1. 日弁連に異議申立 理由書の全面公開 喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求事件

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2013年10月28日 (月曜日)

日弁連に異議申立 理由書の全面公開 喜田村洋一弁護士に対する懲戒請求事件

次に紹介するのは、喜田村洋一弁護士(自由人権協会代表理事)に対する懲戒請求の異議申立の理由である。既に述べたように、第2東京弁護士会は、この案件については審査しないことを決めた。そこで日弁連に対して異議を申し立てることにして、次の草案を作成した。

数日中に日弁連へ提出の予定になっている。

異議申立の理由:

第二東京弁護士会が下した議決の誤りは次の「1」「2」に集約できます。「3」については、喜田村氏の行為が出版関係者にとっての命である言論表現の自由をいかに脅かしているかに関する記述です。この点についても参考にしてください。

貴協会には、弁護士活動が社会全体に及ぼす重大な影響を再認識した上で、公平な裁決を下していただくことを切望します。

1、議決書(秋山清人弁護士による執筆)が本件催告書のデタラメな内容そのものの検証を避けている問題

第二東京弁護士会が下した議決の第1の誤りは、懲戒対象になっている喜田村洋一弁護士の弁護士倫理を映している本件催告書の内容そのものに対する検証をまったく行っていない点にあります。

結論を先に言えば、第二東京弁護士会は、本件催告書の作成者が誰かという争点を、わたしと読売新聞社(江崎徹志法務室長個人も含む)の間で発生した4件の裁判の判決に基づくかたちで検証していますが、本件催告書に綴られた内容が、怪文書と受け取られても仕方がないデタラメな内容である事実については、まったく言及していません。

この点を無視することで、喜田村氏を懲戒請求から「救済」しています。

本件催告書の内容は周知のように、次に引用する読売・江崎徹志法務室長作成の文書(以下、本件回答書)が著作権法上の著作物に該当するので、本件回答書をウエブサイト「新聞販売黒書(現・MEDIA KOKUSYO)」から削除するように求めたものです。それに応じない場合は、刑事告訴も辞さないという脅迫めいたものでした。

前略? 読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。

??? 2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。?? 当社販売局として、通常の訪店です。

喜田村氏は、これが江崎氏個人の著作物であるから、わたしがウエブサイトにそれを掲載する権利はなく、削除しろと述べたわけですが、しかし、著作権法でいう著作物とは、次の定義に当てはまるものを指します。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。 ?

本件回答書は、著作権法でいう著作物には該当しません。

喜田村氏は、本件回答書が著作物に該当しないことを知っていました。それを立証する証拠としては、たとえば『佐野眞一が殺したジャーナリズム』(宝島社)に掲載された喜田村氏の「法律家がみた『佐野眞一盗用問題』の深刻さ」 と題する文章があります。この中で喜田村氏は、著作物を次のように定義しています。

したがって、著作権法との関係で盗作や盗用を考えるにあたっては、対象となる作品や文章が著作物にあたるかどうかが一番重要である。 ?  

その観点で、何が著作物かを上の要件に即して考えると、まず、著作物は「表現」でなければならないから、「思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など」で、表現でないものは、著作物になりえない。

??  たとえば、「○月○日、△△で、AがBに?と言った(AがBを手で殴りけがをさせた)」というような事実ないし事件そのものは、表現ではないから、著作権法の対象ではない。同様に、「ある事件についての見方」とか、「ある事件を報じるにあたっての方法」といったアイデアに属するものも、表現ではないから、著作権法の保護は受けられない。

?  また、創作性がなければならないから、ごく短い文章で、誰が書いても同じになるようなものであれば、これも著作物ではない(もっとも、短いからダメということではないのであり、たとえば俳句などは17音しかないが、それでも著作物に該当しうる)。 ?

