1. 護憲を訴える野中広務氏、しかし、誰が1999年の国会で周辺事態法、盗聴法、国旗・国家法、改正住民基本台帳法を成立させたのか?

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2015年03月27日 (金曜日)

護憲を訴える野中広務氏、しかし、誰が1999年の国会で周辺事態法、盗聴法、国旗・国家法、改正住民基本台帳法を成立させたのか?

与党協議会で新たな安全保障法制整備の骨格が明らかになった。20日に発表された共同文書には、集団的自衛権の行使容認、多国籍軍への後方支援、自衛隊の任務拡大などが明記されている。

これらの方針を具体化するために、安倍内閣は周辺事態法や自衛隊法の「改正」へ向けて動き始める。

そもそも軍事大国化への分岐点は、いつの時期なのだろうか。長期的な視点で見ると、それはソ連と東側諸国が崩壊して、「先進国」による新市場の獲得競争が始まった時期である。米国が世界の「警察」に名乗りを上げ、その後、「警察」の役割を各国で分担する多国籍軍の方向性が生まれた。

言論の抑圧などソ連にさまざまな問題があったとはいえ、社会主義圏が崩壊して、世界はかならずしも平和と共存の方向へは進まなかった。むしろ先進国による資源の収奪などの問題が発展途上国で起きるようになり、従来とは違ったかたちの紛争が続発している。

日本が軍事大国化に踏み出したのは、橋本内閣の時代であるが、それを急進的に進めたのは、小渕内閣である。1999年の第145通常国会で軍事大国化へつながる法案を次々と成立させたのである。具体的には、

※周辺事態法
※盗聴法
※国旗・国家法
※改正住民基本台帳法

このうち周辺事態法は、2015年の国会で、「改正」されようとしている。

軍事大国化=スパイ国家の原点ともいえるこれらの法律を成立させた小渕内閣で官房長官を務めていたのは、「影の総理」とも言われた野中広務氏である。野中氏は、村山内閣の時代には国家公安委員長も務めている。

◇過去にあまい日本人の国民性

わたしがどうしても解せないのは、2015年の時点で、野中広務氏が憲法9条の堅持を強く訴えている事実である。わたし自身は護憲派であるから、野中氏の活動により、憲法9条の意味について考える人々が増えるのであれば、それ自体は好ましいと考えているが、同時に違和感も払拭できない。

無論、人は成長の過程でみずからの思想や生き方を変えることがある。しかし、「国のかたち」を激変させ るための法整備で中心的な役割を果たした人物が、その後、見解を変更するのであれば、過去の思想や行動のどの部分が間違っていたのかをかなり詳細に明らかにするのが常識ではないかと思う。

野中氏個人は、もともと反戦思想の持ち主だったが、「政治の力学」が働いて、財界と米国の求めに応じ、自分の意思に反して軍事大国化を押し進めた可能性もある。が、たとえそうであっても、野中氏の言動で、国民全体が大きな影響を受けたのであるから、「政治の力学」は口実にはならない。

また、国民の側もこうした点を曖昧にすべきではないだろう。