経済同友会の提言が露呈する多国籍企業の防衛戦略としての海外派兵、国際貢献は口実
安保法制や改憲をめぐる報道で常に隠蔽(いんぺい)されているのは、多国籍企業を政変から防衛するための海外派兵体制の構築という視点である。
わたしがこの視点の重要性に気づいたのは、1985年に中米紛争を取材した時期である。中米は、米国のフルーツ会社などの裏庭である。
豊富なフルーツが港から船で運びだされる光景を飢えた人々が見守っている地域である。そこで政変やゲリラ活動がはじまると、たちまち米国が軍事介入してきた。
このような構図が最も典型的に現れたのがニカラグア革命とその後の内戦である。79年のサンディニスタ革命の後、米国は「反政府ゲリラ」を組織し、ニカラグアと国境を接するホンジュラスを米軍基地の国に変えて、新生ニカラグアの転覆に乗り出した。
多国籍企業の防衛部隊としての海外派兵の性質が露呈したのである。
ソ連が崩壊した後、世界に巨大な新市場が開け、企業の多国籍化が進んだ。中国による市場開放もこれに拍車をかけた。
自衛隊を海外へ派兵する動きが生まれたのはこうした時期である。日本による海外派兵は、PKOから始まり、その後、周辺事態法、テロ特措法による派兵、有事法制へと進み、2014年には、解釈改憲が閣議決定された。さらにいま、安保法制の「改正」が国会で議論されている。
次に示すのは、今世紀に入ってから経済同友会が日本の軍事大国化について行った主な提言である。各提言から重要な箇所を抜粋した。全文はPDF。
こられの提言を読むと、多国籍企業の防衛戦略としての海外派兵が財界人の意中にあることがはっきりする。米軍と協力して、多国籍企業を防衛する体制を打ち立てようとしていることが明確に分かる。
医師関係の2団体から自民党の政治資金団体へ3億円の献金、業界団体による変わらぬ高額献金の実態
自民党の政治資金団体である国民政治協会へ献金しているのは、企業だけではない。業界団体も多額の献金をしている。
次に紹介する資料は、政治資金収支報告書(2014年度公開の13年度分)のうち業界団体からの献金を記録した箇所だ。ただし、ここで紹介するのは、業界団体の中央本部からの献金だけで、これ以外にも、地方支部からの献金が記録されている業界団体もある。
大口の献金者をリストアップしてみよう。
政治献金で左右される自民党政治、トヨタから自民の政治資金団体・国民政治協会へ6400万円、伊藤忠から1800万円、パナソニックから1400万円
政府が打ち出す政策の方向性を決定づける大きな条件のひとつは、政治献金の提供である。そのことは古くから指摘され、問題視されてきた。実行は伴わないものの、政治献金は禁止すべきとの議論も断続的に行われてきた。
政治献金の提供は半ば慣行化していて、改まる気配がない。金銭感覚がおかしくなり、政治家に罪悪感もないようだ。
次に示すのは、自民党の政治資金団体である国民政治協会への政治献金のうち、企業からの提供実態を示す部分である。企業名や金額などが明記されている。(政治資金収支報告書2014年度公開の13年度分)
献金額が多い企業(1000万円超)は次の通りである。
トヨタ自動車・・・6440万円
伊藤忠商事・・・・1800万円
日本生命保険・・・1700万円
パナソニック・・・1400万円
スズキ・・・・・・1285万円
(このほか業界団体からの大口献金もある)
露骨に道州制の導入を主張、橋下大阪市長が共同代表を務める「道州制推進知事・指定都市市長連合」、メンバーに松井大阪府知事や川村名古屋市長らも
大阪都構想の行き着く先である道州制の構図は、橋下大阪市長が、村井宮城県知事と共同代表を務める「道州制推進知事・指定都市市長連合」の主張に色濃く反映している。
結論を先に言えば、同連合の主張は、「小さな中央政府」を構築するために、地方にできることは、国ではなく地方が行なうべきだというものである。具体的には、福祉・医療・教育などである。
そして、地方には出来ないものについては、国が担うことになる。
「道州制推進知事・指定都市市長連合」が2102年7月に発表した「地域主権型道州制の基本的な制度設計と実現に向けた工程」と題する文書によると、同連合が想定している国の分担領域は次の通りである。
○国の事務は、①国家の存立に関わる事務、②国家戦略の策定、③国家的基盤の維持・整備、④全国的に統一すべき基準の制定に限定する。
○内政分野における国全体の基本戦略・計画や統一的な政策の方針・基準は必要最低限のものとする。
○国が制度の基本計画・基準等を定める場合でも、その実施主体は、民間で実施するものを除き、原則として基礎自治体又は道州とする。その際、基礎自治体及び道州に弾力的な運用を可能とする権限を付与する。
大阪市の都構想をめぐる住民投票、マスコミが争点をはずした道州制の問題
