喜田村の検索結果

2015年10月02日 (金曜日)

「押し紙」70年⑬ 黒薮の取材に応じたから店主を解任の論理、喜田村弁護士ら準備書面の中で「自称ジャーナリスト」を批判

【サマリー】対読売裁判で真村氏が敗訴した理由のひとつに、真村氏が「メディア等を用いて」読売を攻撃したことがあった。具体的には、真村氏がわたしの取材に協力したことである。読売代理人の喜田村洋一・自由人権協会代表理事らは、準備書面の中で「自称ジャーナリスト黒薮」という優等生らしい蔑称を使って、この点についてたびたび言及している。それが記録に残っている。

  この裁判には、記録された文書を基に検証を重ねなければならない問題が山積している。たとえば同じ裁判官が、仮処分の判決と本訴でまったく正反対の結論を出している事実である。

第2次真村裁判の仮処分の申し立ては、1審から4審まで真村氏の完全勝訴だった。しかし、本訴では逆、1審から3審(地裁・高裁・最高裁)まで読売の勝訴だった。本訴が優先されるので、真村氏は敗訴した。

平行して進行したこれら2件の裁判では、ほぼ同じ証拠資料が提出され、同じ主張が展開されたことはいうまでもない。が、判決だけは正反対になった。

この事実は、日本の裁判所が物事の明確な判断基準を有していないことを意味する。裁判官の主観により、あるいは政治的な要素を配慮しながら、判決を下していることになる。司法制度が日本の権力構造の歯車に組み込まれている結果、このような現象が生じている可能性もある。

この裁判にかかわった判事に木村元昭(現、福岡家庭裁判所所長)という人物がいる。木村裁判官は、福岡地裁で仮処分の第2審を担当し、真村氏を勝訴させた。その直後に、沖縄の那覇地裁へ転勤になった。

木村裁判官が那覇地裁で勤務している間も、福岡で真村裁判は進行していた。

本訴の地裁判決で敗訴した真村氏は、福岡高裁へ控訴した。その控訴審がはじまってまもなく、裁判長の交代があった。新しい裁判官は、木村元昭氏だった。木村氏が那覇地裁から福岡高裁へ栄転して、真村裁判の控訴審を担当することになったのだ。

仮処分で真村氏を勝訴させた裁判官であるから、当然、本訴でも真村氏に有利な判決を出すものと思われた。ところが判決は、真村氏の敗訴であった。判決の内容も、木村氏がみずから執筆した仮処分の判決と矛盾だらけの内容だった。

木村元昭氏が書いた2つの判決を読み比べたとき、わたしはこの人物の人間性そのものを疑った。判決は、記録として永遠に残る。同じ裁判官が同じ案件で書いた2つの判決を、後世の司法研究者はどう評価するのか、わたしは暗い好奇心を刺激された。

この裁判の詳細については、拙著『新聞の危機と偽装部数』の第6章「人権問題としての真村裁判」に詳しい。

ちなみに木村氏は、わたしが読売に対して起こした損害賠償裁判(読売がわたしに対して提訴した3件の裁判が「一連一体の言論弾圧」として5500万円を請求)の控訴審で、裁判長として登場し、わたしを敗訴させている。

◇取材する自由、取材を受ける自由

さて、本訴における真村氏の敗訴理由のひとつに、真村氏が「メディア等を用いて」読売を攻撃したことがあがっている。具体的には、わたしの取材に応じたことである。読売代理人の喜田村洋一・自由人権協会代表理事らは、準備書面の中で「自称ジャーナリスト黒薮」という蔑称を使って、この点についてたびたび言及している。

詳細については、拙著『新聞の危機と偽装部数』(花伝社)から重要部分を抜粋するので、次のPDFをご覧いただきたい。

■『新聞の危機と偽装部数』・・・「黒薮執筆の記事の責任を真村氏が負う不思議」

真村氏がわたしの取材活動に協力したことを、改廃理由として主張した喜田村氏らが、報道活動の自由や取材を受ける自由について、本当はどのように考えているのかは知らないが、真村裁判の記録文書を検証する限りでは、厳しく言論制限するのが妥当だという考えのようだ。少なくともわたしはそんな印象を受けた。

残念ながらこのような考えは、特定秘密保護法の施行に象徴されるように、水面下でじわじわと日本に広がっている。

2015年10月01日 (木曜日)

「押し紙」70年⑫ 第2次真村裁判、黒薮の取材を受けたことが改廃理由に、この裁判でも喜田村洋一・自由人権協会代表理事が読売代理人に

【サマリー】  第2次真村裁判とは、第1次裁判の判決確定により、YC広川・真村店主の地位が保全された7か月後に、読売がやはり真村氏に対して断行した販売店改廃に端を発した地位保全裁判である。結論を先に言えば、真村氏は敗訴した。

 この第2次裁判は、さまざまな問題を含んでいる。たとえば真村氏の解任を認める理由として、わたし(黒薮)の取材を受けたことなどがあがっている。
言論・表現の自由にかかわる問題が浮上したのである。しかも、新聞社がかかわっているのである。

 この裁判でも、やはり自由人権協会の喜田村洋一代表理事が、読売代理人として福岡へ通い続けたのである。

さて、第2次真村裁判を紹介しよう。

すでに述べたように2007年12月、第1次真村裁判の判決が最高裁で確定して、YC広川の真村店主は、店主としての地位を守った。ところがそれから約半年を経た2008年7月、読売は真村氏との取引契約が満期になったのを機に、契約更新を拒否した。真村氏は店主としての地位を失ったのである。

一見すると契約満期に伴う更新拒否であるから、法的に問題がないように思われるが、販売店を開業するにあたっては多額の投資をしていることや、新聞販売業が家業としての側面を持っていることなどからして、継続的契約とみなされ、正当な改廃理由がないのに、更新を拒否することはできない。

ところが読売は、最高裁で真村氏の地位保全が確定した7か月後に、YC広川を強制改廃したのである。見方によれば、司法に対する正面からの挑戦といえるだろう。自己中心的な新聞人の体質を露呈した事件ともいえよう。

◇真村氏が再び法廷へ

当然、真村氏は再び地位保全裁判を提起せざるを得なかった。第1次真村裁判の終了から、たった7か月のブランクを経て、再び地位保全裁判の法廷に立つことになったのである。

江上武幸弁護士ら真村氏サイドは、仮処分の申し立てと、本訴を平行する戦術を取った。仮処分を申し立てたのは、早急に販売店の業務を再開して生活の基盤を確保する必要があったからだ。

第2次裁判が検証対象とした期間は短かった。2007年12までの真村氏の行動に関しては、店主を解任される正当な理由は存在しないという司法認定を受けたわけだから、それ以後の時期、つまり2008年1月から、解任される7月末までの7か月のあいだに、真村氏を解任するだけの真っ当な理由が存在するかどうかが、検証点になる。

当然、江上武幸弁護士らは、第2次裁判での真村氏の敗訴はあり得ないと見ていた。わたしは当時、少なくとも10人ぐらいの知り合いの弁護士に、見解を問うてみたが、口をそろえて真村氏の敗訴はあり得ないと返答した。

実際、仮処分の申し立てでは、真村氏が勝訴した。1審から、4審にあたる最高裁への特別抗告まで真村氏の勝訴だった。喜田村洋一・自由人権協会代表理事ら読売側は、真村氏の「首切り」を執拗に主張したが認められなかった。

◇読売、司法命令に従わず

仮処分の第1審で勝訴した後、読売は仮処分命令に従い、真村氏を店主として復帰させるものと思われた。が、驚くべきことに喜田村弁護士らは、仮処分命令に従わなかったのだ。

これに対して江上弁護士らは、間接強制金を請求した。裁判所もこれを認め、読売は1日に3万円の「制裁金」を真村氏に支払うことになったのである。読売は2審、3審、4審と敗訴したので、「制裁金」の累積は、約2年半で約3600万円にもなった。

ちなみに間接強制金は、本訴で敗訴した場合、支払い元へ返済しなければならない。ある意味では理不尽な制度である。

読売が仮処分命令に従っていれば、真村氏は事業を再開でき、自分で生活の糧をえることが出来た。しかし、読売が命令に従わなかったから、真村氏は業務を再開できず、やむなく「制裁金」を受け取り、生活費や販売店の店舗のメンテナンスにあてていたのである。

本訴の最初の判決(福岡地裁)は、2011年3月15日に下された。審理は2年8か月に及んでいた。予想に反して真村氏の敗訴だった。裁判には圧倒的に強い読売が勝訴したのである。

この時点で、真村氏に3600万円の「制裁金」を読売に返済する義務がのしかかってきた。実際、後日、喜田村弁護士らは、真村氏の資産を仮に差し押さえる措置に出てくる。

■喜田村弁護士らが作成した不動産仮差押命令申立書

本訴では控訴審も上告審も、真村氏の敗訴だった。裁判所は、第1次裁判終了から後の7か月のあいだに、真村氏を解任に値する理由があったと判断したのである。

その理由は暗い好奇心をかきたてる。詳しくは、日を改めて報告するが、代表的な理由をひとつあげよう。

真村氏がわたし(黒薮)の取材に協力したことである。喜田村弁護士らが作成した準備書面には、黒薮批判も登場する。言論・表現の自由にかかわる問題である。喜田村氏らの書面は、記録として永久保存しているので、機会があれば公開しよう。【続】

2015年09月30日 (水曜日)

「押し紙」70年⑪ 読売裁判と喜田村洋一・自由人権協会代表理事のかかわり

【サマリー】真村裁判の判決が確定した後、敗訴した読売が攻勢に転じる。2008年2月から読売は、わたしに対しする2件の裁判提起をはじめ、YC久留米文化センター前の店主の解任、それに伴う地位不存在を確認する裁判を起こした。これらの裁判に、読売の代理人としてかかわってきたのが、自由人権協会の代表理事である喜田村洋一弁護士だった。

 真村氏は今も係争中だ。1人の人間を10数年に渡って法廷に縛り付けることに、人権上の問題はないのだろうか?自由人権協会とは、何者なのか?新聞社とは何か?

