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2015年04月02日 (木曜日)

進む医療分野の規制緩和、医療関係の政治団体から億単位の政治献金が政界へ流入

政治家の政治資金収支報告書を調査するなかで、極めて頻繁に登場する政治団体がある。それは日本薬剤師連盟である。

2014年度公開(2013年度分)の政治資金収支報告書によると、支出の総額は、約5億3200万円にものぼる。このうち政治家たちに対する寄付金は、2億3110万円。

■政治資金収支報告書

また、日本医師政治連盟になると、支出の総額が18億3200万円にもなる。このうち政治家たちに対する献金は、「会費」の名目だけで、約1億800万円が支出されている。

安倍首相に対しては、2013年6月24日と12月11日にそれぞれ100万円が支給されている。高市早苗議員には、11月20日に50万円。川田龍平議員にも、12月11日に20万円。そのほか、麻生、石破の両議員にも、それぞれ100万円が支給されている。

献金の目的は分からないが、医療分野の規制緩和策の推進である可能性が高い。

2015年04月01日 (水曜日)

早河洋会長らテレビ朝日の幹部、安倍首相と官邸などで会食を繰り返していた、古賀氏の見解は「右からの安倍批判」

テレビ朝日の「報道ステーション」で、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が安倍政権を批判するなどの「騒動」が起きたことに対して、テレビ朝日の早河洋会長が謝罪したことが報じられている。早河氏は、古賀氏の降板に関しても、「官邸からの圧力めいたものは一切ない」と弁解したという。

メディア企業と安倍内閣の癒着といえば、本ウェブサイトでも報じたように、『ZAITEN』(4月号)が、「安倍首相とメシを食うモラル無きマスコミ人たち」と題する記事で、その実態を暴露している。同記事は、2013年1月から2015年2月までの間に、安倍首相と会食したメディア関係者のリストを掲載している。

それによるとテレビ朝日の関係者は、安倍首相と3回、会食している。詳細は次の通りである。

2013年3月22日・早河洋社長(当時)・2時間・首相官邸

2014年3月18日・広瀬道貞元会長・1時間30分・パレスホテル東京

2014年7月4日・早河洋CEO/吉田慎一社長・3時間・首相官邸

会食費が国費なのか、安倍氏のポケットマネーなのか、それとも「割り勘」なのかは不明。

ちなみに欧米では、メディア企業のトップと国のトップが官邸などで会食すれば、ジャーナリズム企業としては成立しなくなる。

◇新自由主義者としての古賀氏

ただ、「報道ステーション」で当日、古賀氏が語った内容にも大きな問題がある。たとえば、次の見解である。

 今度の国会というのは、安倍さんは、「改革断行国会」と名前を付けたんですね。改革するぞと。しかし、はっきり言って、今のところ岩盤規制にメスを入れますという話は出てきていないわけですね。農業でいえば農協改革、最初は非常に大きなことを言っていましたが、結局、統一地方選で協力を得るためには、地域農業にメスを入れられないんだということで・・。

これは安倍内閣が方針としている新自由主義=構造改革の導入が足踏みし始めたことに対する「右からの批判」である。情け容赦なく新自由主義=構造改革の導入を断行せよと言っているのだ。規制も緩和しろと言っているのだ。

改めていうまでもなく、新自由主義=構造改革の導入が足踏みし始めたのは、新自由主義=構造改革の矛盾が顕著になってきたからである。

古賀氏は、新自由主義=構造改革の支持者である。その意味では、本当の安倍批判にはなっていない。

2015年03月31日 (火曜日)

その言葉、単価でXX万円」、名誉毀損裁判と言論・人権を考える(3)、2億3000万円請求のミュージックゲート裁判の例

特定の表現に対して、単価を設定して、個数×単価で損害賠償額を決める方法について、連載(2) で、わたしは「こんな請求方法はこれまで見たことがなかった」と書いたが、若干の訂正を要するようだ。確かに特定表現に単価を設定したケースは、これまで遭遇したことはないが、類似した請求方法は取材していた。

この裁判は、作曲家・穂口雄右氏に対して、ソニーなどレコード会社ら31社が、音源ファイルなどが、穂口氏が代表を務めるミュージックゲート社提供のサービス「FireTube」で、違法にダウンロードされたとして、約2億3000万円を請求した事件である。結果は、穂口雄右氏の和解勝訴。2億3000万円の請求に対して「0円」の解決だった。スラップ(恫喝訴訟)の可能性が極めて強い。

■参考:穂口氏へのインタビュー

レコード会社側は、ダウンロードされたファイル数は1万431個と主張していた。ところが実際に、その証拠として提出できたのは、121個だった。これらのファイルについては、穂口氏も「FireTube」上で完璧に著作権を保護することができなかったことを認め、賠償を申し出た。

さて、この裁判では、レコード会社側が主張していた1万431個という多量のファイル数が請求額2億3000万円という高額を決めるポイントになっている。

訴状は請求方法について、次のように述べている。

原告ごと(レコード会社31社のこと)の1か月当たりの使用料相当損害金の額は、上記の1か月間に複製等された本件音源等のファイル数に1ファイル当たりの月額使用料相当額である10,000円を乗じることにより求められ、その結果、別紙ファイル数・損害賠償一覧表中の各「1か月分の損害賠償額」欄記載のとおりとなる。

法律家の見解からすれば、1件の不法行為に対して単価を定めて、それに件数を乗じる方法が、損害の程度を評価するうえで、より客観性があるという考えではないかと思う。が、問題は、なぜ、原告が不法行為と判断した時点で、すぐに対策を取らなかったのかという点である。対策を取らなかった事実を前提とすれば、提訴自体がスラップという疑いも生まれるのである。

