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2020年10月27日 (火曜日)

新聞社が避けたい「押し紙」裁判、提訴の前段で販売店が強く抗議すれば「解決金」は高くなる

残紙問題が深刻になる状況下で、メディア黒書への情報提供も増えている。先日は、朝日新聞の残紙の実態を収録した動画が送られてきた。残紙の回収ルートを知らせてくれた人もいる。

ABC部数の激減は、残紙の排除が進んでいることを意味するが、それでも依然として残紙はなくならない。

新聞販売店の経営は悪化の一途をたどり、廃業を検討している店主が増えているようだ。

日本新聞販売協会が8月に発表した「新型コロナウイルスの影響に関するアンケート」によると、71.5%の店主が、1000万円以上の借金をかかえている。経営が苦しいと回答した店主が93%にものぼった。

こうした状況の中で、「押し紙」裁判も増えている。

◆◆
しかし、新聞発行本社は、「押し紙」裁判を極端に嫌がっているようだ。そこで提訴に至る前に金銭解決するケースが増えているらしい。多くの新聞関係者がそんなふうに証言している。

つまり廃業に際して販売店が、新聞社に抗議すれば、それなりの金銭解決に至る可能性が高い。抗議すれば、抗議するほど金銭は高くなる。

濱中・読売裁判でも、提訴に至る前段で、読売の喜田村洋一弁護士は、濱中さんの弁護団に対して、書面で、

 濱中氏はYC大門駅前を経営していた間、回答者(注:読売)に対し、長年にわたって部数の増減に関して虚偽の報告を続けていました。回答者が「押し紙」行為を行っていた事実はなく、貴職らが主張する不当利得返還請求や債務不履行に基づく損害賠償請求には理由がありません。

と、述べたあと、次のような提案をしている。

 なお、回答者としては、濱中氏が上記の虚偽報告を行っていたことを認めるのであれば、話し合いに応じることを検討する用意がありますので、この旨、付言します。

金銭解決を検討するとは書いていないが、濱中氏が不正行為を認めれば、交渉に応じるというのだから、論理が完全に破綻している。普通、不正行為を認めれば、処罰を検討するものなのだが。

この記述からは、「押し紙」裁判だけは絶対に避けたいという読売の弱みが読み取れる。少なくともわたしは、そんなふうに解釈した。

読売は、「押し紙」をしていないのであれば、堂々と法廷でそれを主張すれば、いいだけの話ではないか。2009年の対新潮社裁判でも、「押し紙」は一部も存在しないと主張していたはずだが。

◆◆

参考までに、読売の宮本友丘専務(当時)が、対新潮社の「押し紙」裁判で行った証言(2010年11月16日、東京地裁)を紹介しておこう。喜田村弁護士の質問に答えるかたちで、次のように証言した。

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。

 

 

 

新聞業界--公序良俗違反のデパート、残紙、ABC部数の改ざん、技能研修性の使用

民法90条を根拠として、残紙の無効と損害倍書を主張する潮流が生まれはじめている。

【民法90条】公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

ウェブサイト上のHP「民法の基本」は、次のように公序良俗を解説しいている。

  伝統的な学説は、公序良俗概念を社会的妥当性の意味に捉えて、社会的妥当性を欠く行為を絶対無効であるとしてきた。だが、近時は、公序良俗概念を再構成する試みがある。有力な見解として、社会的公序と経済的公序を対比させたり、個人の基本権保護と結び付けて考えたりする学説がある。これらの学説の特徴は、公序良俗に反する行為を類型化することによって、違反の効果を柔軟に判断する点にある。

◆◆
専門的な解釈と運用は、法の専門家にゆだねるとして、ジャーナリズムの観点から、新聞業界の中で明らかに公共の秩序を乱している行為をクローズアップしてみよう。

【押し紙】新聞社が新聞販売店に対して不必要な新聞部数を押し売りする行為を、広義に「押し紙」という。しかも、その規模は尋常ではない。

読売・濱中訴訟では、搬入される新聞の約50パーセントが残紙となっていた。読売・平山訴訟でも、やはり50%近い残紙があった。ただし、後者に関していえば、裁判所は残紙の中身を、「積み紙」と認定して読売の賠償責任を免責した。

【積み紙】「積み紙」とは、新聞販売店が折込広告の水増しを目的として自主的に買い入れた新聞のことである。折込広告の搬入枚数は、新聞の搬入部数に一致させる基本原則があるので、新聞1部の卸原価よりも、新聞1部が生み出す折込広告収入の方が多ければ、「積み紙」は販売店に損害を与えない。逆に利益をもたらす。