真村裁判の詳細については、次の記事に詳しい。

■「押し紙」70年⑩、「押し紙」隠しの手口を暴いた真村裁判・福岡高裁判決

既に述べたように、真村裁判はYC広川の真村久三店主が読売新聞西部本社に対して起こした地位保全裁判で、最大の争点は、真村氏が経理帳簿上で「押し紙」の存在を隠すためにせざるを得なかった部数内訳の虚偽記載、虚偽報告が解任理由として正当か否かという点だった。裁判所は、真村氏による虚偽報告が事実であることは認定したが、そうせざるを得ない背景に読売の販売政策があるので、解任理由には該当しないと判断したのである。

判決は2007年12月に最高裁で確定した。真村氏は、YC広川の店主としての地位を守ったのである。

ちなみに販売店の改廃は、新聞社側が「改廃」を通告して、有無をいわさずに新聞の供給をストップする方法が取られることが多い。しかし、YC広川に関しては、読売もこのような強引な方法は採用しなかった。

真村氏の弁護士と読売の弁護士との間に、係争の決着が着くまでは、一方的な販売店改廃は行わないという紳士協定が結ばれていたからである。喜田村洋一・自由人権協会代表理事が東京から駆けつけて、読売の加勢に乗り出す前の時期であった。

◇半年で4件の裁判に

真村裁判の判決が確定したのは2007年12月。が、年が改まり2008年になると予想しない事件が次々と発生する。真村裁判で敗北した読売の攻勢が始まったのだ。主要な動きを時系列に記録して、記憶に留めておこう。

【2月】読売の江崎徹志・法務室長が黒薮に対して、著作権裁判を起こした。江崎氏の代理人は、喜田村洋一弁護士。この裁判の「永久保存資料」(黒薮保管)の中に、喜田村氏が主張する著作物とは何かが記された書面が残っているので、機会があれば原文を紹介しよう。弁護士活動を考えるうえで貴重な記録である。極めて興味深い。

【3月】「押し紙」問題を江上武幸弁護士らに相談して、広義の「押し紙」(残紙)の受け入れを断ったYC久留米文化センター前の平山春雄店主が、店主を解任された。これに先立って、読売は平山店主の地位不存在を確認する裁判を起こしていたことが、後に分かった。代理人は、喜田村洋一弁護士ら。平山氏の側も地位保全裁判を起こした。

【3月】前記の平山事件をウエブサイトで報じた黒薮に対して、読売側が2330万円の金銭などを請求して名誉毀損裁判を起こした。代理人は、喜田村洋一弁護士。2330万円の中には、喜田村氏の弁護士費用として200万円が含まれていた。

【7月】読売が真村氏経営のYC広川を強制的に改廃した。真村氏はただちに地位保全裁判を起こした。これが第二次真村裁判である。この裁判でも、読売側の代理人として、やはり喜田村弁護士が東京から駆けつけ、福岡の弁護士らに加わったのである。

第二次真村裁判は一応の決着はついたが、そこから派生した別の裁判で、真村氏は今も読売と係争中である。1人の人間を10数年に渡って法廷に縛り付けることは、人権問題にほかならない。自由人権協会とは何者なのか?新聞社とは何か?

2014年11月20日 (木曜日)

日弁連が喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求を棄却、審査内容はブラックボックスのなか

11月17日付けで、日弁連はわたしが喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事で読売新聞社の代理人)に対して2011年1月に申し立てた弁護士懲戒請求を棄却する決定を下した。申し立てから、最終的な決定まで、約4年の歳月を費やした。

審査のプロセスは次の通りである。

1,第2東京弁護士会による棄却
 
2,日弁連による棄却

3,綱紀審査(外部有識者)による棄却

この問題については、これから検証に入るが、わたしとしては到底納得できない。と、いうのも「1」の段階では、棄却理由が示されたものの、「2」と「3」では、実質的に理由が示されていないからだ。誰が審査したのかも、審査の長を除いてわからない。ブラック・ボックスの中である。

議決書の全文PDF

今後、公開質問状などのかたちで審査内容の開示を求めていく。

あえて理由として日弁連サイドがあげているのは、第2東京弁護士会の議決書の認定と判断に誤りがない、というものである。が、これは厳密な理由ではない。結論にすぎない。最初から棄却という結論を決めていたから、論理的な理由書が書けなかったのではないだろうか。

あるいは、まったく反論できないほど、わたしの主張が真っ当だったということである。審査に4年も時間がかかった原因もこのあたりにあるのでは。

この事件の詳細は、次の記事を読むとわかりやすい。「2」の段階で「メディア黒書」に掲載したものである。

■喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求、近々に綱紀審査会へ申し立て、袴田事件に類似した構図の民事事件

■袴田事件と類似した事件の構図、喜田村弁護士に対する懲戒請求、準備書面(1)を公開  

2014年04月23日 (水曜日)

袴田事件と類似した事件の構図、喜田村弁護士に対する懲戒請求、準備書面(1)を公開 

次に示すのは、喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)に対する弁護士懲戒請求で、日弁連の綱紀審査委に提出する予定の準備書面(1)の全文である。

■準備書面(1)の全文

懲戒請求者:黒薮哲哉

対象弁護士:喜田村洋一

はじめに  

準備書面(1)では、「1、排斥期間の起点について」と、「2、弁護士職務基本規定に照らし合わせた懲戒対象弁護士の言動」の2点について、説明する。

この事件は、捏造した証拠を前提に検察が有罪を主張した袴田事件の構図と類似している。しかし、袴田事件が刑事裁判であるのに対して、本件懲戒請求の主要な原因になっている本件著作権裁判は、民事裁判の場で争われた。

本件著作権裁判の訴因は本件催告書である。本件催告書は、「江崎徹志」の名が付されているが対象弁護士により作成された高い可能性が本件著作権裁判の判決で確定した。つまり対象弁護士が作者であるにもかかわらず、江崎名義で懲戒請求者に本件催告書を送り付け、これがウエブサイトで公表されると、本件著作権裁判を起こし、もともと江崎氏が持ち得ない著作者人格権を主張したのである。当然、それを前提として懲戒対象弁護士は書面を提出し、法廷で自らの主張を展開したのである。

しかし、裁判所はこうしたあるまじき行為を見破り、江崎・喜田村の両名を敗訴させたのである。

懲戒請求者は、懲戒対象弁護士が、虚偽の事実を設定して裁判を提起し、江崎氏に著作者人格権がないことを知りながら、裁判所に書面を提出し、自己の主張を展開したことを問題視している。袴田事件の類似性とは、こうした事件の性質を意味している。

1、排斥期間の起点について

第二東京弁護士会が作成し、日弁連が追認した本件決定書には、棄却理由として排斥期間の終了を理由とした次の記述がある。

「(1)本件催告書が作成された時期は、平成19年12月21日であるところ、本件懲戒請求書を第二東京弁護士会が受け付けたのが平成23年1月31日であるので、懲戒請求事由1の事実は既に3年間の排斥期間を過ぎており、懲戒手続きを開始することができない。

(2)そもそも、本件催告書を作成、送付したのは、対象弁護士ではなく、江崎であって、当該行為は対象弁護士に関する懲戒事由になり得ない。」

A 事実関係の誤りについて

(1)(2)の理由は的外れである。まず、事実関係の誤りから指摘する。 決定書は、「そもそも、本件催告書を作成、送付したのは、対象弁護士ではなく、江崎」であると述べているが、本件催告書の作成者、送付者につて知財高裁判決(平成21年[ネ]第10030号)は次のように認定している。

「上記認定事実によれば、本件催告書には読売新聞西部本社の法務室長の肩書きを付して原告[黒薮注:江崎のこと]の名前が表示されているものの、その実質的な作成者は(本件催告書が著作物と認められる場合は、著作者)は原告とは認められず、原告代理人[黒薮注:懲戒対象弁護士](又は同代理人事務所の者)である可能性が極めて高いものと認められる。」

「すなわち、?原告の著作権法や法的紛争の解決に関する知識経験の程度、?読売新聞西部本社と販売経営者との法的紛争の重要性に関する同社の認識の程度等、?原告及び原告代理人のいずれからも、本件催告書作成過程を示す客観的なデータは提出されていないこと等に照らすならば、本件催告書は、原告から相談を受けた、原告代理人事務所において、本件催告書を作成し、そのデータをメールに添付する方法により、原告に送信し、これを受信した原告が、被告に対して送信したものと認定することによって、辻褄が合うといえる 」

とはいえ、確かに第二東京弁護士会が棄却の根拠として全面的に採用している本件損害賠償裁判(平成24年[ネ]第794号)の判決は、「本件著作権裁判の内容や経過からすると、同人が、自分名義で出した文書は自分の著作物であると考えていることがうかがわれ、本件催告書の作成者を一義的に決めることは困難であったという事情にも照らせば、同人が故意に虚偽を並べて本件著作権仮処分を申し立てたと認めることは困難である」と、述べて必ずしも懲戒対象弁護士が本件催告書の作成者であるとは認定できないという判断を示している。

しかし、この記述は、出典である本件著作権裁判の判決を正しく解読せずに記されている。本件損害賠償裁判の判決は、「本件著作権裁判の内容や経過からすると・・・」と出典を明記したうえで、「本件催告書の作成者を一義的に決めることは困難」と述べているが、既に述べたように本件著作権裁判は、本件催告書の作成者を「原告代理人[黒薮注:懲戒対象弁護士](又は同代理人事務所の者)である可能性が極めて高いものと認められる」と、認定しているのである。

それが懲戒対象弁護士らが、敗訴した大きな要因だった。  本件損害賠償裁判の福岡高裁判決を書いた木村元昭裁判長は、本件著作権裁判の判決を精査・検証せずに、読売新聞社を勝訴させるために、恣意的に事実を捻じ曲げ判決を書いた可能性が高い。

B 問題にしているのは裁判期間中の懲戒対象弁護士の行為

第二東京弁護士会の本件決定書は本件催告書の作成日(それは同時に送付日でもある)にあたる平成19年12月21日を排斥期間の起点として、第二東京弁護士会が本件懲戒請求を受け付けた平成23年1月31日の時点では、すでに排斥期間の3年を過ぎているとして、本件懲戒請求を棄却している。この判断は2重に誤りをおかしている。

B-1

本件懲戒請求の対象となっているのは、改めて言うまでもなく、喜田村洋一弁護士であって、江崎氏ではない。と、すれば本件懲戒請求の対象者ではない江崎氏の行為を排斥期間の起点にすることは論理が破綻している。

かりに懲戒対象弁護士が本件催告書の作成者・送付者であることを、本件決定書が認定していれば、本件催告書の作成日・送付日を排斥期間の起点として検討する余地はあるが、本件決定書は江崎氏を本件催告書の作成者・送付者として認定しているのである。繰り返しになるが、そうであれば本件懲戒請求の対象外の人物の行為を排斥期間の起点とするのは誤りだ。

B-2

しかし、懲戒請求者が重大問題として審理を求めているのは、本件催告書の作成行為・送付行為そのものではない。本件催告書の作成過程から提訴に至る経緯が虚偽に満ちている上に、本件催告書に書かれた内容がまったくのデタラメであることを懲戒対象弁護士が知っていながら、ウソを前提として本件著作権裁判の進行中、裁判所に書面を提出し、みずからの主張を展開したことを問題視しているのである。

このような行為が懲罰の対象にならないとすれば、虚偽の事実を捏造して、袴田巌氏の半生を牢獄に閉じ込めた検察も罰せられないことになる。日弁連が袴田氏を支援してきたことを踏まえれば、捏造や虚偽を前提とした法廷での主張に対しては、厳しく罰するのが道理である。

B-3 ?