ちなみにこの裁判のレコード会社側の代理人を務めたのは、TMI法律事務所の升本喜郎弁護士らである。TMI法律事務所など大手の弁護士事務所には、元最高裁判事らが、退任後に「再就職」している事実がある。これは現在の法曹界がかかえる重大問題のひとつである。裁判官と弁護士の情交関係により、判決がねじ曲げられる危険があるからだ。

2015年03月30日 (月曜日)

コメンテーターはテレビ局の飼い犬でいいのか、古賀茂明氏発言の問いかけるもの


◆吉竹幸則(フリージャーナリスト・元朝日新聞記者)

テレビ朝日の「報道ステーション」。元経済産業省官僚で、コメンテーターの古賀茂明氏とキャスター古舘伊知郎氏の発言が論議を呼んでいる。「バトル」などと面白おかしく記事にしたり、ジャーナリストの中にも、古賀氏の行動を「私怨」と批判する人もいる。しかし、コメンテーターは権力に弱腰のテレビ局のシナリオ・意向に沿って発言する飼い犬でいいのか。言論・報道の自由の根幹にかかわる問題なのだ。

3月27日の報ステ。古賀氏は中東情勢に関しコメントを求められると、「ちょっとその話をする前に」と古舘氏の発言を遮り、「テレビ朝日や古舘氏事務所のトップの意向だ」として、「(出演は)今日が最後」と話し始めた。

「菅官房長官をはじめ官邸の皆さんにはものすごいバッシングを受けてきました」

「私が言いたかったのは、言いたいことはそのまま自然に言おうということ。裏で色々圧力をかけたり、官邸から電話をかけてなんだかんだと言うのはやめていただきたい」

降板の裏に政権の意向があったのではないかと臭わせ始めた。古舘氏は、「今の話は承伏できません」、「番組で川内原発の指摘や、辺野古問題も取り上げてきたじゃないですか」と反論。古賀氏も「それをつくってきたチーフプロデューサーが更迭されます」と応戦、古舘氏が「更迭ではない」と否定する場面もあった。

古賀氏降板を巡るウワサは、今年初めから週刊誌などで取り上げられてきた。「イスラム国」人質事件での安倍首相の対応について「I am not Abe」と批判したことや、昨年12月の総選挙報道で番組スタッフが「特定政党を批判する発言を控えてほしい」と申し入れたことに古賀氏が反発したことなどが背景とされてきた。

もちろん、事の真偽は当事者でないと分からない点は多い。しかし、昨年の総選挙では「中立報道」を名目に、安倍政権がテレビ局に圧力をかけ続けたことは、よく知られている。テレビ局幹部は放送法、電波の許認可権で政治家・官僚で縛られ、もともと国家権力に弱腰だ。スポンサーの圧力もある。あり得ない話ではないだろう。

もし、権力の意向を汲んだテレビ局幹部の判断でコメンテーターの降板が左右されたのが事実とするなら、権力を監視し、批判する側のコメンテーターの意見は人々に伝わらない。言論・報道の自由、ひいては国民の「知る権利」にとってもあってはならない大問題なのだ。

◇江川紹子氏の古賀批判とは?

しかし、よくテレビに出演するジャーナリストやコメンテーターの中にも、古賀氏の行動に対して批判的意見を表明する人がいるのはどういうことだろう。例えばツイッターで江川紹子氏はこうつぶやく。

「公共の電波で自分の見解を伝えるという貴重な機会を、個人的な恨みの吐露に使っている人を見ると、なんとももったいないことをするのか…と思う」
古賀氏が報ステで語ったことが、どうして「個人的な恨みの吐露」になるのか。降板の裏に権力の意向が働いていたとしたら、「個人的」ではなく「社会的」に許しておける問題ではない。

だから古賀氏は「公共の電波で自分の見解を伝える」「貴重な機会」を利用した。こんな機会を利用しないことの方が、「なんとももったいないこと」なのだ。江川氏は、「公共の電波」を持つテレビ局側の意向に沿うことで「自分の見解を伝える貴重な機会」を得て、許容される範囲で発言するのがコメンテーターの役割とでも考えているのだろうか。

江川氏には、真意はそうでなく、私の「邪推・曲解」との反論があるかも知れない。私もそうあって欲しいと思う。ただ、長年テレビ関係者と付き合ううち、知らず知らずのうちにジャーナリストになった原点を忘れ、「上から目線」になっている面はないのか。心の片隅に少しでも残っているなら、結局、コメントの「自主規制」につながり、権力の思う壺なのである。

◇メディア企業の第3者委員会の体質

江川氏は従軍慰安婦、原発報道でバッシングを受けた朝日新聞の「信頼回復と再生のための委員会」の委員も引き受け、提言をまとめている。

私は朝日記者時代、当たり前に報道するべき記事を止められ幹部と闘った経験から、この誤報問題について「朝日は派閥官僚体質の病根を絶て」で詳しく書いた。

誤報で権力側からバッシングを受けるスキを作ったのは、長年の派閥官僚体質で、人々の「知る権利」に応えることにも、誤報に対する責任を取ることにも真剣さを欠き、「権力監視」との建前と裏腹に権力との間の緊張感を失ったことが、根本的な原因だ。

しかし、委員会ではこんな幹部の体質、責任にほとんど触れることなく、「読者との対話」を改革案の中心に据え、お茶を濁した。委員会での詳しい審議内容は私たちOBにもほとんど知らされていない。

