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2021年03月17日 (水曜日)

読売の「押し紙」裁判、第3回口頭弁論、読売、答弁書でYCがもつ注文部数の「自由増減」権の存在を認める、「押し紙」問題のスピード解決へ前進(1)

広島県福山市の元YC店主が大阪地裁へ起こした「押し紙」裁判の第3回口頭弁論が、16日、web会議によるかたちで行われた。原告弁護団は2通の準備書面と、原告の陳述書を提出した。

■原告準備書面(3)

■原告準備書面(4)

これに対して被告・読売弁護団は、5月19日までに反論書を提出することになった。次回の口頭弁論は、6月1日の午後1時半から、やはりweb会議のかたちで行われる。

原告弁護団が提出した準備書面(3)は、原告の元店主が「押し紙」により受けた被害の実態と「押し紙」の定義などについて述べている。同準備書面によると、原告はYCの経営を始めた時点から「押し紙」の買い取りを強制されていた。前経営者から、実配部数だけではなく、「押し紙」も引き継いだのである。スタートの時点で、すでに約760部が不要な部数だった。

この点に関しては、原告陳述書も、克明にその実態を記録している。新聞の搬入部数(定数)を読売新聞社側が決める一方、原告には、その権利がない実態を綴っている。また、原告が新聞業界に入ってのち、自分の眼でみてきたYCの残紙の実態を報告している。読売新聞社が新聞の「注文部数」を決めている実態を浮き彫りにしている。

◆古くて新しい「押し紙」の定義

ちなみに「押し紙」の定義は、広義には新聞社が販売店に「押し売り」した新聞というニュアンスで解釈されているが、独禁法の新聞特殊指定の定義は、広義の解釈とは若干異なる。

新聞特殊指定の定義は、新聞販売店の経営に必要な部数(実配部数+予備紙)を超える部数で次の3類型に当てはまるものを言う。

①販売業者が注文した部数を超えて供給する行為(「注文部数超過行為」)
②販売業者からの減紙の申し出に応じない行為(「減紙拒否行為」)
③販売業者に自己の指示する部数を注文させる行為(「注文部数指示行為」)

予備紙は認められているが、適切な予備紙部数がどの程度なのかについては、種々の議論があるが、搬入部数の2%(100部に対して2部)で十分というのが常識的な見方である。事実、「押し紙」制度を導入していない熊本日日新聞の予備紙率は、1・5%である。

かつてASA宮崎大塚の「押し紙」裁判で、裁判所は約1000部の残紙を予備紙と認定し、原告の訴えを棄却したが、古紙回収業者によって、残紙が定期的に回収されていた事実からも、これらの残紙が予備紙として機能していないことは歴然としている。

準備書面(3)では、「押し紙」の定義について、原告弁護団が明快な論考を展開している。搬入部数の2%で十分だというのが結論だ。

◆準備書面(4)

準備書面(4)は、原告弁護団が読売弁護団の主張の一部を高く評価する異例の内容になっている。原告弁護団は、読売の何を評価したのだろうか?

普通、裁判の訴状が提出されると、被告は、その内容についての答弁書を提出する。この裁判の答弁書で読売は、「新聞販売店は独立した自営業者であり、自店の経営に必要な部数を自由に決定する権利・自由があることは認める」との見解を示した。つまり販売店側に新聞の「注文部数」を自由に決める権利、端的に言えば「自由増減」の権利があることを初めて認めたのだ。原告弁護団は、この点を高く評価したのである。

わたしが知る限り、熊本日日新聞を除いて、「自由増減」の権利を認めている新聞社は存在しない。それゆえに「押し紙」裁判になると新聞社は、販売店側にも一定部数を負担する義務があるとする旨の主張を続けてきたのである。たとえば残紙の原因は販売店の営業不振にあるので、相応の残紙負担は義務であるというような主張である。販売店に「自由増減」の権利はないという大前提に立って、延々と主張を展開してきたのである。

ところが今回、読売弁護団は販売店側に「自由増減」の権利、つまり「注文部数」を決定する権利があることを認めたのである。従って、従来の「押し紙」裁判で、争点になった販売店の営業成績と自己責任に関する検証や、販売店主の人格(中身は誹謗中傷の場合が多い)に関する検証が不要になる可能性がある。

販売店に「押し紙」を断った明確な証拠させあれば、販売店が簡単に勝訴できる可能性が開けたのである。

読売が、自社ではなく販売店側に「自由増減」の権利があることを認めたことで、「押し紙」裁判の争点が簡潔化する。その意味において原告弁護団は、読売が答弁書の中で販売店側に「自由増減」の権利があることを認めたことを歓迎したのである。