たとえ江崎氏による催告書の作成日・送付日を、排斥期間の起点とするとしても、そもそも懲戒対象弁護士らによるあるまじき行為が発覚したのは、2009年1月に、東京地裁で実施された江崎氏に対する本人尋問の場であり、それが最終的に最高裁で司法認定されたのは、2010年2月であるから、本件著作権裁判の判決確定を前提に提起した本件懲戒請求で、対象外の江崎氏が本件催告書を作成・送付した平成19年12月21日を排斥期間の起点にすることは、論理が破綻している。

繰り返しになるが懲戒請求者は、本件催告書の送付行為そのものを問題にしているのではなくて、本件催告書が孕む重大な諸問題を懲戒対象弁護士が認識していながら、あえてそれを隠し、虚偽を前提に書面を提出したり、法廷で自論を展開したことを問題にしているのである。

たとえ江崎氏が本件催告所の作成者であり、送付者であるとしても、少なくとも本件催告書の内容がデタラメであることを、江崎氏の代理人であり、著作権問題の権威である懲戒対象弁護士は、知る立場にあったわけだから、責任は免れない。

2、「弁護士職務基本規定」に照らした懲戒対象弁護士の行為

日弁連の弁護士倫理委員会が執筆・編集している『弁護士職務基本規定』は前文で次のように述べている。

 「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする。  その使命達成のために、弁護士には職務の自由と独立が要請され、高度の自治が保障されている。

 弁護士は、その使命を自覚し、自らの行動を規律する社会的責任を負う。  よって、ここに弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため、弁護士職務基本規定を制定する。」

前文に謳われている理念に照らし合わせた場合、弁護士が虚偽の事実を前提に提訴にいたる行為を主導したり、幇助した場合、懲戒の対象になることは言うまでもない。懲戒対象弁護士は、次の条項に違反している。

「 1条:弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に務める。 」

「4条:弁護士は、司法の独立を擁護し、司法制度の健全な発展に寄与するように務める。」

?「10条:弁護士は、不当な目的のため、又は品位を損なう方法により、事件の依頼者を誘導し、又は事件を誘発してはならない。」

「14条:弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。」

「31条 弁護士は、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならない。」

「74条 弁護士は、裁判の公正及び適正手続きの実現に務める。」

「75条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。」

日弁連が袴田事件委員会を設置して、検察の証拠捏造に端を発したこの冤罪事件の元容疑者を支援してきた経緯を踏まえると、虚偽を前提に裁判を起こす行為に対しては、刑事事件であれ、民事事件であれ、厳しく対処すべきである。

日弁連の過去の懲戒事例に照らし合わせても、懲戒対象弁護士が何の処分も受けずに、連日のように法廷に姿を見せている事実を踏まえたとき、司法界に正義はあるのかという疑問を抱かざるを得ない。

弁護士は国費で養成されているのであるから、不正に対しては厳しく対処すべきである。

2014年04月22日 (火曜日)

喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求、近々に綱紀審査会へ申し立て、袴田事件に類似した構図の民事事件

弁護士懲戒請求の最終プロセスに、綱紀審査という制度がある。日弁連のウエブサイトによると綱紀審査は、次のような制度である。

綱紀審査は、学識経験者(弁護士、裁判官、検察官およびそれらの経験者を除きます。)である委員のみで構成される綱紀審査会において行われます。

KOKUSYOで報じてきたように、わたしは著作権裁判(原告・読売の江崎法務室長 被告・黒薮)の勝訴(2010年2月)確定を受けて、江崎氏の弁護士を務めた喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求を第二東京弁護士会へ申し立てた。

江崎氏の名義で裁判所に提出した催告書の作成者が、実は喜田村弁護士の代筆であった可能性を認定する判決を根拠とした懲戒請求申立だった。江崎氏サイドには、もともと著作者人格権を根拠として提訴する権利がなかったのに、名義を「江崎」に偽って提訴し、それを前提に書面を提出し、みずからの主張を展開したからだ。

最近、捏造した証拠に基づいて、検察が有罪を主張した袴田事件が注目を集めているが、わたしの著作権裁判は、それとよくにた構図の「民事事件版」である。裁判所もそれを見抜いて、江崎氏らを敗訴させたのである。

この問題の責任追及は、2010年に勝訴が確定した時点から始まった。その具体的なかたちのひとつが、弁護士懲戒請求である。しかし、第二東京弁護士会はこれを棄却した。日弁連に異議を申し立てたが、ここでも棄却された。そこで今回、綱紀審査を求めたのである。

事件の経緯は、次の通りである。

■事件の経緯

■読売が黒薮に対して起こした著作権裁判の提訴行為が弁護士としてあるまじき行為だった高い可能性を認定した知財高裁判決。(7ページ[イ]参照)

以下、綱紀審査会に提出する「理由書」の草案を紹介しよう。

◇理由書の全文

綱紀審査を申し出た理由は、次の6点に集約できる。

(1)決定書に理由が記されていない

日弁連が懲戒請求者に送付した平成26年3月24日付け「決定書」(以下、本件決定書)には、本件異議申立を棄却した理由が記されていない。確かに同書面には、「理由」と称する原稿用紙1枚にも満たない短い記述があるが、厳密に言えばこれは理由を述べたものではなくて、単に審査の結論を述べているにすぎない。

 異議申出人の対象弁護士に対する本件懲戒請求の理由及び対象弁護士の答弁の要旨は、いずれも第二東京弁護士会綱紀委員会第2部会の議決書に記載のとおりであり、同弁護士会は同議決書記載の認定と判断に基づき、対象弁護士を懲戒しないこととした。   ?  本件異議の申出の理由は、要するに、前記認定と判断は誤りであり、同弁護士会の決定には不服であるというにある。

当部会が、異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である。   ?  

よって、本件異議の申出は理由がないので棄却することを相当とし、主文のとおり議決する。

松田弁護士が「理由」と称しているものが、理由書に不可欠な最低限の体すらなしていないことは、明らかだ。理由の記述とは、結論に至るプロセスを具体的、かつ秩序だてて記述する文章形態である。ところが本件決定書は、「異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である」と判断したという結論だけを述べている。もちろん異議申立書の中で、懲戒請求者が指摘した疑問点には一切言及していない。

このような対処方法がまかり通るのであれば、「談合」で結論だけを先に決めて、それを裏付ける具体的な審理を隠蔽する行為が許されることになる。それが日本の司法界を劣化させることは論を待たない。

繰り返しになるが、上記引用の記述は理由ではなくて、結論を述べているにすぎない。理由とは、「結論に至るプロセスを具体的、かつ秩序だててに記述する文章形態」である。 ?  このようなものを決定書と称して送付してきた事自体が驚きに値する。不誠実で懲戒請求者を著しく愚弄しているうえ、最初から懲戒対象弁護士を「救済」する意図を有しているとしかいいようがない。懲戒請求制度が形骸化している証ではないだろうか。

ちなみに懲戒請求者は50名を超える法律の専門家やジャーナリストに、本件懲戒請求の原因となった本件著作権裁判の知財高裁判決を検証してもらったが、共通した評価は、懲戒請求弁護士が虚偽の事実を前提に提訴に及んだ事実は、処分に値するというのもだった。日弁連の見解とは、大きく異なっている。

(2)新証拠の審理が行われていない

日弁連に対して異議申立をした際に、新たに提出した証拠(甲1号証)をめぐる見解が審理された形跡がない。少なくとも本件決定書には、甲1号証に関連した審理のプロセスがまったく記されていない。突飛に結論だけを提示されてもとまどう。なぜ、甲1号証を基に本件催告書の内容がウソであることを懲戒対象弁護士が認識していた疑惑を審理しないのか、理由が示されていない。

甲1号証は懲戒対象弁護士が『佐野眞一が殺したジャーナリズム』(宝島社)に寄稿した「法律家がみた『佐野眞一盗用問題』の深刻さ」と題する記事である。その中に懲戒対象弁護士が考える著作物の定義が示されている。

?したがって、著作権法との関係で盗作や盗用を考えるにあたっては、対象となる作品や文章が著作物にあたるかどうかが一番重要である。??  ??

その観点で、何が著作物かを上の要件に即して考えると、まず、著作物は「表現」でなければならないから、「思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など」で、表現でないものは、著作物になりえない。 ? たとえば、「○月○日、△△で、AがBに?と言った(AがBを手で殴りけがをさせた)」というような事実ないし事件そのものは、表現ではないから、著作権法の対象ではない。同様に、「ある事件についての見方」とか、「ある事件を報じるにあたっての方法」といったアイデアに属するものも、表現ではないから、著作権法の保護は受けられない。

また、創作性がなければならないから、ごく短い文章で、誰が書いても同じになるようなものであれば、これも著作物ではない(もっとも、短いからダメということではないのであり、たとえば俳句などは17音しかないが、それでも著作物に該当しうる)。?

一方、著作権法は著作物を次のように定義している。

1、著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

つまり懲戒弁護士が考える著作物と著作権法が定義する著作物の基本的に定義は同じである。  ところが本件著作権裁判で、対象弁護士が作成した可能性が認定された本件催告書には、次に引用する文書(以下、本件回答書)が著作権法でいう著作物に該当するので、削除に応じない場合は、刑事告訴も辞さない旨が記されているのだ。

前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。? 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。? 当社販売局として、通常の訪店です。

本件催告書の内容は支離滅裂な恫喝文書ということになる。著作物ではないものを、著作物だと断言し、削除に応じない場合は、法的な手段を取ると述べているのだ。このような手口は、法律の専門家としての権威を悪用した恫喝にほかならない。

対象弁護士は、本件催告書は読売新聞西部本社の江崎徹志法務室長が作成したものだと主張してきたが、対象弁護士が作成した高い可能性を認定する本件著作権裁判の判決は、最高裁でも確定している。

たとえ懲戒対象弁護士が主張するように、本件催告書の作成者が江崎氏であったとしても、本件催告書の内容を懲戒対処弁護士が確信した上で、江崎氏がみずからの氏名を付して、懲戒請求者に送付したわけだから、あるまじき行為を幇助したことになる。

(3) 排斥期間についての誤り

日弁連に対する異議申立書の中でも言及したが、第二東京弁護士会が下し、日弁連が追認した本件懲戒請求の棄却決定の最大の誤りは、本件弁護士懲戒請求は、本件著作権裁判の判決が2010年2月に最高裁で決定したことを前提として、提起したにもかかわらず、本件著作権裁判の評価は故意に避けて、判決確定を受けて、懲戒請求者が読売新聞社と江崎法務室長に対して起こした本件損害賠償裁判の判決を根拠に、懲戒請求者の請求を棄却していることである。

懲戒請求者は、懲戒対象弁護士らが、提訴権がないにもかかわらず虚偽の事実を前提に提訴に及び、それを前提として、みずからの主張を展開したことを問題視して、本件懲戒請求を申し立てたのである。

