賠償と言論活動の一部制限を求めて起こした裁判が終わって半年が過ぎた。さくらフィナンシャル・ニュースでも既報したように、この裁判は志岐氏の勝訴で終わった。

しかし、裁判を通じて解明されなかった重大な疑問点が残されたままになっている。それはだれが検察の捏造報告書を外部へ流出させたのかという点である。捏造報告書を流出させた者は、本来であれば違法行為を犯したことになるが、首謀者がだれであるかすらも、現在の段階では判明していない。

複数の資料や証言は存在するが、裁判ではその検証は行われなかった。

窃盗により捏造報告書が外部へ流出した場合は例外として、流出ルートは基本的には2つしかない。

まず、第1の可能性は検察の内部にいる職員が、外部に持ち出した可能性である。当然、これは違法行為にあたる。検察は、職員による持ち出しを全面的に否定している。

◇刑事訴訟法の第281条の4

もうひとつのルートは、裁判の当事者である小沢氏側から外部へもれるケースである。もちろん、これも違法行為である。刑事訴訟法の第281条の4は、次のように書面の持ち出しを禁じている。

 第281条の4:被告人若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。

一  当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理

二  当該被告事件に関する次に掲げる手続
イ 第一編第十六章の規定による費用の補償の手続

ロ 第三百四十九条第一項の請求があつた場合の手続

ハ 第三百五十条の請求があつた場合の手続

ニ 上訴権回復の請求の手続

ホ 再審の請求の手続

ヘ 非常上告の手続

ト 第五百条第一項の申立ての手続

チ 第五百二条の申立ての手続

リ 刑事補償法 の規定による補償の請求の手続

「森VS志岐」裁判の中では、志岐氏側の代理人が、捏造報告書を流出させた者を特定するために、小沢一郎氏と弘中淳一郎弁護士の尋問を求める場面もあった。しかし、その前に結審して、判決が下された。

だれが捏造報告書を流出させたのかという点は、今後、ジャーナリズムが全容を解明しなければならない問題にほかならない。

2015年04月08日 (水曜日)

「電磁波からいのちを守る全国ネット」が5月に東京で全国集会を開催、荻野晃也氏らが講演

スマホや無線PCが普及して電磁波問題が深刻になる状況のもと、「電磁波からいのちを守る全国ネット」(荻野晃也代表)は、5月16日に、東京で「身近に潜む電磁波のリスクを考える-LED、スマホ、リニア・・・」と題する講演会とシンポジウムを開く。詳細は次の通りでである。

日時:5月16日(土曜日) 13:00開場~16:30終了

場所:板橋区立グリーンホール
〒173-0015
東京都板橋区栄町36-1(最寄り駅:東武東上線・大山駅、都営地下鉄三田線・板橋区役所前駅)  ■地図

【発言者】

荻野晃也:(オギノ コウヤ) 1940 年富山市生まれ。京大理・物理学科卒。京大工・原子核工学教室講師(常勤)で定年退職し「電磁波環境研究所」を主宰。理学博士。
「電磁波からいのちを守る全国ネット」代表。原子核物理学、放射線計測学、
電磁波工学などを専門とし、放射線を含む「送電線」「携帯電話」「リニア」
などの電磁波問題に取り組んでいる。原発・電磁波問題などに関する著作多数。

加藤やすこ:(カトウ ヤスコ) 1966 年生まれ。環境ジャーナリスト。化学物質過敏症、電磁波過敏症発症後は、これらの環境病をテーマに執筆。著書に『電磁波過敏症を治すには』、『電磁波・化学物質過敏症対策(増補改訂版)』(いずれも緑風出版)など。患者会『いのち環境ネットワーク』http://homepage3.nifty.com/vocemf/代表。

懸樋哲夫:(カケヒ テツオ) 1950 年生まれ。1993 年、ガウスネットを結成、代表。電磁波情報紙『がうす通信』を20年以上にわたり発行、現在131号。
「リニア・市民ネット東京」代表。著書『高圧線と電磁波公害』(共著 緑風
出版)『IH調理器と電磁波被害』(三五館)『デジタル公害』(緑風出版)
『危ないリニア新幹線』(共著 緑風出版)など。

天笠啓佑:(アマガサ ケイスケ)1947 年生まれ。環境問題のジャーナリスト。
市民バイオテクノロジー情報室代表。著書『電磁波(FOR BEGINNERS SCIENCE)』(現代書館)『電磁波はなぜ恐いか 暮らしの中のハイテク公害』(緑風出版)『遺伝子組み換え作物はいらない!広がるGMO フリーゾーン』(家の光協会)他にも電磁波問題、原発、遺伝子組み換え問題などの著書多数。