喜田村氏は本件回答書が著作物ではないことを知っていながら、それが江崎氏の著作物であるからウエブサイトから削除するように本件催告書の中で自らの主張を展開したのです。しかも、それに応じない場合は、刑事告訴も辞さない旨を述べたのです。

たとえ第二東京弁護士会が判断したように、本件催告書の作成者が誰かを特定できないとしても、喜田村氏は本件著作権裁判で江崎の代理人を務めたわけですから、少なくとも本件催告書の内容を把握していたはずです。

弁護士職務基本規定の第75条は次のように述べています。

弁護士は、偽証若しくは虚偽の陳述をそそのかし、又は虚偽と知りながらその証拠を提出してはならない。

と、すれば本件催告書のテーマとなっている本件回答書が著作物に該当しないことを江崎氏に説明した上で、本件著作権裁判を提起しないようにアドバイスするのが、弁護士の当然の義務だったはずです。

それにもかかわらずあえて本件催告書を法廷に持ち込み、それを前提に東京地裁と知財高裁で、奇論ともとれる主張を展開しました。これは明らかに弁護士職務基本規定に違反しています。懲戒請求で審査対象になるのは当然です。

本来、催告書の目的は、意思を相手に伝達することですから、第2東京弁護士会は、催告書の著作物性など文章の形式を検証するよりも優先的に、本件催告書の中で喜田村氏が述べた内容が弁護士倫理に反しないかどうかを見極めなければならないはずです。怪文書をどう見るかを議論する際は、書かれた内容の検証が中心で、文章の形式は枝葉末節にほかなりません。

ところが第二東京弁護士会は、弁護士倫理を問う懲戒請求であるにもかかわらず、この点にふれていません。

繰り返しになりますが、本件催告書の中身は、本件回答書をめぐる係争について言及したものであり、本件著作権裁判でわたしの勝訴が確定する2010年2月まで、法廷で審理の対象になりました。わたしの弁護団も本件催告書の内容そのものを問題視しました。

第二東京弁護士会も認めたように、本件催告書の送付行為そのものは排斥期間を過ぎていますが、本件催告書をめぐる本件著作権裁判の審理は排斥期間を過ぎていません。事実、第二東京弁護士会は本件催告書をめぐる裁判の判決に基づいた決議を下しています。それゆえに、本件催告書の支離滅裂な内容だけが特別に検証対象から除外される理由もありません。

裁判判例の採用基準の不公平性について

第二東京弁護士会が下した議決の第2の誤りは、議決内容の根拠とした複数の裁判判例の採用基準が公平性を欠く点です。喜田村氏にとって好都合な判例の一部だけを恣意的に採用している点です。

第二東京弁護士会が根拠とした裁判の判例は次の通りです。

?仮処分申立事件(申立人・江崎。江崎の勝訴)、

?著作権裁判(原告・江崎。黒薮の完全勝訴)

?名誉毀損裁判1(原告・読売他。地裁、高裁で黒薮が勝訴。最高裁は読売を逆転勝訴させることを決め、判決を高裁へ差し戻した。)

?名誉毀損裁判2(原告・読売。読売の完全勝訴)

?損害賠償裁判(原告・黒薮。地裁、高裁で読売が勝訴。現在、最高裁で継続中)

このうちわたしが「不公平な扱い」と感じているのは、本件催告書の作成者は誰かという争点に対して、第二東京弁護士会が議決の根拠とした判例です。

この争点に対する判例は2件あります。わたしが勝訴した?本件著作権裁判の知財高裁(東京)? の判例(最高裁も認定)と、読売が勝訴(ただし、最高裁で継続中で判決は確定していない)した?本件損害賠償裁判の福岡高裁判決です。

?は被告であるわたしの完全勝訴で、喜田村氏か彼のスタッフが本件催告書の作成者である強い可能性を認定しました。最高裁もそれを追認しました。

一方、?は、被告の読売が地裁・高裁で勝訴して、現在は最高裁で継続している裁判です。この裁判の福岡高裁判決は、本件催告書の作成者について、喜田村氏とは特定できないと結論づけています。

つまり本件催告書の作成者は誰かという争点に対する本件著作権裁判と本件損害賠償裁判の判断は、異なる結論となったのです。

第二東京弁護士会が下した議決の最大の誤りは、争点が著作権にかかわる事柄であるにもかかわらず、最高裁が認定した本件著作権裁判の判例は完全に無視して、現在も継続中で読売が地裁・高裁で勝訴した本件損害賠償裁判の判例を根拠に、喜田村氏を懲戒請求から「救済」したことです。