読売の代理人を務めている喜田村洋一・人権協会代表理事は、過去にも「押し紙」裁判を担当してきたが、販売店に「自由増減」の権利があることを認めたのは今回が初めてである。

◆原告江上弁護士の談話

この点について、原告の江上武幸弁護士は、「押し紙」問題の抜本的解決へ向けた次のような談話を寄せた。

読売新聞大阪本社の答弁書に、「新聞販売店は独立した事業者であり、自店の経営に必要な部数を自由に決定する権利・自由があることは認め」との一文があるのを見て、私は一瞬目を疑った。読売が裁判で販売店に注文部数の自由増減の権利があることを認めたのである。「まさか」と言うのが最初の偽らざる気持ちであった。今でもその思いが完全には抜けきれないでいる。

読売新聞が販売店に「自由増減の権利」を認めていれば、「押し紙」によって廃業・倒産に追い込まれる販売店主はいなかった。

YC広川の真村さん、YC久留米中央の荒木さん、YC久留米文化センター前の平山さん、YC大牟田明治の野中さん、YC大牟田中央の中島さん、YC小笹の塩川さん等々、「押し紙」によって人生設計を台無しにされた多くの相談者の方たちの顔が思い浮かぶ。

今から、十数年前の出来事である。当時は、読売新聞は発行部数1000万部の世界最大の新聞社であることを喧伝していた。しかし、これらの販売店主の方たちの話では、新聞社から届く新聞の30数%から50%近い部数の新聞が配達されずに廃棄されているとの事であった。業界では「押し紙」とか「残紙」と呼ばれており、しかも、読売新聞に限らず殆ど全ての新聞社が同じ問題をかかえているという。

とても信じ難い話しであった。新聞社に対する信頼がガラガラと音を立てて崩れる瞬間であった。

現在、自民党政権下の官僚達が保身や出世のために政治家にすり寄る醜悪な姿を国民の前に曝しているが、本来であれば、新聞社が真っ先にこれらの腐敗をえぐり出して報道すべきところ、「文春砲」と呼ばれる週刊文春の記事を後追いするだけの存在に成り下がってしまった。

新聞社に「押し紙」さえなければ、権力と堂々と対峙できたはずである。「押し紙」が新聞をダメにしたといっても過言ではない。

今回、読売新聞大阪本社は、答弁書で販売店に注文部数の自由増減の権利があることを認めた。読売新聞社の代理人は、あるいは、この裁判を機に「押し紙」を本気で解消しようと考えてくれているのかも知れない。そうであるならば、私達は共通の土俵の上にたって、裁判官を交えて新聞業界全体の「押し紙」の完全撲滅に向けての議論を交わすことができる。

私共は去る2月22日付で、長崎県佐世保市で廃業した元読売新聞販売店主の川口さんを原告、読売新聞西部本社を被告とする損害賠償請求訴訟を福岡地方裁判所に提起した。東京地裁では読売新聞東京本社を被告とする「押し紙損害賠償請求訴訟」が別の弁護士らによって進行中である。

紙媒体を中心とする新聞は、何れ時代の流れに飲み込まれて消えゆく運命にあるかも知れない。しかし、「押し紙」によってこれまであまたの新聞販売店主が人生を台無しにされてきており、その責任を曖昧にしたまま舞台から消え去ることは許されない。現在の経営陣がその責任をきちんと果すのが、経営者としての本来の姿である。

読売新聞社の現在の経営陣が、この裁判を機に抜本的な「押し紙撲滅」のための措置を講じることを期待している。

◆◆
なお、福山市の元YC店主のケースでは、「押し紙」を断った明白な証拠が残っている。(続)

2021年03月15日 (月曜日)

「5Gグローバル・プロテスト・デイ」、いのち環境ネットワークがオンライン学習会を予定、3月20日の午前

3月20日は、「5Gグローバル・プロテスト・デイ」である。世界中で一斉に5Gについて、批判的な視点から考える行事が予定されている。日本では、いのち環境ネットワーク(加藤やすこ代表)が、インターネットを使ったオンライン学習会を開催する。

詳細は次の通りである。

日時:3月20日午前10:00~11:30

講師:加藤やすこ(環境ジャーナリスト)

参加費:無料・カンパ歓迎

 

催:いのち環境ネットワーク

5Gから健康とプライバシーを守る会

   電磁波からいのちを守る全国ネット

申し込み:sakino1030@icloud.com
(先着100名、17日まで受付け)