委員は江川氏一人でないにしても、もし、委員を委嘱した経営側の意向に沿う範囲内でしか提言をまとめないと江川氏が考えていて、それが改革提言にも反映していたとするなら、今回の古賀問題の発言も含め、私は江川氏のジャーナリストとしての資質を根底から疑う。

それぞれの深い学識・経験、「良心の自由」に基づいて、コメンテーターが「自分の見解」を真剣に伝えてこそ、その言葉が視聴者の心に響く。採用してくれたテレビ局側の顔色・ご機嫌をうかがい、何某かの報酬を得る。そんなコメンテーターの打算に基づくへっぴり腰発言など、視聴者が求めるものではないはずだ。

◇テレビ局によって発言の色合いを微妙に変える処世術

竹田圭吾氏も「古賀茂明という人はテレビで発言する機会を与えられていることの責任と義務をまったく理解していない」と書き込んでいる。私は古賀氏発言を「テレビで発言する」「責任と義務」に基づいたものだと考える。むしろ竹田氏が「責任と義務」についてどう考えているかを伺いたい。

テレビに登場するコメンテーターの中には、よく注意して見ると、出演する局によって発言の色合いを微妙に変えている人もいる。この人たちの意識は所詮この程度と考えると、私には妙に納得も出来る面もある。

ただ、古賀氏は憲法に定める「国民に奉仕するのが官僚」との意味で、利権体質にどっぷりつかった他の官僚よりはるかに本物であった。ジャーナリストとしての古賀氏も、憲法の定めの「国民の『知る権利』への奉仕者」という意味で、この程度のジャーナリストに比べ、はるかに本物であることだけは間違いない。

テレ朝も大株主の朝日新聞も、これまで国の審議会制度と参加する学者、知識人に対して厳しい批判を重ねて来た。論点は、「政府・官僚によって審議会委員に任命されると、多額の報酬も名声も得られる。官僚からもちやほやされ、引き続き選ばれたいと思い、委員は官庁に煙たい発言はだんだんしなくなって取り込まれる。結局、審議会は役所にとって都合のいい代弁機関となり、国民が求めるチェック機関の役割が働かない」と言うものだった。

前述の通り、テレビ局経営者は様々な尻尾を官庁に握られ、権力に弱い体質を宿命的に持っている。権力側からあれこれ報道に注文もつけられる。局の意向に沿う人物はちやほやし、古賀氏のように伝えても受け入れないコメンテーターがいると、次々は外していけば結局、権力に言いなりのテレビ経営者、その経営者の言いなりになるコメンテーターしか残らない。行き着くところは権力監視どころか、権力翼賛報道のオンパレードだ。

テレ朝は自分たちの報道、組織のあり様が、国の審議会の二の舞になってもいいと考えているのか。自ら発した言葉に責任を持つのが、最低限の報道機関・ジャーナリスト倫理だ。なら、ダブルスタンダード・二枚舌は許されない。国の審議会に発した批判は、自分たちに返ってくる。

◇政府・官邸側の介入はあったのか?

テレ朝広報部は「古賀氏の個人的な意見や放送中に一部、事実に基づかないコメントがされたことについて、承服できない。番組に一部、混乱がみられたことについて、視聴者の皆様におわび申し上げます」「そもそも古賀氏は専門分野の1人。降板ということではない」とコメント。古舘氏は「古賀さんのお考えは尊重し続けるつもりですが、一部承服できない点もある。私は真剣に真摯にニュースに向き合っていきたい」とする。しかし、多くの視聴者から疑問が出ていることに、両者は正面から今のところ答えていない。

古賀氏は、古舘氏との会話について、「全部録音させていただきました。そこまで言われるなら出させていただきます」と話し、今後もテレ朝と闘う覚悟だ。もちろん、古賀氏の誤解の可能性もないとは言えない。でも、「誤解」と言うなら、それを解く説明責任はテレ朝側にある。

古賀氏降板に政府・官邸側の何らかの介入・圧力があったか否か。テレ朝がジャーナリズム、古舘氏がジャーナリストを自認するなら、報道に対し今後の権力側の介入を防ぐためにも、うやむやは許されない。今回の事実関係を包み隠さず、すべてを調査し、視聴者に明らかにすることが第1歩だ。

安倍政権による特定秘密保護法の制定で戦前の報道弾圧社会が、すでに現実のものになり、古賀氏問題の真相はともかく、メディアへの圧力も日々強まっている。しかし、ジャーナリズムの組織、ジャーナリストはその危機感があまりにも乏しい。その鈍感さを長くジャーナリストとして活動してきた人ではなく、元官僚の古賀氏が勇気ある発言で警鐘を鳴らした。

報ステ人事に安倍政権側からの圧力があったのか、なかったのか。「火のないところに煙は立たず」とのことわざもある。週刊誌報道などで、様々な憶測がでている中なら、視聴者の心配に答え言論・報道の自由を守るためにも、その真相を一番よく知るはずのテレ朝関係者が、何故、古賀氏の前に明らかにしなかったのか。何より、私はそれを憂え、一層危機感を持つ所以でもある。

 

≪筆者紹介≫ 吉竹幸則(よしたけ・ゆきのり)
フリージャーナリスト。元朝日新聞記者。秘密保護法違憲訴訟原告。朝日・名古屋本社社会部で、警察、司法、調査報道などを担当。東京本社政治部で、首相番、自民党サブキャップ、遊軍、内政キャップを歴任。無駄な公共事業・長良川河口堰のウソを暴く報道を朝日から止められ、記者の職を剥奪され、名古屋本社広報室長を経て、ブラ勤に至る。記者の「報道実現権」を主張、朝日相手の不当差別訴訟は、戦前同様の報道規制に道を開く裁判所のデッチ上げ判決で敗訴に至る。その経過を描き、国民の「知る権利」の危機を訴える「報道弾圧」(東京図書出版)著者。

2015年03月27日 (金曜日)

護憲を訴える野中広務氏、しかし、誰が1999年の国会で周辺事態法、盗聴法、国旗・国家法、改正住民基本台帳法を成立させたのか?