最高裁で確定した判例よりも、審理中の判例を優先したのです。あるいは著作権問題にもかかわらず、著作権裁判の判例よりも損害賠償裁判の判例を優先したのです。 ? 「喜田村救済」という決論を先に立てて、検証したからではないでしょうか。

なお、第二東京弁護士会が議決の根拠とした本件損害賠償裁判は、審理の過程で司法制度の信頼にかかわる極めて不自然な展開を見せました。たとえば福岡地裁の段階で、裁判長の交代があり、新たに就任した田中哲朗裁判長(現・福岡高裁宮崎支部)は、わたしの本人尋問の実施を拒否しました。陳述書の受け取りも、弁護団から厳しい抗議が行われるまで拒否し続けました。

ちなみに田中裁判長は、ほぼ同じ時期に進行していた別の読売関連の裁判(平山裁判)にもかかわっていました。平山裁判は、読売新聞販売店の元店主が起こした地位保全裁判です。仮処分の申し立て裁判の第1審では元店主が勝訴したものの、第2審では田中裁判長がそれを覆す判決を下しました。

田中氏は、平山裁判の本訴でも裁判長に就任し、読売を勝訴させました。 ? その田中裁判長が、本件損害賠償裁判の裁判長として新たに就任した時点から、わたしの支援者の間からは、公平な裁判に対する疑念の声が上がっていました。事実、既に述べたように、わたしの本人尋問も、陳述書の受け取りも拒否したのです。

第二東京弁護士会が本件懲戒請求事件における議決の根拠とした本件損倍賠償裁判の判決は、この田中裁判長が執筆したものを、福岡高裁の木村元昭裁判長(現・福岡家裁)が追認したものに過ぎません。

しかも、木村元昭裁判長についても、審理の公平性に疑問があります。木村氏は、本件損害賠償裁判の他にも読売関連の裁判を担当した経緯があり、その中で複数の疑問が浮上しています。

田中、木村両裁判官に対する批判は自著『新聞の危機と偽装部数』(花伝社)の中で、詳細に展開しているので、証拠として同著を提出します。

貴協会には、第二東京弁護士会が議決の根拠とした本件損害賠償裁判の判決が本当に公平なものかどうかを、弁護士の立場から慎重に検証した上で、結論を出していただくことを希望します。

、読売関連の訴訟と弁護士活動

言論表現の自由に対する負の影響  喜田村氏が代理人を務めた本件著作権裁判、本件名誉毀損裁判1、本件名誉毀損裁判2、さらには清武裁判、七つ森書館裁判、平山裁判、真村裁判などの読売関連の裁判が出版人の命である言論表現の自由に及ぼした負の影響については別途、準備書面で明らかにします。このうちわたしが当事者となった3件の裁判についての概要は次のとおりです。

?本件著作権裁判の影響 ? わたしがもし敗訴していたら、報道の際に重要文書(怪文書も含む)を全面公開できなくなる判例が生まれていた。

?本件著作権裁判1の影響 ? 重要な文章表現のひとつであるメタファー(隠喩)の使用が名誉毀損に該当する判例が生まれた。

?本件著作権裁判2の影響 ? 重大な社会問題(「押し紙」)が水面下で進行している事実があっても、100%の裏付けがなければ報じてはいけないという判例が生まれた。

このうち?本件著作権裁判は、知財高裁の判断によると、もともと提訴する権利がなかったわけですから、裁判制度を悪用した言論弾圧にほかなりません。 これではジャーナリズムが殺されてしまいます。司法界の腐敗を象徴する現象です。

貴協会が、公正中立な立場で裁決を下されることを切望します。

参考資料:

(第2東京弁護士会への公開質問状=ここをクリック)

(第2東京弁護士会からの回答書=ここをクリック)  

(第2東京弁護士会が下した議決書=ここをクリック)

(著作権裁判・黒薮勝訴の弁護団声明=ここをクリック) 【重要】

懲戒請求は、著作権裁判の勝訴を根拠として提起したもの。

(著作権裁判・知財高裁判決=ここをクリック)【必読】

(黒薮側準備書面1=ここをクリック)【重要】

(参考・写真で見る「押し紙」回収現場=ここをクリック)???