大阪市が実施した都構想の住民投票が否決された。
この結果は、1996年に成立した橋本内閣の時代から歴代自民党政府が押し進め、安倍内閣の下で頂点に達している新自由主義=構造改革が、道州制導入という最終段階に来て、「NO」を突きつけられたことを意味する。
もっとも、マスコミが今回の住民投票の本質的な争点を隠していたので、都構想に「NO」を表明した人のうち、どの程度が都構想の根底に道州制導入への野心があることに気づいていたかは定かではないが。郷里としての大阪市が失われることに対して、「NO」を表名した人も少なくないかも知れない。
が、それはともかくとして、大阪市民は大変な悲劇の到来を食い止めた
安保法制の裏に何が隠されているのか?多国籍企業の防衛部隊としての自衛隊、経済同友会の提言から読み解く
政府は14日に開いた臨時閣議で、安全保障関連法案を決定した。
これにより集団的自衛権の行使が可能になる。具体的には、日本が外国から武力攻撃を受けていなくても、同盟国が攻撃対象になった場合、自衛隊が武力を行使することができる。法案は、15日に国会に提出される。
海外派兵をどう解釈するのかという問題で、政府やマスコミが常に隠蔽(いんぺい)しているのは、グローバリゼーションが進む中で、多国籍企業の防衛部隊としての軍隊という側面である。
これが現代の海外派兵の本質といっても過言ではないが、国際貢献やテロ撲滅のための国際協力といった口実でごまかされてきた。
14日に安倍首相が行った記者会見でも、多国籍企業の要求としての海外派兵という論点は語られなかった。また、記者から、この点を追及する質問もでなかった。が、実はこの点が最も肝心な部分なのだ。
財界は露骨に海外派兵体制の構築を求めてきた。そのことは、たとえば経済同友会がこれまで発表してきた提言を検証すると見えてくる。一例をあげると、2012年2月の「世界構造の変化と日本外交新次元への進化」と題する提言がある。そこでは、露骨に自衛隊の海外派兵必要論が展開されている。
だれが舞台裏で日本の政策を決めているのか? 安倍内閣の教育再生実行会議にアフラックや三菱重工の関係者
新聞やテレビを通じて政治を監視しても、だれが根底で政策の方向性を決めているのかが明確に見えてこない。輪郭が浮上しない。これに対してインターネットを駆使すると、政策決定のプロセスを読み取るデータが現れる。
日本人の多くが認識していない問題のひとつに、選挙で選ばれていない人々が、内閣設置の委員会などに参加して、直接に政策を方向付ける役割を担っている事実がある。日本に構造改革=新自由主義を導入しようとしているのは、保守系の政治家と官僚だけではない。彼らと関係が深い人々までが、政策の策定にかかわっているのである。
国会議員の人数が少ないことも、こうした問題を引き起こす原因であるが、政府が恣意的に政策の方向性をコントロールすることを意図して、有識者らにそのためのアリバイ的な役割を求めている可能性も否定できない。
たとえば新自由主義の教育改革を推進している安倍内閣の管轄下には、教育再生実行会議がある。ここに名を連ねている「有識者」は次の通りである。
安倍内閣の政策に直接関与する選挙で選ばれていない人々、サントリーの新浪剛史 社長ら、深刻な議会制民主主義の危機
1990年代の半ばから日本の財界が政界に対して一貫して求めてきたのは、構造改革=新自由主義の導入だった。現在、安倍内閣の下で進行しているドラスチックな構造改革に決定的な影響力を持っているのは、次のグループである。
■経済財政諮問会議
■日本経済再生本部
■規制改革会議
■国家戦略特別区域諮問会議
これらのグループの特徴は、安倍首相が「長」を務めていることである。また、日本経済再生本部を除くグループの中に、政治家以外の人々、具体的には財界の代表や識者が多数加わっていることである。
選挙で選ばれた国会議員が政策の方向性を決めるのであれば問題はないが、財界や識者の意向が政策に反映される仕組みになっている。以下、経済財政諮問会議、規制改革会議、それに国家戦略特別区域諮問会議を構成するメンバーのうち、選挙で選ばれていない人々の氏名を明記しておこう。
安倍内閣の政策に直接関与する選挙で選ばれていない人々、深刻な議会制民主主義の危機
1990年代の半ばから日本の財界が政界に対して一貫して求めてきたのは、構造改革=新自由主義の導入だった。現在、安倍内閣の下で進行しているドラスチックな有識者議員 秋池 玲子 ボストンコンサルティンググループ
シニア・パートナー&マネージング・ディレクター
同 坂根 正弘 株式会社小松製作所相談役
同 坂村 健 東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授
同 竹中 平蔵 慶應義塾大学総合政策学部教授
