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2020年11月17日 (火曜日)

KDDIが通信基地局に関する説明を一方的に打ち切り、朝霞市岡の基地局問題、設置場所の賃借料は月額360円の異常、時系列ノート㉗

KDDIは、11月5日、筆者に対して一方的に通信基地局問題に関する質疑応答の打ち切りを通知した。これに対して筆者は、基地局設置場所(朝霞市城山公園内)を提供している朝霞市に対して、基地局を2020年度中に撤去するように申し入れた。

◆一方的な基地局設置

事件の発端は、KDDIが朝霞市岡3丁目の朝霞市城山公園内に、一方的に通信基地局を設置したことである。(KDDIが朝霞市に支払う賃借料は、月額で約360円である。非常識な価格設定である。)

筆者が設置計画を知って、KDDIに中止を求めたところ、KDDIは一時的に工事をペンディングにした。そして筆者からの質問に文書で回答するようになった。KDDIの言葉を借りると、基地局の近隣住民に対する説明である。

ところがその質疑応答が完了していな段階で、KDDIは一方的に基地局設置工事を再開した。これが8月である。現場で抗議すると、警察を呼んだ。これ自体が企業コンプライアンスにかかわる行為である。

その後も質疑応答は続いた。

◆総務省の規制値に関するKDDIの見解

質疑応答のひとつの争点は、総務省の電波防護指針の安全性である。 総務省の電波防護指針について、KDDIは次のように安全性を強調した。

我が国の電波防護規制値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が策定し、世界保健機関(WHO)が支持する国際的なガイドラインと同等であり、世界各国の研究結果を基に十分な安全率が適用されております。

これに対して、筆者は日本の総務省の電波防護指針は、1000マイクロワット・パー・センチメートルであり、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の規制値900マイクロワット・パー・センチメートルをはるかに超えている事実を指摘した。

KDDIは、筆者の指摘を認めた上で、次のように質疑応答の打ち切り通知してきた。

6月から4ヶ月余り、いただいたご質問に回答させていただきました。
最近のご質問は黒藪様のこれまでのご経験からすると熟知されている内容と思われますので今回の回答を持って終了とさせていただきます。

 

質疑応答を終わるに際して、筆者は、11月17日、KDDIに対して次の点を確認した。

朝霞市城山公園内のKDD基地局に関する質疑応答の打ち切りの件です。一方的に説明を打ち切るということであれば、次の点を確認しておきます。

1、貴社は近隣住民に対して説明義務を果たさなかった。

2、基地局設置場所の賃借料4300円(年間)は、標準的な価格の範囲から著しく逸脱している。

3、基地局設置に際しては、朝霞市、あるいは朝霞市のみどり公園課とKDDIの間で特別な取り決めがあった。

 以上について、疑義がある場合は、本日中にお知らせください。疑義がない場合は、連絡の必要はありません。

◆基地局撤去の申し入れ
また、朝霞市に対しては、2020年度中に基地局を撤去して、不当な賃借料の差額を市に返済するように求めた。11月6日付けの次の文書である。

 城山公園のKDDI基地局問題に関して、次の申し入れを行います。

1、 今年中に、基地局を撤去すること。

2、 問題の共有地の賃借料を仮に月間6万円と想定したうえで、市長は、実際の賃料360円との差額を朝霞市に支払うこと。

今月中に回答していたくようにお願い申し上げます。

時系列は、以下の通りである。

【11月17日】
黒薮から藤田氏へ通告。

藤田様

朝霞市城山公園内のKDD基地局に関する質疑応答の打ち切りの件です。
一方的に説明を打ち切るということであれば、次の点を確認しておきます。

1、貴社は近隣住民に対して説明義務を果たさなかった。

2、基地局設置場所の賃借料が4300円(年間)は、標準的な価格の範囲から著しく逸脱している。

3、基地局設置に際しては、朝霞市、あるいは朝霞市のみどり公園課とKDDIの間で特別な取り決めがあった。

以上について、疑義がある場合は、本日中にお知らせください。疑義がない場合は、連絡の必要はありません。

黒薮

■裏付け資料

 

【11月6日】
黒薮が朝霞市のみどり公園課に、問題の基地局を今年中に撤去するように通知した。

朝霞市みどり公園課
大塚課長

城山公園のKDDI基地局問題に関して、次の申し入れを行います。

1、 今年中に、基地局を撤去すること。

2、 問題の共有地の賃借料を仮に月間6万円と想定したうえで、市長は、実際の賃料360円との差額を朝霞市に支払うこと。

今月中に回答していたくようにお願い申し上げます。

黒薮

■裏付け資料

 

【11月6日】
黒薮から藤田氏に質問。

藤田様

今回をもって朝霞市城山公園の基地局問題の対応は、終わるとのことですが、わたしは、まだ明確にしてほしい事柄がたくさんあります。貴殿は、責任をもって対処する約束をされたはずですが。

今後、貴社の見解を確認せずに記事を書いたり、チラシを作成しても、抗議等を行わないと解釈してもよろしいでしょうか。取材拒否の扱いで、差支えないでしょうか。

黒薮

【11月5日】
 藤田氏から黒薮に対する回答。ICNIRPの規制値が900マイクロワット・パー・センチメートルであることを認めた上で、質疑応答の打ち切りを一方的に宣言してきた。

黒薮様

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、「時間変化する電界、磁界
及び電磁界による曝露を制限するためのガイドライン(300GHzまで)」として
公表しています。その中で、時間的に変化する電界及び磁界への公衆の曝露に関する参考レベルの記載があり、周波数によって算出式が異なります。