昔から、「新聞販売店は折込広告だけで成り立っている」と言われてきた。

わたしの取材では、「積み紙」行為は特にバブルの時代に横行していたが、折込広告の需要が減った現在は行われていない。ただし、自治体の広報紙の折込に関しては、依然として水増しされている場合が多い。

「積み紙」も「押し紙」も、広告主に対する詐欺行為と表裏関係になっており、公序良俗に違反する。契約は無効である。

このようなビジネスモデルを構築したのは新聞社である。

【ABC部数の改ざん行為】日本ABC協会は、新聞販売店に対して新聞発行部数の公査を実施している。その際に、新聞社の指導下で、日本ABC協会に提出する新聞の扱い部数に関する書類を改ざんしている事実が明らかになっている。

販売店が管理しているPC上の読者名簿に保存されている元読者を、現在の購読者に分類変更して読者名簿を改ざんし、それに連動してニセの領収書を発行する手口である。こうして残紙部数を実配部数に偽るのだ。

毎日新聞販売店でこの改ざん作業を行っていた人物(株式会社デュプロの元社員)の証言から、その手口が明らかになっている。他のコンピュータ管理会社も同じ手口で、取引先の新聞販売店で改ざん作業を行っているとの証言が、メディア黒書に多数寄せられている。

佐賀新聞の「押し紙」裁判の判決の中でも、販売局員が販売店に、ABC公査対策として改ざんを指示していた事実が認定されている。

【景品を使った新聞拡販】景品表示法で規制されている景品の限度額を大幅に超えた新聞拡販が横行してきたことは周知の事実である。テレビ、電子レンジ、自転車などが景品になっていた。

消費生活センターは、昨年、毎日新聞販売店と産経新聞販売店、それに産経新聞大阪本社に対して、措置命令を下した。

現在は影を潜めているが、かつては暴力的な新聞拡販が横行していた。暴力団を装って新聞購読契約を強制したケースもある。

【新聞配達員に関する労務問題】新聞配達員に関する労務問題は昔からあった。新聞奨学生を酷使して、問題になることは少なくない。現在は、安い賃金でベトナム人などの外国人を使っている。近い将来は、技能研修性の採用も検討している。

【政治献金】メディア企業でありながら、日本新聞販売協会の政治連盟が、自民党議員と公明党議員に政治献金を贈っている事実も、ジャーナリズムとしての新聞の特殊な性質上、容認できる行為ではない。

2020年10月24日 (土曜日)

「押し紙」と折込広告の水増しを柱とした新聞社のビジネスモデルそのものが公序良俗違反

残紙問題を考える重要な視点として、公序良俗違反がある。残紙の性質が「押し紙」であろうが、「残紙」であろうが、大量の紙を廃棄する行為が公序良俗に違反していないか。あるいは日本経済が好調だった時代、実配部数だけではなく残紙部数に対しても折込広告を割り当て、最終的にそれを廃棄していた行為は公序良俗に反していなかったか。(上写真:右は残紙の山、左は水増しされた江戸川区の広報紙の山)

(現在は、折込広告の水増しは、ほぼなくなっている。ただし、地方自治体の広報紙の新聞折り込みに関しては、情況は変わっていない。むしろ悪化しているようだ。)

また、新聞拡販の際に高価な景品類を提供したり、威圧的な言動によって、半ば強制的に契約を締結させる行為についても、公序良俗違反の観点から再考してみる必要がある。「再考」と書いたのは、この問題に関しては、消費生活センターがすでに問題視しているからだ。

周知のように、大阪府の消費生活センターは、2019年度に産経新聞・販売店と産経新聞本社、それに毎日新聞・販売店に対して、新聞拡販時に高額景品を使用していたことを理由として、行政指導(措置命令)を行った。厳密に言えば、高額景品の使用を禁じた景品表示法に違反したことが処分の根拠になった。

残紙と景品表示法の問題は、近年に始まったことではない。1980年ごろから水面下の問題になってきたのである。公権力がそれを放置して、メディアをコントロールする構図が存在してきたのである。「飴と鞭」の政策にほかならない。【続きはウェブマガジン】

2020年10月23日 (金曜日)