詳細

2021年03月11日 (木曜日)

世界一規制がゆるやかな日本の電波防護指針、背景に電話会社と総務省の癒着、政界の野党へはNTTの労組「アピール21」から政治献金

NTTと総務省の癒着がメディアでクローズアップされている。15日には、NTTの澤田純社長が参院予算委員会に参考人招致される。
電磁波問題に関心のある人々の間で、当然、関心の的になるのは、総務省が定めた世界一規制がゆるい電波防護指針の背景に、通信業界と総務省の癒着があるのではないかという点である。次に示すのが、スマホや携帯電話に使われるマイクロ波の規制値の国際比較である。

日本:1000 μW/c㎡ (マイクロワット・パー・ 平方センチメートル)

国際非電離放射線防護委員会:900μW/c㎡

欧州評議会:0.1μW/c㎡、(勧告値)

日本の1000 μW/c㎡ は、米国と並んで世界で最もゆるやかな規制値となっている。電話会社は、住民から基地局設置に関する苦情を持ち込まれると、「総務省の規制値を守って操業しますから、絶対に安全です」と弁解する。それが常套手段になっている。

地方自治体も、住民から電磁波問題の相談があると、同じ回答をする。総務省の方針に従って基地局に関する情報もほとんどが未公開としている。そのために住民は、基地局が設置されても、どの電話会社の基地局なのかすら知ることができない。一方的に被害を受ける。

こうした実態の背景に、総務省とNTTの癒着がある可能性が高い。しかし、15日の参考人招致でこの問題にメスが入る可能性は少ない。NTT労組「アピール21」から、野党議員へ政治献金が支給されているからだ。

癒着の構造は複雑で闇が深い。

 ■アピール21の政治献金収支報告書

2021年03月10日 (水曜日)

裁判を起こしたA家3人に6万6000円の支払い命令、訴訟費用額確定処分が下る、横浜副流煙スラップ裁判

横浜地裁は3月2日、横浜副流煙裁判で敗訴したA家の3人に対して訴訟費用額確定処分を下した。3人が支払いを命じられた額は、総計で約6万6000円である。3人の負担額は次の通り。

A夫:22,149円

A妻:22,149円

A娘:2,2148円

■裏付け資料

横浜地裁と東京高裁は、敗訴したA家3人に対して訴訟費用を全額負担するように命じた。この決定に応じて、藤井さんは裁判で負担した交通費や日当などを請求する手続きを踏んだ。(弁護士や調査会社に払った費用は請求できない。)

横浜地裁がA家の3人に対して下した訴訟費用額確定処分を受けて、藤井さんは請求書を送付した。

◆◆
この事件は、横浜市青葉区の団地で発生した煙草の副流煙をめぐ事件で、裁判にまでエスカレートした。同じマンションに住むA家3人(2階に在住)と藤井さん(1階に在住)が争ったもので、日本禁煙学会の作田学理事長らがAさん一家を支援し、地域住民が藤井さんを支援する構図となった。

横浜地裁は、2019年11月にA家3人の請求を棄却した。さらに作田理事長が作成したA娘の診断書が、無診察で交付されたことを認定した。(医師法20条違反)

この診断書については、審理の中でさまざまな疑惑が浮上した。今後に真相の解明という課題を残した。

藤井さんサイドは、この訴訟提起そのもがスラップに該当すると考えている。請求された額が約4500万円と高額だったことに加えて、訴訟の根拠に具体性が欠けたからだ。A夫にそもそも25年の喫煙歴があったことも、裁判の中で判明した。診断書の書式も、作田理事長が勤務していた日赤医療センターの書式ではなかった。

近々に、作田氏に対して「反訴」の損害賠償裁判が提起される予定になっている。

 

【参考記事】横浜副流煙事件の概要、黒薮が草の実アカデミーで報告、斉藤実警視総監(事件当時は、神奈川県警察本部長)の関与も重大視、ユーチューブ動画①を公開

2021年03月09日 (火曜日)

明らかな独禁法違反を示す朝日新聞の内部資料、ASA宮崎大塚の例、販売店の自己責任論の破綻(1)

はじめて「押し紙」問題が国会に持ち込まれたのは1981年3月だから、その年から数えて今年で40年になる。日本新聞販売協会の会報には、それよりもはるか以前から「押し紙」についての記述があるので、少なくとも「押し紙」が社会問題として浮上してから、かれこれ半世紀になる。さらに厳密に言えば、戦前にも「押し紙」が存在したとする証言もある。