問い合わせはMEDIA KOKUSYO(℡048-464-1413くろやぶ)まで。

■集会のチラシPDF

2015年04月07日 (火曜日)

裁判と言論・人権を考える(4)、読売裁判の判例と弁護士懲戒請求、催告書の名義を偽って提訴

高額訴訟ではないが、提訴のプロセスに問題が指摘された裁判の例を紹介しよう。わたし自身が被告にされた著作権裁判である。原告は、読売新聞社(西部)の法務室長・江崎徹志氏だった。江崎氏の代理人は、自由人権協会代表理事の喜田村洋一弁護士だった。

◇事件の発端
2007年の暮れに江崎氏は、わたしにEメールである催告書を送付してきた。その中で江崎氏は、わたしに対して、新聞販売黒書(メディア黒書の前身)のある記述を削除するように求めたのである。その資料とは、次の通知(記述)だった。YC(読売新聞販売店)に宛てたものだ。

前略

 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。
 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。
 当社販売局として、通常の訪店です

以上、ご連絡申し上げます。よろしくお願いいたします。

かりにこの文書を「回答書」と呼ぶことにする。

■江崎氏が送付した催告書の全文

◇真村店主に対する差別

読売新聞社とYC広川の真村店主の間には、2001年ごろから係争が続いていた。係争の引き金は、読売が真村さんの営業区域の一部を返上させようとしたことである。当然、真村さんはこれを断った。

これに対して、読売は真村さんに販売店を改廃(強制廃業)することを言い渡した。この係争は地位保全を巡る裁判に発展した。

こうした状況の中で真村さんの店は「死に店」扱いにされた。飼い殺しであるから、当然、読売の担当員はYC広川を訪問しなくなった。補助金も大半をカット。差別的な待遇を受けるようになったのである。

しかし、2006年9月、福岡地裁久留米支部は、真村さんの地位を保全する判決を言い渡した。さらに2007年6月には、福岡高裁も真村さんに軍配を上げる。しかも、読売による「押し紙」など、優越的地位の濫用を厳しく批判した画期的な判決を下したのだ。

■真村裁判・福岡高裁判決

高裁判決を受けて、読売の態度に変化の兆しが現れた。YC広川に対する訪店を再開するための第一歩として、真村さんに訪店再開の意思を伝えたのである。

ところが真村さんは、係争中に積もりに積もった不信感のために、即答をさけた。そして代理人の江上武幸弁護士に依頼して、訪店再開の真意を読売側に問い合わせてもらったのだ。その回答として江上武幸弁護士が江崎法務室長から受け取ったのが、上記の回答書だった。それをわたしが、新聞販売黒書で公開したのである。

◇著作物には定義がある

これに対して江崎法務室長は、わたしに対し、削除を求める催告書を送ってきたのだ。

催告書の中で、江崎氏は上記の回答書が自分の著作物だと主張した。それを根拠に削除を求めたのである。しかし著作物と言うからには、著作権法の次の定義を満たさなければならない。

【思想又は感情を創造的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。】

誰が解釈しても回答書が著作物でないことは明らかである。それにもかかわらず江崎氏は、催告書の中で回答書が自分の著作物であると述べ、わたしに削除を求めてきたのだ。しかも、わたしが回答書を掲載したことを、「民事上も刑事上も違法な行為」とした上で、次のように記していたのだ。

「貴殿がこの催告に従わない場合は、相応の法的手段を探ることになりますので、この旨を付言します。」

明らかに著作物ではないものを、著作物だと強弁して、削除に応じなければ、法的手段を探ると言ってきたのだ。しかも、刑事告訴までほのめかしていたのだ。

◇催告書を公開

もともと江崎氏の主張そのものに道理がないのであるから、わたしは回答書の削除には応じなかった。さらに対抗措置として、今度は催告書を新聞販売黒書でそのまま紹介した。恫喝文書と判断した結果でもあった。回答書が著作物であるというデタラメな内容の恫喝文が送られてきたことを重要ニュースと判断したのである。

これに対して、江崎氏は催告書を削除するように求めて、裁判を起こしたのである。(厳密には、仮処分の申し立てを経て本裁判へ進んだ。)