裁判所が「押し紙」の定義の明確化を求める、読売の代理人は喜田村洋一・自由人権協会代表理事、残紙率50%の読売・濱中裁判の第1回口頭弁論

読売新聞・YC門前駅前店の元店主・濱中勇志さんが8月に、読売新聞大阪本社に対して起こした「押し紙」裁判の第1回口頭弁論が、10月22日の午後、大阪地裁で開かれた。

原告の訴状、それに対する被告・読売新聞の答弁書の提出を確認した後、池上尚子裁判長は原告に対して、「押し紙」の定義をより具体的に示すように求めた。これは読売側が、答弁書の中で釈明を求めている事柄でもある。

今後の裁判の進行については、口頭弁論(公開)の形式で行われることになった。

「押し紙」裁判は、これまで弁論準備(非公開)のかたちで行われることがよくあったが、マスコミが注目している裁判なので公開での審理を希望すると原告が表明したのを受けて、読売もそれに同意した。

読売の代理人は、喜田村洋一・自由人権協会代表理事ら5人の弁護士が務める。喜田村弁護士は、かねてから読売には「押し紙」は1部も存在しないと主張してきた経緯がある。読売新聞も日本新聞協会も同じ見解である。

読売は、濱中裁判でも基本的に同じ主張を展開する可能性が高い。

原告の代理人は、江上武幸弁護士ら6人が務める。江上弁護士は、「押し紙」を水面下の問題から、表舞台に出した2度に渡る真村裁判の弁護団長を務めた。第1次訴訟では、福岡高裁が、読売による「押し紙」政策を認定(2007年)した経緯がある。この判決を受けて、『週刊ダイヤモンド』などの雑誌が次々と「押し紙」問題を提起した。

しかし、読売が『週刊新潮』とわたしに対して名誉毀損裁判を起こしたあと、「押し紙」報道は下火になった。

第2回の口頭弁論は12月17日の11:45分から行われる。

◆読売の「求釈明」

読売は答弁書の「求釈明」の節で中で、「押し紙」の定義と具体的な「押し紙」の証拠を示すように釈明を求めている。次のくだりである。

原告の主張する「必要部数」、「押し紙」、「仕入れ単価」などの根拠及びその証拠を示すよう(黒薮注:原告に)求めるとともに、被告が上記①(黒薮注:下記参考)ないし③の行為(黒薮注:下記参考)を行ったことについて、だれが、いつ、どこで、なにを、どのように行ったのかという詳細についての具体的な主張及び証拠を示すように求める」

①と②は以下と通りである。

①原告がその経営上真に必要であるとして実際に販売している部数にいわゆる予備紙等(被告代理人註:この「予備紙等」との表現の「等」に何が含まれているのかは不明である。)を加えた部数(必要部数)を超えて供給する方法(注文部数超過行為)

③2280部という定数を定めて当該部数を仕入れるように指示する方法(注文部数指示行為)

【「押し紙」裁判の解説】
従来の「押し紙」は、今年の5月に販売店勝訴の判決が下りた佐賀地裁のケースを除いて、販売店で残紙になってた部数が、「押し紙」なのか、それとも「積み紙」なのかが最大の争点になってきた。

「押し紙」というは、簡単に言えば、新聞社が押し売りした部数のことである。これに対して「積み紙」というのは、販売店がみずから注文した部数のことである。販売店がみずから過剰な部数を注文する場合がある背景には、新聞の搬入部数に対して折込広告の搬入枚数が決まる基本原則があることや、残紙を含む搬入部数に対して新聞社が補助金の額を決めるなどの事情がある。

しかし、最近は広告主が自主的に折込広告の発注部数を減らすことが多く、「新聞の搬入部数=折込広告の搬入部数」の原則が崩れているというのが、常識的な見方である。PR手段が多様化する中で、折込広告の需要は大幅に下落している。

ただし、地方自治体の広報紙については、この不正な商慣行が依然として維持されている。

「押し紙」の定義は、裁判所が残紙の性質を判断するための前提条件になる。過去の判例では、残紙の性質が「押し紙」なのか、それとも「積み紙」なのかの判断で、判決の明暗も分かれてきた。残紙の存在は認定するが、その中身は「積み紙」と判断した判例が多い。

しかし、2010年ごろから、残紙の性質を「押し紙」と認定した上で、販売店が和解勝訴するケースが増えている。

佐賀新聞の「押し紙」裁判では、裁判所は、新聞の実配部数に予備紙を加えたものを新聞販売店が真に必要な部数とした上で、それを超える部数は理由のいかんを問わず、「押し紙」と認定した。残紙は、「積み紙」ではないと判断したのだ。