虚偽の事実や証拠を前提に審理を進めた場合、袴田事件にみられるような重大な人権侵害事件が発生する恐れが多分にある。それを回避するために、日弁連の『弁護士職務基本規定』には、第75条で、「弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない」と念を押している。

本件損害賠償裁判で、懲戒請求者が損害賠償責任を問う対象としたのは、読売新聞社と江崎氏であって、懲戒対象弁護士ではない。もちろん懲戒対象弁護士の言動も審理の対象になったが、新たに作成した準備書面(1)で詳しく言及するように、肝腎の本件損害賠償裁判の福岡高裁判決には、懲戒対象弁護士に関する事実認定には明白な誤りがある。

結論を先に言えば、本件損害賠償裁判の福岡高裁判決は、「本件著作権裁判の内容や経過からすると」「本件催告書の作成者を一義的に決めることは困難であった」と記述しているが、「本件著作権裁判の内容や経過からすると」、催告書の作成者が懲戒対象弁護士であった高い可能性を認定しているのである。つまり本件損害賠償裁判の福岡高裁判決の記述に事実誤認があり、それを前提に本件決定書は、対象弁護士を救済したのである。

ところが本件決定書は、本件損害賠償裁判の事実誤認の判決を根拠に、懲戒請求を棄却しているのだ。懲戒請求者が本件懲戒請求の根拠としている本件著作権裁判の判決を、恣意的に無視しているのである。

本件著作権裁判の判決確定を根拠とした本件懲戒請求申立にもかかわらず、本件損害賠償裁判の判決を根拠に、懲戒請求を棄却すること自体、論理の整合性が完全に欠落している。本件損害賠償裁判の判決は、本件懲戒請求にとって最も重要な部分に、事実の誤認があるのだ。この誤認は、読売新聞社を「救済」するために故意に行われた可能性もある。このあたりの事情については、『新聞の危機と偽装部数』(甲2号証)を参考にされたい。

本件懲戒請求の原因である本件著作権裁判の判決を無視して、副次的な意味しかもたない本件損害賠償裁判の判決にそった審理が許容されるのであれば、懲戒請求者が本件損害賠償裁判を起こさなければ、本件懲戒請求で審理される対象が本件著作権裁判だけに限定され、審理の結果が異なる可能性が生じることになる。しかし、読売新聞社に対して損害賠償を求める事と、懲戒対象弁護士の言動を審理することは、別問題である。

(4)袴田事件の病理に類似

本件懲戒請求の排斥期間については、日弁連に対する異議申立書で主張した通りである。本件懲戒請求は、本件著作権裁判の判決が、2010年2月に最高裁で確定したことを受けて提起したものである。従ってこの日付が、排斥期間の起点である。

第2東京弁護士会の議決書は、江崎氏が本件催告書を作成・送付した日付を排斥期間の起点にしているが、本件懲戒請求で対象となっているのは、江崎氏の行為ではなくて、懲戒対象弁護士の行為であるから論理が根本から破綻している。

懲戒対象弁護士が本件催告書を送付したのであれば、その日を排斥期間の起点として検討する余地はあるが、懲戒対象弁護士自身が本件催告書を作成して送付したのは江崎氏であると主張しているのであるから、検討の余地すらない。

それに懲戒請求者が最大の問題としているのは、本件催告書の送付行為そのものではなくて、本件催告書にまつわる種々の「虚偽」を前提として、懲戒対象弁護士が本件著作権裁判の期間中に、みずからの主張を法廷で展開したことである。だれが本件催告書を送付したにせよ、それは枝葉末節にすぎない。問題の本質は、虚偽の事実をでっちあげて強引に裁判を起こし、裁判所に書面を提出し、自己の主張を展開したことにほかならない。

繰り返しになるが、このような行為は、袴田事件の病理と根本的に同じである。

なお、繰り返しになるが排斥期間と懲戒請求事由については、別途、準備書面(1)で補足する。

(5)懲戒対象弁護士からの反論書の不在  

懲戒対象弁護士は、懲戒請求者による日弁連への異議申立てに対して、まったく反論していない。それにもかかわらず日弁連は、懲戒対象弁護士の主張を認めたうえ、具体的な理由を提示していない。

(6)過去の処分事例との整合性について  

日弁連で下された過去の処分例に照らし合わせて、懲戒対象弁護士に対して戒告すら行わないのは疑問がある。過去の処分例として、たとえば「株式会社の顧問弁護士でありながら株の割り当て等に関して有効な法的措置が取れなかった」(登録番号17154)があるが、この程度の事で戒告処分を受ける一方、虚偽の事実を前提に裁判を起こし、自説を展開しておきながら、何の処分も受けないのは、著しく公平さにかける。

2014年03月31日 (月曜日)

喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求 日弁連が黒薮の異議申立を棄却 ずさんで舌足らずな決定書の文面

日弁連は、3月19日、わたしが申し立てていた喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求(第二東京弁護士会が下した棄却決定に対する異議申立)を棄却した。喜田村側からの反論は提出されていなかった。

※なお、この事件の経緯を知らない方は、下記、紫文字で記した【事件の経緯】を最初に読むことをお勧めします。前出記事に加筆した内容です。

日弁連の決定書には、形式的には棄却理由が綴られているが、具体的な理由は何も記録されていない。「理由」と称する記述は次の通りである。驚くべきずさんな書面だ。

異議申出人の対象弁護士に対する本件懲戒請求の理由及び対象弁護士の答弁の要旨は、いずれも第二東京弁護士会綱紀委員会第2部会の議決書に記載のとおりであり、同弁護士会は同議決書記載の認定と判断に基づき、対象弁護士を懲戒しないこととした。  

本件異議の申出の理由は、要するに、前記認定と判断は誤りであり、同弁護士会の決定には不服であるというにある。  

当部会が、異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である。  

よって、本件異議の申出は理由がないので棄却することを相当とし、主文のとおり議決する。

 平成26年3月19日

 日本弁護士連合会綱紀委員会第1部会    

部会長 松田耕治

■決定書PDF

松田弁護士が「理由」と称しているものが、理由説明の体をなしていないことはいうまでもない。理由書は、結論に至る経緯を具体的に説明するものである。ところが松田氏が言及する理由とは、「異議申出人から新たに提出された資料も含め審査した結果、同議決書の認定と判断に誤りはなく、同弁護士会の決定は相当である」と判断したことである。

が、これは理由ではなくて、結論を述べているにすぎない。理由とは、結論に至るプロセスの説明である。

大学や専門学校の入試に小論文という科目があるが、この決定書は、誰が採点しても小論文のレベルにすら達していない。このようなものを決定書と称して、弁護士が送付してきた事自体が驚きに値する。不誠実で他人を卑下しているとしかいいようがない。

わたしが第二東京弁護士会の議決を不服として、日弁連に再検証を求めたのは、次の2点である。

問題となった文書(催告書)に書かれた内容そのものが、支離滅裂、デタラメだった事実である。喜田村弁護士がそれを知りながら、裁判所に提出した事実である。それを裏付ける新たな資料を、わたしは日弁連に提出している。

■新証拠PDF(喜田村弁護士執筆の記事。同氏が考える著作物の定義と催告書の中で採用されている著作物の定義が異なる)

著作権裁判をめぐる事件であるにもかかわらず、著作権裁判所で下された判決(黒薮勝訴)を無視して、著作権裁判の勝訴を前提にその後、わたしが起こした損害賠償裁判(読売勝訴)の判決の方を根拠にして、第二東京弁護士会がわたしの申立を退けた事実である。繰り返しになるが、わたしは著作権裁判の勝訴(最高裁で判決が確定済み)を前提として、今回の懲戒請求を申し立てたのである。それにもかかわらず、第二東京弁護士会は著作権裁判の判例を故意に無視し、副次的な意味しかもたない損害賠償裁判の判決を根拠に、喜田村弁護士を「救済」したのである。

わたしは、?と?に基づいての再検証を求めるために、日弁連に異議を申し立てたのである。と、すれば、?と?について、日弁連の見解を明確にするのが、松田氏の任務であるはずだ。なぜ、著作権裁判の判決を無視しているのかという疑問と、催告書の内容がデタラメだった事実をどう評価するのかを問うたのである。それについての判断を示し、その理由を説明するのが、日弁連の役割だったはずだ。

このような書面を配達証明で受け取ると、そもそも最初から異議申立を真面目に検証する気などなかったのではないかと、疑わざるをえない。弁護士会という一種の「村社会」の中で、仲間を仲間が処分することのむずかしさを痛感する。

懲戒請求制度も、弁護士の正義をPRするための儀式に過ぎないと受け取らざるを得ないのである。結局、弁護士会の体質も、利権集団的な傾向が強いのかも知れない。事実、同会は、政治連盟を通じて、政治献金を支出している。

■参考記事:政界進出狙う宇都宮健児氏、日弁連も政界へ献金 献金先の政治家同士で国会質疑の茶番劇も

改めて言うまでもなく、棄却決定に抗して日弁連に綱紀審査を申し立てることになる。

以下、事件の経緯を説明した後、『弁護士職務基本規程』に照らし合わせて、今回の懲戒請求を再検証してみたい。わたしが従来から主張してきたのは、

75条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

と、いう条項だったが、細かに検討してみると、ほかにも今回の事件に該当するのではないかと思われる条項が多数ある。

さらに日弁連による弁護士の処分例を紹介しよう。第3者からみると、適正な処分を受けている弁護士もいるようだ。

最後の「資料編」として、書面などをリンクした。

【事件の経緯】

複雑なようで、実は単純なこの裁判。どのような経緯で何が争われたかを秩序だて、整理するためには、著作者人格権とは何かを理解することが大前提になる。逆説的に言えば、著作者人格権とは何かを理解すれば、この裁判で何が争点になり、何を理由に裁判所は江崎氏を敗訴させ、何を根拠に喜田村弁護士が懲戒請求にかけられたかが輪郭を現す。??