「900マイクロワット・パー・センチメートルで間違いないか」とのことで
すが、同ガイドラインでは400-2000MHzにおける電力密度の基準値は、f/200
(ワット/平方メートル )となっています。 *f=周波数(MHz)
逆算すると1.8GHzで算出したものと推測いたします。1.8GHzで算出した場合
、正確には、9(ワット/平方メートル)=900(マイクロワット/平方センチ
メートル)となります。

6月から4ヶ月余り、いただいたご質問に回答させていただきました。
最近のご質問は黒藪様のこれまでのご経験からすると熟知されている内容と思
われますので今回の回答を持って終了とさせていただきます。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

 ■裏付け資料

 

【10月29日】
黒薮から藤田氏へ。

藤田様

9月24日付けの貴殿の回答は次のように述べています。

「我が国の電波防護規制値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が策定し、世界保健機関(WHO)が支持する国際的なガイドラインと同等であり、世界各国の研究結果を基に十分な安全率が適用されております。」

念のために確認させていただきますが、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の規制値は、900マイクロワット・パー・センチメートルで間違いありませんか。

 

【11月5日】

藤田氏から黒薮へ。

黒薮様

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)は、「時間変化する電界、磁界
及び電磁界による曝露を制限するためのガイドライン(300GHzまで)」として
公表しています。

その中で、時間的に変化する電界及び磁界への公衆の曝露に関する参考レベル
の記載があり、周波数によって算出式が異なります。

「900マイクロワット・パー・センチメートルで間違いないか」とのことで
すが、同ガイドラインでは400-2000MHzにおける電力密度の基準値は、f/200
(ワット/平方メートル )となっています。 *f=周波数(MHz)
逆算すると1.8GHzで算出したものと推測いたします。1.8GHzで算出した場合
、正確には、9(ワット/平方メートル)=900(マイクロワット/平方センチ
メートル)となります。

6月から4ヶ月余り、いただいたご質問に回答させていただきました。
最近のご質問は黒藪様のこれまでのご経験からすると熟知されている内容と思
われますので今回の回答を持って終了とさせていただきます。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

■裏付け資料

2020年11月11日 (水曜日)

米国・民主党左派=社会主義者というとんでもない報道

米国大統領選の報道に接して、筆者が感じたことを、以下の4点に集約して記録しておこう。

1、民主党左派は社会主義者?

民主党の左派は、社会主義思想の持ち主だという報道があった。基礎学力を疑われかねないとんでもない誤報である。たとえば『プレジデント・オン・ライン』の次の報道である。

米国では今、社会主義が若者の間に広がっている。人種や年齢の差を超えて、社会主義の人気が高く、民主党在籍の議員たちの中に、社会主義を支持する人も少なくない。米国では、そんな彼らを「進歩主義者」と呼ぶが、その実態はと言えば、「社会主義者」である。■出典

民主党の中でも、サンダース上院議員が社会主義者の典型だという報道が独り歩きしている。そして多くの人々がそれを信じている。【続きはウェブマガジン】

2020年11月11日 (水曜日)

差別表現をめぐる部落解放同盟との論争、『紙の爆弾』(12月号)

『紙の爆弾』(2020年12月)の最新号は、筆者が寄稿した「徒(いたずら)に『差別者』を発掘してはならない」と題する一文を掲載した。内容については、同誌で確認してほしい。

この寄稿は、『紙の爆弾』の先月号から始まった「『士農工商ルポライター』は『差別を助長する』のか?」と題する連載企画の第2回の原稿である。

企画の発端は、同誌9月号が掲載した昼間たかし氏のルポの中で、昼間氏が使った次の表現に対して、部落解放同盟が鹿砦社側に釈明を求めたことである。

「『もうこのジャンルは書き終えたからやらない』と格好よく言いたいところだが、士農工商ルポライター家業。襤褸をまといあばやら暮らしもおぼつかない。だから、請われれば書いて、いま追いかけているテーマの取材費の足しにする」

この表現が、「差別を助長」するというのが、部落解放同盟の言い分である。これを受けて鹿砦社の松岡社長は、部落解放同盟に『紙の爆弾』誌上での論争を申し入れた。部落解放同盟もそれを承諾して、この企画が実現したのである。

タブー視されている差別表現についての論争である。本来であれば、朝日新聞あたりが取り上げなければならないテーマであるが、『紙の爆弾』が先陣を切ることになった。

なお、「士農工商」の後に職業を加えたレトリックは、昔から使われてきた。そのたびに部落解放同盟は、版元に釈明を求めてきた経緯がある。釈明を求められた側は、筒井康孝氏を除いて、謝罪してきた。

2020年11月09日 (月曜日)

「政治判断」の有無、12月1日の産経新聞「押し紙」裁判、もう一つの注目点

既報したように12月1日に東京地裁は、産経新聞の元販売店主が起こした「押し紙」 裁判の判決を下す。改めていうまでもなく最大の関心事は、判決の行方であるが、それと平行して、注目されているのは、司法による「政治判断」の有無である。

昔から新聞社がらみの裁判において裁判所は、新聞社に圧倒的に優位な判決を下す傾向がある。新聞社販売局の担当者の中には、店主に向かって、「あんらた裁判しても絶対に勝てないよ」と豪語している者もいる。

◆◆
新聞社による「押し紙」が公式に認定されたのは、2007年に最高裁で判決が確定した真村訴訟(原告:真村さん、被告:読売新聞)においてである。

真村裁判・福岡高裁判決

本来であれば裁判所は、この判例に基づいて、「押し紙」問題を解決する方向性を判決に反映させるべきだが、実態は必ずしもそうはなっていない。真村訴訟の後、裁判所が「押し紙」を認定したケースは、2011年の山陽新聞(岡山地裁)、2020年の佐賀新聞(佐賀地裁)の2件に過ぎない。後者については、独禁法違反を認定した。

とはいえ2010年ごろから、「押し紙」裁判を和解で解決する流れは顕著になっている。新聞社が解決金を支払って、事件を解決するパターンである。たとえば、毎日新聞のケース(原告は、前出の元店主)では、解決金の額が推定3500万円になった。

なぜ、和解解決なのか?