与党協議会で新たな安全保障法制整備の骨格が明らかになった。20日に発表された共同文書には、集団的自衛権の行使容認、多国籍軍への後方支援、自衛隊の任務拡大などが明記されている。

これらの方針を具体化するために、安倍内閣は周辺事態法や自衛隊法の「改正」へ向けて動き始める。

そもそも軍事大国化への分岐点は、いつの時期なのだろうか。長期的な視点で見ると、それはソ連と東側諸国が崩壊して、「先進国」による新市場の獲得競争が始まった時期である。米国が世界の「警察」に名乗りを上げ、その後、「警察」の役割を各国で分担する多国籍軍の方向性が生まれた。

言論の抑圧などソ連にさまざまな問題があったとはいえ、社会主義圏が崩壊して、世界はかならずしも平和と共存の方向へは進まなかった。むしろ先進国による資源の収奪などの問題が発展途上国で起きるようになり、従来とは違ったかたちの紛争が続発している。

日本が軍事大国化に踏み出したのは、橋本内閣の時代であるが、それを急進的に進めたのは、小渕内閣である。1999年の第145通常国会で軍事大国化へつながる法案を次々と成立させたのである。具体的には、

※周辺事態法
※盗聴法
※国旗・国家法
※改正住民基本台帳法

このうち周辺事態法は、2015年の国会で、「改正」されようとしている。

軍事大国化=スパイ国家の原点ともいえるこれらの法律を成立させた小渕内閣で官房長官を務めていたのは、「影の総理」とも言われた野中広務氏である。野中氏は、村山内閣の時代には国家公安委員長も務めている。

◇過去にあまい日本人の国民性

わたしがどうしても解せないのは、2015年の時点で、野中広務氏が憲法9条の堅持を強く訴えている事実である。わたし自身は護憲派であるから、野中氏の活動により、憲法9条の意味について考える人々が増えるのであれば、それ自体は好ましいと考えているが、同時に違和感も払拭できない。

無論、人は成長の過程でみずからの思想や生き方を変えることがある。しかし、「国のかたち」を激変させ るための法整備で中心的な役割を果たした人物が、その後、見解を変更するのであれば、過去の思想や行動のどの部分が間違っていたのかをかなり詳細に明らかにするのが常識ではないかと思う。

野中氏個人は、もともと反戦思想の持ち主だったが、「政治の力学」が働いて、財界と米国の求めに応じ、自分の意思に反して軍事大国化を押し進めた可能性もある。が、たとえそうであっても、野中氏の言動で、国民全体が大きな影響を受けたのであるから、「政治の力学」は口実にはならない。

また、国民の側もこうした点を曖昧にすべきではないだろう。

2015年03月26日 (木曜日)

『構造改革政治の時代』(花伝社、渡辺治著)、日本はどこへ向かうのか、構造改革=新自由主義の導入と軍事大国化

 日本という「国のかたち」が激変し始めたのは、構造改革=新自由主義の導入がスタートした1990年代に入ってからである。小沢一郎氏らが自民党を飛び出して、2大政党制を打ち立て、2つの保守政党が競合するかたちで、構造改革=新自由主義を導入していった。

『構造改革政治の時代』(花伝社、渡辺治著)は、「国のかたち」を決定的に変えた小泉構造改革の細部を検証した労作である。著者の渡辺治・一橋大学名誉教授は、構造改革=新自由主義の導入と、軍事大国化を、1990年代から後の中心的な国策として捉えている。

初版は2005年12月であるから、発刊から10年が過ぎた。本書は現在の「悪夢」に至る前史にほかならない。

構造改革=新自由主義の導入に伴い、小泉氏は司法のかたちも、教育のかたちも変えていった。ハーモニーゼーションである。その背景にグローバル化に伴う財界の要請がある。

改めて言うまでもなく小泉首相の後継者として、構造改革=新自由主義の路線をさらに急進的に進めているのが、安倍首相である。そのためか、本書は構造改革=新自由主義がたどってきた歴史の一部としても読める。

『構造改革政治の時代』の続編とも言えるのが、『安倍政権と日本の危機』(大月書店、渡辺治・岡田知弘・後藤道夫・二宮厚美著)である。本書で興味深いのは、安倍政権の位置づけである。

安倍政権は、一見すると極右的な復古主義の思想のもとで、戦前型の軍事大国化を狙っているような印象があるが、基本的には米国や財界の要請に応じて、米軍との共同作戦が可能な派兵のかたちを目指している。

政治家個人の思想と政策はかならずしも一致しないとする見解も的を得ている。政治を動かしているのは、むしろ財界であり、米国である。政治家個人の思想を超えて政治の力学が働いているのだ。

マスコミ報道に接しても、日本がどのように「国のかたち」を変えようとしているのかは見えない。そんなもどかしさを感じている層に推薦したい2冊だ。

2015年03月25日 (水曜日)

動画が示す新聞の折込広告の廃棄「折り込めサギ」の現場、広告主には秘密、「押し紙」問題と表裏関係に

「押し紙」の発生と表裏関係にあるのが、折込広告の水増し行為である。たとえば新聞販売店への新聞の搬入部数が3000部であれば、この中に「押し紙」が含まれていても、含まれていなくても、折込広告の搬入枚数は、(1種類につき)3000枚とする基本原則がある。この原則は、最近はなくなったが、つい最近まで健在だった。