「押し紙」の定義を明らかにして、それを前提に残紙の性質を検証しようというのが、これまでの裁判の共通した争点である。「押し紙」裁判は、販売店が損害賠償を求める裁判であるから、損害の有無の検証は当然である。

しかし、ジャーナリズムの視点からすると、それ以前の問題がある。残紙の性質が「押し紙」であろうが、「積み紙」であろうが、大量の残紙そのものが社会通念からして、公共の秩序を乱しているとする視点である。濱中裁判のケースでは、搬入されていた新聞の約50%が残紙になっていた。なぜ、このようなビジネスモデルが放置されきたのか?

新聞のビジネスモデルそのものが公序良俗違反に該当する可能性が高い。公序良俗違反について、民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」と明記している。

原告は、裁判の中で公序良俗違反を主張するものと見られる。

この裁判を通じて、日本の新聞社のビジネスモデルを考える必要があるだろう。

 

【資料】

■訴状

■「押し紙」一覧

真村訴訟福岡高裁判決

■読売新聞に関する全記事

 

 

 

2020年10月20日 (火曜日)

楽天の方針、欧州評議会の勧告値の20倍までの強度で通信基地局を操業、基地局周辺住民に懸念されるガンの罹患率上昇

電話会社による通信基地局設置に拍車がかかる中で、電磁波による人体影響が懸念されている。とりわけ5Gで使われるミリ波の安全性についての不安が広がっている。

昨日、総務省が定めている電波防護指針(安全基準)について、楽天に問い合わせをした。その中で楽天は、総務省の基準が示している数値で、健康被害を防止できると考える根拠について、「総務省が定めた数値であるから」と述べた後、次のような主旨の説明を付け加えた。

「われわれは国の基準の50分の1以下の電波の強さで、基地局を運用しているので問題はない」

総務省が定めている規制値は、1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)である。これに対して、たとえば欧州評議会は0.1μW/c㎡、(勧告値)である。日本の1万倍も規制が厳しい。

楽天が独自に決めている基準は、総務省の基準値の50分の1であるから、20 μW/c㎡ ということになる。確かに総務省の基準に比べるとはるかに厳しいが、欧州評議会の勧告値と比較すると、その200倍も緩やかだ。規制にはなっていない。

日本と欧州評議会で数値に大きな差がある理由は、日本がマイクロ波による「非熱作用」(遺伝子を破壊する作用など)を認定しない見解に立っているのに対して、欧州評議会は、「非熱作用」が生じるという見解に立っているからだ。

従って総務省の見解が間違っていれば、日本人の癌の罹患率は飛躍的に高くなるだろう。特に基地局周辺の住民は、遺伝子毒性による高いリスクを背負うことになる。

◆◆
ちなみにKDDI基地局の電磁波による被害を告発した延岡大貫訴訟の中で、被害を訴えた原告(基地局の直近に住んでいる人)宅の3Fでの電磁波密度は、4~5μW/c㎡ ぐらいのレベルだったと記憶している。

裁判は、原告の敗訴だった。この数値は、総務省の基準内であるから、KDDIによる操業は違法ではないとされた。しかし、基地局を中心に広範囲に渡って健康被害が発生したことは裁判所も認定した。(その原因をノセボ効果とした。)

楽天は、最大20 μW/c㎡で基地局を操業することを前提としているわけだから、延岡大貫訴訟で明らかになった被曝レベルよりも、はるかに強い電磁波で基地局を操業することを想定しているといえる。

今後、楽天基地局の周辺住民が健康被害を受けるリスクは高い。

楽天に限らず電話会社は、電磁波に関するトラブルが発生すると、常套手段として「総務省の基準を守っているから人体影響はない」と公言する。自治体もまったく同じスタンスである。総務省の基準そのものが異常だという指摘はどこからもなされない。

これは水俣病など過去の公害事件がたどった道である。

2020年10月16日 (金曜日)

新聞協会が佐賀新聞販売店を表彰、新聞大会で贈賞、「押し紙」による独禁法違反にはふれず

日本新聞協会は、10月8日、今年の「地域貢献大賞」を佐賀新聞の販売店に贈ることを発表した。受賞の対象になったのは、佐賀県多久市の佐賀新聞・東多久販売店の宮口昭博店主である。「2011年の販売店開業を機に、住民とのふれあいの場をつくり地域を元気にしたいとの思いで『多久ちんどん芸能隊』を発足させ、地域活性化に取り組んでいる」というのが受賞理由である。