わたしの推測になるが、権力構造に組み込まれている新聞社の「押し紙」政策を認定する判決を書くことを、裁判官が嫌がるからである。その結果、和解の提案、解決金の支払いという流れになる。

たとえば毎日新聞・関町販売店(東京・練馬区)の裁判で、双方が和解することが決まった時、最も喜んだのは、裁判所長だった。この裁判は、非公開(弁論準備のかたち)のかたちで行われた。

(ただし、わたしは傍聴が許可された。)

なぜ、非公開になったのか?

裁判官が新聞社に配慮したことが原因としか考えられない。

なぜ、裁判所が新聞社の顔色を気にするのか?

その理由はわたしにも分からない。勘ぐれば、新聞社が権力構造の一部であることを、裁判官も感覚的に把握していることが原因かも知れない。そこへメスを入れることは、大変なリスクを伴うのだ。

ちなみに公正取引委員会も「押し紙」を放置して来た。さまざまな理由をつけて、「押し紙」を放置している。これも不思議な現象である。

◆◆
12月1日に判決が下される産経新聞の裁判は、販売店の完全勝訴というのが客観的なわたしの見方である、事実、裁判官は、産経新聞に対して繰り返し和解を提案した。

裁判所が和解を提案するということは、新聞社に幾らかの損害賠償金を支払うように命じる方向性を持っていることを意味する。すなわち「押し紙」の存在を認定することが意中にあるのだ。販売店からの損害賠償請求を1円も認めないのであれば、わざわざ和解を提案するまでもなく、販売店を敗訴させる判決を下せばそれで済む話であるからだ。

◆◆
この裁判の「疑惑」は、結審の直前の5月、コロナウィルスの感染拡大で東京地裁が閉鎖されている間に、3人の裁判官のうち2人が交代したことである。不自然な動きだ。判決の直前に裁判官が交代に立った場合、「押し紙」裁判に限らず、裁判の流れが変わることがよくある。

たとえば滋賀医科大事件の大津地裁判決である。この裁判では、国立大学の在り方が問われていた。NTTドコモを被告とする三潴裁判の福岡地裁判決である。この裁判では、国の電波政策が問われた。

わたし自身は、対読売裁判で地裁、高裁と勝訴して、最高裁で逆転敗訴した体験がある。最高裁は、見解を示したにしても、わたしにしてみれば不自然なことである。読売のために、最高裁がわざわざ口頭弁論を開いて、判決を東京高裁へ差し戻したのである。

12月1日の判決は、勝敗だけではなく、司法における政治判断の有無も注目されている。かりに裁判所が販売店を敗訴させるとすれば、どのような理論構成の判決が下されるのか、特にネットメディアの注目が集まっている。

【報道検証】米国大統領選後の混乱と、トランプ政権の対ラテンアメリカ政策-市民運動の悪用

はからずも米国大統領選で、トランプ大統領が引き起こした「不正選挙」をめぐる混乱を通じて、トランプ政権がこれまでラテンアメリカに対して採用してきた対外政策が輪郭を現してきた。

ラテンアメリカに関する日本の新聞報道は、米国のFOXニュースのレベルである。キューバのPrensa LatinaやベネズエラのTelSurの報道内容とは、対極にある。ただ、現地を取材して直接、自分の目で真実を確認できないわたしは、どちらの情報を信用すべきなのか長いあいだ分からなかった。

それゆえにわたしは、メディア黒書でラテンアメリカの話題をあまり取り上げてこなかった。

しかし、米国の大統領選の後に浮上した米国民の分断を見て、Prensa LatinaTelSurの情報の方が真実を伝えているという確信を得た。

ベネズエラ、ニカラグア、ボリビアで行われた最新の大統領選について、日本のメディアは次のように報じている。これらの国は、米国でいま起きていることを経験したのだ。

ベネズエラ(2018年)

南米ベネズエラの大統領選で反米左派「統一社会党」のマドゥロ大統領(55)が再選して一夜明けた21日、トランプ米政権は「選挙は公正ではなかった」として新たな制裁を科すと発表した。(毎日新聞)

このような報道が日本にマドゥロ大統領を批判する世論を生み出した。共産党までが、それを鵜呑みにして、反ベネズエラの姿勢を鮮明にしたのである。

ニカラグア(2016年)

中米ニカラグアの大統領選挙で、左派の現職ダニエル・オルテガ(Daniel Ortega)大統領(70)が7日、3選を決めた。副大統領には妻のロサリオ・ムリジョ(Rosario Murillo)氏が就任する。しかし、野党勢力や米国は選挙の不正を指摘している。(AP通信)

ボリビア(2019年)

南米ボリビアのモラレス大統領が10日、辞任を表明した。10月の大統領選で再選を決めたばかりだったが、選挙を巡る不正疑惑で抗議デモが拡大し、軍も辞任を求めていた。ガルシア・リネラ副大統領も辞任した。(朝日新聞)

これら3カ国で問題になった「不正選挙」を、日本のメディアは既成事実として報じた。それは、「西側メディア」の視点である。しかも、ボリビアのケースにように、クーデターについては一切ふれずに、モラレス大統領が亡命したことだけを伝えたのである。

