1. 危険極まりない総務省の電波防護指針、 KDDIは安全を断言、「60年以上に及ぶ研究結果が蓄積」、5G導入の国策下でメディアは沈黙【時系列ノート㉖】

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2020年10月29日 (木曜日)

危険極まりない総務省の電波防護指針、 KDDIは安全を断言、「60年以上に及ぶ研究結果が蓄積」、5G導入の国策下でメディアは沈黙【時系列ノート㉖】

スマホなどの通信基地局の設置をめぐって電話会社と住民の間で、トラブルになるケースが増えている。メディア黒書に情報が提供される事件についていえば、最も件数が多いのは楽天である。次にKDDIである。

基地局問題の諸悪の根源は、総務省が定めている電波防護指針(マイクロ波の規制値)が実質的には規制レベルになっていないことである。それは次の比較値を見れば明らかになる。

日本:1000μW/cm2

中国:40μW/cm2

イタリア:10μW/cm2

スイス:6.6μW/cm2

欧州評議会:0.1μW/cm2(勧告値)

日本は米国と並んで世界で最も規制がゆるい国なのである。確かに1000μW/cm2まではいかなくても、900μW/cm2ぐらいのレベルを規制値に定めている国は少なくないが、マイクロ波が人体に及ぼす影響が研究により裏付けられて来るにつれて、海外では国とは別に地方自治体が独自の基準を設置するケースが増え、現在、規制値に大きな差が生じているのである。

日本の規制値は、1990年に設定された。それ以来、更新されていない。

◆◆
通信基地局の設置をめぐるトラブルが発生すると、電話会社は住民に対して必ず次のような説明をする。自分たちは、総務省の定めた電波防護指針を遵守して基地局を操業するので、健康被害が発生することはあり得ない。

実際、埼玉県朝霞市の基地局問題で、KDDIは総務省の電波防護指針について、次のような見解を示している。筆者からの質問に対してKDDIが回答したものである。

電波の人体への影響につきましては、日本をはじめ世界各国で60年以上に及ぶ研究結果が蓄積されており、これらの膨大な科学的知見に基づいて、電波防護指針が策定されています。

「60年以上に及ぶ研究結果」の蓄積とは、具体的には、現在から過去にさかのぼって60年という意味である。しかし、総務省がこの規制値についての検証作業を行ったのは、1990年に電波防護指針が設定された後、1度だけである。これに関するKDDIの説明をそのまま引用しておこう。

平成9年度より10年間、生体電磁環境研究推進委員会を開催、報告書がまとめられ、平成19年4月に公表されています。その後、平成20年6月に設置された生体電磁環境に関する検討会では、電波防護指針の評価・検討等を行っております。

この調査・調査研究は、わたしも知っている。その実体については、京都大学の元講師で電磁波問題の研究者だった荻野晃也氏は、『危ない携帯電話』(緑風出版)の中で、次のように述べている。

この日本では、政府からの支援による研究が行われています。上野照剛東大教授(定年後、九州大学特認教授)を委員長とする「生体電磁環境研究推進委員会」なのですが、2007年3月に最終報告を提出して解散しました。

10年間で研究支援に使われた費用は100億円を超えるのではないかと思われるのですが、危険性を示す研究はゼロといって良く、安全宣伝費用に使われたと言って良いでしょう。

その委員会は、電磁波利用に利益のあるような人ばかりで構成されていましたから当然のことだろうと思いますが、EU諸国の研究支援と比べると、あまりにも差があります。一番重要な疫学研究をできるだけ避けるようにして、悪影響の出ないような研究計画を最初から立てているように思えるものが多いです。

◆◆
生体電磁環境研究推進委員会が調査・研究を委託した団体のひとつに、テレコム先端技術研究センターがあった。これは電気・通信関係の業界団体である。当時の役員構成は次の通りである。

会長:安田靖彦(東大名誉教授)
常務理事:監沢幹人(常勤)
理事:飯塚雄次郎(日立製作所)
理事:岩崎哲久(東芝)
理事:重松昌行(住友電気工業)
理事:田中茂(沖電気工業)

ちなみに現在の賛助会員は次のとおりだ。KDDIもNTTも入っている。

(株)NTTデータ
沖電気工業(株)
KDDI(株)
住友電気工業(株)
ソニー(株)
(株)東芝
日本電気(株)
日本電信電話(株)
日本放送協会
(株)日立製作所
(株)フジクラ
富士通(株)
古河電気工業(株)
三菱電機(株)

◆◆
総務省が定めている電波防護指針が危険きわまりない数値であることは、総務省がどのような姿勢で電磁波のリスクを検証しているかを見れば明らかになる。企業の権益を優先して、国民には真実を知らせていない。