そのために「押し紙」があれば、折込広告も過剰になる。これがいわゆる折込広告の水増し行為である。

冒頭の動画は、折込広告を梱包した段ボールを、広告主には秘密裡に、販売店から搬出して、「紙の墓場」(取集場所)へ運ぶ様子を撮影したビデオである。「紙の墓場」では、フォークリフトを使って、段ボールの荷卸しが行われた。

撮影対象は、岡山市内の山陽新聞販売店である。撮影年は2008年。

なお、ビデオに映っている段ボール箱は、山陽新聞社の販売会社が提供していたことが、店主が起こして勝訴した「押し紙」裁判の中で認定されている。次の記述である。

「同社は各販売センターに段ボール及び荷紐の提供をしており(認定事実〈2〉カ)、これらが販売センターに残存する新聞の処理等に用いられていた可能性は高い上、山陽新聞販売の営業部長等は各販売センターへの訪問に際し、同センターに残存している新聞を目にしていたはずであるから、押し紙の可能性を認識していたことは推認される。」

■「押し紙」裁判の判決・段段ボール使用を認定した箇所

なお、判決によると、段ボールの使用目的は「新聞の処理等」になっているが、店主らによると、おもに折込広告の処理に使われてたという。

日本新聞協会は今なお公式には「押し紙」の存在を認めていない。しかし、ビデオに記録された事実を否定することはできない。

新聞関係者は、軽減税率の適用を求める前に、まず、「押し紙」と折込広告の水増し行為を中止すべきだろう。

2015年03月24日 (火曜日)

遁走・負傷、救助されて、「安心して号泣してしまいました」、チュニジアのテロに巻き込まれた結城法子・陸上自衛隊3等陸佐(少佐)の手記、自衛隊の海外派兵に「暗雲」

23日付けの産経新聞(電子)が、「結城さんが手記 朝日記者の怒声に『ショック…』 国際報道部長が謝罪『重く受け止めおわびします』」と題する記事を掲載した。

これはチュニジアでテロに巻き込まれた自衛隊員・結城教子氏が、公表した手記の中で、病院に同氏を取材に訪れた朝日新聞記者を日本大使館員が制したところ、「取材をさせてください。あなたに断る権利はない」と怒鳴ったというもの。

チュニジアの博物館襲撃テロで負傷し、首都チュニスのシャルル・ニコル病院に入院中で陸上自衛隊3等陸佐の結城法子さん(35)=東京都豊島区=は20日、共同通信など一部メディアに手記を寄せ、「現実のこととは思えませんでした」と事件当時の恐怖を振り返った。

 また、結城さんは手記で、朝日新聞記者と日本大使館員の取材をめぐるやりとりについて「『取材をさせてください。あなたに断る権利はない』と日本語で怒鳴っている声が聞こえ、ショックでした」と記した。

 これを受け、朝日新聞の石合力・国際報道部長は朝日新聞デジタルのホームページ(HP)に「取材の経緯、説明します」と題した見解を掲載し、「記者には大声を出したつもりはありませんでしたが、手記で記されていることを重く受け止め、結城さんにおわびします」と謝罪した。

◇産経新聞の編集者が考えるニュース価値は?

この記事を読んだとき、わたしは産経新聞の編集者が考えるニュース価値とは何かを考えた。不当に取材を制限されて抗議したことに、どのようなニュース価値があるのか、わたしにはさっぱり分からない。

大半の記者が取る態度ではないだろうか。取材を妨害されて、引き下がるのはどうかと思う。それが産経の方針らしいが。

むしろ結城氏が巻き込まれたテロ事件でニュース価値があるとすれば、ベテランの自衛隊員であっても、戦闘になれば、冷静に対処できず、遁走した事実である。負傷者の側に入った事実である。これは今後、自衛隊の海外での軍事活動を考える上で参考になるのでは。

結城氏は、手記で次のように述べている。

銃を持った警察が助けに来てくれた時には安心して号泣してしまいました。母を助けるようにお願いしましたが、歩ける人が先と言われ、私は母と別れ救急車へ連れていかれました。

実際の戦闘と演習では、まったく状況が異なる。それは型の練習ばかりを繰り返している空手家が、実践になれば、まったく通用しない原理と同じである。「安心して号泣」するようでは、戦闘には参加しないほうがいい。

自衛隊のベテランでも、戦闘になれば恐怖を感じる証。日本人は戦闘にはむかない。

2015年03月23日 (月曜日)

「その言葉、単価でXX万円」、名誉毀損裁判と言論・人権を考える(2)、高額請求と想像力の問題

山崎貴子さん[仮名]が小川紅子・五郎夫婦[仮名]を名誉毀損で訴えた裁判の実態を検証するルポ、連載の第2回目である。裁判の概要は、連載原稿の(1)に記したとおりであるが、ひとことで言えば、小川夫婦のブログに対して、山崎さんが総計で約3200万円を請求し、さらに請求額を増やすことを訴状で公言したことである。

この裁判の取材を通じて、わたしは幾つかの留意すべき事実に遭遇した。もっとも留意点として位置づけた背景には、わたしがあるべき姿と考えている裁判の形があるが、法曹界の人々にとっては、留意に値しない可能性もある。が、少なくともごく普通の「市民」の視線には、この裁判は尋常ではない裁判と映るのではないか?