◆◆
ちなみに米国によるラテンアメリカ諸国に対する内政干渉については、過去に米国が行った軍事介入を示す次の図を見れば明らかである。

◆◆
しかし、今世紀に入るころから米国は、極力、軍事介入を控えるようになった。と、いうのもラテンアメリカに議会制民主主義が定着して、世論が軍事介入を容認しなくなったからだ。

そこで米国が選んだのが、軍隊を投入する代わりに、現地の市民運動を資金面や戦略面でサポートして、草の根レベルで混乱を引き起こす戦略だった。それを「民主化運動」とした。

米国はこのような政策に米州機構や一部の人権擁護団体も巻き巻き込んだ。メディアも協力した。2018年のボリビアの大統領選挙では、米州機構が「不正選挙」キャンペーンのイニシアティブを取った。

米国によるこのような新戦略のスポンサーについては、次の記事を参考にしてほしい。

【参考記事】米大統領選挙、バイデン圧勝か?「不正選挙」と暴力というトランプのプロパガンダと戦略、既にベネズエラ、ボリビア、ニカラグアで失敗を実証済み

◆◆
米国大統領選の後、トランプ大統領が「不正選挙」キャンペーンをはじめたことで、はからずもトランプ政権下の対ラテンアメリカ政策が露呈した。露骨な軍事介入ができなくなったから、現地の市民運動を育成して、「民主化」を理由に混乱を引き起こし、その隙に乗じてクーデターで政権の転覆を企てる戦略を採用するようになったのである。

事実、ベネズエラ、ニカラグア、ボリビアでクーデターを試みた。ベネズエラとニカラグアでは未遂に終わったが、ボリビアでは成功した。

このような視点から、チリやコロンビアで起きている暴力と国民の分断現象を再考してみるべきだろう。香港の問題も、同じ対外政策が根底にある可能性が高い。中国が採用した対抗策は強権的だが、その背景にある米国の戦略も検証する必要があるのだ。

皮肉なこともトランプ政権の牙(きば)は、いま米国民をターゲットにしている。

 

 

2020年11月06日 (金曜日)

【書評】『一九七〇年 端境期の時代』、よど号の元メンバーが近くて遠い祖国へ届けた言葉

ノンフィクション作品の質を決める最大の要素は、テーマの重さである。さらに欲を言えば実体験。そして表現という点では、第3者がそれを取材して書くよりも、当事者が綴る方が説得力が何倍にも増す。若林盛亮氏の「『よど号』で飛翔五十年、端境期の闘いは終わっていない」は、これらの条件を兼ねそなえた傑作だ。著者は、ピョンヤンから、同時代の日本へメッセーを送っている。

若林氏についてインタネットで検索して、筆者は次の経歴をみつけた。

滋賀県草津市生まれ。滋賀県立膳所高等学校を経て同志社大学経済学部に入学。在学中、1970年によど号ハイジャック事件を起こし、北朝鮮に亡命。 1976年に結婚し、妻である若林佐喜子と平壌に在住している。(ウィキペディア)

幼いころから若林氏は、戦後日本に対する違和感を感じていたという。戦後民主主義の影響を受けて教壇に立ちながら、その一方で運動会の行進曲に軍艦マーチを流したり、戦争体験を自慢する教師に、異質なものを感じたという。

この種の違和感は、筆者も繰り返し体験してきた。「君が代」斉唱を強制しながら、同和教育では、「一切の差別を廃止する」と宣言した教師。旧日本軍と同じ詰襟の制服が当たり前だった中学校と高校。そんな記憶があるがゆえに、若林氏が表現している感覚が自分のことのように理解できる。

若林氏は、戦後日本に対する違和感を同志社大学に入学した後も持ち続ける。そして理不尽なことに対しては闘うべきだと考え、学生運動に参加して、よど号のメンバーになる。「座して死を待つよりも困難に挑戦し乗り越えていくべきという『常識』」が、若林氏を駆り立てたのである。

ところが朝鮮に渡り、「日本革命」のための軍事訓練に励んだり、朝鮮の関係者との交流を深めるなかで、自分たちが目指した武力による「世界革命」の思想はどこかおかしいと感じるようになる。そして何が間違っていたのかをまじめに総括するようになった。

◆◆
1970年代に学生運動を体験した人々の大半は、社会に出ると順々な企業戦士になった。学生運動の記憶を払拭し、なかには積極的に労働運動を弾圧する立場になった面々も少なくない。これらの人々こそが、失われた30年を作った確信犯ではないか。

こんな時に、物事を本気で考え、命がけで行動し、近くて遠い祖国を海外から見続けてきた人が、時代の境界を越えて、ピョンヤンから日本へ届けた言葉は重い。

◆◆
本書には、若林氏のほか次の方々が1970年について寄稿している。田原総一郎、中川五郎、矢作正、高橋幸子、田所敏夫、長崎浩、岩永正敏、高部務、板坂剛、三上治、中島慎一、前田和男、糟谷プロジェクト。

タイトル:『1970年 端境期の時代』
編集者:鹿砦社編集部
出版元:鹿砦社

 

 

2020年11月03日 (火曜日)

楽天モバイル基地局、マンション住戸の真上に新規設置で住民が反対…健康への影響を懸念

東京都内のIT企業でAI(人工知能)の開発に携わっている中国人の柳大海(仮名、38歳)さんは、3年ほど前に東京都大田区南六郷にある分譲マンションを購入した。そこは京浜急行の雑色駅から徒歩で10分、民家や中層のビルが建ち並ぶ住宅街である。

