統一地方選挙、自民党と共産党の対立構造が徐々に鮮明に、新自由主義=構造改革の導入の是非をめぐる対立点
今回の統一地方選の特徴は、自民党と共産党が議席を伸ばしたことである。特に共産党は、全国41の道府県議会選挙で、前回の75議席から111議席へと大きく議席数をのばした。
日本の政治の対抗軸は、新自由主義=構造改革を導入するのか、それともそれを止めるのかという点と、軍事大国化を進めるのか、それともそれを止めるのかという2点に集約される。このような対立構造に、政党の政策を当てはめると、若干の幅はあるものの、前者の政策を提唱しているのは、自民党、民主党、維新の会などである。
特に維新の会は、道州制を提唱するなど、急進的な新自由主義=構造改革の路線を取っている。自民党よりもさらに「右」である。
これに対して後者は、共産党と社民党である。特に共産党は、新自由主義=構造改革と軍事大国化の導入には全面的に反対している。それが政策の中心と言っても過言ではない。
しかし、このような客観的な構図は国民の間でなかなか理解されていない。あたかも自民党と民主党が基本的な政策で対立しているかのような報道が行われてきたからだ。
自民党と民主党の違いは、新自由主義=構造改革の導入と軍事大国化をドラスチックに進めるのか、それともゆるやかに進めるかの違いにすぎない。スピードの違いだけであって、根本的な相違点はない。これが二大政党制のからくりである。
実際、民主党の原点ともいえる1993年に成立した細川政権は、新自由主義=構造改革の遅れにいらだった小沢一郎氏らが、自民党を飛び出して結成したグループである。改革派には違いないが、新自由主義=構造改革の急進的な導入こそが「改革」と考える人々だった。
新自由主義=構造改革と軍事大国化をめぐる政界の対立構造が国民の間で理解されるようになってきたのは、つい最近のことである。共産党は、昨年12月に行われた衆院選でも躍進している。同じ流れが、今回の統一地方選挙でも現れた。
◇危険な大阪都構想の本質
ちなみに維新の党は、急進的な新自由主義=構造改革政党である。たとえば近々に住民投票が行われる大阪都構想(道州制の導入)は、やはり急進的な新自由主義=構想改革の推進政権であった第一次安倍内閣の下でも、提唱されている。
道州制というのは、地方分権を押し出した政策で、福祉や医療、それに教育などの分野を中央政府から地方に移譲することを特徴としている。当然、財源が不足すれば、地方自治体の責任で公共サービスを切り捨てる。こうして小さな中央政府を作り、大企業の税負担を軽減していくのだ。
これは新自由主義の典型的な政策のひとつである。一時期、地方政党が台頭した時期があったが、地方分権の文脈で考えると整合性があるのだ。
今回の統一地方選挙で、維新の会は、大阪市議会では8議席増やし36議席とした 。府議会でも42議席を獲得して第1党を維持した。
これは維新の会が打ち出している急進的な新自由主義=構造改革が有権者から支持された結果である可能性もあるが、同時にマスコミが政策の対立点を明確にしなかった結果、道州制の危険な本質が浸透していない結果とも言える。