?◇だれが作者なのかという問題

おそらく読者の大半は、著作権という言葉を聞いたことがあるだろう。文芸作品などを創作した人が有する作品に関する権利である。その著作権は、大きく著作者財産権と著作者人格権に分類されている。   

このうち著作者財産権は、作品から発生する財産の権利を規定するものである。たとえば作者が印税を受け取る権利である。この権利は第3者にも譲渡することができる。 これに対して、著作者人格権は、作者だけが有する特権を規定したものである。たとえば未発表の文芸作品を公にするか否かを作者が自分で決める権利である。第3者が勝手に公表することは、著作者人格権により禁じられている。

著作者人格権は、著作者財産権のように他人に譲渡することはできない。「一身専属」の権利である。 この「一身専属」は、江崎氏がわたしに対して提起した著作権裁判(2008年に提訴)を考える上で、重要な意味を持っている。江崎氏の提訴は、この著作者人格権に基づいたものだった。

江崎氏は、わたしが行ったある行為に対して、自分だけが持つ特権?著作者人格権を根拠として、裁判を起こしたのである。 ? ある行為とは、江崎法務室長がわたし宛にメールで送付してきた催告書を、新聞販売黒書(現、MEDIA KOKUSYO)に掲載したことである。江崎氏は、自分が著作者人格権を有する催告書を、わたしが無断で新聞販売黒書に掲載したとして、提訴に及んだのである。

代理人は、今回の懲戒請求の対象になった喜田村洋一・自由人権協会代表理事だった。

? ところが裁判の中で、問題の催告書には「作者」が別にいたらしいことが判明したのだ。著作者人格権を理由として起こした裁判そのものの正当性が問われることになったのである。

東京地裁は、催告書を執筆したのは喜田村弁護士か彼の事務所スタッフであった高い可能性を認定した。地裁、高裁、最高裁も、この司法判断を認定した。そして判決は確定したのである。 つまり、江崎氏はもともと著作者人格権を有していないのに、著作者人格権を根拠にして、わたしを法廷に立たせたのだ。

それが判明して、門前払いのかたちで敗訴したのである。 ? これに伴いわたしは、喜田村洋一弁護士の責任も、弁護士懲戒請求というかたちで問うことにしたのである。

◇新聞販売黒書に掲載した2つの書面??

著作権裁判の発端は、読売と福岡県広川町のYC広川の間で起こった改廃をめぐるトラブルだった。当時、「押し紙」問題を取材していたわたしは、この係争を追っていた。 幸いに係争は2007年の暮ごろに解決のめどがたち、読売はそれまで中止していたYC広川に対する定期訪問を再開することを決めた。

しかし、読売に対する不信感を募らせていたYC広川の真村店主は、読売の申し入れを受け入れるまえに、念のために顧問弁護士から、読売の真意を確かめてもらうことにした。 ? そこで江上武幸弁護士が書面で読売に真意を問い合わせた。

これに対して、読売は江崎法務室長の名前で次の回答書を送付した。

前略  読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。当社販売局として、通常の訪店です。

わたしは、新聞販売黒書の記事に、事実の裏付けとしてこの回答書を掲載した。すると即刻に江崎氏(当時は面識がなかった)からメールに添付した次の催告書が送られてきたのである。

冠略 貴殿が主宰するサイト「新聞販売黒書」に2007年12月21日付けでアップされた「読売がYC広川の訪店を再開」と題する記事には、真村氏の代理人である江上武幸弁護士に対する私の回答書の本文が全文掲載されています。

しかし、上記の回答書は特定の個人に宛てたものであり、未公表の著作物ですので、これを公表する権利は、著作者である私が専有しています(著作権法18条1項)。  貴殿が、この回答書を上記サイトにアップしてその内容を公表したことは、私が上記回答書について有する公表権を侵害する行為であり、民事上も刑事上も違法な行為です。

 そして、このような違法行為に対して、著作権者である私は、差止請求権を有しています(同法112条1項)ので、貴殿に対し、本書面到達日3日以内に上記記事から私の回答を削除するように催告します。  貴殿がこの催告に従わない場合は、相応の法的手段を探ることとなりますので、この旨を付言します。

わたしは、今度はこの催告書を新聞販売黒書で公開した。これに対して、江崎氏は、催告書は自分の著作物であるから、著作者人格権に基づいて、削除するように求めてきたのである。が、作者は別にいたのだ。

◇知財高裁の判決

著作権裁判では、通常、争点の文書が著作物か否かが争われる。著作物とは、著作権法によると、次の定義にあてはまるものを言う。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

改めて言うまでもなく、争点の文書が著作物に該当しなければ、著作権法は適用されない。 ? わたしの裁判でも例外にもれず、争点の催告書が著作物か否かが争われた。ただ、催告書の著作物性を争った裁判は、日本の裁判史上で初めてではないかと思う。ちなみに、新聞販売黒書に掲載した回答書の方は、争点にならなかった。

裁判は意外なかたちで決着する。裁判所は、「江崎名義」の催告書の著作物性を判断する以前に、江崎氏が催告書の作成者ではないと判断したのである。つまりもともと著作者人格権を根拠とした「提訴権」がないにもかかわらず、催告書の名義を「江崎」に偽って提訴に及んでいたと判断したのである。

なぜ、裁判所はこのような判断をしたのだろか。詳細を述べると優に50ページを超えるので、詳しくは次に紹介する知財高裁の判決を読んでほしい。

■知財高裁判決

ただ、ひとつだけ理由を紹介しておこう。喜田村弁護士が書いた「江崎名義」の催告書の書式や文体を検証したところ、同氏がたまたま「喜田村名義」で他社に送っていた催告書と瓜二つであることが判明したのだ。同一人物が執筆したと判断するのが、自然だった。

◇弁護士懲戒請求

弁護士職務基本規程の第75条は、次のように言う。

 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

喜田村弁護士は、問題になった「江崎名義」の催告書を執筆していながら、江崎氏の著作者人格権を前提とした裁判書面を作成し、それを裁判所に提出し、法廷で自論を展開したのである。

当然、弁護士職務基本規程の第75条に抵触し、懲戒請求の対象になる。わたしが懲戒請求に踏み切ったゆえんである。

◇弁護士倫理の問題

なお、裁判の争点にはならかなったが、喜田村弁護士に対する懲戒請求申立ての中で、わたしが争点にしているもうひとつの問題がある。ほかならぬ催告書に書かれた内容そのものがデタラメである事実である。

著作権裁判では、とかく催告書の形式ばかりに視点が向きがちだが、喜田村弁護士が書かれたとされる催告書の内容によく注意すると、内容がデタラメであることが分かる。怪文書とも、恫喝文書とも読める。

 端的に言えば催告書は、回答書が江崎氏の著作物なので、削除しろ、削除しなければ、刑事告訴も辞さないとほのめかしているのだ。それがウソであることを示す証拠は、新証拠として日弁連に提出した。

回答書は、本当に著作権法でいう著作物なのだろうか?再度、回答書と著作権法の定義を引用してみよう。

【回答書】前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。当社販売局として、通常の訪店です。

【著作物の定義】 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

誰が判断しても、著作物ではない。しかも、催告書を書いたのは、著作権法の権威である喜田村弁護士である。回答書が著作物ではないことを知りながら、著作物だと書いた強い疑いがあるのだ。しかも、催告書を削除しなければ、刑事事件にすることをほのめかしているのだ。

恫喝ではないだろうか?

◇弁護士職務基本規程 ? 『弁護士職務基本規程』の次の条項に照らして、この事件を検証してみよう。

1条:弁護士は、その使命が基本的人権の擁護と社会正義の実現にあることを自覚し、その使命の達成に務める。

この事件が「基本的人権の擁護と社会正義」に著しく反することは言うまでもない。

4条:弁護士は、司法の独立を擁護し、司法制度の健全な発展に寄与するように務める。

江崎氏に提訴の資格がないのを知りながら、提訴に及んだということは、裁判所を騙したということにならないだろうか?

10条:弁護士は、不当な目的のため、又は品位を損なう方法により、事件の依頼者を誘導し、又は事件を誘発してはならない。

喜田村弁護士がみずから催告書を執筆して、「江崎名義」の提訴を代行したとすれば、「事件を誘発」したことになる。

14条:弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。

江崎氏に提訴の資格がないことを知りながら、提訴を代行した事実は、「不正な行為を助長」したことにならないだろうか?

31条 弁護士は、依頼の目的又は事件処理の方法が明らかに不当な事件を受任してはならない。

江崎氏に提訴の資格がないことを知りながら、提訴すること自体、「事件処理の方法が明らかに不当な事件」に該当しないだろうか?

74条 弁護士は、裁判の公正及び適正手続きの実現に務める。 

江崎氏に提訴の資格がないこをと知りながら、提訴を代行した事実は、明らかに「適正手続きの実現に務める」義務に反している。

75条 弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

喜田村弁護士が催告書を執筆して、「江崎名義」に偽り、それを前提に準備書面や証拠を提出した行為は、75条に抵触する。

◇処分の例

【退会命令の例】

登録番号:18147

所属弁護士会:東京

法律事務所名:榎本精一法律事務所

懲戒種別:退会命令

懲戒年度:2000年2月

処分理由の要旨:土地の競売をさせないために偽装登記をした。他事件あり

登録番号:11294

所属弁護士会:第二東京

懲戒種別:退会命令

懲戒年度:2000年5月

処分理由の要旨:多重債務債務処理で斡旋屋から紹介を受け事務員に処理させる、業務停止期間中に法律業務

【業務停止の例】

登録番号:8383

所属弁護士会:東京

法律事務所名:わかば法律事務所

懲戒種別:業務停止1年6月

懲戒年度:2000年2月 処分理由の要旨:多重債務債務処理で斡旋屋から紹介を受け事務員に処理させる

登録番号:13565

所属弁護士会:札幌

懲戒種別:業務停止1月

懲戒年度:2000年8月

処分理由の要旨:損害賠償事件受任裁判無断欠席、特別送達等郵便が事務所に到着しない

登録番号:11522

所属弁護士会:東京

懲戒種別:業務停止10月

懲戒年度:2000年9月

処分理由の要旨:依頼者の意思確認なしで訴訟提起

【戒告の例】

登録番号:15239

所属弁護士会:名古屋

法律事務所名:渡邉法律事務所

懲戒種別:戒告

懲戒年度:2000年6月

処分理由の要旨:合同事務所で同じ事件を扱う、利益相反行為

登録番号:17245

所属弁護士会:東京

法律事務所名:山脇法律事務所

懲戒種別:戒告

懲戒年度:2000年7月

処分理由の要旨:交通事故損害賠償請求で書類等不備及び速やかな対処せず

録番号:20431

所属弁護士会:富山 法律事務所名

懲戒種別:戒告

懲戒年度:2000年10月

処分理由の要旨:国選弁護人が被害者宅へ弁償に行くと刑が軽くしたいのかなどと言われキレタお前から金貰ってないと

【資料編】

■読売が黒薮に対して起こした著作権裁判の提訴行為が弁護士としてあるまじき行為だった高い可能性を認定した知財高裁判決。(7ページ[イ]参照)

■喜田村弁護士に対する懲戒請求・黒薮準備書面(1)

■第2東京弁護士会の議決書

■黒薮による異議申立書

■日弁連の決定書

2014年03月05日 (水曜日)

読売・江崎法務室長による著作権裁判6周年 「反訴」は最高裁で、喜田村弁護士に対する懲戒請求は日弁連で継続

読売新聞西部本社の江崎徹志法務室長が、わたしに対して著作権裁判を起こして6年が過ぎた。先月25日は、提訴6周年である。読売が提訴した目的が何だったのか、わたしは今も検証を続けている。