同 八田 達夫 アジア成長研究所所長構造改革に決定的な影響を持っているのは、次のグループである。
■経済財政諮問会議
■日本経済再生本部
■規制改革会議
■国家戦略特別区域諮問会議
これらのグループの特徴は、安倍首相が「長」を務めていることである。また、日本経済再生本部を除くグループの中に、政治家以外の人々、具体的には財界の代表や識者が多数加わっていることである。
選挙で選ばれた国会議員が政策の原案を作成するのであれば問題はないが、財界や識者の意向が政策に反映される仕組みになっている。以下、経済財政諮問会議、規制改革会議、それに国家戦略特別区域諮問会議を構成するメンバーのうち、選挙で選ばれていない人々の氏名を明記しておこう。
米国の上下両院合同会議の演説で安保関連法案の成立を約した安倍首相が考える軍事大国のイメージ、自民党の「新『防衛計画の大綱』策定に係わる提言」に青写真
安倍首相が29日に米国の上下両院合同会議で演説した。その中で、安保関連法案を「この夏までに、成就させます」と約束した。
自民党が構想している軍事大国とは、具体的にどのようなものなのだろうか。
同党が2013年6月4日に公表した「新『防衛計画の大綱』策定に関する提言」を紹介しよう。
そこには自衛隊を米軍のパートナーとすることを前提とした、軍事国家の未来像が描かれている。軍事大国化の口実になっているのは、中国や北朝鮮の脅威、国際舞台でのテロの多発などである。
提言は、「安全保障政策の基盤となる重要課題」について、次のように述べている。
「『国防軍』の設置を始め、わが国における国防の基本理念を明確にするための『憲法改正』や『国家安全保障基本法の制定』、総理の強いリーダーシップの下で外交・防衛政策を推進するための官邸の司令塔機能としての『国家安全保障会議』(日本版NSC)の設置、日米同盟の抜本的強化の観点からの集団的自衛権などの法的基盤の整備や日米ガイドラインの見直しなどへの早急な取り組みが求められている。」
具体的には、
1,国防軍の設置
2,憲法改正
3,国家安全保障基本法の制定
4,国家安全保障会議(日本版NSC)の設置
5,日米ガイドラインの見直し
これらの項目の中には、すでに実現しているものもある。
このうち国防軍を設置するにあたっては、「内閣総理大臣を最高指揮官として定める」という。これは、純粋な軍事政権とはいわないまでも、軍事政権に近いスタイルである。
また、国家安全保障会議の設置に際しては、情報保全のために、秘密保護法を制定するとも述べている。秘密保護法が、日米共同作戦を前提とした安保関連法のひとつであることを如実に示している。
統一地方選挙、自民党と共産党の対立構造が徐々に鮮明に、新自由主義=構造改革の導入の是非をめぐる対立点
今回の統一地方選の特徴は、自民党と共産党が議席を伸ばしたことである。特に共産党は、全国41の道府県議会選挙で、前回の75議席から111議席へと大きく議席数をのばした。
日本の政治の対抗軸は、新自由主義=構造改革を導入するのか、それともそれを止めるのかという点と、軍事大国化を進めるのか、それともそれを止めるのかという2点に集約される。このような対立構造に、政党の政策を当てはめると、若干の幅はあるものの、前者の政策を提唱しているのは、自民党、民主党、維新の会などである。
特に維新の会は、道州制を提唱するなど、急進的な新自由主義=構造改革の路線を取っている。自民党よりもさらに「右」である。
これに対して後者は、共産党と社民党である。特に共産党は、新自由主義=構造改革と軍事大国化の導入には全面的に反対している。それが政策の中心と言っても過言ではない。
しかし、このような客観的な構図は国民の間でなかなか理解されていない。あたかも自民党と民主党が基本的な政策で対立しているかのような報道が行われてきたからだ。
自民党と民主党の違いは、新自由主義=構造改革の導入と軍事大国化をドラスチックに進めるのか、それともゆるやかに進めるかの違いにすぎない。スピードの違いだけであって、根本的な相違点はない。これが二大政党制のからくりである。
実際、民主党の原点ともいえる1993年に成立した細川政権は、新自由主義=構造改革の遅れにいらだった小沢一郎氏らが、自民党を飛び出して結成したグループである。改革派には違いないが、新自由主義=構造改革の急進的な導入こそが「改革」と考える人々だった。
新自由主義=構造改革と軍事大国化をめぐる政界の対立構造が国民の間で理解されるようになってきたのは、つい最近のことである。共産党は、昨年12月に行われた衆院選でも躍進している。同じ流れが、今回の統一地方選挙でも現れた。
護憲を訴える野中広務氏、しかし、誰が1999年の国会で周辺事態法、盗聴法、国旗・国家法、改正住民基本台帳法を成立させたのか?