柳さんの住居は、7階建てマンションの最上階である。2LDK。広々としたルーフバルコニーもある。築20年ほどの中古物件だが、物件管理が行き届いているので、新築のような印象がある。柳さんは月々約10万円のローンを返済している。柳さんは20代のときに仕事で来日し、その後、職能を高く評価されて日本企業に転職した。日本の生活にもなじみ、永住するつもりでマンションを購入したのである。

その柳さんに不穏な話が持ち上がったのは、今年の8月だった。楽天モバイル(以下、楽天)が柳さんの住居の真上に通信基地局を設置する計画を、マンションの管理組合に打診してきたのだ。柳さんが言う。【続きはビジネスジャーナル】

 

米大統領選挙、バイデン圧勝か?「不正選挙」と暴力というトランプのプロパガンダと戦略、既にベネズエラ、ボリビア、ニカラグアで失敗を実証済み

NBCニュースとウオールストリートジャーナルは、米国大統領選の最新世論調査の結果を報じた。 それによるとバイデンが52%で、トランプが42%だった。米国大統領選挙の行方は、接戦というよりも、バイデンが圧勝する可能性が高い。

しかし、一部のメディアによると、トランプ陣営は、敗北した場合に不正選挙を理由に法廷闘争を開始する可能性が高いとも伝えている。選挙後の混乱の舞台となる可能性が高い大都市では、窓を板で覆って暴動に備える商店やレストランもあるという。銃を購入する市民も急増していると伝えている。

◆◆
日本のメディアは、ほとんど報じていないが、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアでも、大統領選のあとに混乱が起きている。これらの国々では、敗北した右派陣営が不正選挙を主張して混乱を引き起こした。トランプの戦略が、そのままラテンアメリカにも持ち込まれたのだ。

米国政府がみずからの「裏庭」に内政干渉してきたわけだから、ある意味では当然の光景だ。

その典型例がボリビアである。2019年の大統領選で、現職のモラレス大統領(左派)が勝利していながら、保守陣営が「不正選挙」を主張した。そのイニシアティブを取ったのは、米州機構(Organization of American States)だった。メディアを動員して「不正選挙」を大々的にPRし、モラレス大統領派と反政府勢力との対立をあおり、その混乱に乗じて、クーデターを起こしたのである。

幸いにモラレス大統領は、メキシコに亡命して難を逃れた。

日本のメディアは、クーデターの事実には一切ふれずに、混乱の中でモラレス大統領が亡命したとだけ伝えた。それから1年後に実施された再選挙では、モラレス大統領の後継者であるアルセ候補が圧勝した。モラレス大統領も、この7日に帰国する予定だという。

ちなみにクーデターでは、死者も出ており、アルセ新政権下で検証作業が行われる可能性が高い。

◆◆
2018年のベネズエラの大統領選後にも、メディアは大々的に「不正選挙」というプロパガンダをまき散らした。そして選挙候補ですらなかった親米派の国会議員が、みずからベネズエラ大統領を宣言したのである。ボリビアとよく似た手口である。

ニカラグアについてもメディアは、現在のオルテガ政権が不正選挙によって成立したというプロパガンダを拡散している。オルテガ政権が暴力によって反政府運動を弾圧していると報じている。

ニカラグアのケースで、反政府・市民運動を主導しているのは、MCI(movimiento civico de Junentude,青年市民運動)というグループである。この団体は、米国の民間団体NDI(National Democratic institite)に所属している。NDIの創始者がみずからニカラグアの反政府運動のコーディネーターを務めている。

このNDIをサポートしているのが、次の4団体である。

1、 The National Endowment for Democracy,(全米民主主義基金)

2、the United States Agency for International Development (アメリカ合衆国国際開発庁 )

3、 the U.S. Department of State (米国国防省)

4、 Consortium for Elections and Political Process Strengthening

◆◆
米国の対ラテンアメリカ戦略は、今世紀に入るころから急激に変化してきた。かつてはラテンアメリカで政変が起きると米国は、容赦なく軍事介入していた。あるいはCIAの策略でクーデターを起こした。具体例としては、1954年のグアテマラ、1959年のキューバ、1973年のチリ、1980年代の中米(ニカラグア、エルサルバドル、グアテマラ)への介入である。

しかし、1999年のベネズエラを皮切りに、ラテンアメリカに次々と左派政権が誕生すると、米国は軍事介入という伝統的な戦略が取れなくなった。いずれの政権も選挙により合法的に誕生した経緯があったからだ。社会進歩の中で、軍事介入を容認しない世論が生まれてきた結果である。

が、米国政府はラテンアメリカに権益を持つ多国籍企業を見捨てるわけにはいかない。そこで新たな戦略を打ち出してくる。それがトランプ政権の下で、急激に浮上してきた市民運動を買収する戦略である。資金面でも戦略面でも市民運動を支援することで、混乱を引き起こし、暴力を誘発し、政権を転覆させる戦略である。このような戦略に、国際的な人権擁護団体や米州機構などの公的機関をも巻き込んでいる。

◆◆
トランプ大統領は、米国の対ラテンアメリカの戦略と、まったく同じ戦略を、今度は米国内にも適用しようとしている。

2020年10月31日 (土曜日)

【全文公開】横浜副流煙裁判の控訴審判決、嫌がらせ裁判に審判、進む科学者のモラルハザード

東京高裁は、29日、横浜副流煙裁判の控訴審判決を言い渡した。勝訴したのは、一審被告の藤井将登さんだった。一審原告の主張はすべて棄却された。藤井さんが完全勝訴したのである。

この裁判は、外部とは完全に密閉されている音楽室(防音構造)で藤井さんが吸った煙草の副流煙が原因で、藤井さんのマンションの上階に住むAさん一家が、広義の化学物質過敏症になったとして4500万円を請求したものである。訴状には記されていないが、審理の中でAさん一家は、藤井さんの副流煙で癌になったとも主張した。