◇金銭請求の方法

まず、第1に感じた異常は、名誉毀損に対する損害賠償額の請求方法である。
連載(1)で手短にふれたように、この裁判では、原告が問題とする表現を、「名誉毀損」、「名誉感情侵害」、「プライバシー権侵害」、それに「肖像権侵害」に分類した上で、それぞれに単価を付け、その総数を基に損害賠償額を計算していることである。こんな請求方法はこれまで見たことがなかった。詳細は次の通りである。

【単価】
① 「名誉毀損」:10万円
② 「名誉感情侵害」:5万円
③ 「プライバシー権侵害」:5万円
④ 「肖像権侵害」:5万円

【指摘件数】
総計:417件

通常は、一括して500万円を請求したり、1000万円を請求してくるが、この裁判では、「単価×件数」で損害賠償額を割り出していたのである。

原告は、上記の額に加えて、請求を追加すると訴状で述べている。

◇3200万円の「お金」の意味

ちなみに3200万円という請求額も、普通の「市民」感覚からすれば尋常ではない。辣腕弁護士であれば、半年で稼ぐことも可能な金額かも知れないが、大半の勤労者の5年から7年分ぐらいの給料に相当する。実際にこの金額を貯蓄するためには、少なくとも15年ぐらいは要する。

他の名誉毀損裁判では、5000万円、あるいは1億円といった大金を請求したケースもある。これは名誉毀損的表現を犯した場合、殺人犯なみに、生涯をかけて賠償することを求めているに等しい。普通の金銭感覚を欠いた措置と感じる。
仮に私人宅に見知らぬ人々がいきなり押しかけてきて、

「ブログで誹謗・中傷されたから3200万円を払え。後からさらに追加請求する」

と、言えば、警察沙汰になるだろう。

ところが裁判という形式を取れば、3200万円の請求もまったっく合法的行為になってしまうのだ。

人間には、感情が宿っている。かりにそれが想像できなくなっている「知識人」が増えているとすれば、その背景に社会病理が横たわっているのではないか。

◇原告の陳述書には完全な閲覧制限

この裁判の3つ目の留意点は、原告・山崎さんの陳述書に閲覧制限がかかっている事実である。

裁判の公開原則から、訴訟記録は、だれでも裁判所で閲覧できる。第3者は原則として複写はできないが、閲覧はできる。

そこでわたしも東京地裁へ足を運び、この裁判の資料を閲覧しようとした。多量の書面があったが、その中でわたしが特に読みたかったのは、山崎さんの陳述書だった。ところが驚いたことに、山崎さんの陳述書に閲覧制限がかかっていたのである。

閲覧制限を申し立てたのは、弘中絵里弁護士らである。裁判所がそれを認めてしまったので、第3者であるわたしは閲覧ができなかった。

裁判を起こした原告本人の陳述書は、真実を見極めるために極めて重要だ。とりわけ請求額が3200万円にもなっているわけだから、提訴の正当性を検証する上でも、開示は必要不可欠だ。

ところがその陳述書に、裁判の当事者を除いて、誰も読むことができないような処置が施されているのである。つまり第3者の目で、陳述書の内容が真実かどうかがまったく検証できないようにされているのだ。そのために、たとえば山崎さんと面識がある人が、陳述書を読んで、内容の真実かどうかを検証する作業ができない。

おそらく陳述書にプライバシーにかかわることが記されているために、閲覧制限がかかったのだと思うが、たとえそうであっても秘密記載部分のみを特定して閲覧制限を申し立てればすむことだ。高額訴訟は提起したが、自分の陳述書を開示しないというのは、どう考えてもおかしい。

法廷に立たされた側-つまり被告にされた側の陳述書に対して、閲覧制限をかけるなどの配慮をするのであれば、まだ理解できるが、尋常ではない額のお金を要求している側の陳述書に完全な閲覧制限をかけることを、裁判所が認めているのである。

リーガルハラスメントに関しては、既に述べたように、妻の紅子さんが体調を崩して入院したのを受け、被告側が裁判期日の変更を申し立てたにもかかわらず結審してしまったことなどである。

また、原告が名誉毀損として指摘した表現などが400箇所を超えているのに、早々に結審したのも、普通の感覚からすればおかしい。検証には相当時間をかけて、金銭による賠償が妥当かどうかを判断すべきである。

繰り返しになるが、この裁判では、裁判の進行に多くの問題があるのだ。

2015年03月20日 (金曜日)

「対日直接投資推進会議」を開催、安倍首相も出席、「世界でいちばんビジネスがしやすい国」とは?

「対日直接投資推進会議」が3月17日に開催され、安倍晋三首相が出席した。これは安倍内閣の下で2014年4月に設置されたものである。この会議の目的を内閣府は次のように定義している。

対日直接投資を推進するため、投資案件の発掘・誘致活動の司令塔機能を担うとともに、外国企業経営者等から直接意見を聴取し、必要な制度改革等の実現に向けた関係大臣や関係会議の取組に資すること

ビジネスが国際化する中で、日本政府は日本企業の多国籍化を全面的にバックアップできるように、国のかたちを「改革」してきた。これに対して、「対日直接投資推進会議」は、海外から日本への投資を活発化させるための政策決定機関である。が、両者は表裏関係にある。同じ構造改革=新自由主義の導入策の中から生まれてきた。

17日に開催された第2回目の会議では、次の5点が決定された。結論を先に言えば、下記の「1」「4」は、枝葉末節の部分で小学生でも提案できることである。「5」は、部分的には本質的な部分に踏み込んでいるが、海外資本の誘致と密接にリンクしている構想改革=新自由主義の導入政策との関係は隠されたままになっている。