与党協議会で新たな安全保障法制整備の骨格が明らかになった。20日に発表された共同文書には、集団的自衛権の行使容認、多国籍軍への後方支援、自衛隊の任務拡大などが明記されている。
これらの方針を具体化するために、安倍内閣は周辺事態法や自衛隊法の「改正」へ向けて動き始める。
そもそも軍事大国化への分岐点は、いつの時期なのだろうか。長期的な視点で見ると、それはソ連と東側諸国が崩壊して、「先進国」による新市場の獲得競争が始まった時期である。米国が世界の「警察」に名乗りを上げ、その後、「警察」の役割を各国で分担する多国籍軍の方向性が生まれた。
言論の抑圧などソ連にさまざまな問題があったとはいえ、社会主義圏が崩壊して、世界はかならずしも平和と共存の方向へは進まなかった。むしろ先進国による資源の収奪などの問題が発展途上国で起きるようになり、従来とは違ったかたちの紛争が続発している。
日本が軍事大国化に踏み出したのは、橋本内閣の時代であるが、それを急進的に進めたのは、小渕内閣である。1999年の第145通常国会で軍事大国化へつながる法案を次々と成立させたのである。具体的には、
※周辺事態法
※盗聴法
※国旗・国家法
※改正住民基本台帳法
このうち周辺事態法は、2015年の国会で、「改正」されようとしている。
軍事大国化=スパイ国家の原点ともいえるこれらの法律を成立させた小渕内閣で官房長官を務めていたのは、「影の総理」とも言われた野中広務氏である。野中氏は、村山内閣の時代には国家公安委員長も務めている。
「対日直接投資推進会議」を開催、安倍首相も出席、「世界でいちばんビジネスがしやすい国」とは?
「対日直接投資推進会議」が3月17日に開催され、安倍晋三首相も出席した。これは安倍内閣の下で2014年4月に設置されたものである。この会議の目的を内閣府は次のように定義している。
対日直接投資を推進するため、投資案件の発掘・誘致活動の司令塔機能を担うとともに、外国企業経営者等から直接意見を聴取し、必要な制度改革等の実現に向けた関係大臣や関係会議の取組に資すること
ビジネスが国際化する中で、日本政府は日本企業の多国籍化を全面的にバックアップできるように、国のかたちを「改革」してきた。これに対して、「対日直接投資推進会議」は、海外から日本への投資を活発化させるための政策決定機関である。が、両者は表裏関係にある。同じ構造改革=新自由主義の導入策の中から生まれてきた。
17日に開催された第2回目の会議では、次の5点が決定された。結論を先に言えば、下記の「1」「4」は、枝葉末節の部分で小学生でも提案できることである。「5」は、部分的には本質的な部分に踏み込んでいるが、海外資本の誘致と密接にリンクしている構想改革=新自由主義の導入政策との関係は隠されたままになっている。
1,百貨店・スーパーマーケット・コンビニエンスストア等で外国語で商品を選んで買い物をいただけるよう、病気になったときも外国語で安心して病院で診療いただけるよう、車や電車・バスで移動する際も外国語表記で移動いただけるようにします。
2,訪日外国人が、街中のいろいろな場所で、我が国通信キャリアとの契約無しに、無料公衆無線LANを簡単に利用することができるようにします。
3,外国企業のビジネス拠点や研究開発拠点の日本への立地を容易にするため、すべての地方空港において、短期間の事前連絡の下、ビジネスジェットを受け入れる環境を整備します。
4,海外から来た子弟の充実した教育環境の整備を図るとともに、日本で教育を受けた者が英語で円滑にコミュニケーションが取れるようにします。
5,日本に大きな投資を実施した企業が政府と相談しやすい体制を整えます。また、日本政府と全国の地方自治体が一体となって、対日投資誘致を行うネットワークを形成します。
「5」は、要するに「日本に大きな投資を実施した企業」は、政府が全面的にバックアップすると断言しているのだ。