わたしがこの問題の取材をはじめたのは、1997年である。以後、独禁法違反という観点から、最も理不尽に感じた「押し紙」裁判の判決のひとつは、2011年9月5日に下されたASA宮崎大塚の裁判である。ASA宮崎大塚の敗訴という結果に、今も納得していない。独禁法違反の明白な証拠を原告が提出したにもかかわらず、朝日新聞弁護団の詭弁の前に販売店が敗訴したからだ。

◆残紙の実態
ASA宮崎大塚は、次のような経営実態だった。たとえば2008年1月の部数内訳の例である。

搬入部数:4770部
発証部数:3449部
サービス部数:378部
即売部数:103部
予備紙(残紙):883部 

請求対象になった他の期間における部数内訳も、おおむね同じような実態である。

◆内部資料
上記内訳のうち「搬入部数」とは、販売店に搬入される新聞の部数である。言葉を替えると新聞の「注文部数」である。しかし新聞の場合、「注文部数」は、普通の商取引における「注文部数」とは、まったく中身が異なる。

たとえばコンビニ店主は、問屋から購入する商品の数量を自分で決める。チョコレート20箱とか、牛乳30パックとか・・・・。これが普通の意味での「注文数」 である。

ところが新聞業界には、「注文部数」を新聞社が決める慣行がある。信じがたいことだがそれが商慣行になってきた。わたしが取材した限りでは、熊本日日新聞を例外として、他の新聞社は新聞の注文部数を、販売店に代わって新聞発行本社が決定している。販売店が、新聞部数を自由に増減する権利(自由増減)が認められていない。

その決定的な証拠が、次に示す朝日新聞の内部資料である。

■朝日新聞の内部資料

この資料は、朝日新聞がASAに対して一斉にファックスで送信したもので、宛先は、「ASA所長各位」になっている。表題は、「08年目標数のお願い」。書面の執筆者は、朝日新聞西部本社の販売第一部長・西本信行氏である。

西本氏は、ASAの店主に営業活動に対する感謝の意を表した後、次のように文書を結んでいる。

 貴ASAの2008年の目標数案を別紙のように決定致しましたので、ご通知申し上げます。皆様方の更なるご活躍とより一層の飛躍をお祈り申し上げます

そして同じ通信の3ページ目で、「注文部数」を4770部に指定しているのである。

朝日新聞は、このような発注方法を複数年に渡って行っていたのである。

◆自己責任論
このケースのように「注文部数」を新聞社が決めるのが、新聞業界の慣行になっている。しかし、独禁法の新聞特殊指定は、「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給すること」を禁止している。朝日新聞の販売政策は、明らかに独禁法に違反している。普通の解釈をする限り、独禁法違反は否定しようがない。

ところが朝日新聞弁護団は、それを認めず残紙が発生した原因について、あれこれと理屈を組み立てていったのである。たとえば、被告準備書面(3)で「普及努力義務から導かれる目標数」という節を設けて、次のように述べている。

販売店は、新聞販売店契約により、特定の販売区域における独占的販売権を保障されていることから(テリトリー制)、当該販売区域において、新聞部数を維持・拡大するには、販売店による普及努力が不可欠である。そのために、新聞販売店契約上、販売店には普及努力義務が課されている。(略)

つまり残紙を販売店の自己責任とする主張が展開され、裁判所もそれを認めたのだ。常識的に考えれば、「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給」すれば、独禁法違反に該当するはずだが、朝日新聞が自己責任論で対抗し、裁判所も最終的にそれを認めて、原告の元店主を敗訴させたのである。独禁法の適用を免れたのだ。

朝日新聞弁護団の戦略は、「販売業者に自己の指示する部数を注文させ、当該部数の新聞を供給」する行為が、独禁法違反としては適用されないという主張を貫くことだった。それを前提として販売店の自己責任論を持ち出し、勝訴したのである。「押し紙」裁判の複雑さはこのあたりに存在するのである。

◆裁判所の見解が変化する兆し
しかし、昨年5月の佐賀新聞「押し紙」裁判で、佐賀新聞の独禁法違反が認定された後、徐々に販売店の自己責任論が通用しなくなり始めている。(続)

 

【参考記事】佐賀新聞「押し紙」裁判、判決の公開と解説、佐賀新聞社の独禁法違反を認定

2021年03月06日 (土曜日)

総務省とNTTの特別な癒着関係、総務省の非常識な電波防護指針に影響か?