宮口店主は、10月の新聞週間に開かれる新聞大会で表彰される。

過去に販売店が「地域貢献大賞」を受賞した例としては、警察と新聞販売店が連携して実施している住民の監視・見回り活動などがある。新聞配達の途中や、購読料の集金先で不信な人物を発見したときは、警察に通報する活動である。そのために警察のスパイ活動への協力ではないかとの批判も一部にある。

【参考記事】読売防犯協力会の正体、共謀罪法案の成立で新聞販売店と警察が連携した「住民監視活動」がはじまる

ところで佐賀新聞といえば、今年の5月に判決があった「押し紙」裁判で、独禁法違反の認定を受け、約1000万円の損害賠償金の支払いを命じられたばかりである。しかも、裁判を起こした販売店だけではなく、全販売店に対して、新聞を押し売りしていた事実が認定された。

いわば公正取引委員会が独禁法違反で介入すべき案件に直面しているのである。

しかし、日本新聞協会は、判決後も何の対策も取っていない。本来、不祥事があった新聞社やその系列販売店に対しては、贈賞などを控えるのが常識であるが、今回はあえて佐賀新聞の販売店を選んだ。これはある意味では、佐賀新聞の汚名隠しではないか。

日本新聞協会は、新聞業界に「押し紙」が存在することを未だに否定している。将来もこれまでの販売政策の過ちを認める可能性は低い。

 

2020年10月14日 (水曜日)

医学的根拠に乏しい日本禁煙学会の受動喫煙症・診断基準、藤井さんの支援者が論考を公表、横浜副流煙事件の闇

横浜副流煙裁判の控訴審判決(東京高裁)が、29日に下される。既報してきたように、第1審議の横浜地裁判決は、藤井将登さんの完全勝訴だった。そして最も注目すべき点は、判決の中で、作田学医師(日本禁煙学会理事長、一口坂クリニック)の医師法20条違反が認定されたことだった。

■事件の概要 

医師法20条は、患者を診察せずに診断書を作成する行為を禁止している。最近は、診療については、初診を除き、インターネットによる遠隔診療も部分的に容認されているが、診断書作成については、従来どおり禁止されている。診断書は一種の証明書であるから、それを診察しないで作成することは、患者の病状を誤って公式記録する誤りに繋がりかねないからだ。

ちなみに医師法20条は、死亡診断書につても、患者を診察せずに交付する行為を禁止している。同様の理由による。

控訴審でも、裁判所が作田医師による医師法20条違反をどう判断するかが、最大の注目的になっている。

こうした状況のもと、藤井さんの支援者が作田医師による診断方法を検証する論考をインターネットで公開した。

作田医師をはじめ、同医師が理事長を務める日本禁煙学会は、受動喫煙症の診断は、患者が自己申告した症状を最も重視すべきだという立場を取っている。その実態と考え方が、はからずもこの裁判の中で鮮明になった。

このような診断基準について第1審判決は、日本禁煙学会の政策目的が根底にあると認定した。つまり禁煙運動を進めるために、同学会が我田引水に診断基準を設けたもので、医学的根拠に乏しい可能性を示唆したのである。

今回、藤井さんの支援者が公表した論考は、この点に詳しく踏み込んでいる。

以下、リンク先である。タイトルは、「日本禁煙学会のダンマツマ」。

日本禁煙学会のダンマツマ

 

 

 

2020年10月13日 (火曜日)

読売は740万部、年間で52万部減、朝日は490万部、43万部減、8月のABC部数、販売店の経営悪化と人手不足、外国人の技能研修生の雇用へ

2020年8月のABC部数が明らかになった。朝日新聞は500万部を割った。前年同月差は、-43万部である。

読売新聞は、約740万部。前年同月差は-52万部となった。

ブロック紙では、中日新聞の前年同月差が約-10万部となった。裁判所が独禁法違反を認定した佐賀新聞は-3700部である。

全国の主要な新聞社のABC部数は次の通りである。

朝日新聞:4,991,642  (-430,340)
毎日新聞:2,097,843  (-233,650)
読売新聞:7,423,536  (-521,601)
日経新聞:2,065,973  (-227,832)
産経新聞:1,243,536  (-118,311)