ところがおかしなことに、催告書でわたしに要求した回答書の削除は、裁判では要求してこなかった。催告書だけの削除を求めてきたのである。

◇催告書を作成したのは喜田村洋一弁護士

催告書の削除を求める著作権裁判の争点は、当然、催告書に著作物性があるかどうかという点になる。著作物性があり江崎氏の著作物と認められたならば、わたしは削除に応じなければならない。

ところが裁判は以外な展開を見せる。もともと江崎氏がこの裁判の前提としていたのは、催告書は江崎氏が自分で作成した著作物であるから、わたしには公表権がないという論法だった。ところが被告(黒薮)弁護団の追及で、催告書の執筆者は、江崎氏ではなくて、読売の喜田村洋一弁護士であることが判明したのだ。

厳密に言えば、喜田村弁護士か彼の事務所スタッフが催告書を作成した可能性が極めて高いと裁判所が認定したのである。

これは言葉を換えれば、江崎氏とは別の人物が作成した催告書を、江崎氏が自分で作成した文書であると偽って、わたしを裁判にかけたということである。つまり著作物であると主張していた催告書の名義を「江崎」に偽っていたことになる。

その結果、何が起こったのか?喜田村弁護士らは、催告書の名義を偽ったまま、著作者人格権を主張したのである。

ちなみに著作者人格権は、他人に譲渡することは認められていない。

ウィキペディア:著作者人格権は、一身専属性を有する権利であるため他人に譲渡できないと解されており、日本の著作権法にもその旨の規定がある(59条)。また、日本法では一身専属性のある権利は相続の対象にはならないので(民法896条但書)、著作者人格権も相続の対象にはならず、著作者の死亡によって消滅するものと解されている。】

参考までに、知財高裁(東京)の判決から、上記の事実を認定した部分と弁護団声明を紹介しておこう。

■知財高裁(東京)判決(認定部分のみ)

■弁護団声明(全文)

なぜ、催告書の作成者を偽ってまでも、わたしを提訴したのだろうか。推測になるが、「押し紙」報道を抑制したかったからではないか?

◇弁護士懲戒請求

最高裁で判決が確定した後、わたしは「戦後処理」に入った。喜田村弁護士が所属する第2東京弁護士会に、喜田村弁護士に対する懲戒請求を申し立てた。根拠としたのは、『弁護士職務基本規定』の次の条項だった。

第75条:弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

 私が提出した第1準備書面は次の通り。事件の性質を簡潔に伝えた。

■懲戒請求の準備書面(1)

 

2015年04月06日 (月曜日)

「新聞崩壊」2015年2月度の新聞のABC部数、前年同月差で朝日は約65万部、読売は63万部減、毎日はひと月で10万部減

2015年2月度の新聞のABC部数が明らかになった。中央紙の部数は次の通りである。()内は、前年同月差。

朝日:6,793,957 (-654,778)

読売:9,112,450 (-626,439)

毎日:3,254,115 (-69,926)

日経:2,735,255 (-41,657)

この一年間で、朝日は約65万部を減らし、読売は約63万部を減らした。

毎日は、前年同月差は約7万部の減だが、2月中に約10万6000部を減らしている。

かつて朝日は、800万部のメディアと言われていたが、600万部代に入った。

ただ、ABC部数には、俗にいう「押し紙」(偽装部数)が含まれていることがあるので、「ABC部数=実配部数」と考えると、広告主は広告戦略に支障をきたしかねない。

ABC部数にどの程度の「押し紙」が含まれているかについては、朝日をモデルに、MyNewsJapanが内部資料を基に、4月2日付け記事で綿密な検証を行っている。記事の途中から「会員限定」になるが、参考までに紹介しょう。

■朝日新聞の偽装部数は200万部(28%)、実売は10年で3割減って510万部に――2014年度、社内資料より判明

◇米国でも偽装部数は発覚しているが・・・

ABC部数に「押し紙」が含まれている問題は、古くから指摘されてきたが、新聞社は、いまだに「押し紙」の存在を認めていない。しかし、販売店が起こした「押し紙」裁判で、勝訴、あるいは和解勝訴の例が生まれ初めているのも事実である。

海外でもABC部数を偽装する問題は発覚しているが、日本の新聞社とはことなり、不祥事を認めている。たとえば、米国のダラス・モーニング・ニュース社は、2004年に日曜版を11.9%、日刊紙を5.1%水増ししていたことを認めて、広告主に2300万ドルを払い戻した。

「押し紙」は存在しないとしらを切っている日本の新聞人とは、大きな違いがある。

■2015年2月度のABC部数