総務省幹部らが、NTTから高額接待を受けていたことが、週刊文春の報道で明らかになった。それをうけて武田良太総務大臣が陳謝した。

携帯電話の基地局設置をめぐる問題に取り組んだことのある人にとって、NTTが総務省を接待していた事実は、日本の電波防護指針(規制値)が世界一ゆるやかに設定されている背景を考える上で考慮すべき点である。結論を先にいえば、NTTと総務省が水面下で癒着してきた可能性が高い。そしてこの腐敗の恩恵を、他の電話会社も受けている可能性も高い。

携帯電話やスマホの交信に使われるマイクロ波の規制値は1000μW/c㎡である。この数値は、たとえば欧州評議会の勧告値0.1μW/c㎡に比べて、1万倍もゆるやかに設定されている。実質的には、まったく規制になっていない。世界標準とされる国際非電離放射線防護委員会が定めている規制値をも超えている。

いわば総務省は、電話会社がやりたい放題のビジネスを展開できるように配慮しているのである。

◆◆
携帯電話の設置をめぐって電話会社との間でトラブルが発生した場合、住民らは当然のプロセスとして、電話会社と交渉することになる。その際に電話会社が常套手段として持ち出してくるのが、次の論理である。

「総務省の電波防護指針を遵守しますから、絶対に安全です」

基地局設置をめぐるトラブルが起きている自治体の役所に問い合わせても、同じ常套句がかえってくる。

「総務省の規制値を守っている限り、自治体に電話会社の活動を規制する権限はありません」

基地局の撤去を求める裁判においても、裁判所が判定の基準にするのは、電話会社が電波防護指針を守っているかどうかである。1000μW/c㎡を、ほんの少しでも下回っていれば違法行為にはならない。異常な数値とはいえ、違法行為にはならない。

ところがこの総務省の電波防護指針が、高額接待によって維持されてきた疑惑が浮上してきたのである。少なくとも総務省とNTTグループがずぶずぶの関係であることは疑いない。

総務省は、現在の非常識な電波防護指針を見直して、欧州評議会なみに電話会社の活動を規制すべきだろう。少なくとも民家の近くや、ビルの上に基地局を設置することを禁止すべきだろう。

 

【バックナンバー】電通が関与したMnetの「疑惑」放送確認書の件で、総務省へ調査の依頼、博報堂でも同じ例が

 

【バックナンバー】 5Gと電磁波, 総務省の電波防護指針(安全基準)がでたらめで犯罪的な理由

 

【バックナンバー】公共のテレビCMに「間引き」疑惑、放送確認書の開示をはばみ続ける総務省

 

【バックナンバー】務省における業務の著しい怠慢、職員は放送確認書が何かを知らないレベル、高市総務大臣はマネーロンダリング

【動画配信】新聞に折り込まれる広報紙の水増し問題、大野市議が厳しく追及、千葉県流山市の議会

既報したように、千葉県流山市の大野富生議員が2月26日の市議会で、新聞に折り込まれる市の広報紙が大幅に水増しされている疑惑を取り上げた。流山市は、新聞のABC部数が全市で36、836部(2020年4月時点)しかないのに、新聞販売店には55,238部の『広報ながれやま』が搬入されている。千葉日報の部数が若干あるとしても、約2万部が水増し状態になっている疑惑がある。

次に紹介するのは、大野議員の質問動画である。約50分に渡って、広報紙の水増し問題を追及している。

■2月26日の本会議(開始は1時間02分~)

 

2021年03月04日 (木曜日)

最高裁事務総局に対して3件の情報公開請求、産経新聞「押し紙」事件の野村武範裁判長の職務に関する疑問、東京高裁在任が40日の謎

わたしは1月19日、最高裁事務総局(中村慎事務総長)に対して3件の情報公開請求を行った。その背景を説明する前に、まず実際の請求内容を紹介しておこう。

1、野村武範判事が東京高裁に在職中(令和2年4月1日から令和2年5月10日)に、担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

2、野村武範判事が令和2年5月11日に東京地裁に着任した後に担当した事件の原告、被告、事件の名称、事件番号が特定できる全文書

3、野村武範判事の人事異動に関連する全文書

■裏付け資料

◆◆
上記「1」と「2」の記述からも判明するが、野村裁判官は東京地裁に2020年の4月1日から5月10日の40日間在職した後、東京地裁へ異動している。これだけ短期間で異動していること自体が尋常ではないうえに、東京地裁へ着任した後、産経新聞社を被告とする「押し紙」裁判の裁判長になり、敗訴が濃厚になっていた産経新聞社を完全勝訴させる判決を下した。