周知のように、この裁判は既にわたしの勝訴が確定している。地裁、高裁、最高裁とすべてわたしの勝訴だった。勝訴を受けて現在、わたしは2つの「戦後処理」を行っている。

まず第一は、江崎氏と読売に対する損害賠償請求訴訟である。しかし、残念ながら地裁、高裁ではわたしの訴えは認められず、現在は最高裁で裁判を継続している。読売は、やはり裁判にはめっぽう強い。

「戦後処理」の第二は、江崎氏の代理人を務めた喜田村洋一・自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求の申し立てである。これは、現在、日弁連が審理している。

◆◆◆◆

結論を先に言えば、この裁判はわたし自身も予測しなかった展開を見せることになる。司法関係者の中には、

「喜田村弁護士の懲戒請求の件も含め、こんな例は、日本の裁判史上初めてではないか?判例としても面白い」

と、話す人もいる。

複雑なようで、実は単純なこの裁判。どのような経緯で何が争われたかを秩序だて、整理するためには、著作者人格権とは何かを理解することが大前提になる。逆説的に言えば、著作者人格権とは何かを理解すれば、この裁判で何が争点になり、何を理由に裁判所は江崎氏を敗訴させ、何を根拠に喜田村弁護士が懲戒請求にかけられているかが輪郭を現す。

◇だれが作者なのかという問題

おそらく読者の大半は、著作権という言葉を聞いたことがあるだろう。文芸作品などを創作した人が有する作品に関する権利である。その著作権は、大きく著作者財産権と著作者人格権に分類されている。  このうち著作者財産権は、作品から発生する財産の権利を規定するものである。たとえば作者が印税を受け取る権利である。この権利は第3者にも譲渡することができる。

これに対して、著作者人格権は、作者だけが有する特権を規定したものである。たとえば未発表の文芸作品を公にするか否かを作者が自分で決める権利である。第3者が勝手に公表することは、著作者人格権により禁じられている。

著作者人格権は、著作者財産権のように他人に譲渡することはできない。「一身専属」の権利である。

この「一身専属」は、江崎氏が提起した裁判を考える上で、重要な意味を持っている。裁判は、この著作者人格権に基づいたものだった。江崎氏は、わたしが行ったある行為に対して、自分だけが持つ特権?著作者人格権を根拠として、裁判を起こしたのである。

ある行為とは、わたしが江崎法務室長がわたし宛にメールで送付してきた催告書を、新聞販売黒書(現、MEDIA KOKUSYO)に掲載したことである。江崎氏は、自分が著作者人格権を有する催告書を、わたしが無断で新聞販売黒書に掲載したとして、提訴に及んだのである。

代理人は、既に述べたように、喜田村洋一・自由人権協会代表理事だった。

ところが裁判の中で、問題の催告書には「作者」が別にいたらしいことが判明したのだ。著作者人格権を理由として起こした裁判そのものの正当性が問われることになったのである。

東京地裁は、催告書を執筆したのは喜田村弁護士か彼の事務所スタッフであった高い可能性を認定した。地裁、高裁、最高裁も、この司法判断を認定した。そして判決は確定したのである。

つまり、江崎氏はもともと著作者人格権を有していないのに、著作者人格権を根拠にして、わたしを法廷に立たせたのだ。それが判明して、門前払いのかたちで敗訴したのである。

これに伴いわたしは、喜田村洋一弁護士の責任も、弁護士懲戒請求というかたちで問うことにしたのである。「戦後処理」はまだ終わっていない。

◇新聞販売黒書に掲載した2つの書面

裁判の発端は、読売と福岡県広川町のYC広川の間で起こった改廃をめぐるトラブルだった。当時、「押し紙」問題を取材していたわたしは、この係争を追っていた。

幸いに係争は解決のめどがたち、読売はそれまで中止していたYC広川に対する定期訪問を再開することを決めた。しかし、読売に対する不信感を募らせていたYC広川の真村店主は、読売の申し入れを受け入れるまえに、念のために顧問弁護士から、読売の真意を確かめてもらうことにした。

そこで江上武幸弁護士が書面で読売に真意を問い合わせた。これに対して、読売は江崎法務室長の名前で次の回答書を送付した。

前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。? 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。? 当社販売局として、通常の訪店です。

わたしは、新聞販売黒書の記事に、事実の裏付けとしてこの回答書を掲載した。すると即刻に江崎氏(当時は面識がなかった)からメールに添付した次の催告書が送られてきたのである。

冠略 貴殿が主宰するサイト「新聞販売黒書」に2007年12月21日付けでアップされた「読売がYC広川の訪店を再開」と題する記事には、真村氏の代理人である江上武幸弁護士に対する私の回答書の本文が全文掲載されています。

 しかし、上記の回答書は特定の個人に宛てたものであり、未公表の著作物ですので、これを公表する権利は、著作者である私が専有しています(著作権法18条1項)。  貴殿が、この回答書を上記サイトにアップしてその内容を公表したことは、私が上記回答書について有する公表権を侵害する行為であり、民事上も刑事上も違法な行為です。

 そして、このような違法行為に対して、著作権者である私は、差止請求権を有しています(同法112条1項)ので、貴殿に対し、本書面到達日3日以内に上記記事から私の回答を削除するように催告します。  貴殿がこの催告に従わない場合は、相応の法的手段を探ることとなりますので、この旨を付言します。

わたしは、今度はこの催告書を新聞販売黒書で公開した。これに対して、江崎氏は、催告書は自分の著作物であるから、著作者人格権に基づいて、削除するように求めてきたのである。が、作者は別にいたのだ。

◇知財高裁の判決

著作権裁判では、通常、争点の文書が著作物か否かが争われる。著作物とは、著作権法によると、次の定義にあてはまるものを言う。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

改めて言うまでもなく、争点の文書が著作物に該当しなければ、著作権法は適用されない。

わたしの裁判でも例外にもれず、争点の催告書が著作物か否かが争われた。ただ、催告書の著作物性を争った裁判は、日本の裁判史上で初めてではないかと思う。ちなみに、新聞販売黒書に掲載した回答書の方は、争点にならなかった。

既に述べたように、裁判は意外なかたちで決着する。裁判所は、「江崎名義」の催告書の著作物性を判断する以前に、江崎氏が催告書の作成者ではないと判断したのである。つまりもともと著作者人格権を根拠とした「提訴権」がないにもかかわらず、催告書の名義を「江崎」に偽って提訴に及んでいたと判断したのである。

なぜ、裁判所はこのような判断をしたのだろか。詳細を述べると優に50ページを超えるので、詳しくは次に紹介する知財高裁の判決を読んでほしい。

■知財高裁判決

ただ、ひとつだけ理由を紹介しておこう。喜田村弁護士が書いた「江崎名義」の催告書の書式や文体を検証したところ、同氏がたまたま「喜田村名義」で他社に送っていた催告書と瓜二つであることが判明したのだ。同一人物が執筆したと判断するのが、自然だった。

◇弁護士懲戒請求

弁護士職務基本規程の第75条は、次のように言う。

弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

喜田村弁護士は、問題になった「江崎名義」の催告書を執筆していながら、江崎氏の著作者人格権を前提とした裁判書面を作成し、それを裁判所に提出し、法廷で自論を展開したのである。

当然、弁護士職務基本規程の第75条に抵触し、懲戒請求の対象になる。わたしが懲戒請求に踏み切ったゆえんである。

◇弁護士倫理の問題

なお、裁判の争点にはならかなったが、喜田村弁護士に対する懲戒請求申立ての中で、わたしが争点にしているもうひとつの問題がある。ほかならぬ催告書に書かれた内容そのものの奇抜性である。

著作権裁判では、とかく催告書の形式ばかりに視点が向きがちだが、書かれた内容によく注意すると、かなり突飛な内容であることが分かる。怪文書とも、恫喝文書とも読める。端的に言えば内容は、回答書が江崎氏の著作物なので、削除しろ、削除しなければ、刑事告訴も辞さないとほのめかしているのだ。

回答書は、本当に著作権法でいう著作物なのだろうか?再度、回答書と著作権法の定義を引用してみよう。

【回答書】 ?? 前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。? 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。? 当社販売局として、通常の訪店です。

【著作物の定義】 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

誰が判断しても、著作物ではない。しかも、催告書を書いたのは、著作権法の権威である喜田村弁護士である。回答書が著作物ではないことを知りながら、著作物だと書いた強い疑いがあるのだ。

弁護士として倫理上、こうした行為が許されるのか、現在、この懲戒請求事件は、日弁連で検証中である。

■参考資料:懲戒請求申立・準備書面(1)

■その他の資料

2013年12月10日 (火曜日)

10日発売の『紙の爆弾』が喜田村洋一自由人権協会代表理事の懲戒請求事件を、『SAPIO』が「押し紙」を報道

12月10日発売の『紙の爆弾』と『SAPIO』が、わたしが取材している分野の問題を取り上げている。わたしもコメントしている。

◇『紙の爆弾』

まず、『紙の爆弾』は、高田欽一氏の署名記事「警察の裏・マスコミの裏 知られざる未解決事件」。この中に「読売新聞の顧問弁護士 喜田村洋一に懲戒請求」と題する一節(65ページ)がある。

喜田村弁護士に対する懲戒請求の件は、MEDIA KOKUSYOでもたびたびとりあげてきた。この事件は、MEDIA KOKUSYOに掲載された文書(読売の江崎法務室長が、わたしに送付した催告書)の削除を求めて、江崎氏が裁判を起こしたのが発端である。

提訴の根拠としたのは、送付文書が江崎法務室長の著作物で、わたしには公表権がないのに、ウエブサイトで公表したからというものだった。ところが裁判の中で、文書の作成者が喜田村弁護士である強い可能性が判明。もともと法務室長に提訴する資格がなかったのに、強引に提訴に及んでいたことが分かったのだ。最高裁でもこの点が認定された。

注:著作者人格権は他人に譲渡できない。これに対して著作者財産権は譲渡できる。江崎氏が提訴の根拠としたのは、著作者人格権だった。

最高裁の認定を受けて、わたしは喜田村氏に対する懲戒請求を申し立てた。 その根拠としたのは、弁護士職務基本規定の第75条。

弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

『紙の爆弾』の記事は、「もし申請が通れば、中坊公平日弁連元会長のように、廃業や引退に追い込まれる可能性もある」と述べている。

参考資料:なぜ、裁判所が喜田村氏らが催告書の作成者を偽っていたと判断したのかは、次の知財高裁判決に詳細に記されている。法律の専門家であれば、書類の名義(江崎名義)を偽って裁判を起こす行為がいかに悪質であるかが理解できるだろう。

【必読】(懲戒請求事件に関する全資料=ここをクリック)

◇『SAPIO』  

喜田村氏に対する懲戒請求の根底にあるのが、「押し紙」問題である。  『SAPIO』に掲載された鵜飼克郎氏の著名記事「販売部数水増しで広告価値を釣り上げる『押し紙』の決定的現場を見た!」は、雑誌による「押し紙」報道の再開を予感させる。  鵜飼氏の調査の一部を紹介しよう。

そのトラックは猛スピードで北上。走ること10分。今度はB新聞の販売店に到着した。まず、店内からビニール袋に入った新聞を5束運び出し、トラックの荷台に乗せた。その後、運転手は慣れた手つきで店の倉庫の扉を開け、中から新聞の束を台車に乗せて運び出し始めた。台車に1回18束を積み、これを4往復した。

また、この記事は、折込チラシの「中抜き」問題にも言及している。折込チラシの「中抜き」とは、次のような手口である。

たとえば広告主が30万枚のチラシを広告代理店に発注すると仮定する。しかし、「押し紙」があるので、30万枚を各新聞販売店に分配しても、余ってしまう。そこで搬入枚数を、広告主には秘密で、たとえば20万枚に減らす。差異の10万枚については、印刷もしない。しかし、請求は30万枚が対象になる。

このような手口が実際に発生している。次に示すのは、バースーディーというブランドショップが発注したチラシの枚数、「中抜き」枚数、それに損害額を示した一覧表である。これらの数字は、裁判の判決で認定されている。

(一覧表=ここをクリック)??

