1. 「春の新聞週間」、「押し紙」など新聞社経営の汚点がジャーナリズムを堕落させる、新聞に対する軽減税率の適用にも重大問題

新聞社の経営難に関連する記事

2015年04月10日 (金曜日)

「春の新聞週間」、「押し紙」など新聞社経営の汚点がジャーナリズムを堕落させる、新聞に対する軽減税率の適用にも重大問題

4月6日から12日までの一週間は、日本新聞協会が設けている「春の新聞週間」である。この間、新聞や新聞社系のウエブサイトに新聞をPRする記事が掲載されるようだ。

たとえば茂木健一郎氏は、「ネット時代こそ、新聞で脳を鍛える」と題する記事(朝日新聞デジタル 4月8日)で、「時代の記録において新聞紙面に勝る物はない」と述べている。

新聞週間に関連する記事の一部は、日本新聞協会から新聞各社に配信されているようだ。3月21日付けの業界紙『新聞情報』によると、新聞協会の「新聞メディアの強化に関する委員会は、春の新聞週間用記事として、インタビュー記事と軽減税率に関する解説記事を配信する」という。このうちインタビュー記事に登場するのは次の方々。

※AKB48の内山奈月
※茂木健一郎
※鎌田實

また、新聞協会は「米プリンストン大のポール・スター教授に『新聞の公共性と知識課税』をテーマに寄稿を依頼した」という。

◇新聞は紙面の質で勝負するもの

このような実態に読者は違和感を感じないだろうか?新聞協会が主導して新聞各社に指示を出し、新聞のPRを展開していることになるからだ。しかも、タレントや作家にPRの協力を求めているのだ。

本来、新聞は紙面そのものがPRであるはずだ。スクープを連発したり、タブーに挑戦したり、さらにはルポを連載したりして、紙面の質を高めることがPRになる。ところが、日本の新聞社は一般企業が自社製品をCMで宣伝するように、自社の紙面を著名人を使ってPRしているのだ。

新聞販売の現場では、高価な景品を提供して新聞を購読してもらう慣行が延々と続いてきたが、同じことが紙面でも行われるようになっているのだ。

景品を提供しなければ読んでもらえない新聞とは何か?あるいはタレントを使わなければ読んでもらえない新聞とは何か?

この異常な事態に加えて、今年の新聞週間は、「軽減税率に関する解説記事を配信する」という。つまり著名人を使って新聞をPRし、それに連動するかたちで、新聞に対する軽減税率の適用を訴える戦略を展開しているのだ。

◇経営上の汚点が報道自粛の原因

日本の新聞社が欧米なみの調査報道ができない最大の要因は、経営上の汚点が多いからだ。具体的には、「押し紙」、折込広告の水増しである。また、既得権のひとつである再販制度を守りたいという思惑もある。さらに軽減税率という新たな既得権を得ることを業界の目標にしているので、報道を自己規制せざるを得なくなっている。

かりに新聞社が公権力の腐敗を暴く調査報道を続けたと仮定しよう。何が起こるのだろうか?わたしの予測は次の通りである。

①公取委が「押し紙」問題を摘発する。
②警察が折込広告の水増しにメスを入れる。
③政府が再版制度を撤廃して規制緩和を進める。
④政府が新聞に対する軽減税率の適用を見送る。
⑤政府や官庁が公共広告の出稿を控える。
⑥労基署が販売店の労務にメスを入れる。
⑦公取委が新聞の景品付き販売を禁止する。
⑧警察が新聞の勧誘を取り締まる。

①から⑧は、いずれも公権力による新聞経営への介入である。メディアに対する攻撃は、紙面よりも、むしろ経営上の汚点に対して加えられる。紙面の批判に新聞社は痛痒を感じない。「見解の相違」と反論すれば十分だからだ