この判決をめぐって、「報告事件」ではないかとの疑惑が広がっている。疑惑の根拠は、前任の裁判長が、産経新聞社に対して2回にわたり和解金の支払いを提案していた事実である。当然、判決になれば、産経新聞社が敗訴する流れだった。ところが裁判が結審する直前になって裁判長の交代があり、裁判の流れが急変したのである。

当然、司法ジャーナリズムが検証しなければならない問題である。しかし、司法記者は何もしない。役割を放棄している。そこでわたしが情報公開に踏み切ったのである。

◆◆
情報公開請求に対して、2月24日付けで最高裁事務総局は、わたし宛てに3通の文書を送付した。文面はいずれも、請求資料の開示までに、「本日から2カ月程度かかる見込みです」というものである。

開示請求の「3」については、確かに時間を要する案件かも知れない。しかし、野村裁判官が東京高裁に在職した40日のあいだに、具体的にどのような職務を遂行したのかを開示するのに、2か月の時間を要するだろうか。裁判官になった後の全職務を公開しろと言っているわけではない。

民間企業であれば、半日もあればできる作業である。

◆◆
判決文をどう評価するのか、あるいは判決の結果を「報告事件」に指定された結果と判断するのか否かは、読み手によって異なる。そこでなぜわたしが野村裁判官の下した判決がおかしいと感じたかを示しておこう。次の2件の記事を参考にしてほしい。

(2020年12月14日付け)野村武範裁判長が執筆した判決文にみる論理の破綻、「押し紙」は認定するが賠償は認めない、産経新聞「押し紙」裁判の解説、判決全文を公開

(2020年1月18日付け)産経「押し紙」裁判にみる野村武範裁判長の不自然な履歴と人事異動、東京高裁にわずか40日
新聞社がらみの裁判では、不可解な判決が下されることがよくある。その結果、新聞社に関連して事件に関して言えば、半世紀にわたって問題になっている「押し紙」にも、いまだにメスが入っていない。これ自体が不自然極まりないことである。

裁判官として人を裁く特権はただならぬものがある。それを軽視した裁判官はジャーナリズムの検証を受ける必要があるのだ。

 ※報告事件:
最高裁事務総局の指示によって、裁判の担当書記官が進捗状況を最高裁に報告する事件。報告により最高裁事務総局が、裁判官の人事異動を行うなどして、判決の方向性をコントロールする。日本の司法の恥部である。生田暉雄弁護士(大阪高裁元判事)らが、問題視している。

【参考記事】裁判官の不可解な人事異動-木村元昭・田中哲朗の両氏、対読売の真村裁判・平山裁判・黒薮裁判で

【参考記事】田中哲郎裁判官の軌跡を検証する、電磁波裁判と読売裁判を担当して九州各地を転々、最高裁事務総局に責任はないのか?

2021年03月03日 (水曜日)

楽天モバイルに対して2通のお願い文書を送付、基地局設置をめるぐトラブルで、計画の白紙撤回を求める

「電磁波からいのちを守る全国ネット」(以下、全国ネット)は、3月1日、楽天モバイルに対して、携帯電話の基地局設置計画の中止を求めるお願い文書を送付した。

5Gの普及が進む状況の下で、「全国ネット」は、基地局設置をめぐるトラブル相談に応じてきた。その大半は住民の反対運動で解決しているが、ペンディングになっている2件のケース(いずれも楽天モバイル)について、今回、公式に計画の白紙撤回を求めたものである。

一件は、埼玉県鴻巣市のケースである。民家の直近に楽天モバイルが基地局を設置した後になって、住民が楽天モバイルの計画を知り、工事をペンディングに追い込んだ。しかし、基地局そのものは既に設置されている。いつ稼働してもおかしくない。基地局が稼働すると、近隣の住民は、1日に24時間、1年に365日、5年、10年、20年の長期にわたりマイクロ波に被曝することになる。

このケースでは、すでに住民による反対署名も提出されている。

もう1件は、やはり埼玉県、志木市のケースである。大規模な分譲マンションの屋上に楽天モバイルが基地局を設置する計画を持ちかけ、マンションの管理組合が提案を受け入れるかどうか、今月中にも総会を開いて結論をだす段取りになっている。住民の中には、マイクロ波による人体影響についてまったく知らない人も多い。

楽天の提案が可決されてしまうと、基地局設置に反対している住民まで、マイクロ波の被曝に曝されることになる。特に基地局直下の部屋に住む住民は、高周波だけではなく、低周波の影響も受ける可能性が高くなる。