北海道新聞:907,718(-35,248)
河北新報:409,918(-17,107)
東京新聞:414,145(-18,056)
中日新聞:2,084,519(-104,371)

京都新聞:393,603(-24,725)
神戸新聞:450,064(-28,957)
山陽新聞:319,680(-25,635)
西日本新聞:493,395(-53,325)

佐賀新聞:121,829(-3,721)
熊本日日新聞:257,003(-10,169)

次に示すPDF資料は、全国の新聞社の部数一覧である。

■8月のABC部数(全国一覧表)

◆◆
全国の日刊紙のABC部数の総計は、31,185,049部である。この1年間で2,234,758部が減った。東京新聞が5社倒産したに等しい。

折込広告の需要が急激に減っており、販売店に課せられている残紙の負担が増えている。こうした状況の下で新聞発行社は、残紙を減らす方向性を打ち出している。その結果、ABC部数が急落している可能性が高い。

販売店の経営悪化で労務問題は深刻になり、新聞業界は外国人の技能研修生を雇用する方向で動いている。政界もこれに連動する動きを見せている。

 

【参考記事2020年5月度のABC部数、朝日新聞は「500万部切れ」へカウントダウン、止まらぬ新聞発行部数の急落

2020年10月08日 (木曜日)

12月1日に産経「押し紙」裁判の判決、裁判官の交代で判決の方向性が変わる可能性も

「押し紙」裁判が多発しているなか、東京地裁は、12月1日に、産経新聞の「押し紙」裁判の判決を下す。既報してきたように、この裁判を起こしたのは、千葉県内の元販売店主である。請求額は、約2600万円。

この元店主は、毎日新聞や産経新聞、それに東京新聞などを配達していた。このうち毎日新聞に対して起こした「押し紙」裁判では、元店主が和解勝訴した。推定の和解金額は3500万円である。この和解勝訴を受けて、元店主は新たに産経新聞に対する損害賠償裁判を起こしたのである。

 ■訴状全文

わたしは2018年7月の提訴当時から、この事件を取材しているが、販売店の勝訴が確実視されていた。事実、裁判所は和解を提案し、産経側に一定の和解金を支払うように求めた経緯がある。

しかし、産経は和解に応じなかった。元店主も和解金よりも判決を希望した。その結果、裁判所が判決を下すことになったのである。従って常識的に考えれば、元店主が勝訴する可能性が高い。

ところが尋問が終了して結審直前になった段階で、コロナウィルス感染拡大の影響により、東京地裁は裁判所を閉鎖した。これが3月だった。この時点で原告は、結審したという認識だった。

ところが5月になって、わたしが裁判所に判決日を問い合わせたところ、裁判官が交代したことが分かったのだ。異動になったのは、裁判長と右陪席。それに代わって新しく野村武範裁判官と石神有吾裁判官が就任した。左陪席は交代しなかった。

裁判が結審する直前、あるいは結審した後に裁判官が交代した場合、判決の方向性が変わることがままある。

産経新聞の「押し紙」裁判は、このようなケースに該当する。従って、原告の販売店が敗訴する可能性も少なからずある。

とはいえ、判資料はすべて閲覧が可能なので、裁判所が公正な判断を下したか否かの検証は容易だ。

仮に産経新聞が敗訴した場合は、産経新聞が中央紙であることを考慮すると、「押し紙」問題に一気にメスが入る事態も起こりうる。新聞業界全体に影響が及ぶ。

12月1日の判決は見逃せない。

2020年10月05日 (月曜日)

10月22日に第1回口頭弁論、残紙率50%の読売新聞「押し紙」裁判、裁判所は「押し紙」の定義をどう判断するか?

読売新聞・YC門前駅前店の元店主・濱中勇志さんが8月に、読売新聞大阪本社に対して起こした「押し紙」裁判の第1回口頭弁論が10月22日に行われる。日時と場所は次の通りである。

日時:10月22日(木) 13時10分~ 

場所:大阪地裁 本館10階 1007号法廷にて

この裁判で予測される主要な争点としては、次のようなものがある。

1、YC門前駅前店で確認された残紙(供給部数の約50%)の性質について、裁判所が「押し紙」と判断するのか、それとも「積み紙」と判断するのか。これは従来の「押し紙」裁判の争点である。