1,百貨店・スーパーマーケット・コンビニエンスストア等で外国語で商品を選んで買い物をいただけるよう、病気になったときも外国語で安心して病院で診療いただけるよう、車や電車・バスで移動する際も外国語表記で移動いただけるようにします。

2,訪日外国人が、街中のいろいろな場所で、我が国通信キャリアとの契約無しに、無料公衆無線LANを簡単に利用することができるようにします。

3,外国企業のビジネス拠点や研究開発拠点の日本への立地を容易にするため、すべての地方空港において、短期間の事前連絡の下、ビジネスジェットを受け入れる環境を整備します。

4,海外から来た子弟の充実した教育環境の整備を図るとともに、日本で教育を受けた者が英語で円滑にコミュニケーションが取れるようにします。

5,日本に大きな投資を実施した企業が政府と相談しやすい体制を整えます。また、日本政府と全国の地方自治体が一体となって、対日投資誘致を行うネットワークを形成します。

「5」は、要するに「日本に大きな投資を実施した企業」は、政府が全面的にバックアップすると断言しているのだ。

◇安倍内閣の負の実績

改めて言うまでもなく、国際競争の時代では、多国籍企業が相互に生存競争を演じることになる。日本企業が海外へ進出するのも、ひとつには人件費をはじめとしたコストを削減できるメリットがあるからだ。もちろん現地販売や現地でのサービス提供も可能になる。世界を市場にしなければ、生き残れないからにほかならない。

企業が海外へ移転してゆけば、当然、日本では産業が空洞化する現象が起こる。その日本に海外からの投資を呼び込むためには、多国籍企業にとって、「世界でいちばんビジネスがしやすい国」にしなければならない。それは同時に、日本国内の大企業にとってもメリットになる。

「世界でいちばんビジネスがしやすい国」に日本を変えるために、歴代の自民党内閣が断行してきたのが、構想改革=新自由主義の導入である。具体的に幾つかの政策をピックアップしてみよう。

、法人税の引き下げ。これは構想改革=新自由主義の政策を本格的に起動させた橋本内閣(1996年に成立)が着手した。法人税を段階的に引き下げている。

、法人税の引き下げで生じる財源不足を補うために、段階的に消費税を引き上げている。

、企業の税負担を減らすために、「小さな政府(中央)」を構築した。その結果、福祉の切り捨てが進んだ。さらに地方分権を進めようとしている。

、規制緩和で中小企業の淘汰を進めている。その一方で、大企業による医療や農業などへの進出も可能になった。

、労働法制の改悪。たとえば、企業がコストを削減できるように、派遣労働の規制緩和を進め、「生涯非正社員」への道を開いた。解雇のハードルも引き下げている。

、司法制度改革で法科大学院を設置して、企業法務を専門とするバイリンガルの弁護士を多量に養成した。同時に、裁判員制度を導入するなど、欧米を基準とした司法のハーモニーゼーションを進めた。

、大学を多国籍企業の即戦力となる人材育成の場に変えてしまった。少数のエリートを育成する一方で、大学を淘汰することで、財政支出を抑える政策を進めている。

、構想改革=新自由主義の導入により浮上してきた不満やストレスを抑制するために、「心の教育」(たとえば、第1次安倍内閣による「美しい国プロジェクト」)を進めている。形はどうであれ、安倍内閣の教育政策の基本になっているのは、儒教的な観念論教育である。

、「8」に関連して、特定秘密保護法などを制定して、治安の強化に乗り出している。盗聴法も強化された。

10、海外派兵の体制を整え、多国籍企業の「不測の事態」に対処する道を開こうとしている。

11、NHKの例に典型的に現れたように、ジャーナリズムを「政府広報」に変質させることで、これらの政策のPRを図っている。マスコミはアベノミックスを宣伝してきたが、構造改革=新自由主義の導入で、大企業が業績を延ばすのは当たり前である。その事と国民全体の生活レベルが向上することは、まったく別問題である。

■外国企業の日本への誘致に向けた5つの約束

2015年03月19日 (木曜日)

パーティー収入が1200万円、参加者は不明、「八紘一宇」発言の自民党・三原じゅん子議員の政治資金収支報告書

政治資金収支報告書(2014年公開の2013年度分)によると、自民党の三原じゅん子議員の収入は、1364万9869円である。その大半は、パーティー収入である。

同報告書によると、三原議員は2013年2月21日に東京・赤坂のANAインターコンチネンタル・ホテルで「三原じゅん子さんを励ます会」を開いた。この時の収入は、1225万円だった。

パーティー券を購入したのは、610人であるが、参加者の氏名や所属は不明。だれが政治献金をおこなったのかは分からない。

このほかの収入としては、少額の個人献金が総計で約100万円。さらに(株)トムススピリットから、30万円を受け取っている。

■三原議員の政治資金収支報告書PDF

◆「八紘一宇」

国会質問で物議をかもした「八紘一宇」は、第2次世界大戦中に中国や東南アジアへの侵攻のスローガンになったことで知られている。「東亜新秩序」の実現を目指す当時の極右軍事政権の下で、悪用された経緯があり、今後、外交問題になる可能性もある。

三原議員は、「八紘一宇」について、自身のウエブサイトの中で次のように述べている。

『八紘一宇とは、世界が一家族のように睦(むつ)み合うこと。一宇、即ち一家の秩序は一番強い家長が弱い家族を搾取するのではない。一番強いものが弱いもののために働いてやる制度が家である。

これは国際秩序の根本原理をお示しになったものであろうか。現在までの国際秩序は弱肉強食である。強い国が弱い国を搾取する。力によって無理を通す。強い国はびこって弱い民族をしいたげている。

