危険な安保関連法案、背景に多国籍企業の防衛部隊としての軍隊という考え方
「国際平和支援法」の中身について、政府自民党と公明党が合意した。これは国際平和を口実とした他国の軍隊の後方支援を随時可能にするための法律である。両党は、同法の運用にあたっては、国会の事前承認を得ることで合意に達した。
安保関連法案が今国会のテーマとなっている。意外に認識されていないが、これは特定秘密保護法の施行や憲法9条の解釈変更に見られる日本の軍事大国化の文脈の中で浮上してきた流れである。
その背景には、グローバリゼーションに伴う「世界の警察」の役割分担を日本も引き受けざるを得ない状況が生まれている事情がある。特に米国による日本の軍事大国化の要求は露骨だ。日本の財界も、軍事大国化を容認している。
「国際平和支援法」が、「平和活動」とかけ離れていることは、これまでの多国籍軍の「実績」を見れば明らかになる。活動の実態は、多国籍企業の権益が犯されかねない地域で、治安維持や平和を口実に軍事作戦を展開するというものである。
◆ラテンアメリカへの軍事介入
安保関連法案に関して日本のメディアが報じないのは、軍事行動と多国籍企業の関係である。両者の関係を暴露することはタブーであるが、両者の関係が典型的に表れて、隠しようがない地域がある。ラテンアメリカである。主要な軍事介入だけでも次のようなものがある。
1954年 グアテマラの軍事クーデター
1959年 キューバ革命後のCIA等による介入
1965年 ドミニカ共和国への介入
1973年 チリの軍事クーデター
1979年 ニカラグアに対する介入
1980年 エルサルバドルに対する介入
1983年 グラナダに対する介入
これらの軍事介入の背景に、多国籍企業の権益があったことは言うまでもない。たとえば1954年のCIAによるグアテマラに対する介入の背景には、米国のフルーツ会社の権益がからんでいた。
当時のグアテマラ政府は、農地改革に着手していた。左翼政権ではなかったが、民主的な手続きに沿って「改革」を進めていた。「グアテマラの春」と呼ばれた時代である。
ところがグアテマラ政府が米国のUFC(ユナイテッド・フルーツ・カンパニー)の土地に手を付けたとたんに、CIAのクーデターが勃発した。以後、グアテマラは1990年代まで実質的な軍事政権下におかれた。
◆海外派兵の本当の目的は、多国籍企業の権益
日本の自衛隊を海外へ派兵する動きが始まったのは、1990年代である。ソ連や東側諸国の社会主義が崩壊して、巨大市場が世界に登場した時期である。同時にビジネスの国際化が本格化して、軍事力で多国籍企業の権益を守る体制の構築が始まった。
自衛隊を海外へ派兵する際に口実になってきたのは、「国際貢献」「平和維持活動」であった。しかし、海外派兵の本当の目的は、多国籍企業の権益を守ることである。
グローバリゼーションの中で、特定秘密保護法が施行されたり、憲法9条の骨抜きをめざす動きが浮上しているゆえんにほかならない。安保関連法案も、こうした文脈の中で考えなければならない。