1. 懸念される名誉毀損裁判への影響、忍び寄る組織(家庭)内部への干渉、自民党がリークした事実、杉田議員による「差別発言」の検証②

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2020年10月04日 (日曜日)

懸念される名誉毀損裁判への影響、忍び寄る組織(家庭)内部への干渉、自民党がリークした事実、杉田議員による「差別発言」の検証②

朝日新聞が、杉田水脈議員の「差別発言」問題を続報した。タイトルは、「『私たちウソついてない』性被害者ら、杉田水脈氏に抗議」。

 自民党の杉田水脈(みお)衆院議員が性暴力の被害者への支援をめぐり「女性はいくらでもウソをつける」と発言した問題で、発言に抗議する「フラワーデモ」が3日夜、東京都内であった。被害を経験した人たちは「私たちはウソをついていない」と声を上げた。■出典

他社も続報記事を掲載している。テレビも続報した。
この問題を通じて、わたしは次の4点を危惧している。

1、「女性はいくらでもウソをつける」という発言が、全体の文脈が意図している内容を無視して、我田引水に使われていること。引用の方法が間違っている。

発言の内容を事実に基づいて客観的に伝えるというジャーナリズムの最低限のルールが守られていないことである。

2、杉田議員の意見表明を事実摘示(女性が嘘をつく性質であるという事実)にすり替えることの危険性。現在の名誉毀損裁判では、原則として意見表明は名誉毀損にはあたらないとされている。しかし、誤まった「反差別」運動や報道が、意見表明も不特定多数の人々に対する名誉毀損とする世論を生み出しかねない。

3、規制の範囲が、公共の場を超えて、「家庭内」や「組織内」にまで闖入してくることの危険性。このような社会風潮は、メディア黒書で取り上げてきた横浜副流煙裁判でも顕著に現れている。

4、この事件を自民党がリークした事実。

以下、詳しく見てみよう。

【1】引用方法の問題
新聞・テレビの報道は、「女性はいくらでもウソをつける」という表現は、女性が嘘をつく性質であるという事実を摘示したとして、それを批判する視点から報じているが、全体の文脈からすると、ここでいう女性とは、韓国の国会議員、尹美香(ユン・ミヒャン)氏のことであり、それを念頭に置いた意見表明である。杉田議員の説明の次の部分である。

ただ、民間団体の女性代表者の例を念頭に置いた話の中で、嘘をつくのは性別に限らないことなのに、ご指摘の発言で女性のみが嘘をつくかのような印象を与えご不快な思いをさせてしまった方にはお詫び申し上げます。

従って杉田議員の発言は事実を摘示したものではなく、朝日新聞の記事は杉田議員の発言を歪曲している。事実、当初、杉田議員は、そのような発言はしていないと弁解した。事実を摘示したという認識が自分には無かったから、そのように述べたのだろう。

【2】名誉毀損裁判への影響
名誉毀損裁判では、争点となっている表現が事実摘示の場合、それが真実であることを被告側が立証しなければならない。それが基本原則になっている。それが出来なければ、被告による名誉毀損が認定される。しかし、争点となっている表現が意見表明であれば、条件付きで免責される。

つまり意見表明は、正当な行為として認められているのである。かりに尹美香氏を念頭においた「女性はいくらでもウソをつける」という表現が、新聞・テレビの加勢で名誉毀損にあたるとする判例が生まれたら、意見を表明する行為そのものが抑制されてしまう。それが言論活動に及ぼす影響は計り知れない。

【3】家庭内、組織内への規制と干渉
周知のように、「女性はいくらでもウソをつける」は、自民党内部の会議の中で行われたものである。組織内の発言を、外部の圧力団体が弾圧することが許されるとすれば、独裁国家ということになってしまう。。

横浜副流煙裁判は、家庭内での節度ある喫煙に対して、規制を設けようとする日本禁煙学会の関係者がかかわっていた。公共の場での喫煙は規制されているが、それを家庭内にまで持ち込もうとしたのだ。

このように公権力は、複数の分野で、規制の範囲を家庭内や組織内へ持ち込もうとしているのだ。

【4】自民党から共同通信へのリーク
「杉田発言」で着目しなければならないのは、自民党が「差別発言」を共同通信へリークした事実である。最初から、新聞・テレビと市民運動を悪用する意図があったのではないか。