楽天モバイルに対する申入書の全文は次の通りである。

■鴻巣市のケース

■志木市のケース 

 

■電磁波問題に関する全記事

千葉県流山市の大野富生市議(NHK党)が広報紙の水増し問題を追及、市当局の見解、「不正があれば契約を破棄して、損害賠償を請求する」

千葉県流山市の大野富生市議(N国党)は、26日に開かれた定例会で、広報紙『広報ながれやま』が水増しされている疑惑を取り上げた。メディア黒書でも既報したように、新聞のABC部数が全市で36、836部(2020年4月時点)しかないのに、新聞販売店には55,238部の『広報ながれやま』が搬入されている。千葉日報の部数が若干あるとしても、約2万部が水増し状態になっている。

配達されずに廃棄されている可能性が極めて高い。

■千葉県流山市で広報紙の大幅な水増し、約3万7000の新聞発行部数に対して約5万5000部を供給

また大野議員は、現在の折込定数55,238部(新聞に折り込む媒体の枚数)を固定した時期について質問した。これに対して、同市の総合政策部長は、2016年(平成28年)11月と回答した。つまり新聞のABC部数が大幅に減少しているにもかかわらず、約5年に渡って折込定数を固定していた事実が明らかになった。

ちなみに2016年のABC部数(4月)は、4,3929部であるから、2020年4月の部数からは、1万部を超える部数減となっている。その後、さらに部数が減っている可能性が高い。それにもかかわらず折込定数は固定されたままになっている。

この固定方針について総合政策部長は、流山市の人口が増えているからと説明した。しかし、新聞のABC部数は大幅に減少しているわけだから、整合性のある説明とはいえない。

適正な折込定数の確認方法について総合政策部長は、年間で37回行われる広告代理店(市と販売店の仲介業者)からの報告書に明記された数字を根拠としたと答えた。また各新聞販売店から、実配部数を証明するための押印文書も存在すると回答した。

ABC部数と折込定数が大きく異なっている理由については、流山市に隣接する柏市、野田市、松戸市の市境付近にある販売店の配達エリアが、流山市にもまたがっていることが原因と説明した。つまり柏市、野田市、松戸市の販売店にも『広報ながれやま』と卸しているという説明である。

しかし、それを示す具体的な資料の提示はなかった。配達部数の3分の1以上が、市境をまたいでいることは通常はありえない。それに柏市でも広報紙の水増し疑惑が浮上している。

大野議員はまた、3月に予定されている千葉県知事選挙や10月に予定されている衆議院議員選挙で流山市が採用する選挙公報の折込定数について、数字を明らかにするように求めた。これに対して選挙管理委員会は、『広報ながれやま』よりも多い55,400部に設定すると答えた。

今後の対策を問われて総合政策部長は、年に4回、折込定数を検証することや「水増し」が発覚した場合、広告代理店との契約を打ち切り、過去の損害賠償を請求する方針も明きらかにした。

◆背景に残紙問題

広報紙の水増し問題が全国規模で浮上している。水増しの背景に新聞社による「押し紙」政策がある。日本の新聞業界は、熊本日日新聞など少数の例外を除いて、独特のビジネスモデルを採用してきた。それは新聞の「注文部数」を新聞社が決め、その部数を実際に販売店に搬入する方法だ。販売店は残紙による負担を折込媒体の水増しや補助金によって相殺する。

このような商慣行は、明らかな独禁法違反である。

しかし、販売店にとって実配部数を申告することは、このビジネスモデルから脱退することになる。すなわち廃業である。従って残紙を実配部数と偽って公表せざるを得ない。

責任は、新聞社の「押し紙」政策にある。

国会で「押し紙」問題の追及が始まってこの3月で40年になる。新聞関係者はいまだに「押し紙」の存在を認めていない。読売新聞社は、自社には1部の「押し紙」もないと公言している。これはジャーナリスト集団として異常ではないか?恥を知るべきだろう。記者は声をあげるべきだ。

広報紙の水増し問題が議会で取り上げられたのは初めてである。「押し紙」問題は過去に取り上げられたことがあるが、広報紙の水増し問題は初めてである。

全国に影響を及ぼしそうだ。【詳細は、後日】

 

■広報誌の水増し問題に関する全記事

2021年02月26日 (金曜日)

2021年1月度のABC部数、政府よりの右派2紙・読売と産経は前月差でABC部数増加、

2021年1月度のABC部数が明らかになった。それによると朝日は、前年同月差でマイナス43万部、読売新聞はマイナス58万部、毎日新聞はマイナス28万部と大幅な部数減となった。