■参考記事 :新聞も「偽装」発覚で刑事告訴 “折り込め詐欺”でチラシ65万枚を中抜き、250万円の被害  

2013年11月08日 (金曜日)

喜田村洋一弁護士に対する弁護士懲戒請求 日弁連の綱紀委員会第1部会が審査を決定

先月の31日に、喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)に対する弁護士懲戒請求の異議を日弁連に申し立てたところ、5日に同協会から審査の決定通知が届いた。全文は次の通りである。

■審査開始通知書=ここをクリック

この懲戒請求事件の原因は、読売(江崎法務室長を含む)が2008年から1年半の間に、わたしに対して3件の裁判(請求額は約8000万円)を提起したことである。このうち特に問題になっているのは、2008年2月に江崎法務室長が提起した著作権裁判である。

この裁判は、江崎氏がわたしに送付した催告書(わたしは、これを怪文書と主張)を新聞販売黒書(現・メディア黒書)に掲載したのに対して、江崎氏が削除を求めたものである。江崎氏の主張は、催告書は自分が作成した著作物であるから、わたしにそれを公表する権利はないというものだった。

ところが裁判所は、催告書の作成者は江崎氏ではなくて、喜田村弁護士か彼の事務所スタッフの可能性が極めて強いと認定して、江崎氏を敗訴させたのである。つまり催告書の作成者が江崎氏ではないわけだから、もともと江崎氏は自分の著作者人格権を根拠に裁判を起こす権利がなかったのだ。それにもかかわらず、あえて裁判を起こしたのである。

※著作者人格権は、他人に譲渡することはできない。

この裁判の代理人は喜田村弁護士だった。もちろん彼が、この「でっちあげ裁判」に加担していたことになる。そこで2010年2月に、著作権裁判の判決が最高裁で確定(これが懲戒請求の事由)したのを受けて、喜田村弁護士の懲戒請求に踏み切ったのである。

次に紹介するのは、喜田村弁護士が書いた著作権裁判の訴状である。インターネットでは初公開である。

■著作権裁判の訴状=ここをクリック

その他の資料:

(第2東京弁護士会への公開質問状=ここをクリック)

(第2東京弁護士会からの回答書=ここをクリック)  

(第2東京弁護士会が下した議決書=ここをクリック)

(著作権裁判・黒薮勝訴の弁護団声明=ここをクリック) 【重要】

懲戒請求は、著作権裁判の勝訴を根拠として提起したもの。

(著作権裁判・知財高裁判決=ここをクリック)【必読】

(黒薮側準備書面1=ここをクリック)【重要】

(参考・写真で見る「押し紙」回収現場=ここをクリック)???

2013年11月01日 (金曜日)

日弁連に異議申立書を提出 草案に排斥期間についての記述などを追加 喜田村弁護士に対する懲戒請求事件

10月31日に喜田村洋一自由人権協会代表理事に対する弁護士懲戒請求の申立を行った。申立理由書の草案は、本サイトで紹介したとおりだが、公式に日弁連に提出したものには、若干の修正を加えた。

■懲戒請求異議申立書の全文=ここをクリック

■証拠説明書=ここをクリック

最も大きな変更点は、排斥期間に関する記述を付け加えたことである。排斥期間とは、一定期間のうちに権利行使しなければ消滅する権利のことである。期間は3年。

問題になっている催告書(黒薮は怪文書と主張)を読売の江崎・法務室長が送り付けて来たのは、2007年12月21日。そして、わたしが懲戒請求を第2東京弁護士会に申し立てたのは、2011年1月31日である。従って懲戒請求を申し立ては時点で、3年の期間が過ぎている。

これを理由のひとつとして第2東京弁護士会の決議書(秋山清人弁護士が執筆)は、わたしの申し立てを退けている。

しかし、この催告書を執筆したのが喜田村弁護士か彼のスタッフであるという認定が最高裁で確定したのは、2010年2月である。この時点までは、喜田村氏が作者である可能性が高いという司法認定は決定していなかったのだ。

江崎氏も一貫して、催告書は自分が執筆したと主張してきた。

わたしが懲戒請求に踏み切ったのは、上記の判決が最高裁で確定したからである。それまでは江崎氏が作者であることが認められる可能性も残っていたのである。当然、この時点で喜田村氏の懲戒を求める根拠は存在しなかった。

と、なれば当然、懲戒事由が発生た起点は、判決が確定した2010年2月である。ところが第2東京弁護士会は、江崎氏が催告書(怪文書)を送付した2007年12月21日を懲戒事由が発生た起点にしているのだ。

改めて言うまでなく、2007年12月21日に催告書を送付した江崎氏は弁護士ではないので、弁護士懲戒請求の対象にすらならない。江崎氏ではなく、喜田村弁護士の行為を検証するのが懲戒請求を申し立てた目的である。

こんなことは法律の素人でも分かることではないだろうか?

◆排斥期間について  

?排斥期間についての修正・加筆箇所は次の部分である。

なお、排斥期間についての主張は、第二東京弁護士会へ提出した準備書面(3)でも展開しましたが、これに対する評価は議決書には書かれていません。そこで以下、準備書面(3)の該当部分を引用します。

「 対象弁護士は本件懲戒請求の申立の時期が、3年間の除斥期間を過ぎていることを理由に無効を主張している。確かに本件催告書の送付は平成19年12月21日で、本件懲戒請求を申し立てたのは、平成23年1月31日であるから、3年間の期間は過ぎている。      しかし、除斥期間の起点は、懲戒請求の事由が発生した時点である。    

 そこで起点がいつになるのかという点について検討する。      

 結論を先に言えば、懲戒請求の根拠となった事由は、本件著作権裁判の判決が最高裁で確定した平成21年12月である。最高裁が本件催告書の作成者を対象弁護士か彼の事務所スタッフの可能性が高いと認定したことが、懲戒請求の原因である。この点を最高裁が認定していなければ、本件懲戒請求を申し立てることはなかった。

? ちなみに最高裁の判例にも、除斥期間を延長した例がある。それはじん肺などで、病状が現れるまで潜伏期間が存在するケースである。 

   (筑豊炭田事件平成16.4.27最高裁三小判)??本件懲戒請求についても、原因の特定時期という観点からすれば事情は同じだ。本件催告書の本当の作成者が江崎氏ではないことが明    らかになったのは、本件著作権裁判の終盤である。従って、3年間を理由にした除斥対象にはならない。 さらに弁護士倫理という観点から考えても、本件懲戒請求申立を除斥の対象とする理由はない。と、いうのも弁護士倫理に「時効」は存在しないからだ。懲戒請求制度の目的そものもが、「一般にその組織が内部秩序、規律を維持するために、一定の義務違反に対し人的な制裁をその構成員に対して行う制度」(日弁連のホームページ)であるから、本件を検証するのは当然だ。」

この判例の他にも、次のような判例がある。「ウィクペディア」から引用しておこう。

※2004年(平成16年)4月27日最高裁第三小法廷判決、民集58巻4号1032頁 三井鉱山じん肺訴訟 ? 民法724条後段所定の除斥期間は,不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時から進行する。

※2004年(平成16年)10月15日最高裁第二小法廷判決、民集58巻7号1882頁 関西水俣病訴訟

水俣病による健康被害につき,患者が水俣湾周辺地域から転居した時点が加害行為の終了時であること,水俣病患者の中には潜伏期間のあるいわゆる遅発性水俣病が存在すること,遅発性水俣病の患者においては水俣病の原因となる魚介類の摂取を中止してから4年以内にその症状が客観的に現れることなど判示の事情の下では,上記転居から4年を経過した時が724条後段所定の除斥期間の起算点

※2006年(平成18年)6月16日最高裁第二小法廷判決、民集60巻5号1997頁 北海道B型肝炎訴訟

乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したことによる損害につき、B型肝炎を発症した時が724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

2013年10月28日 (月曜日)

日弁連に異議申立 理由書の全面公開 喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求事件

次に紹介するのは、喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)に対する懲戒請求の異議申立の理由である。既に述べたように、第2東京弁護士会は、この案件については審査しないことを決めた。そこで日弁連に対して異議を申し立てることにして、次の草案を作成した。

数日中に日弁連へ提出の予定になっている。

異議申立の理由:

第二東京弁護士会が下した議決の誤りは次の「1」「2」に集約できます。「3」については、喜田村氏の行為が出版関係者にとっての命である言論表現の自由をいかに脅かしているかに関する記述です。この点についても参考にしてください。

貴協会には、弁護士活動が社会全体に及ぼす重大な影響を再認識した上で、公平な裁決を下していただくことを切望します。

1、議決書(秋山清人弁護士による執筆)が本件催告書のデタラメな内容そのものの検証を避けている問題

第二東京弁護士会が下した議決の第1の誤りは、懲戒対象になっている喜田村洋一弁護士の弁護士倫理を映している本件催告書の内容そのものに対する検証をまったく行っていない点にあります。

結論を先に言えば、第二東京弁護士会は、本件催告書の作成者が誰かという争点を、わたしと読売新聞社(江崎徹志法務室長個人も含む)の間で発生した4件の裁判の判決に基づくかたちで検証していますが、本件催告書に綴られた内容が、怪文書と受け取られても仕方がないデタラメな内容である事実については、まったく言及していません。

この点を無視することで、喜田村氏を懲戒請求から「救済」しています。

本件催告書の内容は周知のように、次に引用する読売・江崎徹志法務室長作成の文書(以下、本件回答書)が著作権法上の著作物に該当するので、本件回答書をウエブサイト「新聞販売黒書(現・MEDIA KOKUSYO)」から削除するように求めたものです。それに応じない場合は、刑事告訴も辞さないという脅迫めいたものでした。

前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。

??? 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。?? 当社販売局として、通常の訪店です。

喜田村氏は、これが江崎氏個人の著作物であるから、わたしがウエブサイトにそれを掲載する権利はなく、削除しろと述べたわけですが、しかし、著作権法でいう著作物とは、次の定義に当てはまるものを指します。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。 ?

