1. 藤井さんの全面勝訴、横浜副流煙裁判の控訴審、次のステップは「戦後処理」、判決全文を公開

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2020年10月30日 (金曜日)

藤井さんの全面勝訴、横浜副流煙裁判の控訴審、次のステップは「戦後処理」、判決全文を公開

横浜副流煙裁判の控訴審で、東京高裁は29日、控訴人(一審原告)の控訴を棄却する判決を言い渡した。これにより事実上、被告・藤井将登さんの勝訴が確定した。判決は、第一審の横浜地裁判決を追認したもので、原告の主張はまったく認められなかった。

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この裁判は、藤井さんが自室の音楽室(密封された防音構造)で吸っていた1日に2,3本程度の煙草の副流煙が、2階に住むAさん一家の健康を害したとして、Aさん一家が4500万円を請求した事件である。Aさん一家は、藤井さんの副流煙によって「受動喫煙症」、化学物質過敏症、癌に罹患(りかん)したと主張した。

その主張を宮田幹夫・北里大学名誉教授、日本禁煙学会・作田学理事長など多数の医師が全面的に支持して、Aさん一家を擁護するための意見書を次々と提出した。

建物の構造と副流煙の動きを立証するために、建築士なども裁判に加わった。提訴が2017年11月であるから、藤井さんは、3年にわたって法廷に立たされたのである。

作田医師ら、日本禁煙学会の関係者の主張に対して「極論ではないか?」、「疑似科学ではないか」、「禁煙ファシズム」といった批判が上がっていたが、原告側は主張を変えなかった。

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この裁判の争点は、次の4点だった。

①副流煙の量はどうだったのか?
②原告は化学物質過敏症に罹患しているか?
③化学物質過敏症に罹患しているとすれば、その原因は何か?
④副流煙の発生源は被告宅か?

以下、①から④を東京高裁はどう判断したか、要旨を紹介しよう。

■①副流煙の量はどうだったのか?
■④副流煙の発生源は被告宅か?

藤井さんの「副流煙が控訴人ら宅に流入するとは認められない」。流入していた可能性はあるが、藤井さんが不在のときも、Aさん一家が煙草の匂いを感じており、副流煙の発生源が藤井さんであることを客観的に裏付けるデータは存在しない。

Aさん一家は、副流煙にも含まれているPM2.5を浴室で観測したことを根拠に、藤井さんを発生源とする副流煙が宅内に流入していたと主張したが、PM2・5の発生源は副流煙以外にも多数あるので、それをもって浴室で「高濃度の(注:藤井さんの)副流煙が検出されたとするのは困難である」。

■②原告は化学物質過敏症に罹患しているか?
3人の原告は、倉田医師、宮田医師、作田医師の診察を受けており、体調不良があったことは認められる。

倉田医師についていえば、「受動喫煙自体についての客観的な裏付けがなくとも診断が可能」とする日本禁煙学会の診断基準に従って診断した。しかし、その診察により「受動喫煙の原因(本件では、被控訴人宅からの副流煙の流入)までもが、直ちに推認されるものとまではいい難い」。

宮田医師(注:A娘だけを診断)についていえば、「化学物質過敏症については、様々な原因物質が考えられ、その発生機序について統一された見解が得られておらず未解明である上、宮田医師が控訴人A娘に対して行った各種検査は、化学物質過敏症の原因物質の特定と直接結びつくものではない」。

作田医師については、化学物質過敏症の診断には問診が重要であることを、作田医師みずからが主張していながら、A娘を直接問診しなかったことを認定した。それを前提に、作田医師が提出した診断書は、宮田医師らが作成した診断書などを参考にして導きだした参考意見に過ぎないと認定した。この認定は、横浜地裁が2019年11に判決の中で作田医師の医師法20条違反を認定した後、A娘を訪問・問診した事実を持ってしても覆らない。

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高裁判決は、作田医師による医師法20条違反を文面では認定しなかったが、全体の脈絡からすると、20条違反を認定した地裁判決を追認したといえる。

今後は、このようなスラップめいた裁判を起こした関係者に対する責任追及の段階に入る。藤井さんが損害賠償裁判を提起する可能性が高い。

この事件では、控訴人の山田義雄弁護士の要請で、神奈川県警の刑事が2度に渡って出動した。藤井さんと、藤井さん支援者は、この事件そのものが司法の濫用と考えている。

「戦後処理」はこれから始まる。

■東京高裁判決

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被告の最終準備書面

横浜地裁の判決

原告の控訴状

■全記事(随時更新)