世界中で一番強い国が、弱い国、弱い民族のために働いてやる制度が出来た時、初めて世界は平和になる。日本は一番強くなって、そして天地の万物を生じた心に合一し、弱い民族のために働いてやらねばならぬぞと仰せられたのであろう。』ということです。

2015年03月18日 (水曜日)

電磁波と健康被害、従来の説を再考する時期か? エネルギーが低いから安全とは限らない

最近、分からなくなっているのが、電磁波の強度と健康被害の関係だ。従来は、エネルギーが高ければ高いほど、健康被害を引き起こすリスクが高いとされていた。だれもがそれを信じて疑わなかった。

ところが昨年、東北大学が行った昆虫にLEDを照射する実験で、両者の間には、必ずしも因果関係があるとは限らないことが分かった。

実験では、378~732nm(波長が短かければ短いほどエネルギーが強い)のLEDをショウジョウバエのサナギに照射して、羽化できない割合を調べた。その結果、467nmの波長が最も殺虫力が強いことが分かったという。

また、ドイツで行われた携帯電話のSAR値の違いによるネズミの発ガン率を調べる実験でも、電磁波のエネルギーが高いから危険で、低いから安全だという結果にはならなかった。

参考:携帯電話のSAR値の安全評価に新見解、被曝量が少なくてもガン化を促進、ドイツの大学が動物実験の結果を公表 

こんなふうに電磁波に関する従来の考え方を再考する動きが現れている。

その際、最も大事なのは、人間を対象にした疫学調査をすることである。東北大学の実験では昆虫を使い、ドイツの実験ではネズミを使った。いずれも人間が対象になっていない。

動物実験で得られたデータが、そのまま人間に当てはまるとは限らない。しかし、予防原則の観点からすれば、電磁波の謎が解明されるまでは、携帯基地局の設置は、禁止すべきである。

また、携帯電話やスマートフォンの販売に際しては、高いリスクがあることを説明するように義務づけるべきだろう。

2015年03月17日 (火曜日)

携帯電話のSAR値の安全評価に新見解、被曝量が少なくてもガン化を促進、ドイツの大学が動物実験の結果を公表

携帯電話の説明書に明記されている「比吸収率SAR」とは、人体が電磁波に被曝した時、単位質量に吸収される仕事率(ワット)のことで、日本の場合、10 gの組織が6分間電磁波を浴びたときの許容値として2 W/kgを採用している。国ごとにSAR規制値がある。

携帯電話の機種ごとにSAR値は異なるので、SAR値は携帯電話購入のさいの重要な検討事項になる。とはいえ電磁波によるリスクの認識が浸透していない日本では、SAR値を考慮せずに機種を選んでいる人も少なくないが。

政府や企業から独立して電磁波に関する情報を提供しているニューヨークの『マイクロ波ニュース』(Microwave News )は、3月13日、SAR値の安全基準に疑問を呈する動物研究の結果を報じた。

タイトルは、『高周波のガン化促進:動物実験が波乱を起こす――ドイツのアレックス・レーヒルがUターンした』である。

実験の主導者は、低レベルの高周波曝露効果は偽科学であると長年にわたり主張してきた、ドイツJacobs大学のレーヒル教授。同氏は、この説を自ら覆したのである。

ネズミの子宮に発癌物質として知られるENUを投与した上、第3世代携帯電話の電磁波を放射し、SAR値と発癌の関係を調べ、リンパ腫はもちろんのこと、肝臓と肺の腫瘍も有意に増えることを見い出した。

◆マイクロ波の発癌性、グレードアップされる可能性

ドイツの毒物学・実験医学の研究機関に属するトーマス・ティルマン氏が2010年の研究発表で、高周波の低レベル効果は「顕著」と明言していたにもかかわらず、従来から、SAR値が高くなればなるほど発ガンを促進すると考えられていた。今回のJacobs大学の、より大規模な実験により、この低レベル効果が再確認されたことになる。

実験で用いたSAR値は0.04 W/kg、0.4 W/kg、それに2 W/kgであった。あるケースでは、被爆量が少ないほどガン化が促進された。例えば、日本の人体規制値である2 W/kg曝露より低い、SAR値(1/50, 1/5)曝露で、リンパ腫の発生率が増加することを見い出している。

1990年代の、ECから多額の資金援助を受けた動物実験(PERFORM-A)では、有効な被爆を確保するために動物を拘束しストレスを与えたため、結果の評価が曖昧で、全体の試みは失敗に帰していた。今回ドイツ連邦放射線防護局の支援をうけたレーヒルの新研究は、動物を自由に運動できるようにしたことで、過去の多くの研究にくらべ優位にある。

以上をまとめると、今回の実験は、先行実験の結果を裏付けると同時に、SAR値と発ガンの関係や、発ガン物質を投与されたネズミがマイクロ波(パルス性RF放射線)に被曝した時、肝臓、肺、リンパ節に腫瘍が発生する確率が飛躍的に高くなることを明らかにした。

2011年にWHOの外郭団体である国際ガン研究機関(IARC)は、マイクロ波の発癌性の可能性(2Bランク、possible)を認定している。当時IARCは、動物実験からガン化促進を言うには「証拠が限定」されていると述べていた。

ニューヨーク州立大学Albany校で公衆・環境衛生研究所長をつとめる著名なディビッド・カーペンター教授は「この新研究は、先行研究と相俟って、IARCの人間のガン化分類を2A(probable)に押し進めるより強力な事例となる」と『マイクロ波ニュース』のインタビューに応えた。