裁判そのものの異常さは、メディア黒書で繰り返し報じてきたが、実はほどんど表に出なかったもうひとつの問題がある。それは疑似科学が幅を利かせている問題である。みずから疫学調査もしないで、根拠のないことを堂々と公言してはばからない連中が、名誉教授として、あるいは医師として、さらにはクリニックの経営として社会的な地位を確立している事実である。その実態が浮かび上がった。【ウェブマガジンで全文公開

2020年10月30日 (金曜日)

藤井さんの全面勝訴、横浜副流煙裁判の控訴審、次のステップは「戦後処理」、判決全文を公開

横浜副流煙裁判の控訴審で、東京高裁は29日、控訴人(一審原告)の控訴を棄却する判決を言い渡した。これにより事実上、被告・藤井将登さんの勝訴が確定した。判決は、第一審の横浜地裁判決を追認したもので、原告の主張はまったく認められなかった。

◆◆
この裁判は、藤井さんが自室の音楽室(密封された防音構造)で吸っていた1日に2,3本程度の煙草の副流煙が、2階に住むAさん一家の健康を害したとして、Aさん一家が4500万円を請求した事件である。Aさん一家は、藤井さんの副流煙によって「受動喫煙症」、化学物質過敏症、癌に罹患(りかん)したと主張した。

その主張を宮田幹夫・北里大学名誉教授、日本禁煙学会・作田学理事長など多数の医師が全面的に支持して、Aさん一家を擁護するための意見書を次々と提出した。

建物の構造と副流煙の動きを立証するために、建築士なども裁判に加わった。提訴が2017年11月であるから、藤井さんは、3年にわたって法廷に立たされたのである。

作田医師ら、日本禁煙学会の関係者の主張に対して「極論ではないか?」、「疑似科学ではないか」、「禁煙ファシズム」といった批判が上がっていたが、原告側は主張を変えなかった。

◆◆
この裁判の争点は、次の4点だった。

①副流煙の量はどうだったのか?
②原告は化学物質過敏症に罹患しているか?
③化学物質過敏症に罹患しているとすれば、その原因は何か?
④副流煙の発生源は被告宅か?

以下、①から④を東京高裁はどう判断したか、要旨を紹介しよう。

■①副流煙の量はどうだったのか?
■④副流煙の発生源は被告宅か?

藤井さんの「副流煙が控訴人ら宅に流入するとは認められない」。流入していた可能性はあるが、藤井さんが不在のときも、Aさん一家が煙草の匂いを感じており、副流煙の発生源が藤井さんであることを客観的に裏付けるデータは存在しない。

Aさん一家は、副流煙にも含まれているPM2.5を浴室で観測したことを根拠に、藤井さんを発生源とする副流煙が宅内に流入していたと主張したが、PM2・5の発生源は副流煙以外にも多数あるので、それをもって浴室で「高濃度の(注:藤井さんの)副流煙が検出されたとするのは困難である」。

■②原告は化学物質過敏症に罹患しているか?
3人の原告は、倉田医師、宮田医師、作田医師の診察を受けており、体調不良があったことは認められる。

倉田医師についていえば、「受動喫煙自体についての客観的な裏付けがなくとも診断が可能」とする日本禁煙学会の診断基準に従って診断した。しかし、その診察により「受動喫煙の原因(本件では、被控訴人宅からの副流煙の流入)までもが、直ちに推認されるものとまではいい難い」。

宮田医師(注:A娘だけを診断)についていえば、「化学物質過敏症については、様々な原因物質が考えられ、その発生機序について統一された見解が得られておらず未解明である上、宮田医師が控訴人A娘に対して行った各種検査は、化学物質過敏症の原因物質の特定と直接結びつくものではない」。

作田医師については、化学物質過敏症の診断には問診が重要であることを、作田医師みずからが主張していながら、A娘を直接問診しなかったことを認定した。それを前提に、作田医師が提出した診断書は、宮田医師らが作成した診断書などを参考にして導きだした参考意見に過ぎないと認定した。この認定は、横浜地裁が2019年11に判決の中で作田医師の医師法20条違反を認定した後、A娘を訪問・問診した事実を持ってしても覆らない。

◆◆
高裁判決は、作田医師による医師法20条違反を文面では認定しなかったが、全体の脈絡からすると、20条違反を認定した地裁判決を追認したといえる。

今後は、このようなスラップめいた裁判を起こした関係者に対する責任追及の段階に入る。藤井さんが損害賠償裁判を提起する可能性が高い。

この事件では、控訴人の山田義雄弁護士の要請で、神奈川県警の刑事が2度に渡って出動した。藤井さんと、藤井さん支援者は、この事件そのものが司法の濫用と考えている。

「戦後処理」はこれから始まる。

■東京高裁判決

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被告の最終準備書面

横浜地裁の判決

原告の控訴状

■全記事(随時更新)

 

2020年10月29日 (木曜日)

藤井さんが勝訴、横浜副流煙裁判の控訴審、作田医師による医師法20条違反については判断せず

【臨時ニュース】
横浜副流煙裁判の控訴審で、東京高裁は29日、控訴人(一審原告)の控訴を棄却する判決を言い渡した。しかし、作田学・日本禁煙学会理事長による医療行為が医師法20条違反に該当するかどかの直接的な判断は避けた。

患者が自己申告した症状に基づいて診断を下す方向性の日本禁煙学会の診断基準については、客観的な裏付けがないと判断した。

今後、藤井さんは、この裁判に関与した者に対する損害賠償裁判の提起を検討することになる。

解説と判決文の公開は、後日。

2020年10月29日 (木曜日)