KDDIは、総務省の電波防護指針は、「60年以上に及ぶ研究結果が蓄積」されているというが、1990年にそれを設置した後、総務省は実質的には何もしていないのである。しかも、1990年以前の時期は、マイクロ波による人体影響に関する研究が現在のように活発ではなかったので、マイクロ波に関するデータそのものが十分に整っていたとは言えないのである。

しかし、電話会社は、「総務省の電波防護指針を遵守しているので安全だ」と住民に説明しているのである。無責任ではないか。

以下、KDDIの藤田智晃氏との通信である。

【9月24日】
わたしから藤田氏に対する質問。

藤田様

 下記の点をお尋ねします。

 貴社が、あるいは貴殿が現在の電波防護指針で電磁波による人体への影響を回避できると考える根拠を教えてください。ちなみに欧州評議会の勧告値は、0.1マイクロワット・パー・センチメートルとなっています。日本の1万分の1です。

 黒薮

 【9月30日】
藤田氏からわたしに対する回答。

黒薮様 

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

電波の人体への影響につきましては、日本をはじめ世界各国で60年以上に及ぶ研究結果が蓄積されており、これらの膨大な科学的知見に基づいて、電波防護指針が策定されています。我が国の電波防護規制値は、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が策定し、世界保健機関(WHO)が支持する国際的なガイドラインと同等であり、世界各国の研究結果を基に十分な安全率が適用されております。
 したがいまして、この電波防護規制値を満足すれば安全上問題はないというのが、WHO等の国際機関や日本における共通の認識となっており、弊社も同様の認識です。弊社として、電波法令で定める電波防護規制値を遵守して、携帯電話基地局の設置・運用をいたしておりますので、携帯電話基地局から送信される電波による健康への影響はないものと認識しております。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

 ■裏付け資料

 

【10月2日】

黒薮からの質問。

 

藤田様

 回答の中に「日本をはじめ世界各国で60年以上に及ぶ研究結果が蓄積」とありますが、日本の電波防護指針が設定されたのは1989年であり、研究結果とは、それ以前におけるデータのことではありませんか?この点について貴社はどう考えていますか。

黒薮

 

【10月7日】

藤田氏からの返信。

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

電波防護指針は平成27年には低周波領域、平成30年には高周波領域について
それぞれ改定されていますので、電波防護指針がまとめられた平成2年以前の
研究結果だけで成り立っているものではないという認識です。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

■裏付け資料

 

【10月8日】
黒薮から、藤田氏への質問。

藤田様

下記の件です。
貴社のいう60年の研究結果の蓄積というのは、平成30年の改定から遡って60年という意味で間違いありませんね。

黒薮

【10月14日】
藤田氏から黒薮への回答

藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

電波の人体への健康影響については、現在も世界各国で研究が継続されており、
これまで60年以上に及ぶ研究結果が蓄積されているという認識です。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

【10月14日】
黒薮から藤田氏への質問。

藤田様

平成30年の改訂を含んで60年の蓄積という意味を確認しました。間違いであればお知らせ下さい。

それを前提にお尋ねします。60年にわたって蓄積されたデータに基づいて電波防護指針を決めたのは誰ですか。総務省といういう理解でよろしいでしょうか。

黒薮

【10月20】
藤田氏から黒薮への回答。

藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

総務省は、電波の人体への影響に関して、電気通信技術審議会から「電波利用に
おける人体の防護指針」等について答申を受けています。これら答申では、人体
に影響を及ぼさない電波の強さの指針値等(電波防護指針)が示されおり、総務省
はこれら答申を受けて、電波防護のための基準の制度化(関係法令)を行ってい
るものと認識しています。

よろしくお願いいたします。

【10月20日】
黒薮から藤田氏への質問。

藤田様

下記の回答に、

「これら答申では、人体に影響を及ぼさない電波の強さの指針値等(電波防護指針)が示されおり、」とありますが、マイクロ波の非熱作用に関する答申が最後に行われたのは、いつでしょうか。具体的な日付をお知らせ下さい。

黒薮

【10月28日】
藤田氏から黒薮への回答

黒薮様

KDDIエンジニアリング(株)
藤田です。

周辺にお住まいの方への対応として連絡させていただいております。
城山公園に設置する基地局に関して頂いたお問合せについて回答させて頂きます。

総務省では、電波防護指針の根拠となる科学的データの信頼性の向上を図るため、平成9年度より10年間、生体電磁環境研究推進委員会を開催、報告書がまとめられ、平成19年4月に公表されています。
その後、平成20年6月に設置された生体電磁環境に関する検討会では、電波防護指針の評価・検討等を行っております。

弊社は電波防護指針を遵守する事業者の立場であり、電波防護指針を策定する経緯等に関するご質問への回答は控えさせていただきます。

ご理解の程よろしくお願いいたします。

■裏付け資料

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