1. 露骨に道州制の導入を主張、橋下大阪市長が共同代表を務める「道州制推進知事・指定都市市長連合」、メンバーに松井大阪府知事や川村名古屋市長らも

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2015年05月20日 (水曜日)

露骨に道州制の導入を主張、橋下大阪市長が共同代表を務める「道州制推進知事・指定都市市長連合」、メンバーに松井大阪府知事や川村名古屋市長らも

大阪都構想の行き着く先である道州制の構図は、橋下大阪市長が、村井宮城県知事と共同代表を務める「道州制推進知事・指定都市市長連合」の主張に色濃く反映している。

結論を先に言えば、同連合の主張は、「小さな中央政府」を構築するために、地方にできることは、国ではなく地方が行なうべきだというものである。具体的には、福祉・医療・教育などである。

そして、地方には出来ないものについては、国が担うことになる。

「道州制推進知事・指定都市市長連合」が2102年7月に発表した「地域主権型道州制の基本的な制度設計と実現に向けた工程」と題する文書によると、同連合が想定している国の分担領域は次の通りである。

○国の事務は、①国家の存立に関わる事務、②国家戦略の策定、③国家的基盤の維持・整備、④全国的に統一すべき基準の制定に限定する。

○内政分野における国全体の基本戦略・計画や統一的な政策の方針・基準は必要最低限のものとする。

○国が制度の基本計画・基準等を定める場合でも、その実施主体は、民間で実施するものを除き、原則として基礎自治体又は道州とする。その際、基礎自治体及び道州に弾力的な運用を可能とする権限を付与する。

■「地域主権型道州制の基本的な制度設計と実現に向けた工程」の全文

◆憲法改正も視野に

繰り返しになるが医療・福祉・教育などは、地方の分担となる。そうなると財源不足を理由に、地方自治体がこれらのサービスを切り捨てることになりかねない。地方の財政状況は相対的に悪化を続けている。憲法の精神に基づいて、国が国民の生存権や尊厳を守る体制はなくなってしまう。

事実、同文書は、彼らが目指すものが憲法に抵触する事態を避けるために、「道州制の理念を実現するため、必要と認められる事項については、憲法改正を視野に入れた制度設計等の検討を排除するものではない」とまで述べている。

医療・福祉・教育を新市場として企業に提供することをベースとする新自由主義「改革」のもとで、道州制の理論が浮上している事実は、重大視しなければならない。公共サービスを切り捨てて、それを市場として企業に提供する可能性が極めて強い。それが現在の安倍政権の方針でもある。

しかし、新自由主義者は、何が目的でこうした極端な企業優遇策を提案するのだろうか。改めて言うまでもなく、それは企業の国際競争力を高めるためである。大企業が国際競争力をつけて利益をあげれば、それが国民に還元されるとする単純な考えである。

が、この考えは誤っている。現在の多国籍企業は、現地生産・現地販売・現地サービスの類型が主流となっており、収益は海外のタックスヘイブンなどに蓄積される。日本国民がその恩恵を受けることはない。

それどころか国境なき企業競争の下で、日本国内においても海外とのハーモニーゼーションの必要性に迫られ、労働法制の改悪により、賃金レベルが下がっているのである。

幸いに道州制の布石である大阪都構想は失敗した。橋下市長は、政界からの引退を決めた。新自由主義=構造改革は支持されなかったのだ。

シャッター が下りた商店街を日本の津々浦々に広げたのは、新自由主義=構造改革の政治である。政治家や評論家が「改革」を強調するとき、われわれは誰のための「改革」なのか、その中身を吟味しなければならない。

ちなみに「道州制推進知事・指定都市市長連合」には、松井一郎大阪府知事や名古屋市長の川村たかし氏も名を連ねている。地方政党が新自由主義=構造改革の受け皿として登場した背景がかいまみえる。