危険極まりない総務省の電波防護指針、 KDDIは安全を断言、「60年以上に及ぶ研究結果が蓄積」、5G導入の国策下でメディアは沈黙【時系列ノート㉖】

スマホなどの通信基地局の設置をめぐって電話会社と住民の間で、トラブルになるケースが増えている。メディア黒書に情報が提供される事件についていえば、最も件数が多いのは楽天である。次にKDDIである。

基地局問題の諸悪の根源は、総務省が定めている電波防護指針(マイクロ波の規制値)が実質的には規制レベルになっていないことである。それは次の比較値を見れば明らかになる。

日本:1000μW/cm2

中国:40μW/cm2

イタリア:10μW/cm2

スイス:6.6μW/cm2

欧州評議会:0.1μW/cm2(勧告値)

日本は米国と並んで世界で最も規制がゆるい国なのである。確かに1000μW/cm2まではいかなくても、900μW/cm2ぐらいのレベルを規制値に定めている国は少なくないが、マイクロ波が人体に及ぼす影響が研究により裏付けられて来るにつれて、海外では国とは別に地方自治体が独自の基準を設置するケースが増え、現在、規制値に大きな差が生じているのである。

日本の規制値は、1990年に設定された。それ以来、更新されていない。

◆◆
通信基地局の設置をめぐるトラブルが発生すると、電話会社は住民に対して必ず次のような説明をする。自分たちは、総務省の定めた電波防護指針を遵守して基地局を操業するので、健康被害が発生することはあり得ない。

実際、埼玉県朝霞市の基地局問題で、KDDIは総務省の電波防護指針について、次のような見解を示している。筆者からの質問に対してKDDIが回答したものである。

電波の人体への影響につきましては、日本をはじめ世界各国で60年以上に及ぶ研究結果が蓄積されており、これらの膨大な科学的知見に基づいて、電波防護指針が策定されています。

「60年以上に及ぶ研究結果」の蓄積とは、具体的には、現在から過去にさかのぼって60年という意味である。しかし、総務省がこの規制値についての検証作業を行ったのは、1990年に電波防護指針が設定された後、1度だけである。これに関するKDDIの説明をそのまま引用しておこう。

平成9年度より10年間、生体電磁環境研究推進委員会を開催、報告書がまとめられ、平成19年4月に公表されています。その後、平成20年6月に設置された生体電磁環境に関する検討会では、電波防護指針の評価・検討等を行っております。

この調査・調査研究は、わたしも知っている。その実体については、京都大学の元講師で電磁波問題の研究者だった荻野晃也氏は、『危ない携帯電話』(緑風出版)の中で、次のように述べている。

この日本では、政府からの支援による研究が行われています。上野照剛東大教授(定年後、九州大学特認教授)を委員長とする「生体電磁環境研究推進委員会」なのですが、2007年3月に最終報告を提出して解散しました。

10年間で研究支援に使われた費用は100億円を超えるのではないかと思われるのですが、危険性を示す研究はゼロといって良く、安全宣伝費用に使われたと言って良いでしょう。

その委員会は、電磁波利用に利益のあるような人ばかりで構成されていましたから当然のことだろうと思いますが、EU諸国の研究支援と比べると、あまりにも差があります。一番重要な疫学研究をできるだけ避けるようにして、悪影響の出ないような研究計画を最初から立てているように思えるものが多いです。

◆◆
生体電磁環境研究推進委員会が調査・研究を委託した団体のひとつに、テレコム先端技術研究センターがあった。これは電気・通信関係の業界団体である。当時の役員構成は次の通りである。

会長:安田靖彦(東大名誉教授)
常務理事:監沢幹人(常勤)
理事:飯塚雄次郎(日立製作所)
理事:岩崎哲久(東芝)
理事:重松昌行(住友電気工業)
理事:田中茂(沖電気工業)

ちなみに現在の賛助会員は次のとおりだ。KDDIもNTTも入っている。

(株)NTTデータ
沖電気工業(株)
KDDI(株)
住友電気工業(株)
ソニー(株)
(株)東芝
日本電気(株)
日本電信電話(株)
日本放送協会
(株)日立製作所
(株)フジクラ
富士通(株)
古河電気工業(株)
三菱電機(株)

◆◆
総務省が定めている電波防護指針が危険きわまりない数値であることは、総務省がどのような姿勢で電磁波のリスクを検証しているかを見れば明らかになる。企業の権益を優先して、国民には真実を知らせていない。

KDDIは、総務省の電波防護指針は、「60年以上に及ぶ研究結果が蓄積」されているというが、1990年にそれを設置した後、総務省は実質的には何もしていないのである。しかも、1990年以前の時期は、マイクロ波による人体影響に関する研究が現在のように活発ではなかったので、マイクロ波に関するデータそのものが十分に整っていたとは言えないのである。

しかし、電話会社は、「総務省の電波防護指針を遵守しているので安全だ」と住民に説明しているのである。無責任ではないか。

以下、KDDIの藤田智晃氏との通信である。

【9月24日】
わたしから藤田氏に対する質問。

藤田様

 下記の点をお尋ねします。

 貴社が、あるいは貴殿が現在の電波防護指針で電磁波による人体への影響を回避できると考える根拠を教えてください。ちなみに欧州評議会の勧告値は、0.1マイクロワット・パー・センチメートルとなっています。日本の1万分の1です。