2、「押し紙」の定義を裁判所がどう判断するか。独禁法を認定した佐賀地裁判決(被告・佐賀新聞社)は、新聞販売店が真に経営に必要な部数に予備紙を加えた部数を「必要部数」とした上で、それを超える残紙は、理由のいかんを問わずすべて「押し紙」と認定した。

3,YC門前駅前店では読者数が変動していたにもかかわらず、1年6ヶ月に渡って搬入(供給)部数が常に2280部に固定されていた事実を、裁判所がどう評価するか。

4、裁判所が、読売新聞社の公序良俗違反を認定するか。

【参考記事】「押し紙」で読売新聞を提訴、元販売店主…供給部数の5割が“残紙”、業界の闇が明るみに(ビジネスジャーナル)
  

■訴状

■「押し■訴状紙」一覧

 

2020年10月04日 (日曜日)

懸念される名誉毀損裁判への影響、忍び寄る組織(家庭)内部への干渉、自民党がリークした事実、杉田議員による「差別発言」の検証②

朝日新聞が、杉田水脈議員の「差別発言」問題を続報した。タイトルは、「『私たちウソついてない』性被害者ら、杉田水脈氏に抗議」。

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が性暴力の被害者への支援をめぐり「女性はいくらでもウソをつける」と発言した問題で、発言に抗議する「フラワーデモ」が3日夜、東京都内であった。被害を経験した人たちは「私たちはウソをついていない」と声を上げた。■出典

他社も続報記事を掲載している。テレビも続報した。
この問題を通じて、わたしは次の4点を危惧している。

1、「女性はいくらでもウソをつける」という発言が、全体の文脈が意図している内容を無視して、我田引水に使われていること。引用の方法が間違っている。

発言の内容を事実に基づいて客観的に伝えるというジャーナリズムの最低限のルールが守られていないことである。

2、杉田議員の意見表明を事実摘示(女性が嘘をつく性質であるという事実)にすり替えることの危険性。現在の名誉毀損裁判では、原則として意見表明は名誉毀損にはあたらないとされている。しかし、誤まった「反差別」運動や報道が、意見表明も不特定多数の人々に対する名誉毀損とする世論を生み出しかねない。

3、規制の範囲が、公共の場を超えて、「家庭内」や「組織内」にまで闖入してくることの危険性。このような社会風潮は、メディア黒書で取り上げてきた横浜副流煙裁判でも顕著に現れている。

4、この事件を自民党がリークした事実。

以下、詳しく見てみよう。

【1】引用方法の問題
新聞・テレビの報道は、「女性はいくらでもウソをつける」という表現は、女性が嘘をつく性質であるという事実を摘示したとして、それを批判する視点から報じているが、全体の文脈からすると、ここでいう女性とは、韓国の国会議員、尹美香(ユン・ミヒャン)氏のことであり、それを念頭に置いた意見表明である。杉田議員の説明の次の部分である。

ただ、民間団体の女性代表者の例を念頭に置いた話の中で、嘘をつくのは性別に限らないことなのに、ご指摘の発言で女性のみが嘘をつくかのような印象を与えご不快な思いをさせてしまった方にはお詫び申し上げます。

従って杉田議員の発言は事実を摘示したものではなく、朝日新聞の記事は杉田議員の発言を歪曲している。事実、当初、杉田議員は、そのような発言はしていないと弁解した。事実を摘示したという認識が自分には無かったから、そのように述べたのだろう。

【2】名誉毀損裁判への影響
名誉毀損裁判では、争点となっている表現が事実摘示の場合、それが真実であることを被告側が立証しなければならない。それが基本原則になっている。それが出来なければ、被告による名誉毀損が認定される。しかし、争点となっている表現が意見表明であれば、条件付きで免責される。

つまり意見表明は、正当な行為として認められているのである。かりに尹美香氏を念頭においた「女性はいくらでもウソをつける」という表現が、新聞・テレビの加勢で名誉毀損にあたるとする判例が生まれたら、意見を表明する行為そのものが抑制されてしまう。それが言論活動に及ぼす影響は計り知れない。

【3】家庭内、組織内への規制と干渉
周知のように、「女性はいくらでもウソをつける」は、自民党内部の会議の中で行われたものである。組織内の発言を、外部の圧力団体が弾圧することが許されるとすれば、独裁国家ということになってしまう。。

横浜副流煙裁判は、家庭内での節度ある喫煙に対して、規制を設けようとする日本禁煙学会の関係者がかかわっていた。公共の場での喫煙は規制されているが、それを家庭内にまで持ち込もうとしたのだ。