しかし、前月差でみると右派で政府よりの2紙、読売と産経は、12月から1月にかけてABC部数を増やしている。新聞離れの時代にもかかわらず好調だ。新聞販売店向けの部数の場合、読売は約1万部、産経は約1500部ほどABC部数を増やしている。

1月部数の詳細は次の通りである。

朝日:4,818,332(−431,432)
毎日:2,025,962(−277,821)
読売:7,310,734(−576.252)
日経:1,946,825(−281,066)
産経:1,223,328(−125,236)

◆読売、「押し紙をしたことは1回もございません」

なお、このところ「押し紙」問題が大問題になっているが、読売は自社の販売店(YC)には1部の「押し紙」も存在しないと公言してきた。

参考までに、宮本友丘専務(当時)が、「押し紙」裁判(読売VS黒薮・新潮社)の法廷で行った証言(2010年11月16日、東京地裁)を紹介しておこう。代理人である喜田村洋一・自由人権協会代表理事の質問に答えるかたちで、次のように証言した。

※自由人権協会:日本を代表する人権擁護団体のひとつ

喜田村弁護士:この裁判では、読売新聞の押し紙が全国的に見ると30パーセントから40パーセントあるんだという週刊新潮の記事が問題になっております。この点は陳述書でも書いていただいていることですけれども、大切なことですのでもう1度お尋ねいたしますけれども、読売新聞社にとって不要な新聞を販売店に強要するという意味での押し紙政策があるのかどうか、この点について裁判所にご説明ください。

宮本:読売新聞の販売局、あと読売新聞社として押し紙をしたことは1回もございません。

喜田村弁護士:それは、昔からそういう状況が続いているというふうにお聞きしてよろしいですか。

宮本:はい。

喜田村弁護士:新聞の注文の仕方について改めて確認をさせていただきますけれども、販売店が自分のお店に何部配達してほしいのか、搬入してほしいのかということを読売新聞社に注文するわけですね。

宮本:はい。

2021年02月25日 (木曜日)

横浜副流煙事件の報告②、草の実アカデミーでの報告、警視庁トップの斉藤実警視総監の関与、ユーチューブ動画

 

隣人が室内の密閉された「防音室」で吸った煙草の煙が外部に漏れ、微量の副流で「受動喫煙症」になったとして4500万円の請求が行われた横浜副流煙事件の報告(ユーチューブ)の後半である。事件の詳細については、次のURLを参考にしてほしい。

■事件の概要

この事件では、「受動喫煙症」に罹患したとしてAさん一家(夫、妻、娘)が藤井将登さんを提訴した前後に、神奈川県警が藤井さんを自宅で取り調べている。その時の県警本部長が、就任したばかりの斉藤実氏だった。斉藤氏は、現在、警視庁の幹部、警視総監の立場にある。

これら2度の取り調べに関しては、その不自然さが指摘されてきた。まず、1回目は、斉藤氏が県警本部長に就任した直後に行われた。初仕事の印象がある。

2度目は、Aさん一家の代理人である山田義雄弁護士と山田雄太弁護士が連名で、斉藤氏に調査を依頼する書面を送った2日後に行われた。この事件に即座に反応したのである。

通常、警察は事件の捜査依頼があっても腰が重い。なかなか動かない。ところがこの事件では、山田弁護士らが依頼して、即刻に藤井さんを取り調べたのだ。

今回のわたしの報告の中でも、この点に言及した。会場からも、「不自然」だとの声があがった。

■報告①は次のユーチューブ

2021年02月22日 (月曜日)

横浜副流煙事件の概要、黒薮が草の実アカデミーで報告、斉藤実警視総監(事件当時は、神奈川県警察本部長)の関与も重大視、ユーチューブ動画①を公開


2月20日、草の実アカデミーは、「禁煙ファシズム~副流煙被害4500万円訴訟と日本禁煙学会の謎」と題する学習会を開いた。講師は、わたし(黒薮)が務めた。次に紹介するユーチューブは、約1時間にわたる事件概要の解説である。

この事件に、斉藤 実(さいとう みのる)警視総監が関与(事件当時は、神奈川県警察本部長)していたことも明らかにした。なぜ、斎藤氏が神奈川県警を動かし被告・藤井さんの取り調べに動いたのかは、今後の解明点になる。人脈か?人脈であれば、どのような人脈なのか?

藤井さんによる「反訴」は、秒読みの段階に入っている。