 黒薮

 【9月30日】
藤田氏からわたしに対する回答。

黒薮様 

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

電波の人体への影響につきましては、日本をはじめ世界各国で60年以上に及ぶ研究結果が蓄積されており、これらの膨大な科学的知見に基づいて、電波防護指針が策定されています。我が国の電波防護規制値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が策定し、世界保健機関(WHO)が支持する国際的なガイドラインと同等であり、世界各国の研究結果を基に十分な安全率が適用されております。
 したがいまして、この電波防護規制値を満足すれば安全上問題はないというのが、WHO等の国際機関や日本における共通の認識となっており、弊社も同様の認識です。弊社として、電波法令で定める電波防護規制値を遵守して、携帯電話基地局の設置・運用をいたしておりますので、携帯電話基地局から送信される電波による健康への影響はないものと認識しております。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

 ■裏付け資料

 

【10月2日】

黒薮からの質問。

 

藤田様

 回答の中に「日本をはじめ世界各国で60年以上に及ぶ研究結果が蓄積」とありますが、日本の電波防護指針が設定されたのは1989年であり、研究結果とは、それ以前におけるデータのことではありませんか?この点について貴社はどう考えていますか。

黒薮

 

【10月7日】

藤田氏からの返信。

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

電波防護指針は平成27年には低周波領域、平成30年には高周波領域について
それぞれ改定されていますので、電波防護指針がまとめられた平成2年以前の
研究結果だけで成り立っているものではないという認識です。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

■裏付け資料

 

【10月8日】
黒薮から、藤田氏への質問。

藤田様

下記の件です。
貴社のいう60年の研究結果の蓄積というのは、平成30年の改定から遡って60年という意味で間違いありませんね。

黒薮

【10月14日】
藤田氏から黒薮への回答

藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

電波の人体への健康影響については、現在も世界各国で研究が継続されており、
これまで60年以上に及ぶ研究結果が蓄積されているという認識です。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

【10月14日】
黒薮から藤田氏への質問。

藤田様

平成30年の改訂を含んで60年の蓄積という意味を確認しました。間違いであればお知らせ下さい。

それを前提にお尋ねします。60年にわたって蓄積されたデータに基づいて電波防護指針を決めたのは誰ですか。総務省といういう理解でよろしいでしょうか。

黒薮

【10月20】
藤田氏から黒薮への回答。

藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

総務省は、電波の人体への影響に関して、電気通信技術審議会から「電波利用に
おける人体の防護指針」等について答申を受けています。これら答申では、人体
に影響を及ぼさない電波の強さの指針値等(電波防護指針)が示されおり、総務省
はこれら答申を受けて、電波防護のための基準の制度化(関係法令)を行ってい
るものと認識しています。

よろしくお願いいたします。

【10月20日】
黒薮から藤田氏への質問。

藤田様

下記の回答に、

「これら答申では、人体に影響を及ぼさない電波の強さの指針値等(電波防護指針)が示されおり、」とありますが、マイクロ波の非熱作用に関する答申が最後に行われたのは、いつでしょうか。具体的な日付をお知らせ下さい。

黒薮

【10月28日】
藤田氏から黒薮への回答

黒薮様

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

総務省では、電波防護指針の根拠となる科学的データの信頼性の向上を図るため、平成9年度より10年間、生体電磁環境研究推進委員会を開催、報告書がまとめられ、平成19年4月に公表されています。
その後、平成20年6月に設置された生体電磁環境に関する検討会では、電波防護指針の評価・検討等を行っております。

弊社は電波防護指針を遵守する事業者の立場であり、電波防護指針を策定する経緯等に関するご質問への回答は控えさせていただきます。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

■裏付け資料

c

2020年10月28日 (水曜日)

29日に東京高裁で控訴審判決、横浜副流煙スラップ裁判、提訴から3年の節目

横浜副流煙裁判の控訴審判決が、29日に言い渡される。日時と場所は次の通りである。

日時:10月29日(木)15:30より

場所:東京高裁809号室

第1審の横浜地裁判決は、被告の藤井将登さんの完全勝訴だった。藤井さんが提訴されたのは、2017年11月であるから、藤井さん一家は、約3年の歳月を裁判に奪われたことになる。高裁判決の結果がどうであれ、実質的にはこれで裁判は終結する。

控訴審における最大の関心事は、東京高裁が(訴外)作田学医師(一口坂クリニック)と(訴外)日本禁煙学会の裁判への関与をどう評価するのかという点である。

一審判決は、作田医師の医師法20条違反を認定した。原告の一人を直接診察することなく診断書を交付した行為を違法としたのである。また、問診により「受動喫煙症」のレベル判定をすることを奨励している日本禁煙学会の方針を、禁煙運動を進めるための政策政策目的になっていると認定した。

藤井さんに対する請求は、作田医師が無診察で作成した診断書などを根拠として起こされた。請求額は4500万円。かりに作田医師が原告であれば、訴権の濫用(スラップ)に認定される可能性が高いが、作田医師は訴外になっている。

この裁判で原告は、藤井さんが自宅の密封された防音室で、煙草を吸ったことが原因で、化学物質過敏症、受動喫煙症、癌などに罹患したと主張した。藤井さんが喫煙者であることは事実だが、喫煙量は1日に煙草2本から3本程度である。しかも、自宅の密封された防音構想の音楽室で吸っていたにすぎない。

その程度の喫煙でも、上階の斜め上に住む人間が生命にかかわる重い病気に罹患するというのが、作田医師らの主張である。極論とか、疑似科学という批判がある一方で、宮田幹夫・北里大学名誉教授ら、多くの医師が作田医師の主張を支持して、次々と意見書などを提出してきた。

ちなみに原告3人のうち1人は、過去に約25年の喫煙歴があったことが裁判の中で発覚した。

メディア黒書は、29日の夜に判決を速報する。