このように公権力は、複数の分野で、規制の範囲を家庭内や組織内へ持ち込もうとしているのだ。

【4】自民党から共同通信へのリーク
「杉田発言」で着目しなければならないのは、自民党が「差別発言」を共同通信へリークした事実である。最初から、新聞・テレビと市民運動を悪用する意図があったのではないか。

2020年10月03日 (土曜日)

非「西側メディア」の報道、米国とブラジルで感染者が多い理由

新聞・テレビが流す情報に、バイアスがかかっていることがままある。報道されていない部分や、我田引水に加工されている部分が少なくない。

たとえばコロナウィルスによる感染拡大の報道である。米国やブラジルで感染者の拡大が止まらない事実は伝えているが、その背景に何があるかには言及しない。それを解明するのが本来のジャーナリズムなのだが。その結果、これらの国々で感染者が多いのは、偶然であるかのような世論が形成されている。【続きはウェブマガジン】

2020年10月02日 (金曜日)

杉田水脈議員の「女性差別」発言、報道検証、リークと誤報に踊らされた市民運動

自民党の杉田水脈議員の「女性差別」発言をめぐる報道は、新聞・テレビの報道姿勢を改めて問うことになった。発端は新聞・テレビの事実上の誤報である。あるいは不正確な報道である。

新聞・テレビは、杉田議員が自民党内の会合で、「女性はいくらでもうそをつけます」と発言したことを、発言全体の文脈を考慮せず、差別発言として一斉報道した。女性というものはいくらでも嘘をつける性質であると摘示したとして、問題視したのだ。

ところが杉田議員が公表した発言全体の趣旨は、報道とは異なり、韓国の国会議員、尹美香(ユン・ミヒャン)氏を念頭に置いたものだった。尹議員は、元従軍慰安婦を支援する市民団体で発覚した不正会計疑惑の当事者として、9月14日に逮捕された。

杉田議員が自分のウエブサイトで公表した説明は次の通りである。一部を引用してみよう。

今回改めて関係者から当時の私の発言を精査致しましたところ、最近報じられている慰安婦関係の民間団体の女性代表者の資金流用問題の例をあげて、なにごとも聖域視することなく議論すべきだと述べる中で、ご指摘の発言があったことを確認しましたので、先のブログの記載を訂正します。事実と違っていたことをお詫びいたします。

私の発言の趣旨は、民間委託の拡充だけではなく、警察組織の女性の活用なども含めて暴力対策を行なっていく議論が必要だということであり、女性を蔑視する意図はまったくございません。

ただ、民間団体の女性代表者の例を念頭に置いた話の中で、嘘をつくのは性別に限らないことなのに、ご指摘の発言で女性のみが嘘をつくかのような印象を与えご不快な思いをさせてしまった方にはお詫び申し上げます。

◆◆
この説明で明らかなように、 「女性はいくらでもうそをつけます」という表現は、逮捕された尹美香議員を想定したものであって、女性一般の性質が嘘つきであることを摘示したものではない。単に自分の意見を述べたものである。ところが新聞・テレビは、女性の性質を摘示したとして、それを報じたのである。

これが公平で客観的な報道の構図である。

ところが市民運動家や国会議員が新聞・テレビの報道を検証することもなく鵜呑みにして、直ぐに行動を起こしてしまった。反差別の市民運動体は、Chang・orgで、杉田議員をバッシングするキャンペーンを開始した。ネット上のリンチに等しい。複数の国会議員が自民党に対して杉田議員の処分を求めた。

◆◆◆
この事件が異様なのは、杉田発言をリークしたのが、自民党の関係者であるとされている点だ。もしそれが事実であれば、杉田議員に対するバッシングを想定した上でのリークだったのではないか。言論を規制する世論を形成するという点では、格好の状況が生まれるからだ。

新聞・テレビは、報道の中で「差別者」の像を捏造することで、国民の反差別感情をあおり、市民運動家らにリアクションを起こさせて、杉田発言をリークした人物の期待に応えたのではないか。

市民運動の評価は慎重を要する。実生活に根差した地道な住民運動とは異質なので公権力に悪用されやすい。「賛同者はこの指にとまれ」では駄目なのだ。新聞・テレビが報道を自主規制したM君リンチ事件の取材でも感じことを感じた。

意見表明を処罰すれば、言論活動は成り立たない。