本件回答書は、著作権法でいう著作物には該当しません。

喜田村氏は、本件回答書が著作物に該当しないことを知っていました。それを立証する証拠としては、たとえば『佐野眞一が殺したジャーナリズム』(宝島社)に掲載された喜田村氏の「法律家がみた『佐野眞一盗用問題』の深刻さ」 と題する文章があります。この中で喜田村氏は、著作物を次のように定義しています。

したがって、著作権法との関係で盗作や盗用を考えるにあたっては、対象となる作品や文章が著作物にあたるかどうかが一番重要である。 ?  

その観点で、何が著作物かを上の要件に即して考えると、まず、著作物は「表現」でなければならないから、「思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など」で、表現でないものは、著作物になりえない。

??  たとえば、「○月○日、△△で、AがBに?と言った(AがBを手で殴りけがをさせた)」というような事実ないし事件そのものは、表現ではないから、著作権法の対象ではない。同様に、「ある事件についての見方」とか、「ある事件を報じるにあたっての方法」といったアイデアに属するものも、表現ではないから、著作権法の保護は受けられない。

?  また、創作性がなければならないから、ごく短い文章で、誰が書いても同じになるようなものであれば、これも著作物ではない(もっとも、短いからダメということではないのであり、たとえば俳句などは17音しかないが、それでも著作物に該当しうる)。 ?

喜田村氏は本件回答書が著作物ではないことを知っていながら、それが江崎氏の著作物であるからウエブサイトから削除するように本件催告書の中で自らの主張を展開したのです。しかも、それに応じない場合は、刑事告訴も辞さない旨を述べたのです。

たとえ第二東京弁護士会が判断したように、本件催告書の作成者が誰かを特定できないとしても、喜田村氏は本件著作権裁判で江崎の代理人を務めたわけですから、少なくとも本件催告書の内容を把握していたはずです。

弁護士職務基本規定の第75条は次のように述べています。

弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

と、すれば本件催告書のテーマとなっている本件回答書が著作物に該当しないことを江崎氏に説明した上で、本件著作権裁判を提起しないようにアドバイスするのが、弁護士の当然の義務だったはずです。

それにもかかわらずあえて本件催告書を法廷に持ち込み、それを前提に東京地裁と知財高裁で、奇論ともとれる主張を展開しました。これは明らかに弁護士職務基本規定に違反しています。懲戒請求で審査対象になるのは当然です。

本来、催告書の目的は、意思を相手に伝達することですから、第2東京弁護士会は、催告書の著作物性など文章の形式を検証するよりも優先的に、本件催告書の中で喜田村氏が述べた内容が弁護士倫理に反しないかどうかを見極めなければならないはずです。怪文書をどう見るかを議論する際は、書かれた内容の検証が中心で、文章の形式は枝葉末節にほかなりません。

ところが第二東京弁護士会は、弁護士倫理を問う懲戒請求であるにもかかわらず、この点にふれていません。

繰り返しになりますが、本件催告書の中身は、本件回答書をめぐる係争について言及したものであり、本件著作権裁判でわたしの勝訴が確定する2010年2月まで、法廷で審理の対象になりました。わたしの弁護団も本件催告書の内容そのものを問題視しました。

第二東京弁護士会も認めたように、本件催告書の送付行為そのものは排斥期間を過ぎていますが、本件催告書をめぐる本件著作権裁判の審理は排斥期間を過ぎていません。事実、第二東京弁護士会は本件催告書をめぐる裁判の判決に基づいた決議を下しています。それゆえに、本件催告書の支離滅裂な内容だけが特別に検証対象から除外される理由もありません。

裁判判例の採用基準の不公平性について

第二東京弁護士会が下した議決の第2の誤りは、議決内容の根拠とした複数の裁判判例の採用基準が公平性を欠く点です。喜田村氏にとって好都合な判例の一部だけを恣意的に採用している点です。

第二東京弁護士会が根拠とした裁判の判例は次の通りです。

?仮処分申立事件(申立人・江崎。江崎の勝訴)、

?著作権裁判(原告・江崎。黒薮の完全勝訴)

?名誉毀損裁判1(原告・読売他。地裁、高裁で黒薮が勝訴。最高裁は読売を逆転勝訴させることを決め、判決を高裁へ差し戻した。)

?名誉毀損裁判2(原告・読売。読売の完全勝訴)

?損害賠償裁判(原告・黒薮。地裁、高裁で読売が勝訴。現在、最高裁で継続中)

このうちわたしが「不公平な扱い」と感じているのは、本件催告書の作成者は誰かという争点に対して、第二東京弁護士会が議決の根拠とした判例です。

この争点に対する判例は2件あります。わたしが勝訴した?本件著作権裁判の知財高裁(東京)? の判例(最高裁も認定)と、読売が勝訴(ただし、最高裁で継続中で判決は確定していない)した?本件損害賠償裁判の福岡高裁判決です。

?は被告であるわたしの完全勝訴で、喜田村氏か彼のスタッフが本件催告書の作成者である強い可能性を認定しました。最高裁もそれを追認しました。

一方、?は、被告の読売が地裁・高裁で勝訴して、現在は最高裁で継続している裁判です。この裁判の福岡高裁判決は、本件催告書の作成者について、喜田村氏とは特定できないと結論づけています。

つまり本件催告書の作成者は誰かという争点に対する本件著作権裁判と本件損害賠償裁判の判断は、異なる結論となったのです。

第二東京弁護士会が下した議決の最大の誤りは、争点が著作権にかかわる事柄であるにもかかわらず、最高裁が認定した本件著作権裁判の判例は完全に無視して、現在も継続中で読売が地裁・高裁で勝訴した本件損害賠償裁判の判例を根拠に、喜田村氏を懲戒請求から「救済」したことです。

最高裁で確定した判例よりも、審理中の判例を優先したのです。あるいは著作権問題にもかかわらず、著作権裁判の判例よりも損害賠償裁判の判例を優先したのです。 ? 「喜田村救済」という決論を先に立てて、検証したからではないでしょうか。

なお、第二東京弁護士会が議決の根拠とした本件損害賠償裁判は、審理の過程で司法制度の信頼にかかわる極めて不自然な展開を見せました。たとえば福岡地裁の段階で、裁判長の交代があり、新たに就任した田中哲朗裁判長(現・福岡高裁宮崎支部)は、わたしの本人尋問の実施を拒否しました。陳述書の受け取りも、弁護団から厳しい抗議が行われるまで拒否し続けました。

ちなみに田中裁判長は、ほぼ同じ時期に進行していた別の読売関連の裁判(平山裁判)にもかかわっていました。平山裁判は、読売新聞販売店の元店主が起こした地位保全裁判です。仮処分の申し立て裁判の第1審では元店主が勝訴したものの、第2審では田中裁判長がそれを覆す判決を下しました。

田中氏は、平山裁判の本訴でも裁判長に就任し、読売を勝訴させました。 ? その田中裁判長が、本件損害賠償裁判の裁判長として新たに就任した時点から、わたしの支援者の間からは、公平な裁判に対する疑念の声が上がっていました。事実、既に述べたように、わたしの本人尋問も、陳述書の受け取りも拒否したのです。

第二東京弁護士会が本件懲戒請求事件における議決の根拠とした本件損倍賠償裁判の判決は、この田中裁判長が執筆したものを、福岡高裁の木村元昭裁判長(現・福岡家裁)が追認したものに過ぎません。

しかも、木村元昭裁判長についても、審理の公平性に疑問があります。木村氏は、本件損害賠償裁判の他にも読売関連の裁判を担当した経緯があり、その中で複数の疑問が浮上しています。

田中、木村両裁判官に対する批判は自著『新聞の危機と偽装部数』(花伝社)の中で、詳細に展開しているので、証拠として同著を提出します。

貴協会には、第二東京弁護士会が議決の根拠とした本件損害賠償裁判の判決が本当に公平なものかどうかを、弁護士の立場から慎重に検証した上で、結論を出していただくことを希望します。

、読売関連の訴訟と弁護士活動

言論表現の自由に対する負の影響  喜田村氏が代理人を務めた本件著作権裁判、本件名誉毀損裁判1、本件名誉毀損裁判2、さらには清武裁判、七つ森書館裁判、平山裁判、真村裁判などの読売関連の裁判が出版人の命である言論表現の自由に及ぼした負の影響については別途、準備書面で明らかにします。このうちわたしが当事者となった3件の裁判についての概要は次のとおりです。

?本件著作権裁判の影響 ? わたしがもし敗訴していたら、報道の際に重要文書(怪文書も含む)を全面公開できなくなる判例が生まれていた。

?本件著作権裁判1の影響 ? 重要な文章表現のひとつであるメタファー(隠喩)の使用が名誉毀損に該当する判例が生まれた。

?本件著作権裁判2の影響 ? 重大な社会問題(「押し紙」)が水面下で進行している事実があっても、100%の裏付けがなければ報じてはいけないという判例が生まれた。

このうち?本件著作権裁判は、知財高裁の判断によると、もともと提訴する権利がなかったわけですから、裁判制度を悪用した言論弾圧にほかなりません。 これではジャーナリズムが殺されてしまいます。司法界の腐敗を象徴する現象です。

貴協会が、公正中立な立場で裁決を下されることを切望します。

参考資料:

(第2東京弁護士会への公開質問状=ここをクリック)

(第2東京弁護士会からの回答書=ここをクリック)  

(第2東京弁護士会が下した議決書=ここをクリック)

(著作権裁判・黒薮勝訴の弁護団声明=ここをクリック) 【重要】

懲戒請求は、著作権裁判の勝訴を根拠として提起したもの。

(著作権裁判・知財高裁判決=ここをクリック)【必読】

(黒薮側準備書面1=ここをクリック)【重要】

(参考・写真で見る「押し紙」回収現場=ここをクリック)???

2013年10月17日 (木曜日)

第2東京弁護士会から回答書が到着、喜田村弁護士に対する懲戒請求事件

喜田村洋一弁護士(自由人権協会・代表理事)に対する懲戒請求事件の議決書の関連して、第2東京弁護士会へ送付した公開質問状の回答が、17日に届いたので公表する。

(回答書=ここをクリック)  

(公開質問状=ここをクリック)

(議決書=ここをクリック)

(著作権裁判・黒薮勝訴の弁護団声明=ここをクリック) 【重要】

懲戒請求は、著作権裁判の勝訴を根拠として提起したもの。

(著作権裁判・知財高裁判決=ここをクリック)【必読】

(黒薮側準備書面1=ここをクリック)【重要】?

(参考・写真で見る「押し紙」回収現場=ここをクリック)???